<憑依>正義に目覚めた極悪人(中編)

とある犯罪組織に所属する男は、
上からの指示で、対策班に所属する女性刑事に憑依ー、
情報を引き出そうと動き始めたー。

しかし、そんな彼の中で次第に”心境の変化”が生まれ始めてー…?

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「何かあったのかー?」
茉莉に憑依している幸雄は、
先日は無視した、泣きじゃくっている子供に声をかけると、
うんざりとした様子で腕組みをしながら、声をかけるー。

元の茉莉の優しそうで、けれども正義感が強そうな顔立ちからは、
信じられないほどに態度の悪い声のかけ方であったからか、
その子供は泣きじゃくった状態のまま、返事をしないー。

「ーーーチッー」
綺麗な髪を掻きむしりながら、うんざりした様子で
舌打ちをした茉莉は、「泣いてちゃ分からねぇだろ!クソガキ!」と、
声を荒げるー。

その子はビクッとした様子で泣きじゃくりながらも
「ーお父さんが、僕を叩くんだー」と、ようやく言葉を口にしたー。

「ーーへ~…そうかいー」
茉莉はそれだけ言葉を口にすると、
子供に背を向けてから「って、俺は何でこんなガキの話を聞いてるんだー」と、
そう言葉を口にすると
「帰ったらこの女の身体で楽しもうとしてたのによー
 魔崎さんからも、”オフの時間”は、周囲に怪しまれなきゃ好きにしていいって
 言われてるからなー」と、一人でボソボソと呟くー。

そして、泣きじゃくっている子供の方に視線を向けると、
茉莉は「へっー。まぁ頑張りなー。”お姉さん”はこれから楽しいことを
しないといけないんでなー」と、それだけ言うと、
そのまま立ち去って行ったー。

家に帰って、自分の身体を貪りつくすようにして
楽しむ茉莉ー。

茉莉の喘ぎ声が、繰り返し響き渡る中ー、
しばらくすると、茉莉はイライラした様子で
鏡を見つめるー。

「ーあのガキーー…」
そう呟くと、「チッ」と言葉を口にしてから、
ジャージ姿で面倒臭そうに外に出かけていくと、
その子が、まだ裏路地で座り込んでいることに気付くー。

「ーおいーガキー」
茉莉がそう声をかけると、
スーツ姿から、ジャージ姿になったからか、
その子は一瞬、”さっきの女の人”と気付かなかった様子で
首を傾げるー。

しかし、ようやく茉莉であることに気付くと、
「あーさっきの…」と、それだけ言葉を口にしたー。

「ー夜も、ずっと外にいるのかー?」
茉莉がそう確認すると、
子供は頷くー。

「夜は、お父さんがいるからー」
とー。

茉莉はチッ、と舌打ちをすると、
「ー話ぐらいなら聞いてやるー。さっさと話せー」と、
それだけ言葉を口にしながら、子供の隣に座ると、
本来の茉莉は吸わなかった煙草を手にして、
子供の横に座るー。

そして、話を聞くー。

聞けば”新しいお父さん”が、連日酒を飲むと
暴力を振るってくるらしくー、
この子は、逃げるようにして
夜になると家の外で過ごしているらしいー。

「ーー警察に言えばいいじゃねぇかー」
茉莉は煙草を吸いながらそう言葉を口にするー。

が、その子は”おまわりさんに言っても、家に帰されちゃうだけだからー”と、
震えながらそう言葉を口にしたー。

そんな子を見て、”可哀想”とそう思ってしまった茉莉に憑依している幸雄は
自分でもその考え方に戸惑いつつも、
「ーったく、ガキがー」と、そう呟くと、
少しだけ考えてから言葉を口にしたー。

「ーーー腹減ってるだろー?飯でも食うかー?」
とー。

”茉莉だったらそうする”ーー
言葉遣いは違うけれど、
犯罪組織アビスの幹部・龍夜から提供された試薬の効果で、
”茉莉の脳”から、”わたしだったらこうする”というのが
流れ込んでくるようになっていた幸雄は、
そう言葉を口にしたー。

「ーーいいのー?」
子供がそう言葉を口にするのを見て、茉莉は
「ー今日だけだぞー。おじさんが買ってやるのはー」と、
そう言葉を口にすると、
子供は「えーー…?お姉さんー男の人なの?」と、
首を傾げるー。

「ーチッーいや、ちげぇよー。なんでもねぇ」
茉莉はそれだけ言うと、子供に適当なサンドイッチとお菓子を買って手渡すー

”くそっー何やってんだ俺はー”
内心で少しだけ不満そうに、茉莉に憑依している幸雄は
そう言葉を口にすると、
そのまま小さく息を吐き出したー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌日ー。

”その女と同じ、B班に所属する捜査官を、
 今から指定する場所に誘導できるかー?”

リーダーの魔崎からそんな連絡が入ったー。

「ーへへー。もちろんー
 ーーこの女と同じ班の三人は始末するってことでいいですか?」
茉莉がニヤニヤしながらそう言うと、
リーダーの魔崎は”あぁ”と、それだけ答えるー。

その上で”お前だけ元気で帰ったら疑われるからなー
お前のことも、俺の部下が痛めつける手はずになっているがー、
構わないなー?”と、魔崎がそう呟くと、
茉莉は少しだけ苦笑いしながら「えぇー。もちろんー
それが命令なら、何でもしますよー」と、そう言葉を口にしたー。

そして、その日の夜ーーー

茉莉は、”犯罪組織アビスの幹部”である龍夜の
潜伏地点を見つけた、という連絡をB班の仲間に入れるー。

その報告を受けた班長の宮根は
”よくやったー”と、ご機嫌そうだったー。

そして、”誰一人として死ぬことは許さないー。
命を最優先に、現場に急行するんだー”と、
隊員たちの身を案じるような言葉を口にしたー。

茉莉は邪悪な笑みを浮かべながら、
”B班”の中まである石島 暁人ら、他の3人の捜査官と合流するー

「ーーこのビルかー
 確かに嫌な感じがするなー」
”エース”格の一人でもある暁人は、そう言葉を口にすると、
銃の確認をしてから、残り二人の隊員と、
茉莉に指示をするー。

「ー分かりましたー。わたしは後方から皆さんを支援しますー」
”茉莉”の脳から、”茉莉だったら”どうするかが
流れ込んでくるー。

”クククー3人ともこのビルが墓場になるぜー”
茉莉に憑依している幸雄は、そう思いながら
犯罪組織アビスのリーダーである、魔崎から指示された通り、
ビルの中に仲間たちを突入させるー。

がーー
ビルの中には”犯罪組織アビス”の精鋭が待ち伏せしているー

「ーー全員、手を上げろー」
突入した石島 暁人ら捜査官3人は、銃を手に、
中にいた犯罪組織アビスの構成員3人に手を上げるように促すー。

「ーーよし、そのまま動くなよー」
暁人はそう言葉を口にすると、警戒しながら
他の二人の捜査官に、3人のアビス構成員を確保するように指示をするー。

がー、その時だったー。
暁人が表情を歪めるー。

「ー待てー”人の気配”がするー」
とー。

後方支援を担当していた”憑依された茉莉”がニヤリと笑うー。

直後ー、銃を乱射する音が響き渡るー。

「ーーーー!」
捜査官の石島 暁人が銃弾を浴びてその場に倒れ込みー、
もう一人の男性捜査官は頭を撃ち抜かれて即死したー。

茉莉以外の、もう一人の女性捜査官は、立っていた場所が幸いして
物陰に隠れると、震えながら「ーーわ…罠です!」と、
本部に通信を入れるー。

”ー罠だと?”
”アビス対策班”の宮根班長がそう返事をすると、
その女性捜査官・尚子(なおこ)は、
「ーー待ち伏せです!応援をお願いします!」と、必死に叫ぶー。

がー、宮根班長は
”残念だがー、応援は間に合わない”と、それだけ言葉を口にすると、
そのまま通信を終了してしまうー。

「ーーそ、そんな!班長!!」
捜査官の尚子が叫ぶー。

待ち伏せしていた、犯罪組織アビスの構成員10人が、尚子を
追いつめていくー。

が、その時だったー
銃声が響いて、そのうちの一人が射殺されるー

「ー!なんだ!?」
残る9人が声を上げると、
最初に撃たれた石島 暁人が、起き上がって一人、
また一人と銃撃を放って葬っていくー。

「ーーテメェらー、罠を仕掛けるとはいい度胸じゃないかー」
暁人は血を流しながらそう言葉を口にすると、
「外に逃げろ!」と、尚子と、後方にいる茉莉に向かって叫ぶー。

尚子はともかくー、茉莉は”憑依されている敵”だと言うのに、
それに気づかず、暁人は二人を逃がしてしまうー。

「ーー!」
逃げる尚子を狙う犯罪組織アビスの構成員に銃撃を浴びせて、
その男を倒すと、回転しながら遮蔽物に隠れて
さらに一人を仕留めるー。

「ーーふぅー」
遮蔽物に隠れた暁人は、自分の身体からの出血を確認すると、
「チッーーーーいつかこうなると思ってたけどなー」と舌打ちをするー。

「ーーまーー俺に失うものなんてないしな」
暁人はそう言葉を口にすると、隠し持っていたナイフを
相手に向かって投げて、遮蔽物から飛び出すー。

さらに一人を葬り、
アビス構成員から奪ったマシンガンのような銃でもう一人葬るー。

残り5人ー

がー、
銃声が響き、暁人は自分の身体に衝撃を感じると、
苦笑いするー

「ケッー…やっぱ、ドラマのヒーローみたく上手くはいかないかー」
そう言葉を口にすると、持っている銃を二つ手に、
残りのアビス構成員たちをめがけて放ちながら突進し始めたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーー石島さんーー」
悲しそうに泣き崩れる捜査官の尚子ー。

そんな尚子を見つめながら、
笑みを浮かべる茉莉に憑依した幸雄ー。

”へへへーこいつは俺自ら始末するかー”
そう思いながら、銃を取り出そうとするー。

がー、目に涙を浮かべた尚子の顔を見てー、
茉莉は表情を浮かべたー

”可哀想”とそう思ってしまったー。
”守らなくちゃ”と、そう思ってしまったー

”くそー…何だよー…”
思わぬ感情に戸惑う茉莉ー。

「ーーーー」
そうこうしているうちに、
犯罪組織アビスの構成員二人がやって来るー。

「ーへへへー
 あっちの男は片付けたぜー」

そう言葉を口にする構成員ー。

激闘の末、捜査官の石島 暁人は殉職したー。
が、10人いたアビスの精鋭は、8人が射殺され、
残り二人に減っていたー。

「ーーご苦労だったなー」
2人のうちの一人が、茉莉のほうを見てそう呟くー。

そして、尚子に銃を向けるー
泣きながら震える尚子ー

がー、
それを見た茉莉に憑依している幸雄はーー
無意識のうちに、銃を手に、

そのまま躊躇せずに銃弾を放っていたー。

尚子ーーー

ではなくーー
仲間であるはずの”犯罪組織アビス”の構成員の男にー。

「ーーなっ!?」
残る一人が驚くー。

「ーーーお前…!」
アビスの精鋭の最後の一人が怒りの形相を浮かべるー。

がー、茉莉は
「ーーわたしはアビス対策班の一員として、任務を果たします」と、
それだけ言葉を口にすると、残る一人の男も射殺したー。

「ーーーー…」
震える尚子を見て、茉莉に憑依している幸雄は
ため息をつくと「ーほら、早く行くよ」と、
茉莉のフリをしながら、そう言葉を口にするー。

茉莉のフリー…をしているとは言っても、
本来の茉莉より強気な口調になってしまっているものの、
男口調にだけはならないように注意しているー。

「ーーー石島さんがー…みんながーー」
生き残った尚子は、すっかり憔悴しているー。

茉莉は表情を歪めながら
”俺はなんで、こいつを助けているー?”と、
自分でも、自分のしている行動の意味が分からず、
戸惑いの表情を浮かべたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーー魔崎ー」
背後から、声がして、
犯罪組織アビスのリーダー・魔崎が笑みを浮かべるー

「ー龍夜かー」
現幹部・龍夜とは”同時期”にアビスに加入した間柄ー。
現在はリーダーと幹部の間柄であるものの、二人は対等な話し方をするー。

「ー”精鋭”が全滅して、例の憑依してる下っ端との連絡が途絶えた」
幹部・龍夜がそう言葉を口にすると、
魔崎は座っていた椅子を回転させて、龍夜のほうを向くー。

「ーほぅー。それで?」
魔崎の言葉に、アビス対策班の捜査官数名は死亡したことを告げるー。

「ーーーー分かった。」
報告を受けた魔崎は薄ら笑みを浮かべながら頷くと、
「ー龍夜ー。手筈通りにー」と、それだけ言葉を口にして、
そのまま奥の部屋へと姿を消すー。

一人残された龍夜は無表情のまま、
部屋の外に向かって歩き始めたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーくそっーーー
 これで俺はもう戻れねぇ」

そう言葉を口にしながら、茉莉に憑依した幸雄は、
アビス対策班の班長・宮根に報告を終えると、
家に向かって歩いていたー。

がー
その時だったー

「ーーた、助けて!!」
背後から声がしたー。

振り返ると、そこにはこの前のーー
父親に暴力を振るわれている子供の姿があったー。

「ー!」
茉莉が表情を歪めて顔を上げると、
そこには、酒のニオイを漂わせた目つきの悪い男の姿があったー

<後編>へ続く

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コメント

次がラストデス~!!★

毎週火曜日の作品だけ、予約投稿の都合上、
最終回はまた来週になりますが、
気長に待っててくださいネ~~~!!

コメント

  1. TSマニア より:

    龍夜も怪しい注射だったり裏の裏がありそうですネ…

    宮根班長も…

    最後の最後に…何かありそうですネ!★