<憑依>能力者たちを根絶せよ②~襲撃~

①にもどる!

数万人に一人、憑依能力者が生まれるその世界ー。

一部の人間の悪用により、いつしか憑依能力者は
弾圧されるようになり、
悪用を考えていない善良な憑依能力者まで
隠れて生活することを強いられていたー。

そんな中、潜伏生活を送るあるカップルの身にも危機が迫る…

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

”逃げろ!!!対憑依治安維持局が来たぞ!!!”
そんな声が、隠れ家の中に響き渡ったー。

涼介とその彼女の真梨香は、
緊迫した状況の中、顔を見合わせると、
すぐに涼介は「ーは、早くここから脱出しないと」と、
そう言葉を口にしたー

”対憑依治安維持局”は、
憑依能力者から人々を守るために設立された組織で、
憑依能力者の”抹殺”も許可されているー。

銃声がさらに響き渡る中ー、
涼介は慎重に、自分たちが暮らしていた地下空間の中を
移動していくー。

「ーー君が”情報提供者”の、坂下 瑞穂(さかした みずほ)だなー」

ふと、そんな声が聞こえたー。

地下空間内の曲がり角の先から聞こえた声に
涼介はハッとして、背後にいる真梨香に合図を送ると、
その場で立ち止まるー。

「はいーこれで、わたしは”処分免除対象”ですよねー?」
同じ地下空間で生活をしていた憑依能力者の女・瑞穂が
目を輝かせながらそう言葉を口にするー。

彼女は数日前、リーダー格の裕也が、”憑依能力者の取り締まりが強化された”
という話をしていた際に、
”憑依能力者は全員処分されるー…”と、険しい表情で呟いていた女だー。

彼女は、取り締まり強化の話を聞き、
”憑依能力所有者”向けの”処分免除制度”を利用するため、
自ら”対憑依治安維持局”にこの隠れ家のことを通報したのだー。

”処分免除制度”とは、
憑依能力者の潜伏地などを情報提供した人間は
その名の通り”処分”が免除されるという制度だー。

「ーーさ、坂下さんー」
涼介の背後で、真梨香は仲間だった瑞穂が裏切ったことに気付き、
心底悲しそうな表情を浮かべながらそう言葉を口にするー。

がー、涼介は”今から起きること”を頭の中に浮かべると、
「真梨香ー」と、そう言葉を口にして、引き返すように促すー。

この先の道に”対憑依治安維持局”の兵士がいる以上、
このルートを進むことはできないー。

が、それ以上に
涼介は真梨香に見せたくなかったー。

”ー坂下さんー…どうして免除制度を真に受けたりしたんだー…”
心の中で、涼介は悔しそうな表情を浮かべながら
そう呟くー。

そうー、”免除制度”は、形だけの存在ー。
自分たちの隠れ家を裏切り、その情報を提供しても、
命を助けてなど貰えないー。

「ーーこの場所の情報提供、ご苦労だったな」
対憑依治安維持局の兵士がそう言葉を口にすると、
そのまま情報提供者の瑞穂に向かって銃を向けるー。

「ーえっ…ど、どうしてですか!?わたしはーー!!」
この場所の情報提供をしたから助けて貰えるー。
そう思っていた瑞穂は目に涙を浮かべながら
命乞いをしようとするも、既に時遅く、そのまま銃弾が放たれるー。

背後からの銃声を聞きながら
涼介は、仲間がまた一人死んだであろうことを悲しく思いながら
そのまま真梨香と共に脱出を目指すー。

「ーねぇ…わたしたち、何も悪いことしてないのにー」
真梨香が目に涙を浮かべながら言うー。

涼介と真梨香は、生まれてから一度も憑依能力の悪用などしていないー。
そして、これからもするつもりはないー。

なのにー…

地下の隠れ家内に再び銃声が響き渡るー。

涼介は目から涙をこぼす真梨香の手を
握りしめると、「大丈夫ー。必ず生きてここを出よう」と、
そう言葉を口にするー。

涙を拭きながら、真梨香も移動を始めると、
その直後ー、突然前から人影が飛び出したー。

「ーー!!」
涼介は一瞬、身構えたものの、
すぐに姿を現したのが、この地下の隠れ家の
リーダー的存在である裕也であることに気付き、
「足立さんー」と、そう言葉を口にしたー。

裕也は少し怪我をしている様子であったものの、
いつもと変わらない様子で
「非常時のための裏口があるー。
 そこから脱出しよう」と、そう言葉を口にするー。

その上で、別の憑依能力者が暮らす拠点に
一旦迎え入れて貰うため、最寄りの拠点に向かおうと
そう言葉を口にしたー。

裕也、涼介、真梨香の3人は
裏口のある場所にまでたどり着くー。

しかしー、その時だったー。

突然、銃声が響き渡り、
リーダー格の裕也がその場に倒れ込むー。

「ーあ、足立さん!?」
涼介がそう叫ぶー。

真梨香は悲鳴を上げながら
撃たれて倒れ込んで裕也を見つめると、
背後から、ショートヘアーの女兵士が
姿を現したー。

その周囲には二人の兵士の姿も見えるー。

「ーー憑依能力者ー。
 人間の姿をした害虫め」
ショートヘアーの女兵士がそう言葉を口にすると、
涼介は怒りの形相で言葉を返すー。

「ー俺たちが害虫だとー?」
とー。

怯える真梨香を背に隠しつつ、涼介が
”対憑依治安維持局”の兵士たちを睨みつけると、
「俺たちだって生きてるんだー!!
 お前たちと同じ人間なんだ!」と、そう叫ぶー。

しかし、ショートヘアーの女兵士は
「貴様たち憑依能力者がどれだけ人を傷つけて来たと思う?」と、
淡々とそう言葉を口にするー。

「ーーそれはー”黒”の憑依者たちだ!
 俺たちは、ただー」

”黒”の憑依者とは、憑依能力者たちの中で使われる用語で、
憑依能力を悪用する人間たちのことを示す言葉だー。

憑依能力を持って生まれた人間の中にも
それを悪用せずに全うに生きる人間はたくさんいるー。

がーーー

「ーそれをどうやって見分けろと言うのだ?
 憑依能力持ちを見分ける技術はあるー。

 だが、人の心を見分けることはできないー。

 お前たちが”能力を悪用しない憑依人”だと、
 本当に100パーセント言い切ることができるのか?」

ショートヘアーの女兵士はそう言うと、
言葉を続けたー。

「悪意のない憑依能力者がいることは分かっている。
 が、それを悪用する人間は確実にいて、
 大勢の人間が被害を受けているのもまた事実ー。

 わたしの”妹”もそうだった」

ショートヘアーの女兵士は悲しそうにそう言葉を口にすると、
「妹は、大学入学のその日、能力者に憑依されて
 弄ばれたー。あまりにも酷い有様だった」と、そこまで言葉を口にするー。

「ーーー…い、妹さんはー…それで…」
真梨香がそう言葉を口にすると、
ショートヘアーの女兵士は少しだけ自虐的に笑ったー。

「ーその半月後、自ら命を絶ったよー」
とー。

「ーーー…そ、そんなー」
真梨香がそう言葉を口にすると、
ショートヘアーの女兵士は憎しみに満ちた目で
真梨香と涼介を見つめたー。

「だから、貴様ら害虫は根絶しなければならないー」
銃を涼介らに向ける女兵士ー。

「ーー待ってくれ!!真梨香だけでもーー…!」
涼介はそう言葉を口にすると、
ショートヘアーの女兵士は涼介を睨みつけながら
数秒間、沈黙したー。

そしてー…

「ーわかったー」
ショートヘアーの女兵士は静かに息を吐き出すと、
そう言葉を口にするー。

涼介はそんな彼女を見て、
少しだけ表情を緩めるも、
その直後、”信じられない行動”を起こしたー。

「ーーなら、そっちの害虫から駆除してやるー」
ショートヘアーの女兵士は、
そう言葉を口にすると、
”あえて”憑依能力者である涼介を苦しめるために、
涼介ではなく、真梨香の方に銃を向けると、
そのまま真梨香の”足”を銃撃したー。

「ーーー!?ま、真梨香!?!?」
涼介が青ざめながら叫ぶー。

真梨香は苦しそうにしながら
「り、涼介は逃げてー」と、必死に言葉を吐き出すー。

しかし、真梨香を見捨てて逃げることなどできるはずもなく、
涼介は「ーーそ、そんなことできるわけないだろ!」と、叫ぶー。

がー、そうこうしているうちに、
ショートヘアーの女兵士は真梨香の方に銃を向けるー。

「ーーこれは害虫駆除だー。
 人間の形をした害虫を駆除するー」
そう言葉を口にしながら、
ショートヘアーの女兵士は容赦なく真梨香に発砲しようとするー。

「ーやめろ~~~~~~~~~~~~~~!!!!」
涼介はそう叫ぶと同時に、
”憑依能力”を発動したー。

危機的な状況だからだろうかー、
それとも真梨香を守りたいという強い思いからだろうかー。
あるいは、激しい怒りからだろうかー。

通常、憑依能力を発動するときよりも素早く、
涼介は幽体離脱をすると、一瞬にして、
ショートヘアーの女兵士に憑依してみせたー。

「ーーうっ…!?」
ショートヘアーの女兵士が震えるー。

すぐに周囲にいた別の二人の兵士が
倒れた涼介の方に銃を向けるー。

憑依能力者たちは、憑依後、自分の身体は
抜け殻となってその場に残るー。
その”本体”の息の根を止めてしまえば
霊体は消滅、憑依されている人間をすぐに
救うことができるー。

そのため、対憑依治安維持局の兵士たちは
大勢でチームを組んで行動していて、
バラバラになって探索するときにも、
3名以上のチームを組んで行動している。

そうすれば、誰かが憑依されても、
残りのメンバーが憑依された人間を拘束したり、
あるいは憑依能力者の本体が近くに確認できるときには
その身体の息の根を止めることができるからだー。

しかしー

「うああああああああああっ!」
ショートヘアーの女兵士に憑依した涼介は
怒りの形相で驚くほど素早い動きを見せるー。

ショートヘアーの女兵士以外の二人の兵士を
彼女が持っていた銃で攻撃すると、
他の二人の兵士が吹き飛ばされるようにして倒れるー。

「り、涼介!」
真梨香は苦しそうにしながら、
ショートヘアーの女兵士に憑依している涼介に向かって声をかけるー。

「ーぐ…」
銃撃を受けたものの、まだ生きていた兵士の一人が、
涼介に憑依されたショートヘアーの女兵士に向かって銃を向けるー。

しかし、涼介はそれに気づくと容赦なく銃撃を加えて、
ショートヘアーの女兵士以外の二人の兵士を
そのまま”排除”することに成功するー。

「ーーり、涼介……」
真梨香は苦しそうにしながら、
ショートヘアーの女兵士の方を見つめると
「はぁ…はぁ…」と、憑依している涼介は荒い息をしながら、
今度は自分自身ー…
ショートヘアーの女兵士の身体に銃を向けるー。

この身体の命も奪うつもりだー。
憑依している最中にその身体が死んでも、
憑依者は自分の身体に戻るだけー。

そのため、憑依した人間の命を奪うことは
とても簡単なことだったー。

「り、涼介!ダメ!!そんなことしちゃ!」
真梨香がそう言葉を口にするー。

涼介も真梨香も、今まで憑依能力を悪用したことは一度もないし、
憑依で他人の命を奪ったこともないー。

いくら、自分たちの命を奪いに来た相手だとしても、
真梨香からすれば、相手の命を奪うことはしたくなかったー。

「ーーー真梨香ー」
ショートヘアーの女兵士の身体のまま、
涼介は複雑そうな表情を浮かべるー。

「でも、殺らなきゃ、殺られるー」
ショートヘアーの女兵士の身体でそう言うと、
真梨香は「もう、隠し出口も近いみたいだし、
憑依された人は、意識が戻るまで少しは時間がかかるから…
もう十分でしょ?」と、そう言葉を口にするー。

真梨香は、どうしても涼介に、
例え自分たちの命を狙ってくる兵士が相手でも
そんなことをして欲しくなかったー。

「ーーでもー…」
涼介は女兵士の身体のまま、
困惑の表情を浮かべるー。

が、真梨香に「お願いー。もう自分の身体に戻って」と、
そうお願いされたことで、小さくため息を吐き出すと
「わかったー」と、そう言葉を口にしたー。

そして、ショートヘアーの女兵士の身体から
抜け出すと、涼介は自分の身体に戻ってから
失神した女兵士と、死んだ二人の兵士を見つめるー。

「ーー俺…」
二人の兵士の命を奪ってしまったことに対して
少し戸惑ったような表情を浮かべる涼介ー。

けれど、真梨香はその部分には触れずに
撃たれた怪我を少し痛そうにしながらも
「助けてくれて、ありがとうー」と、
そう言葉を口にしたー。

「ーー行こう」
涼介は、自分たちが隠れ家にしていた地下空間の
隠し出口の方を指差すと、
真梨香と共に、その場所へと向かって行くー。

憑依能力を悪用する人間は確かにいるー。
けれど、そうじゃない憑依能力者たちにとっては
この世界はあまりにも過酷で、冷たい世界だったー…。

③へ続く

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コメント

次回が最終回デス~!

こんな状態の世界だと、
憑依能力があっても、大変ですネ~…!

今日もありがとうございました~!!

続けて③をみる!

「能力者たちを根絶せよ」目次

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