”その皮だけはやめておけ”ー。
人を皮にする注射器を持ち、
欲望の限りを尽くす男たちの中でも
恐れられている謎の美少女の皮。
しかし、新参者である彼は、そのことを知らずにー…
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「その皮はーーー”ヤバい”んだー」
猫背の女ー…
人を皮にする注射器を持つ男の一人、幸保がそう言葉を口にするー。
「ヤバいー…?それはいったいどういうことですか?」
英介がそう言葉を口にすると、
幸保に乗っ取られている女は言ったー。
「ー話せば長くなるんだが、その皮には怨念が宿っているんだー
着れば最後ー、普通は着た側がその身体を乗っ取るのに、
着た側が逆に乗っ取られちまうー」
幸保に乗っ取られている女は、そこまで言うと、
困惑した表情を浮かべながら言ったー。
「ー前にも、大勢が死んだー。
それで、倉沢(くらさわ)さんたちがやっとの思いで
ここに封印したんだー
だから、その皮はやめておけー絶対に着ちゃいけないー」
幸保に乗っ取られている女は、青ざめた表情でそこまで言うと、
英介のほうを今一度見つめるー。
”倉沢さん”とは、ここの責任者的存在である男だ。
ただ、英介はその”倉沢さん”とは会ったことがなく、
もしかしたら、その人物こそ、噂されている警察上層部の男なのかもしれない、とも
英介は思っている。
「ーーーーでも」
英介はそう言いながら、幻想的な雰囲気すら感じる
美少女の皮のほうを見つめながら、
「でも、そんな危険なものなら処分するか、人間に戻せばよかったのではー?
それに、封印するならもっと厳重にー」と、
英介はそう言葉を口にするー。
”ふふふー
そいつは、嘘をついてるのー”
「ー!?」
英介の耳に、ふと聞き慣れない
可愛らしい声が響いて来たー。
「嘘ー?」
英介がそう言葉を口にすると、
「ーえ…?英介くん?」と、
幸保が乗っ取っている女が戸惑いの言葉を口にする。
”そいつの言葉に耳を傾けないでー。
わたしの身体、好き放題したいでしょ?
だったら、わたしの皮を着て”
そんな言葉が、英介の中に続けて聞こえてくるー
「ーへーー…へへー本当にいいのかー?」
英介がニヤニヤしながら、そう言葉を口にするー。
その様子を見て、幸保が乗っ取っている女はハッとするー。
「英介くん!その皮に”魅入られちゃ”だめだ!
ーーー莉愛(りあ)から離れろ!」
そう叫ぶ幸保ー。
女の身体を自分自身も乗っ取っていることを忘れるぐらいに
慌てている状態ー。
そこに、皮仲間の一人、哲夫がやって来ると、
「どうかしたのか?」と、そう言葉を口にしてから、
”美少女の皮”のほうを見て、目を見開いた。
「おいっ!その皮だけはだめだ!」
哲夫も慌てた様子で叫ぶー。
しかし、英介は振り返ると、
笑みを浮かべながら言った。
「ーみんなして、俺にこの可愛い子の皮を着せないようにするなんて
ずるいじゃないですかー
へへー…へへへー」
が、哲夫は、そんな英介の方に駆け寄ると
「そんなんじゃない!この皮はー、”莉愛”の皮は絶対に着ちゃいけない」と、
哲夫は必死にそう叫んだー。
その言葉に、英介はハッとした様子で
「て、哲夫さんー」と、そう言葉を口にすると、
「ーー俺、今ー」と、戸惑いの表情を浮かべるー。
謎の美少女の皮に吸い込まれそうなー、
引き込まれて、そのまま支配されそうな、
そんな不気味な感触だったー。
「今、女の声が、俺を呼んでー」
英介のその言葉に、哲夫は戸惑いながらも
「ー今すぐ、ここから離れるんだー」と、そう言葉を口にすると、
英介も静かに頷いて、哲夫、そして猫背の男・幸保が乗っ取っている女と共に
その場を離れたー。
”ーーー残念ーーー”
その場に残された美少女・”莉愛”の皮は、
ボソッとそんな言葉を呟くと、
”表情は変わらないはず”である皮の”顔”の部分が
少しだけ笑みを浮かべたように見えたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーあの皮、一体何なんですかー…」
廃墟地帯の奥から戻って来た英介がそう言うと、
哲夫と、猫背の女ー…幸保に乗っ取られている女は言ったー。
廃墟の奥に封印されている皮は”莉愛”という子の皮で、
若くして余命宣告を受けた子を皮にしたものなのだというー。
元々、学校でもいじめられがちで、
苦しい日々を送りながらも、何とかそれを耐え抜いていたところ、
病気になってしまって、余命宣告を受け、
この世の全てを憎みながら、死を待つだけとなっていた子ー。
そんな莉愛は、両親にも愛されておらず、
莉愛の美貌に目をつけた、”この廃墟地帯を仕切る男”である倉沢の
親友だった男、今井 幸太郎(いまい こうたろう)という男が、
莉愛の両親と”取引”をして、莉愛本人に対しては
”治療”と嘘をついて、人を皮にする注射器を打ち込んで、皮にしたー。
そこまで説明した哲夫は「ただ」と言葉を口にする。
「ただー…?」
英介が不安そうに表情を曇らせると、
「あの莉愛って子の”憎悪”は想像以上に強かったー」と、
そう言葉を口にする哲夫。
いじめを受け続け、それでも何とか乗り越えようとしていたところに
余命宣告ー、両親からも過酷な仕打ちを受け続けて
この世に絶望、この世を呪う毎日を過ごしていたところ、
治療と称してやってきた幸太郎に騙されて”皮”にされた莉愛ー。
皮にされる最後の瞬間、
莉愛は両親の裏切りも知り、さらにその憎悪を爆発させたー。
そしてーー
「ーー莉愛って子の皮を着た、今井さんは
莉愛に逆に乗っ取られて、俺たちの仲間を怨念で次々と
殺し始めたー…」
哲夫はその時の恐怖を思い出しながら言うー。
「ー皮にされた人間に逆に乗っ取られるなんて
そんなこと、本当にあるんですかー?」
英介が言うと、
猫背の幸保が、乗っ取っている女の身体のまま呟くー。
「ー普通はないんだがー、ただー、その人は飲み込まれたらしいー
ーー余程の精神力がなきゃ、誰が着ても同じことになるだろうさー」
とー。
「ーーーー」
英介は表情を曇らせるー。
「最後は止むを得ず、倉沢さんが、
あの子をなんとか皮にして、皮になったあの子を廃墟の奥へと封印したー。
莉愛を着ていた今井さんは、ボロボロの状態で変わり果てた姿になってたよ」
哲夫はそう言うと、
”処分”も試みたものの、莉愛の皮を処分しようとした人間はみんな、
莉愛の怨念によって発狂して、廃人になってしまったのだと、
そう説明したー。
「ーーーだから、あそこに放置しておくしかないんだー」
哲夫がそう言葉を口にすると、
英介は「そんなに危険な皮だったんですかー…」と、そう言葉を口にする。
「けど、なぜ、教えてくれなかったんですかー?」
哲夫のその言葉に、
猫背の幸保が口を開こうとしたものの、
哲夫が首を振ってから「すまない」と、だけそう答えたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
数日後ー。
「ーーーーー」
英介は”莉愛”の皮がある場所へと、こっそりと向かっていたー。
別の場所で乗っ取った女の身体で、
ゆっくりと、皮のある場所へと向かっていくー。
誰にも、会わないようにー。
そして、その場所にたどり着くと、英介は
”変装用”も兼ねて乗っ取った女の皮を脱ぎ捨てると、
廃墟地帯の奥にある”莉愛”の皮を見つめながら
笑みを浮かべたー。
「ーーあんな話されちゃ、見過ごすわけにはいかないよなー」
英介はー
”好奇心”が強すぎたー。
哲夫らから話を聞いた英介は、逆に”怖がる”どころか、
”そんな凄い皮があるなら、絶対に乗っ取ってみたい”と
そう思ってしまったのだー。
”「ー普通はないんだがー、ただー、その人は飲み込まれたらしいー
ーー余程の精神力がなきゃ、誰が着ても同じことになるだろうさー」”
猫背の幸保の言葉を思い出す英介ー。
「ーー普通は、皮を着た方がその身体を自由にできるんだー。
それにー、”余程の精神力”があれば、大丈夫なんだろ?」
英介はニヤリと笑いながら、美少女・莉愛の皮を見つめる。
「今井さんって人には悪いけどー、
あの皮を乗っ取れなかったのは、その今井さんって人の
精神力が弱かったからに違いない」
英介はそう思いながら、莉愛の皮の前に立つ。
”ふふふーわたしを着てくれるの?”
莉愛の皮がそう言葉を口にするー。
実際に言葉を口にしているわけではなく、
英介の”中”に直接語り掛けてきているー。
「ーーあぁ。着るさ」
英介はそう言うと、
「ー辛い人生があったことは聞いたよ。
でもー安心して。俺が君の身体を有意義に使って見せるから」
と、そう言葉を続けてから、
莉愛の皮を手にする。
そして、他の子の身体を乗っ取った時と同じように、
莉愛の皮を意気揚々と身に着けると、
そのまま英介は、”莉愛”の身体を乗っ取った。
「ーー…」
莉愛の左手を動かして見る。
莉愛の右手を動かしてみる。
ちゃんと、動く。
英介の意のままに。
「ーはははー、ほらなー。
これで、この身体は俺のものだ」
莉愛になった英介は、ニヤリと笑みを浮かべると、
そのまま髪を触ったり、手を触ったり、
胸を揉んだり、嬉しそうに欲望の限りを尽くしていくー。
「ーーえへへへへへー
この身体は俺のものだ」
莉愛になった英介は笑うー。
それと同時に、哲夫や幸保の話によれば、
この皮は既にここのリーダー的存在の男によって
”取引”されており、両親も公認の上で
運び込まれた皮のようだ。
だからー…
「ー俺、ずっと”莉愛”として生きてもいいんだよなーへへ」
莉愛になった英介はそう言葉を口にするー。
がーー
”ーありがとうーわたしを乗っ取ってくれて”
そんな言葉が、莉愛の皮の中から、聞こえて来た。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーー!!」
人を皮にする注射器を持つ男たちが集まる場所のリーダー格・倉沢が
表情を歪めるー。
「どうしました?倉沢さん」
一緒にいたポニーテールの女…哲夫が乗っ取っている女が
そう言葉を口にすると、
「ー”あの女”が目覚めたー。誰かがあの女の皮を着た…」と
険しい表情を浮かべながら立ち上がるー。
「そ、そんな、まさかー…?
彼にはちゃんと言っていたはずー?」
乗っ取っている女の身体のまま、哲夫もそう叫ぶと、
哲夫も、代表の倉沢も慌てて移動をし始める。
誰もが恐れる皮・莉愛の皮が封印されている場所にー。
莉愛は、最初に着た今井 幸太郎だけではなく
その後も数名の男が乗っ取ろうと試みたものの
いずれも失敗している。
あの子の邪念を前にしたら、誰であってもー…
そう思いながら、莉愛の皮が封印されていた場所に
たどり着いた倉沢たちー。
そこにはー…目を赤く光らせた莉愛の姿があったー。
「ーふふふふー
許さないー何もかも、許さないー」
莉愛がそう言葉を口にするー。
「まさか、英介くんー…」
哲夫は、結局、英介が莉愛を着てしまったのだと
呆然としながら、その様子を見つめると、
この場所のリーダー格である男・倉沢が、再び莉愛を皮に戻して
”封印”するための注射器を手にするー。
がーー
「ーーーう、うるせーーー!!!!!
この身体は俺のものだああああああああああああ!」
莉愛が突然、そう叫んだー。
赤く光っていた目の光が突然なくなり、
莉愛が苦しみだすー。
「ー!?」
哲夫と倉沢の二人がその様子を驚いた様子で見つめていると、
やがて、苦しんでいた莉愛がゆっくりと顔を上げて、
二人のほうを見つめたー。
身構える哲夫たち。
すると、莉愛はニヤッと笑いながら
「ー乗っ取れましたよー。やっぱ、精神力は大事ですね」と、
莉愛を乗っ取った英介がそう言葉を口にしたー。
「えっ……ほ、本当に英介くん?」
哲夫が呆然としながら言うと、
莉愛を完全に乗っ取った英介は「はいー。俺、やると決めたことは絶対にやるんでー。
執念深いんです」と、笑いながら答えたー。
「ーーー~~~」
唖然としながら、哲夫とリーダーの倉沢が顔を見合わせるー。
怨念を持つとして恐れられていた莉愛の皮。
けれど、その莉愛の怨念をも、
英介の欲望と好奇心は上回ってしまったー。
莉愛の身体を完全に乗っ取った英介は
「ーーそれにしても、この子可愛いですよね~」と、
笑いながら言うと、
哲夫と、この場所のリーダーの倉沢は
困惑した様子を浮かべながらも「そ、そうだなー」と、
そう答えるのだったー。
おわり
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
「やめておけ」な皮を無事に乗っ取ることができてしまう
結末でした~!★
きっと、逆の結末を予想していた人が
多いですよネ~?笑
お読み下さり、ありがとうございました~~!!
★作品一覧★

コメント
普通、よくある話では幽霊みたいな怨念相手にはどうにもならない話が多いので、これは予想外の逆転の展開ですね。
処分すら出来ない怨念相手にどうにかしちゃうのは凄いですよね。
こちらも感想ありがとうございます~~~!!!
今回は逆転できちゃいました~!笑