望んだ人を”女体化”させることが
できる夢の装置が完成したー…
そして、人類は新たなステージへと足を踏み出すはずだったー。
しかし、予想外の出来事が起き、
夢は、悪夢へと変わって行くー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーし、主任ー、ど、どうしてこんなことにー!」
研究中に最初に女体化を試した研究員・創が
困惑した表情でそう言葉を口にするー。
いつもはおしゃれをして楽しんでいるものの、
今日ばっかりはそんな余裕もないのか、
女体化する前のように髪はボサボサでノーメイクの状態で、
研究室にやってきていたー。
「ーー分からないー。未知の現象が起きたとしか思えないー」
同じく女体化している村林主任は険しい表情を
浮かべながらそう言葉を口にするー。
事前の安全性の確認は完璧だったはずー。
人類が50年ほど前に火星から持ち帰った未知の光源ー。
それと同時に火星の地下にはかつて文明が存在していた痕跡も
発見されたー。
恐らくはその文明が使っていたであろう
謎の光のエネルギーを利用して開発した女体化装置ー。
だがー、その光が”暴走”したー。
「ーーー十分にデータも集めたはずなのにー、何故ー…」
村林主任は頭を抱えるー。
恐らくはー、
”まだ”人類の知らない”何か”があの光にはあったのだろうー。
お披露目の場で、容器が破損した直後、
光は増殖し、会場の外にまで溢れ出したー。
今や、”女体化する光”は、空でオーロラのように輝き、
さらに増殖を続けて、次々と人類を女体化させているー。
「ーーとにかく、打開策を考えねばー。
男体化装置の開発を急ピッチで進めようー。
それとー、火星の調査記録も見たいー」
そう言葉を口にすると、村林主任は、
早速行動を起こしたー
ふと、胸に手が触れて、
村木林主任は少しだけ自分の身体を見つめると、
”こうなると、不慣れな身体ってのは不便だなー”と、
小声でそう言葉を口にするー。
”緊急事態”に対するときは、
やはり”慣れた身体”の方がやりやすいー。
しかし、女体化してしまった以上、
もう、今は引き返すことはできないー。
とにかく、”夢の力”の暴走を食い止めなくてはいけないー。
村林主任は、そう思いながら
必死に”火星から回収された光源”のサンプルの分析ー、
男体化のための研究ー、
そして、女体化装置にも使った謎の光源の発見場所である火星で
発見された”かつて存在した文明の痕跡”ー、
それらの調査を始めたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーーーーーー…女だらけですねー」
研究員の創がそう言葉を口にするー。
”事故”から1ヵ月ー。
村林主任らは、打開策を必死に探していたものの
未だに見つかってはいなかったー。
上空では、女体化装置に使われていた”光”が、
増殖しー、オーロラのようにずっと、不気味に輝き続けているー。
その光に晒された人間は、たちまち女体化してしまうため、
街中は女だらけになっていたのだー。
「ーーー…自分たちの研究がもたらした結果だと思うと、
精神的に来るものがあるなー…」
女体化した村林主任が街中を見つめながら言うー。
どこを見ても、女性ばかりー。
それは、当たり前だー。
空で輝き続ける”光”を、浴びれば女体化してしまうのだから、
外を歩いている人間は全員、女になるのだー。
「ーーあららー、あの人ー、絶対元男ですよねー」
タンクトップ姿のまま歩いている女の方を見ながら
そう呟く創ー。
それを聞いて、その女の方に視線を向けると、
堂々と公園の男子トイレの方に入っていくのが見えたー。
「ーーまぁ、みんながみんな、女体化したいわけじゃないからなー。
望まない人からすれば、
今の状況は、ただ迷惑なだけだー」
村林主任はそう言葉を口にしながら、
表情を曇らせるー。
「ーへへー…まぁ、それはそうですねー
わたしは~、毎日毎日オナって最高の気分ですけどー」
女体化した創がニヤニヤしながら言うと、
「ーよく飽きないなー」と、苦笑いするー。
「ーあはは、まぁ、わたしは元々女体化したかった人間ですし?
だからこそ、女体化したあと、言葉遣いや振る舞いも
一生懸命、”女”になれるように頑張ったのでー」
創はそれだけ言うと、「名前も変えたいなぁ~」と、笑うー。
「ーーー”実用化”されれば、
女体化した人間の”改名のルール”も、行政と相談して
法制化される予定だったんだけどなー」
村林主任がそう言葉を口にすると、
創は「え~~?ほんとですか~??」と、言いながら
「あ~~…成功してればよかったのに~」と、拗ねた様子で呟くー。
「ーーわたし、名前変えられるなら、美香(みか)に改名したいんですよ~」
創のその言葉に、村林主任は「美香?何か愛着でもあるのか?」と聞き返すと、
創はニコニコしながら言ったー。
「学生の時の初恋の相手の名前です!」
とー。
「ーーははー、自分の名前をそれにしようだなんて、物好きだなー」
村林主任は呆れ顔で苦笑いすると、
ため息を吐き出してから空を見上げたー。
”とにかくー、この状況を何とかしなければー…”
望まぬ人間まで次々と女体化してしまっている状態ー。
既に、屋内にずっと引き籠っている人以外は、
ほぼ女体化してしまっているー。
世間では”女体化プロジェクト”の主任であった
村林主任を”バッシング”する動きも出ているー。
とにかく、今の状況を打開しなくてはならないー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
村林主任たちは、必死に打開策を練ったー。
しかし、火星から持ち帰られた”光源”を利用しても
なかなか男体化の技術を生み出すことはできずに
難航していたー。
空の光も消えることはなく、ずっと輝き続けていて、
どうやら人間ではなく、動物も女体化ー
つまりは”メス化”していることが分かったー。
「ーーー火星の探査時に発見された地下の石板に残されていたという
謎の記述の写真を入手したので、
現在、それを解読していますー」
研究者の一人が言うー。
村林主任は疲れ果てた様子で
”頼む”と、そう言葉を口にすると、
短くなった髪を触りながら、大きくため息をついたー。
女体化したあとは、しばらくの間は
長めの髪のままだったものの、
研究の際に気が散るー、という理由で
今はバッサリと髪を切っていて、
男だった頃と同じような長さになっているー。
「ーーー…ほとんどの人間が女体化してしまった今、
男体化の技術を完成させないと、
生物は滅んでしまうー」
村林主任が困惑した様子でそう言葉を口にするー。
「ーまぁでも、
上空の光をどうにかできれば、
今現在、妊娠している人間から男が生まれれば
絶滅だけは避けられるかもしれませんよー?」
他の研究員がそう呟くー。
が、村林主任は首を横に振るー。
「絶滅は免れても、
それだけの数しか男がいなければ、人類の数は激減するだろうー
それに生まれて来る子供も、既に女体化してるかもしれないー」
村林主任の言葉に、研究員の一人が
「確かに、それもそうですねー」と、困惑の表情を浮かべるー。
「所長ー、男体化の技術開発が難しければ、
”女だけでも妊娠できるような”そんな技術を作る方向性でも
いいんじゃないですかー?」
最初に女体化した創が言うー。
「ーーふむー…それも難しそうだが、
いざという時のために、できるかどうか、検討する価値はありそうだなー」
村林主任たちは、対策を話し合いながら
研究を続けていくー。
既に、研究室の人間も一人を除いて全員女体化しているー。
その一人だけは、女体化装置暴走後、ずっと研究所に閉じこもっているため、
未だに男のままだー。
がー、そんな彼も、最近は困り果てた表情を浮かべているー。
「ーいやぁ、いきなり女子高に放り込まれた気分っていうかー
何だか気まずいですー」
などと、そんなことを口にするようになったー。
そういった人間は多く、
周りが女だらけになったことで、
女体化装置が暴走、その光が増殖して
事実上、外に出ると”女体化”してしまうような状態になった後、
ずっと屋内に留まり、男として過ごしてきた者たちも、
彼のように”気まずい”思いをして
結局、自ら女体化するような人間が増えているー。
「ーーー…俺も女体化しようかなぁ」
最近は、この研究室で唯一の”男”である彼も、
そんなことを口走っていて、
女体化するのは時間の問題と言えたー。
「ーーーー」
村林主任は、ふと外を見つめるー
相変らず、空では女体化装置から漏れ出して、
増殖ー、空で輝き続けている光がオーロラのように
輝き続けているー。
「ーあれをどうにかしなければー…」
村林主任は、困惑の表情を浮かべながらそう呟くー。
仮に今後、男体化する技術の開発に成功したとしても、
”あの光”を何とかできない限り、
結局またすぐに女体化してしまうー。
そうなればやはり、世の中は女性だらけになってしまうし、
そうなれば、社会の混乱は収まらないー。
「ーー…とにかく、我々にできることをしよう」
村林主任はそう言葉を口にすると、
研究所の仲間たちと共に、
暴走してしまった夢の力を、
なんとか制御する方法を再び探し始めたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーー何だってー…?」
それからしばらくが経過したー。
相変らず、女体化装置に使っていた光の暴走を
止めることはできず、
空でオーロラのように輝き続けている状況のまま、
男体化装置の開発も難航ー、
研究員の創らが手掛けている”女だけでも子供を作れる技術”の
研究も難航し、
全てが上手くいかない状況が続いていたー。
そんな中ー…
「所長ー」と、深刻な表情を浮かべながら
研究員の一人が近付いて来たー。
髪もボサボサで、もはや女体化したことが
何の意味もなしていないような状態にまで
やつれてしまった村林主任は「どうした?」と、
そう言葉を口にすると、
研究員の方に向かって歩いていくー。
「ーー火星の探査時に発見された
文明の痕跡ーー…
その中の石板に刻まれていた文字らしきものの
一部が解読できたのですがー」
研究員がそう言葉を口にするー。
既に、この世界では50年ほど前から火星の調査が
可能になっていて、これまでに何度か調査が
行われているー。
女体化装置・アテナに使われた謎の光源も
火星から回収されたもので、
その暴走の”改善策”が見つかればと村林主任の指示で
研究員の何名かが、火星の情報を集めていたー。
そして、そのうちの一人が、火星に残されていた
文明の痕跡らしき石板に刻まれている文字を解読したというのだー。
「ーー…何て書かれていたんだー?」
村林主任がそう言葉を口にすると、
その研究員は気まずそうに言ったー。
「ーーー我らは不老不死の研究に着手したものの、
その研究は失敗に終わり、事故が起きたー。
我々の同胞は、次々と女となっていき、
やがて、男はいなくなったー。
我々は、新たな命を作ることができなくなり、
間もなく、滅ぶー。
不老不死など追い求めるべきではなかったのだー
これは、神の怒りなのかもしれないー。
死という避けられない運命を避けようとした
我々への、怒りー」
研究員はそう言うと、
「ー厳密には、火星の文明は”男” ”女”という呼び方では
なかったみたいですが、解読するとこんな感じに見えますー」
と、そう言葉を口にしたー。
「ーーそ、それはー…」
村林主任は困惑するー。
それが本当なら、火星から持ち帰った光源は、
かつて火星に存在していた文明が不老不死を夢見て
開発中だった”なにか”で、
それが暴走、火星に文明を築いていた生命体も
全員が女体化して、そして滅亡ー。
今のような”生命なき星”に火星が変わったことを
示唆していたー。
そしてーー…
「ーーー……」
村林主任は困惑の表情を浮かべたまま
しばらく考え込んでいたものの、
やがて、絶望の表情を浮かべたー。
「ーー地球も、火星のように滅びるー、
そういうことかー?」
とー、言葉を口にしながらー。
「人間以外の生命体も、女体化している現状ー
ほとんどの生命体は今世代で絶滅してー……
そうなるかとー」
研究員がそう呟くー。
それを聞いた村林主任も、
研究員の創も、呆然とした表情を浮かべることしかできなかったー…
おわり
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コメント
夢の力が暴走して、滅亡を呼び込む結果に…!
やっぱり、未知の物質の扱いは、慎重にしないとダメですネ~!
お読み下さりありがとうございました~~!☆
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