若くして命を落とした男ー。
しかし、発明家でもある彼の父親が
彼の魂を特殊な方法で保管、
自らが作り出した人間そっくりなメイドロボに憑依させる方法で、
息子を蘇らせてしまうー…。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
江藤 良平(えとう りょうへい)は、
ベッドの上で、空を見上げていたー。
「ーーはぁ…」
まだ”大学生”の彼は、若くしてある病に侵されていたー
それは、現代ではまだ、治療することの出来ない病ー。
次第に弱っていく身体ー。
”今まで出来ていたこと”が、日に日にできなくなっていく
そんな苦しみを味わう良平ー。
もちろん、人間である以上、
いつかは自分も”こうなる”ということは分かっていたー。
人間、誰もが老いていき、
やがて”今まで出来ていたこと”も、できなくなっていくー。
そんなことは分かっていたー
けれどーーー
”早すぎるー”
もはや、自力で歩くことも困難になり、
食事も満足に摂れなくなった良平は、
己の運命を呪ったー。
まだー何十年も”先”のはずだった”死”ー。
それがもう目前にまで迫っているー。
同じ大学に通う彼女、馬場 沙友里(ばば さゆり)も、
連日、お見舞いに来てくれては、色々な話をしてくれているー。
けれど、それを聞くのももう辛くなってきたー。
だってーー
良平の前では元気に振る舞っているけれどー、
病室の外で一人泣いているのを見てしまったからー。
もうすぐ、自分は死に、沙友里を悲しませてしまうー…
そのことが分かっているから、
沙友里と顔を合わせて話をしているのが、
だんだんと辛くなってきてしまったのだー。
「ーーーー……ごめんなー…沙友里ー」
今日も、沙友里が立ち去った後に、
一人でそう呟く良平ー。
日に日に、自分が弱っていくー。
日に日に、何に対しても気力を失っていくー。
そんな日常の中、ついに”その日”は訪れたー。
良平にとっての”最期の日”がー。
「ーーーーー」
良平は、言葉を発することもできず、
薄れていく意識の中、思ったー。
”死んだあとって、どうなるんだろうなー?”
とー。
このまま自分は消えるのかー。
それとも、人間が想像もできないような
”次の世界”があるのだろうかー。
死んだ人間は、この世に戻って来ることは出来ないー。
だから、その”答え”は人間には分からない。
自分自身が死んで、初めてその”答え”が分かるー。
と、言ってもー、
もしも”無”だった場合、結局、自分でその答えを
噛みしめることはできないのだけれどもー。
”ーーーーー沙友里ー”
良平が、最後の瞬間に考えたのは、
彼女の沙友里のことだったー。
”俺のことは気にしないでー幸せになってくれー”
そう願いつつ、亮平の意識は完全に闇の中に飲まれて、
そのまま息を引き取ったのだったー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーーー亮平ーー
おぉぉぉ…良平ー」
その日の夜ー。
良平の遺体の前にやってきて、声を上げる男がいたー。
彼はー、良平を男手ひとつで育ててきた父親ー
自ら”発明家”を名乗る男、江藤 新五郎(えとう しんごろう)だったー。
新五郎は、”発明家”を名乗り、奇妙な発明を繰り返している男で、
最近は”人間そっくりのロボット”の開発にも成功していたー。
ただ、”超”がつくほどの変わり者で、
それが原因で、良平がまだ小さい頃に妻と離婚ー、
お互い、相談して”良平が選んだほうが、良平を引き取ることにしよう”と、
そういう話になり、
当時、まだ小さかった良平は”父親の発明品”が大好きで、
父親である新五郎を選び、そのまま新五郎に引き取られたのだったー。
が、良平も大きくなるにつれて、父・新五郎の
マッドサイエンティストぶりについていけなくなり、
”仲は悪くはないけど、一緒にいたくはない”という状態となり、
大学生になってからは”一人暮らし”をスタートさせていたー。
そんな父・新五郎が、良平の死を聞きつけて
数週間ぶりに家の外に飛び出して遺体の側にやってくると、
何か水鉄砲のような装置を取り出して、
それを良平に向けたー。
「ー死しても、人間の魂はしばらくその身体に留まるー」
新五郎は、そんな言葉を一人で口にすると、
やがて、水鉄砲のようなものを良平の耳元に当てると、
「良平ー。お前の魂は、ワシが責任をもって回収するー」と、
そう言葉を口にしながら、”謎の光”を良平の身体から
”吸収”し始めたー。
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーー!!!!!!!!!」
良平が目を覚ますー。
「ーー!?!?!?!?!?!?」
思わず、周囲を見渡す良平ー。
”俺は、確か死んでー…?”
良平は、自分自身が死んだことを思い出すー。
確かに病院で、死んだー。
死ぬ間際のことをハッキリと覚えているー。
あの状況から奇跡的に助かって、息を吹き返したのかー?
いや、それはあり得ないー。
と、すれば、ここは”あの世”ー?
「ーーし、死んだあとの世界ってー、本当にあるのかー」
良平がそう言葉を口にするとー、
すぐに言葉を止めて「えっ!?」と、困惑したような
表情を浮かべたー。
それもそのはずー。
良平の”口”から吐き出された言葉は、自分の声ではなく、
可愛らしい”女の声”で、発されたからだー。
「ーーは…????」
死んだと思ったのに、急に目を覚まして
挙句の果てに女の声が出たー。
意味の分からない状況に思わず自分の身体を見下ろすとー、
そこにはー”メイド服”を着た”女”の身体が見えたー。
「ーー!?!?!?!? なんだこれ!?!?」
可愛らしい声で、そう叫ぶ良平ー。
「ーえ…こ、これがあの世ー?
に、に、に、人間って死んだらメイドになるのかー!?」
メイドの身体になってしまった良平は、
心底困惑した様子でそんな言葉を口にするー。
別に良平は生前、女になりたいなどと思ったことはなかったし、
メイドに特別興味があったりするわけでもなかったー。
そんな自分がメイドになっているということはー…
「ーーー…なんだこれ…?」
意味が分からず、心底困惑したような様子を見せるー。
周囲を見渡すー。
研究施設のようにも見えるが、
見覚えのない場所だー。
あの世ー…
”もし存在するならば”天国にせよ、地獄にせよ、
どんな世界にしても、”生きているうちにはあり得ないような”
幻想的な光景が広がっているのではないかと勝手に予想していたー。
けれど、何だか普通にどこかにありそうな
研究施設みたいな光景が広がっていて、
思わず、メイドになってしまった良平は苦笑したー。
「実はー、”人生”って超リアルな体感型ゲームだったりしてなー」
自分の寝ていた場所の近くに謎の装置のようなものが置かれているのを見て、
”人生”は超リアルで超長い”体感型ゲーム”だったのではないかと
そんなことも考えるー。
がー
その時だったー
部屋の扉が開くー。
そしてー、部屋に入って来たのはー、
良平にとって、よく見覚えのある人物だったー。
「お、お、親父ー!?!?!?!?」
メイドの可愛らしい声でそう叫ぶ良平ー。
「ーー…よかったよかったー目を覚ましたか良平ー」
父であり、発明家を自称する新五郎は、ニヤニヤとしながら
部屋に入って来るー。
「ーえ…な、何で親父がここにー?
ま、まさか親父も死んだのかー?」
メイドの声のまま、そんな言葉を口にする良平ー。
が、父・新五郎は苦笑いすると、
「馬鹿者ー。勝手に殺すでないー」と、そう言葉を口にするー。
心底戸惑う良平ー。
「い、いや、でもだってここー、あの世ー」
と、自分の足元を指差しながらそう言葉を口にすると、
新五郎は笑ったー
「はははー。心配するでないー。良平ー。
ここは地獄ではないー。
”現世”だー。お前は今までいた世界で目を覚ましたんだ」
ーーワシのとっておきの発明でな」
笑みを浮かべる新五郎ー。
「ーいや…え??
いやいや、ちょっと待てよー。何で”地獄行き”前提の言い方なんだー?」
良平は、そんなツッコミを入れるー。
”ここは地獄ではないー”という父の言葉に、
”何で地獄行きって決まってるんだ!天国かもしれないだろ!”と突っ込むー。
「ーーはははーそんなことはどうでもいいー
それより、”新しい身体”の調子はどうだ?」
父・新五郎は笑いながら言うー。
「ーあ、新しい身体ってー…こ、これ、何だよー?」
可愛らしい声でそう言葉を口にする良平ー。
「ーーメイドロボのメイちゃんだー」
真顔で答える新五郎ー。
「ーーーはい?」
戸惑いの表情を浮かべるメイドになった良平ー。
「ーーー…メイドロボのメイちゃんだー」
「いや、それは分かったよ!!どういうことなのか教えてくれよ!」
良平が可愛らしい声でなおもそう叫ぶと、
「ーーその身体はワシが作り出した人間そっくりのロボットだー。
ロボットって言っても、ワシの研究は優秀でなー。
外から見れば人間と何ら変わらないー」と、そう言葉を口にしたー。
「ーーーーーー」
茫然とした表情で、自分の身体を見つめる良平ー。
「ーーお、お、俺の身体はー?」
良平がメイド服姿の自分を見つめながらそう言うと、
「ーー…死んだ。自分でもそう言ってただろう?」と、
父・新五郎は残念そうに言葉を口にしたー。
「ーーーー…そ、そっかー……
え……し、死んだのに俺は、生きてるのかー?」
戸惑いの表情を浮かべるメイドの身体の良平ー。
「ーおぉ、その顔、いいぞー可愛いぞ」
父・新五郎はそう言葉を口にすると、
これまでの経緯を説明したー。
「ーー人間は遺体になっても、
しばらくの間は、その身体に魂が残るんでなー。
ワシの、遺体から魂を救出する発明で、魂を抽出したー。
そして、ワシがかねてから完成させていた
メイド型のロボットに良平ー、お前の魂を憑依させることによって
お前を生き返らせたのだー」
得意気に説明する新五郎ー。
「ーーーーーー~~~~」
それを聞いた良平は、呆然とした表情を浮かべながら
父・新五郎を見つめるー。
「ーどうだ?すごいだろう?」
なおも得意気な表情の新五郎ー。
確かにー、
死者から魂を吸い出して、こうして”蘇生”させてくれるのは
凄いとは思うー。
まだ、良平にはやりたいこともたくさんあったし、
彼女の沙友里を残して一人で死ぬのも気がかりだったー。
こうして生き返らせてくれたのはー、
マッドサイエンティストの父に感謝しなければならないー…
とは、思うー
がーーー
それは別としてーーー
「ーー親父、一つ聞いていいか?」
良平がそう言うと、新五郎は「うむー何でも聞いていいぞ」と、頷くー
「ー方法はともかく、生き返らせてくれたことには
滅茶苦茶感謝してるんだけどさー…
なんでーーー
なんで、こんなメイドの身体なんだ!?!?」
良平は自分の身体に触れながら、心底困惑した様子でそう叫ぶー。
「ーワシの趣味だ」
新五郎は即答するー。
「おぉぉぃ!?俺は男だぞ!?
こんな可愛い身体に可愛い声でどうやって生きて行けばいいんだ!?」
メイドになった良平が叫ぶと、
「可愛く生きて行けばいいじゃないか」と、新五郎は頷くー。
「い、いやいやいやいやー
この身体で”良平”ってのも無理がないかー!?」
良平はなおもそう叫ぶと、
「その身体はメイドロボのメイちゃんだー」と、新五郎は
名前を再び繰り返すー。
「ー~~~っ…せ、せめて新しい名前は俺に考えさせてくれないのかー?」
良平は、諦めにも似た表情を浮かべながらそう口にすると、
「ーーーーメイちゃんって決まってるからー…良平、お前は今日からメイちゃんだー」
と、新五郎は”名前の変更も受け付けない”と言わんばかりに
そう言葉を口にしたー。
「ーーーーーー」
ふと、良平は自分が目を覚ましたベッドのような装置の隣に、
もう一つ同じような装置があることに気付くー。
もう一体、ロボットが完成しているのだろうかー。
そう思いつつ「そっちはー?」と確認するとー、
「あぁ、この中にはメイドロボのマリちゃんが入っているー」と
新五郎はそう言い放ったー
「ーおぉぃ!?なんでメイド型のロボばかり作るんだよ!?」
良平がそうツッコミを入れるも、父・新五郎は笑いながら
「まぁ、とにかく、今日から良平ー。お前はメイちゃんだー」と、
そんな言葉を口にするー。
この日から、良平は
新しい身体ー…メイドロボのメイちゃんの身体で
生きることになってしまったのだったー
②へ続く
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今日はホワイトデーですネ~~!★
でも…ホワイトデーとは関係のないお話デス~!笑
物語がどうなってしまうのかは、
また明日のお楽しみデス~!!!

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