<他者変身>奇妙な迷惑電話①~着信~

”言うことを聞かなければ
 お前の姿で悪さをするぞ”

ある日ー、
突然、そんな迷惑電話がかかって来たー。

彼女は最初、それを”ただのイタズラ”だと判断していたものの…?

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

大学に通う
今岡 紗愛(いまおか さら)は、
困惑の表情を浮かべていたー。

「ーーえ?どういうことですかー?」
紗愛がそう言葉を口にすると、
電話相手の男は、言葉を続けたー

”言葉の通りだー。
 俺の言う通りにしなければ、
 俺はお前の姿で悪さをするー”

とー。

「ーーー…な、何を言ってるんですかー?」
心底困惑した様子でそう聞き返す紗愛ー。
相手の言っていることが、あまりにも不可解すぎて
理解できないー。

が、相手はそのまま言葉を続けたー

”まずは彼氏と別れて貰おうかー
 期日は明日いっぱいだー”

とー。

「ーーえぇっ…い、意味が分かりません!
 何であー… 彼氏と別れないといけないんですか!」
紗愛はそう言い返すー。

同じ大学に通う彼氏ー増村 彰浩(ますむら あきひろ)ー。
その彼氏と、”別れろ”と、そう相手が言い放ってきたのだー。

”ーとにかく別れろ
 で、なければ俺はお前の姿で悪さをしてやる”

「ーーーー」
紗愛は表情を歪めると、
「ー彼と別れるつもりはありませんし、悪さをするつもりなら
 警察に相談します」と、それだけハッキリと言い放って、
そのまま通話を終了したー

大きくため息を吐き出す紗愛ー。

知らない電話番号からの電話であったものの、
ちょうど大学の友人の一人が、近いうちに電話番号が変わるかもだとか、
そんなことを言っていたのを思い出して、
ついつい出てしまったー

「はぁー…変な悪戯電話ー」
紗愛はうんざりとした様子でそう言葉を口にすると、
ため息を吐き出しながら、
そのままスマホを机に置いて、いつものように過ごし始めるー。

悪戯電話の内容をいちいち深く考えても仕方がないー。
電話でも、メールでも、LINEでも、そういう変なものは
時々来るし、大抵は放っておけば何も起きないー。

紗愛は、もちろん今回も”そう”であるはずだと、
そう思いながら、その日の夜には、迷惑な悪戯電話のことも
忘れて、すっかりいつも通りの生活を送り始めていたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌日ー。

「ーーあ、今岡さんーおはようー」

大学にやってきた紗愛に声をかけてきたのは、
小さい頃からお互いのことをよく知っている幼馴染の男子・
杉原 裕太(すぎはら ゆうた)ー。

「ーーあ、杉原くんーおはよ~!」
紗愛は、いつも通りそんな返事を返すー。

裕太との間に”恋愛感情”はないものの、
小さい頃からお互いを知る”幼馴染”として
紗愛とは良好な関係が続いているー。

紗愛の彼氏・彰浩も裕太と紗愛の関係は理解していて、
大学に入ってからは彰浩と裕太も仲良くしてくれているー。

「ーー杉原くん、何だか今日、眠そうじゃない?」
紗愛が、裕太が眠そうにしているのに気づくと、
「え~?そうかなぁ~…?僕、大体いつも眠そうにしてるけどー」
と、そう言葉を口にしながら笑うー。

そんな会話を交わしながら大学内を歩いていると、
ふと、紗愛は昨日の”迷惑電話”のことを思い出して
その話題を口にし始めるー

「え~!?
 今岡さんの姿で悪さをー?
 ーーあはは…意味分からないねー」

迷惑電話の内容を聞いた裕太が心底おかしそうに笑うと、
「ーーまぁでも、もし何かあったらいけないし、
 増村くんにも相談しておいた方がいいんじゃないかな?」と、
紗愛の彼氏である彰浩にも相談した方がいい、と、裕太は
そう提案したー。

「ーうんー。そうだねー。もしまた何かあったら相談してみる!ありがと!」

ちょうどそのタイミングで、「あ、僕、こっちだから」と、
分かれ道で別の方向を指差す裕太ー。

「あ、うん!わかった!じゃあ、今日も頑張ってね」
紗愛はそれだけ返事をすると、そのまま自分が受ける予定の
授業が行われる場所に向かって歩き始めるー。

その日も、いつものように大学生活を送り、
そして、昼休みを迎えるー。

昼休みには彼氏の彰浩と合流して、
いつものように2人で昼食のひと時を楽しむー。

何気ない雑談をしながら、楽しそうに笑う紗愛ー。

一瞬ー、”迷惑電話”の件で相談しようかどうか
迷ったものの、
”ただのイタズラだと思うしー”と、
裕太にも言った通り、”もしまた何かあったら相談しよう”と、
思うに留めて、この日は彰浩に相談しなかったー。

いつものように大学での1日を終えて
いつものように帰宅するー。

”期日は、明日までだー”

昨日、悪戯電話で言われたことをふと、思い出すー。
期日は”今日まで”だとー。

今日までに彼氏の彰浩と別れなければ
”紗愛の姿で悪さをする”と、そう言われているー。

がー、そんなことできるはずもないし、
あれはただの悪戯電話のはずー。

紗愛はそんなことを思いながら
”変なこと考えるのやめよっと”と、そう言葉を口にすると、
そのままその日もいつものように眠りにつくのだったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーーーーー」
怒りの形相を浮かべる男ー

”やはり、従わなかったかー”
そう思いながら、男は紗愛の写真を見つめると
目を赤く光らせるー。

そしてー、信じられないことに
男の姿がみるみるうちに”変化”していくと、
あっという間にその姿は”紗愛”のものになったー

「ーー”無視”すると言うのであればいいだろうー
 望みどおりにこの姿で”悪さ”をしてやるー」

姿だけではなく、”声”も完全に紗愛のものとなった男は
そう言葉を口にすると、不気味な笑みを浮かべたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌日ー。

紗愛は今日もいつものように大学にやってきていたー。

授業の合間に、同じ大学に通う長谷島 真美(はせじま まみ)と、
会話を交わしながら、大学内を歩いていた紗愛ー。

がー、その時だったー。

少し目つきの鋭い二人組の男が、
紗愛の姿を見つけると、紗愛の方に向かって歩いて来たー

「ーー知り合い?」
友人の真美が、不安そうに小声でそう言葉を口にすると、
紗愛も不安そうな表情を浮かべながら、
静かに首を横に振ったー。

そしてー、
その男たちが紗愛の元までやってくるとー
「今岡 紗愛さんですねー?」と、
そう言葉を口にしながら、”警察手帳”を取り出して
それを紗愛に見せて来たー

「ーーえ…???あ、はいー…」
何の後ろめたいこともない紗愛は、
首を傾げながらも、そう返事をすると、
「今朝の件について、お伺いできますか?」と、
警察官のうちの一人が言葉を口にしたー。

「今朝の件?」
紗愛がそう聞き返すと、
警察官は「えぇ」と、そう即答するー。

不安な表情を浮かべる紗愛ー

「ーーあの…何のお話でしょうか?」
紗愛が単刀直入にそう問いかけると
警察官は「ー迷惑行為の件ですー」と、そう言いながら
スマホを操作しーー

”それ”を紗愛に見せて来たー

「ーーーえっ…」
呆然とする紗愛ー。

そこには、”紗愛”がコンビニ内で走り回って
大騒ぎをして、勝手に飲み物を飲んだり、
パンを開封して食べたり、
さらには店員にコーラを噴きかけるような姿が
映し出されていたー。

「ーーーこの件について、お話を伺えますかー?」
そんな言葉に、紗愛は「えっ…わ、わたしー…
そんなことしてませんー」と、青ざめながら反論するー。

しかし、コンビニで”迷惑行為”を行っている女の姿は
紛れもなく”紗愛”本人にしか見えないー。

「ーーさ…紗愛ー…どういうことなのー?」
友達の真美も心底心配そうに言葉を口にするー

紗愛は「な…何かの間違いだから!」と真美にそう言い放つも、
警察官たちは、紗愛に同行を求めていて、
ひとまず、ついていくしかなさそうだと紗愛は判断、
「分かりましたー」と、そう言葉を口にすると、
そのまま警察官たちと一緒に歩き出したー。

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「ーーさっき、紗愛が警察に連行されてー」
真美がそう言葉を口にすると、
昼休みに紗愛を探していた彼氏の彰浩が
戸惑いの表情を浮かべたー。

「け、警察ってー何かしたのかー?」
心底不安そうな表情を浮かべる彰浩。

そんな彰浩に対して、紗愛の友人である真美は、
紗愛が警察に連行される際に聞いた話を口にするー。

「い、いや、それはないー」
彰浩がそう断言するー。

「ーえ…?」
真美が表情を歪めると、
「今朝って言ってただろー?今日の朝、紗愛、
 早く目が覚めちゃったみたいで俺と通話してたからー…」と、
映像付きで通話していたことを彰浩が呟くー。

「えっ!?ホント?」
真美が少し目を輝かせながら言うと、
「ーー俺と紗愛、話始めると長いからさー、
 大学に向かう準備をし始めるぐらいまで
 ずっと話してたしー…だから、”今朝”なら
 時間帯にもよるけど、紗愛がコンビニに行く時間なんてないはずだから」と、
そう言葉を口にしたー。

彰浩は、そこまで言うとすぐに「ーちょっと、俺も警察行ってくるー」と、
紗愛の”無実”を晴らすためにそう言葉を口にしたー。

そしてーーー
紗愛は”釈放”されたー。
コンビニで迷惑行為を働いたのはどう見ても”紗愛”にしか見えないー。

しかし、その時間、紗愛が”別の場所”にいたことが
確かに証明されたのだー。

コンビニでの迷惑行為は朝の6時過ぎー。

しかし、紗愛と彰浩は5時50分ごろから映像付きで通話していて、
それを1時間以上続けていたー。

コンビニに行くことは”不可能”なのだー。

加えて、紗愛はその途中に”ゴミ出し”もしていて、
同じアパートに住んでいる近所の住人と会話をしているー。
そのことも裏付けが取れたために、
”6時過ぎに紗愛が迷惑行為のあったコンビニに行くことは不可能”と、
そう断定されたのだー。

しかも、コンビニで紗愛の指紋も検出されなかったー。

そのため、紗愛は釈放されたのだー

「ーーよかったー」
話を聞いた幼馴染の裕太も、心配そうに紗愛の元に駆け付けると、
紗愛は「心配かけてごめんねー」と、そう言葉を口にしてから、
彼氏の彰浩に対しても、「実はーー」と
”お前の姿で、悪さをする”と、数日前に言われたことを
明かすのだったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

その翌日ー

♪~~~

紗愛のスマホに電話がかかって来るー。

”知らない番号”だー。

紗愛は、一瞬無視しようかと思ったものの、
”また”あの男なのではないかと思い、電話に出る決意をするー。

”ーこれも用意しておいたしー”
紗愛は、スマホの通話を録音するアプリを”念のため”
用意していたー。

それを準備した上で、電話に出るー。

すると、電話の相手は”予想通り”ー
先日、紗愛の姿で悪さをすると言ってきた男だったー。

”ー俺の言っていることが、単なる脅しではないと理解したか?”
その言葉に、紗愛は「一体、何が目的でこんなこと!?」と、
そう叫ぶー。

”ーーそんなことはどうでもいいー。
 もう一度だけ、チャンスをやろうー。
 明日までに彼氏と別れるんだー”

男は、この前と同じ要求を紗愛に突き付けるー。

紗愛は「お断りします!」と、そう断言すると、
男は言ったー。

”ーいいのか?また、お前の姿に変身して悪さをするぞー?
 今度はもっとー、もっと、過激なことをー”

男の言葉に、紗愛は「いい加減にして下さい!」と、
強い口調で言い放つー。

がーーー

”ーークククーそんなことを言っていていいのかな?”

突然ー
通話相手の男の”声”が、紗愛の声に変わったー

「ーーー!?!?!?」
紗愛は戸惑うー

”クククーどうした?言っただろうー?
 お前の姿で悪さをするってー”

電話の向こうから聞こえる”自分”の声ー

紗愛は心底困惑した表情を浮かべながら
「ど、どうなってるのー?」と、そう言葉を口にすると、
”聞いた通りだー。俺はお前の姿・声に完璧に変身することができる”と、
そう続けるー。

”この状態で今度はもっと過激なことをするぞー
 そうしてほしくなければー… 
 明日までに彼氏と別れるんだー。いいなー?”

それだけ”紗愛の声”で言葉を口にした男はそのまま電話を切るー。

「ーーー…ど…どうなってるのー?」
紗愛は呆然としながら通話が切れたスマホを見つめると
不安そうな表情を浮かべながら、
机の上に飾ってある彼氏の彰浩と一緒に撮影した写真を見つめるのだったー

②へ続く

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

自分の姿で勝手に悪さをされちゃう…

とっても厄介で、大変な状況ですネ~!

続きはまた明日デス~!!

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