憑依能力を使いこなすための訓練を行う、
憑依訓練所ー。
そこでの訓練はやがて、終盤へと向かって行くー…。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーへへへーまずは俺がー」
憑依訓練所での訓練も進みー、
初の”実習”の日ー。
”一匹狼”として恐れられる男ー、
訓練生の一人、大夢がそう言葉を口にすると、
先程、教官の里奈に暴行を受けた
”012”のこと、美姫の前に立ったー。
「ーこいつに憑依して、構わねぇよなー?」
大夢がそう言うと、教官の里奈は「ええ。相手は自由ですー」と、頷いたー。
「ーーー」
緊張した様子で、訓練生の宗吾や秀介がそれを見つめる中ー、
ツインテールの訓練生・愛梨は表情を曇らせるー。
「ーーへへへ 悪く思うなよー”012”さんよー」
大夢はあえて、美姫のことをそう呼ぶと、そのまま
”霊体”となって、美姫の身体の中に飛び込んでいくー。
「ーーぁ…」
苦しそうにうめき声を上げると、やがて美姫はニヤリと笑みを浮かべるー。
「ーへへっ…すげぇーこれが憑依かー
へへへっ…すっげぇぇ…♡」
嬉しそうにしながら声を上げると、
「おい!この手錠を外してくれ」と、教官の里奈に向かって言い放つー。
里奈が手錠を外すと、
美姫に憑依した大夢は嬉しそうにその場で胸を揉み始めたー。
「うぉぉぉぉぉぉっ!やべぇぇぇ!最高だぜ!ふぉぉぉぉぉぉぉっ!」
声を上げながら、あらゆる場所を触りまくる美姫ー。
「ーーす、すごいー」
眼鏡をかけたガリガリの訓練生・秀介も少し目を輝かせるー。
”ーー…憑依能力さえ極めれば、俺もボスの役に立てるー
組織の中でもっともっと上に行けるー”
とある犯罪組織に所属する宗吾は、そんな野心を改めて
心の中でたぎらせるー。
がー、その時だったー
「ーーぅ… ぁ…?????」
胸を揉んでいた美姫が、突然苦しそうにすると、
その場で嘔吐してしゃがみ込むー。
「ーーえ…?ど、どうしたんだー?」
眼鏡の男・秀介が言うと、
教官の里奈は「乗っ取られた側の拒絶反応ですー。
強い意思を持って、身体に自らの意識を浸透させないとー、
拒絶反応によって、”廃人”と化しますー」と、そう言葉を口にしたー。
それは、これまでの訓練所での授業で習ったー。
がー、宗吾たちは”十分に訓練を受けて来たのにー?”と、そう思わずには
いられないー。
「ー彼は、己を過信しー
これまでの授業でも”俺を誰だと思っている?”と、言いたげなー
そんな慢心が見られましたー
その結果が、これです」
教官・里奈は、床を転がり回って頭を抱える美姫を冷たい目で見つめるー。
「ー皆さんは、”ちゃんと”これまでの授業を受けてきたと思いますからー
大丈夫ですよー」
里奈はにこっと笑うー。
この世のものとは思えない叫び声を上げながら、
苦しみ続ける美姫ー。
「ーこうなるともう、”憑依された側”も、”憑依した側”も
使い物になりませんー」
里奈はそれだけ言うと、
近くにいた別のスタッフに言葉を口にしたー
「ー012は処分して下さい」
とー。
「ーはっー…。憑依した訓練生はどうします?
分離施術を行いますかー?」
スタッフがそう言うと、里奈は「いえー。012ごと処分して構いません」と、
そう言葉を口にしたー。
緊張した様子の訓練生たちー。
大夢の”失敗”を見て、より気を引き締めた
宗吾や秀介、愛梨たちは憑依を”成功”させ、初の実習を乗り越えたー。
その後も、実習を繰り返す訓練生たちー。
がー、その最中ー…
「ーーあなたの名前はー?」
教官の里奈が、大人しそうな雰囲気の女に声を掛けるー。
「だ、だから、わたしは松田 小夜(まつだ さよ)です!」
小夜と名乗る女がそう叫ぶー。
「ーーーーふぅ」
里奈はため息をつくと、
「ーーあなたは”その身体に憑依した”訓練生なんだけどー…
覚えてない?」と、そう言葉を口にするー。
「ーひ、憑依ー…?
そ、そんなわけー…!
わ、わたしはわたしです!」
小夜が反論するー。
その返事を聞いて、里奈は首を横に振ったー。
「ダメねー。自我を失ってるー」
そう口にすると、
背後にいた残りの訓練生たちに向かって言うー。
「ーこれが”自我”を失った例ー。
みんなもこうならないように、気を付けてくださいねー」
”5日間”ー
長期の実技訓練の最中ー、
ガリガリの眼鏡の男・秀介は、小夜に憑依した後、
自分が自分であることを認識できなくなってしまい、
自我を失ったー。
”小夜”本人は憑依されたまま、意識を失っているもののー、
秀介も、”わたしは小夜”だと思い込みー、
小夜でも、秀介でもない存在になってしまったー。
「ーー自分が自分だと分からなくなるなんてー…」
別の女に憑依している宗吾がそう言うと、
屈強な男の身体に憑依しているツインテールの愛梨が、
「恐ろしいですねー…」と、そう呟いたー。
「ーー029と、憑依している訓練生は廃棄ー
よろしくー」
教官の里奈がスタッフにそう告げると、
小夜はそのままスタッフたちに引きずられていくー。
そんな光景を前に、宗吾は
”俺は絶対にああはならないー”と、そう心の中で決意したー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
憑依訓練所での訓練も終わり、
明日は卒業試験ー。
それに合格すれば、晴れて”憑依能力者”として
正式に憑依能力を使うことができるー。
「ーーーー」
宗吾は、この訓練所の施設での最後の一晩を
過ごしながら、
「この力で俺は、もっともっと上に行って見せるー」と
そう言葉を口にしたー。
がー、
そんな時だったー。
明日の卒業試験を前に、
訓練所内の、一時的に貸し出されている自分の部屋から
少し離れた場所で、最後の一晩のひと時を過ごしていた宗吾は
”ある声”を耳にしたー。
「ーーわたし、絶対にあきらめないからー
お姉ちゃんー」
そんな言葉が聞こえた宗吾は、
「?」と思いながら、物陰からその声の主を見つめるー。
すると、そこにはー
ツインテールの美少女ー
訓練生の愛梨がいたー。
訓練生は大半が男で、女性は二人だけだったー。
うち一人が愛梨で、
もう一人は、実技訓練中に
憑依した相手に逆に取り込まれる形で脱落しているー。
愛梨とは、これまでの実習でも
それなりに会話したし、訓練生の中でも
比較的”ふつう”な感じで、悪目立ちせず、
あまり悪人のような振る舞いもしていない宗吾のことを信頼してくれているのか、
よく話しかけてくることも多かったー。
「ーーーーー…!」
そんな愛梨が、宗吾に気付くと、
宗吾も気まずそうな表情を浮かべるー。
「ーー…い、今のー聞かれちゃいましたかー?」
と、呟く愛梨ー。
宗吾は少し申し訳なさそうにしながら頷くと、
愛梨は小さくため息をついたー。
「ーー”お姉さん”がどうかしたのかー?」
宗吾がそう聞くと、
愛梨は少し考えるような表情を浮かべてから
意を決したようにして言ったー。
「ーーー明星教官ー…
あの人が、わたしの姉ですー」
とー。
「ーー!?」
宗吾は表情を歪めるー
教官の里奈が、この訓練生・愛梨の姉なのだと言うー。
「ーそ、それはいったい、どういうー?」
宗吾が言うと、愛梨は言うー。
「わたしは、お姉ちゃんを取り戻すためにここに来ましたー。
憑依能力を会得して、わたしがお姉ちゃんに憑依してー…
お姉ちゃんを乗っ取ったやつを追い出すんですー」
とー。
「ーーーーーえ……」
宗吾は驚きながらも「そ、そんなこと可能なのかー?」と、
そう言葉を口にするー
”既に憑依されている人間に憑依した場合”どうなるのかは
教官たちから教わっていないー。
が、愛梨は言うー。
「身体に留まれる魂はひとつだけー。だから、二人以上憑依した場合は
どちらかが消えますー
でもー」
と、そう言葉を口にするー。
「十分に訓練を積んだわたしならー、
お姉ちゃんがー、ううんー”教官”が油断している間に
一気に制圧すれば、お姉ちゃんの身体を取り戻すことができると思うんですー」
愛梨のその言葉に、宗吾はなおも驚きながら
愛梨を見つめるー。
愛梨は、姉である里奈に憑依ー、
里奈の中にいる”男”を消滅させて、里奈の身体を奪ったあとに、
自分も里奈の身体から抜け出して、
姉・里奈を助け出そうとしていたー。
「ーーーーー」
その話を聞き終えた宗吾ー。
愛梨は「ーー近山さんー…お願いがありますー」と、
そう言葉を口にすると、
「卒業試験の最中に、他の訓練生や、スタッフたちの目を
できるだけ引いてもらえませんかー」と、
そう続けたー。
「ーーー…俺なんか信用していいのかー?」
宗吾が少し驚いて言うと、
「ー色々な人とお話してー、近山さんならーって思ったんです」と、
愛梨はそう微笑むー。
愛梨が色々な人に話しかけていたのは
”誰が信頼できて” ”誰が信頼できないか”を見定めるためだったのだー。
宗吾は少しだけ微笑むと、
「ーーわかった」と頷くー。
「ーーそれで、俺はどうすればいいー?」
宗吾がそう言うと、愛梨は実の姉である教官・里奈を救出する作戦を
話し始めるー。
「ーーーーー」
その話を聞き終えると、宗吾は静かに頷いたー。
「わかったー。じゃあ、俺は他の訓練生と教官の目をとにかく引きつければ
いいってことだなー。」
「ーーーはいー。お姉ちゃんとわたしが1:1になれれば、
あとはわたしが、この訓練所で学んだ憑依の力で、
お姉ちゃんに憑依して、お姉ちゃんを乗っ取っている男を追い出しますー」
愛梨は、そこまで説明すると、
「すみませんー。近山さんはきっと、純粋にここを卒業して、
憑依能力を使えるようになりたいだけだと思うのに、邪魔をして」と、
申し訳なさそうに言葉を口にしたー。
「ーーいや」
宗吾はそれだけ言うと、
「ー俺も”憑依”をマスターしようと思ったのはさー、
大切な人のためだから、気持ちは分かるよー」と、
そう言葉を口にしたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
翌日ー
「ーーーーーー」
卒業試験当日を迎えた今日ー、
宗吾は静かに目を閉じていたー。
「ーまさか、”この身体”の妹だったとは、驚きましたー」
教官の里奈がそう言葉を口にすると、
捕えられた訓練生・愛梨の方を見つめながら微笑んだー
「ーーその上で、”この身体”に憑依しようとしていたなんてー」
里奈の言葉に、愛梨は震えるー。
「ーな、なんで…なんで、バレたのー…!?」
愛梨はそう言葉を口にするー。
卒業試験当日の今日ー、愛梨は昨夜、宗吾と相談した通りに
”お姉ちゃんを救う計画”を実行に移そうとしていたー。
が、その直前で教官の里奈らが部屋に乗り込んできて
捕えられてしまったのだー。
「ーーー…なんでってー?」
教官の里奈はそう言うと、
クスクスと笑いながら、宗吾の方を見つめたー。
「ーあの子が、教えてくれたからー」
とー。
「ーーー!!!!!」
愛梨は心底驚いたような様子で、宗吾を見つめるー。
宗吾は目を閉じたまま、愛梨に背を向けていて、
愛梨を見ようとしないー。
「な、なんで、どうしてーー!?!?!?」
愛梨がそう叫ぶも、
宗吾は返事をしないー。
代わりに、教官の里奈が口を開くー
「お前の姉の身体は、もう俺のものだー
これから先も大事に使ってやるから、心配すんなー」
小声でそう呟く里奈ー。
愛梨は泣きながら「お姉ちゃんを返して!」と、
そう叫ぶー。
がー、里奈はそんな愛梨をグーで殴りつけると、
「ーーごちゃごちゃ煩い小娘だなー。
お前は今日から”035”だー。」と、そう言葉を口にすると、
スタッフに向かって声をかけたー。
「ーこの訓練生は憑依実習用の備品にしてちょうだいー。
備品番号は035よ」
里奈の言葉に、スタッフは「はっ」と、命令通りにすると、
そのまま愛梨を無理やり連行していくー。
「ーーーーー」
宗吾はそんな様子に聞き耳を立てながら
”すまない”と、内心でそう言葉を口にするー。
宗吾はー、自分の所属している組織のトップを目指していたー。
この憑依の力でー。
だから、こんなところで、知り合ったばかりの訓練生仲間のために
それを投げ捨てるような行為をするわけにはいかなかったー。
愛梨に協力すれば、仮に成功しても、
自分の”道”は閉ざされるー。
だから、協力せずに宗吾は教官の里奈にそれを伝えたのだー。
「ーーー協力、感謝しますー。
でも、卒業試験には私情は挟まず、平等に評価するので
そのつもりで、頑張ってくださいねー」
教官の里奈は、宗吾に向かってそう声を掛けると、
宗吾は「もちろんですー」と、それだけ言葉を口にするー。
卒業試験が間もなく始まるー。
「ーーーーー」
宗吾が、所属する”犯罪組織”のトップに立とうとしているのは、
”ボスのため”という気持ちもないわけではないー。
がー、一番は、昨夜、愛梨に言った通りー
”大切な人”のためー。
宗吾には病気の妹がいて、その治療費を
宗吾はなりふり構わず稼ごうとしているのだー。
妹の病気を治すには、莫大な資金が必要ー。
そのためには、手段を択ばないー。
それが、一番の理由ー。
「ーー…大切な人を助けるためなら、
どんなことだってするー。
その気持ちは、俺にもよく分かるよー」
連行された愛梨のことを思いながら、宗吾はそう呟くー。
「ーーでも、だからこそ、君にも分かってたはずだろー?
”何を犠牲にしてでも、大切な人を助けたい”って気持ちはー」
宗吾は愛梨本人には届かないであろう言葉を口にすると、
そのまま”卒業試験”に向かって歩き出したー。
”俺は君よりも、自分のことー…妹を助ける道を選んだってことさー”
宗吾は、そんな言葉を心の中で口にしたー。
おわり
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
憑依能力の訓練を行う訓練所のお話でした~!☆
このあと、宗吾は卒業試験に合格して、
憑依能力の使い手になっています~!☆
妹を救えたかどうかは………
それは、分からないのデス…笑
お読み下さりありがとうございました~!

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