<憑依>憑依歴1000年の先輩③~歩む道~(完)

②にもどる!

憑依歴1000年の先輩と出会い、
憑依の力を手に入れた男ー。

しかし、先輩が身体を引っ越しした後、
一人でいるタイミングで女性刑事に
逮捕されてしまいー…?

・・・・・・・・・・・・・・・・・

「あなたを逮捕しますー」
女性刑事・真桜のそんな言葉と共に
紗友里に手錠が掛けられるー。

紗友里に憑依している龍太は、
真っ青になりながらも
”こ、こうなったらこの身体を捨ててー…”と、
女性刑事・真桜に憑依してどうにかしようと考え始めるー。

しかしー…
既に1ヵ月以上”憑依”したままの紗友里の身体から
抜け出したら、紗友里はどんな反応をするのかー?という不安ー

そして、女性刑事の真桜に憑依したあと、
どうすれば良いのかも、悩んでしまうー。

”ーー先輩だったら、何の迷いもなく
 この刑事さんに憑依して
 刑事さんの身体で俺が今まで使ってた身体を始末したあと、
 刑事さんのことも始末するんだろうなー”

と、そんなことを内心で考えるー。

”先輩”は、積極的に人を傷つけたり、
破壊行為に及ぶことはしないー。
憑依能力があれば、極端な話、次々と人の命を奪ってしまうことも
やろうと思えばできてしまうー。

ただ、先輩はそういうことはしないー。

けれど、”容赦”もしないー。
自分の憑依ライフで邪魔になる者は躊躇なく命を奪うし、
美冬のように”使い終えた身体”は基本的には処分しているようだー。

そんな先輩ならー、
恐らく、今、この状況も、
女性刑事の真桜に憑依して全てを容赦なく処理するはずだー。

”ーーーでも、俺には先輩みたいにー…”
紗友里に憑依している龍太は、逮捕されてしまったことに動揺したのか
涙目になってそんなことを心の中で呟くー

”俺には、先輩みたいにはなれないー”
とー。

がーー

「プッ…ククッ…」
突然、女性刑事の真桜が笑い始めたー。

「ーえ…?」
半分涙目のような状態で紗友里が
自分を逮捕した真桜のほうを見つめると、
真桜は自分自身で紗友里に掛けた手錠を外して、
笑みを浮かべるー。

「何て顔してるんだよー。笑わせるなよなー?」
真桜がそう言葉を口にしながら、外した手錠をぶらぶらさせつつ笑うー。

「ーえ……え…??
 も、もしかして、せ、先輩ー…?」
紗友里がそう言葉を口にすると、
女性刑事の真桜は「へへーそうさー。これが俺の新しい身体だ」と、
スーツの上から自分の胸を揉みながら嬉しそうに笑うー

「ーーな…な…なんだー…せ、先輩だったんですかー…
 よ、よかった…」

放心状態で紗友里に憑依している龍太が
その場に座り込むと、
真桜は笑いながら「新しい身体、どれにするか迷ってたら
2日経っちまってー、お前に会いに来るのが遅くなった」と、
それだけ言葉を口にするー。

「一瞬、先輩に見捨てられたのかと思いましたよー」
紗友里が、心底安心した様子でそう言うと、
真桜は「見捨てるわけないだろー。憑依仲間が欲しくて
わざわざお前に力を分け与えたんだからー」と、
それだけ言葉を口にすると、
「しかしお前ー…危なくなったら容赦なく相手に憑依しろよー」
と、苦笑いしながらさっきの対応に苦言を呈するのだったー…。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

それから、1年以上が経過したー。

”憑依の新人”だった龍太も
今ではすっかり憑依に慣れー…ーーー

いやーー…”紗友里”としての生活に慣れていたー。

龍太は、あれから1年が経過した今でも
”紗友里”の身体での生活を続けているー。

「ーーおいおい、このまま女子大生になるつもりか?」
苦笑いしながら、”先輩”がやって来るー。

先輩も1年前と同じ、女性刑事の真桜の身体を使っていて、
二人ともこの1年間は”身体の引っ越し”はしていなかったー。

「ーー…せ、先輩こそー…」
”女子大生になるつもりか?”と言われた紗友里は、
”憑依歴1000年の男”に憑依された真桜のほうを見つめると、
そのお腹を指差しながら言ったー

「こ、このまま出産してお母さんになるつもりですかー?」
とー。

「ーーん?へへー」
真桜はニヤニヤしながら、妊娠している自分の身体を見つめるー。

「あぁー、ヤリまくってたらこうなっちまったんだし
 仕方ないだろ?」

その言葉に、紗友里は
”先輩”の自由っぷりに苦笑いすると、
真桜は「出産もー…今までに3,4回はしたことあるぞ」と、
そう言葉を口にしたー。

「ー1回は大名の息子を産んでなー。
 跡取りが出来た!とか、滅茶苦茶喜んでたぜ」
真桜はそれだけ言葉を口にすると、
紗友里は「へえええ……なんかもう、先輩は別次元の存在って感じですねー」と、
感心した様子で苦笑いするー。

「ーーまぁ、でも俺は妊娠とか出産は流石にちょっとー」
紗友里の身体で龍太はそう言葉を口にするー。

「へへー、
 ま、長く生きてると何でも経験したくなるからなー。」
真桜はそれだけ言葉を口にすると、
「まぁでも、今回は別に出産したくて妊娠したわけじゃねぇから
 俺はもうすぐ引っ越しするぜ?」と、
ニヤニヤしながら言うー。

”引っ越し”ー
それは身体を乗り換えることー。

”憑依歴1000年の先輩”が身体を引っ越しするということは
つまりー、元々憑依されている真桜は”処分”されるということだー

「ーーい、いや、でも流石にその人可哀想じゃないですかー?」
紗友里が苦笑いしながらそう聞くと、
「ー割り切り、大事だぜ?」と、
真桜は妊娠中にも関わらず、煙草を吸いながら言葉を口にしたー。

「ーー憑依した身体は、洋服みたいなもんだと思えばいいー。
 色々割り切らないと、憑依を十分に楽しめやしないぜ?」

真桜はそう言葉を口にすると、
笑いながら紗友里のほうを見つめるー。

紗友里は「割り切りー…ですかー」と、そう言葉を口にすると、
そのまま「まぁ、でも、とりあえず俺はこの身体で大学も行こうと思いますー」と、
それだけ言葉を口にしたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

紗友里に憑依している龍太は、紗友里の身体で大学に進みー、
憑依歴1000年の先輩は妊娠した真桜の身体を”廃棄”して
別の身体に引っ越ししたー。

そしてーーー…

「ーーーー」
紗友里に憑依している龍太は、紗友里として女子大生ライフを送るうちに、
同じ大学に通う男・直樹(なおき)から、熱烈なアプローチを受けるようになったー。

最初は”男との恋愛なんてあり得ねぇ”と、そう言葉を口にしていたものの、
あまりに積極的なアプローチと、既に紗友里として何年も暮らしていたことから、
考え方や感じ方も大分、女子らしい部分も出て来ていて、
やがて、付き合うことになったー。

大学を卒業後、二人は結婚し、
紗友里は直樹の妻として、
元々の自分が”龍太”であることも忘れるぐらいに
幸せな生活を送っていたー。

”憑依歴1000年の先輩”とは、
定期的に会っていたものの、
妊娠したのを最後に、
「わたしは、これから母親になるのでーしばらく子育てに専念したいんですー」と、
”先輩”とは当分直接会えなくなるかもしれない、と、
そう告げたー。

「ーへへ、しかし、すっかり女になっちまってー。
 確か、憑依し始めたばかりの頃、俺が女刑事の身体で妊娠してた時
 ”俺はちょっと”とか言ってたのにー」

憑依歴1000年の先輩が現在憑依している女子大生・恵美(めぐみ)の身体で
そう言葉を口にすると、
「ーえ、えへへー…そ、そんなこともありましたねー」と、
妊娠した紗友里は照れ臭そうに笑うー。

「ーま、お前がそういう道を選んだなら、いいと思うぜー
 幸せになー。
 また、お前から連絡してくれりゃ、いつでも会いに来るから、
 気が向いたら、ここに連絡しな」

恵美はそれだけ言うと、
「ーま、とりあえずおめでとうって言っておくか。」と、
妊娠を祝う言葉を口にすると、
そのまま立ち去って行ったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

それから、17年ーーー

紗友里は直樹との間にできた娘・萌愛(もえ)と三人で
幸せな生活を送っていたー。

紗友里に憑依している龍太は、自分が憑依しているということも
忘れて、幸せを謳歌するー。

しかしー、萌愛がある日突然家出をして
行方不明になった。

必死にその行方を探す紗友里と直樹。

そしてー…
紗友里は娘の萌愛を見つけたー。

完全に別人のような風貌で、
夜の街で男と歩いていた娘の萌愛ー。

そんな萌愛に対して声を掛けた紗友里に対して
萌愛は驚いたような表情を浮かべたー

「ーお前ーー…
 ーーっ…じゃあ、この女ー…?」
萌愛が表情を歪めるー。

そんな娘の発言を前に、紗友里は表情を歪めるー。

普通の人なら、娘の萌愛の言動の意味は
すぐには理解できないー。

がー、紗友里に憑依している龍太は”理解”したー。

”憑依歴1000年”の先輩に、娘の萌愛が憑依されているのだとー。
そして、萌愛に憑依した先輩が”じゃあ、この女ー?”と驚いているところを
見ると、”紗友里の娘”だとは知らずに憑依したのだということをー。

「ーー先輩…ですかー?」
紗友里は震えながらそう言葉を口にするー。

娘の萌愛に憑依している”憑依歴1000年の先輩”は
一緒に歩いていた男を先に行かせると、
「ーお前の娘だったのかー」と、そう言葉を口にしながら
複雑そうな表情を浮かべたー。

「ーーーーー……」
紗友里は怒りを感じつつも、
自分だって、かつて紗友里に憑依した際に
その家族のことなど調べてなかったことを思い出すー。

”偶然”ー、先輩が紗友里の娘・萌愛に憑依してしまった、ということも
自分が憑依経験者だからこそ理解できたー。

「ーーわたしだってー…いえ、俺だって人の人生を奪ってる人間ですー
 ですからー先輩のことを責めはしませんー
 ただー」

紗友里はそこまで言うと、
「ただ、返してくださいー。萌愛をー」と、そう言葉を口にするー。

「ーーーーーー」
萌愛に憑依している先輩は、表情を曇らせると、
「もう半月近く憑依して遊びまくってるー…
 ーーこの子にどう説明するつもりだー?」と、そう言葉を口にするー。

紗友里に憑依している龍太は”自分も同類”だと理解している故に
怒りを堪えながら、
「ー説明は、何とかしますー」と、そう言葉を口にするー。

「ーー…俺はなー…
 ”引っ越し”の時には必ず憑依してた身体は処分するかー、
 あるいは普通に死んだ時に引っ越しするようにしてきたー。

 面倒事は御免なんでなー」

萌愛の身体でそう言葉を口にするとー、
「ーーだから、悪いがこの女も”処分”だー」と、そう言葉を口にするー。

「ーー…そ、それだけはー…それだけはやめてください!
 お願いします」
紗友里は泣きながら、萌愛の命を助けてほしいと頼み込むー。

「ーーーーー」
が、”憑依歴1000年の先輩”は、これまでその身体が
事故や病気、戦などで自然と死ぬか、
生きているうちに抜け出す場合は、処分するか…
必ずそれを徹底してきたー

1000年も憑依を続けて来た中、必ずそうしてきたー。

だからこそ、自分が憑依した身体を処分せずに
そのままにすることは彼からすれば気味が悪くー、
耐えがたいことだったー。

しかしー

「ーーー……ーー仕方ねぇなー」
泣きじゃくっている紗友里を見て、萌愛に憑依している先輩は
そう言葉を口にすると、
「ー説明は、責任を取れよー?」と、そう言葉を口にするー

そしてー、それと同時に萌愛は意識を失ってその場に倒れ込むのだったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

それ以降ー…
紗友里は”先輩”と会うことはなかったー。

萌愛に何とか、作り話で状況を説明しー、
夫の直樹にも”萌愛を混乱させないように”と、
話を合わせて貰ったー。

そしてーー…
それから50年以上が経過しー、
高齢の紗友里は病院で息を引き取ろうとしていたー。

「ーーーー」

けれどー
”死”を目前にした不安ー…
と、言うよりかは、”身体が死んでも、自分はこの身体からはじき出されるだけ”
という別の悲しさがあったー。

消える恐怖はないー。
ただ、紗友里としては、もう永遠に生きられないー。

「ーーーー」
それでも、紗友里に憑依した龍太は満足そうにー、
そして、紗友里本人に対して心の中で何度も何度も謝罪しながら、
娘の萌愛に看取られながら息を引き取ったー。

”ーーーーー”
龍太は、死んだ紗友里の身体から追い出されるー。

”ーーーー…ずっと、続くのかー…これがー”
そう言葉を口にすると、龍太は寂しそうに
霊体のままどこかへと去って行ったー。

「ーーーー」

そしてーーー

「ーーもう、いいよなー?」
娘の萌愛はそう言葉を口にすると、
静かにため息を吐き出すー。

萌愛は”解放”などされていなかったー。
どうしても”抜け出した身体”を処分しないと不安になってしまう
憑依歴1000年の先輩は、
萌愛から”抜け出したフリ”をして、ずっと萌愛の身体を乗っ取ったまま
萌愛として生きて来たー。

”憑依の後輩”のため、気付かれないように
ずっと萌愛を演じて来たー。

「ーーま、アイツが娘の様子を別の身体で見に来るかもしれないからー、
 あと数年、コイツの身体でおばあさんライフでも送ってからー
 適当に死ぬか」

萌愛はそう言葉を口にすると、
そのまま病院を後にするー。

憑依を続けている限り、
きっとまたいつかどこかで、
先輩と後輩の運命は混じり合うー。

「ーお前が次にどんな身体を選ぶのかー、
 少し楽しみだなー」
萌愛の身体でそう言葉を口にすると、
憑依歴1000年ー…もうすぐ、1100年になる男は
そのまま姿を消したー

おわり

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

1000年以上、憑依を続けている先輩との
物語でした~!★

そのうち、憑依歴2000年の先輩に
なっちゃいそうですネ~!!

お読み下さり、ありがとうございました~!★

「憑依歴1000年の先輩」目次

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