<憑依>どう考えてもそうは見えない②~欲望~

①にもどる!

仕事帰りに二人組の女に
絡まれたサラリーマンの男ー。

あまりにも面倒だったために、”男にしか興味ないんで”と言い放ち、
そのまま立ち去ろうとしたものの、
今度は”実は俺たち、男なんですよー”と、そう言い始めてー?

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ー俺のここー、触れば分かりますよねー?
 男か、女かー」

髪の長い女が、ニヤニヤしながら自分のスカートを
指差しながら、そう言葉を口にしているー。

髪の短い方の女も、腕組みしながら、
「ほら、触ってみなよー」と、そう言葉を口にするー。

「ー~~~~~~~~」
芳樹は少しだけ顔を赤らめながら、
髪の長い女のほうを見ると、
「ーどうしました?俺たちが男じゃないって疑ってるんですよねー?」と、
なおもニヤニヤしながら言うー。

「ー触って見ればわかるじゃないですかー。
 ついてれば男、ついてなければ女ー」

髪の長い女が笑みを浮かべながら言うー。

どうせ、芳樹は触って来ないだろうしーー
触って来なければ、
”確認しないってことは男って認めてくれたんですね”と、
自分たちを男として、話の主導権を握ることができるー。

一方、万が一触られた場合、
この身体は”女”だとバレてしまうものの、
”触りましたね?”と脅すことができるー。

別に、芳樹に恨みはないしー、
固執する必要も本来はないものの、
”憑依薬で他人の身体を乗っ取った二人組の男”はー、
芳樹を揶揄って楽しんでいたー。

「ーーほら、なんだったら、わたしの方でもいいよ。
 触りなよー」
髪の短い女も、そう言い放つー。

一瞬、芳樹は困惑していたものの、
すぐに”いやー”と、心の中で呟くと、
”これは罠だー”と、そう確信するー。

”どうせ、お前ら、本当は女で、
 俺が触った途端、”きゃ~!”とか騒ぎ出して
 俺を痴漢扱いするか、
 あるいはー…”触りましたね??ね????”とか
 言って、俺のことを脅すつもりなんだろ?”

芳樹は心の中でそう考えると、
二人に負けじと、自分もニヤリと笑みを浮かべたー。

髪の長い女は、一瞬”触りに来るのか?”と
思ったものの、
すぐに、芳樹の言葉を聞いて
”そうではない”ことを理解したー。

「ーそんな雑な罠に引っかかるとでも?」
芳樹はそう言い放つと、
「ー残念ですけど、俺は男だろうと女だろうと、二人には興味がないです」と、
それだけ言葉を口にして、
そのまま今度こそ立ち去ろうとするー。

「ーーーー…」
髪の長い女は、少しだけ不満そうな表情を浮かべると、
芳樹はさらに続けたー。

「ー俺、男が好きなので
 そういう姿されてると、興味が沸かないんですよねー」

別に本当は男好きではないもののー、
芳樹はとにかくこの二人から解放されたい、という思いで
そう言葉を続けるー。

この二人にどう思われようと関係ないー。
どうせ、二人と会うのはこれで最後だー。

だから、男好きと思われようとどうなろうと、
知ったことではないー

「ーーー…その姿じゃ、俺は何も感じないー
 話すだけ時間の無駄ですー
 それじゃ」

芳樹はそう言いながら、
二人組の女の前から立ち去り始めると、
髪の長い女と髪の短い女は、二人で顔を見合わせて、
それ以上は何も言うことはなかったー。

「ーは~~…ようやく解放されたー
 さて、スーパーで値引きされた弁当でも買って帰るか」

芳樹は、”結構時間を無駄にしちまったなーくそっ!”と
そう思いながら、そのまま少し離れた場所の
スーパーの店内へと、足を運ぶのだったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーへへへへー、この身体で断られるとはなぁ」
髪の長い女が、不満そうにしながら、近くのベンチに座ると、
髪の短い女も、隣に座って「まぁ、ああいうやつもいるよなー」と、
そう言葉を口にするー。

二人はー、自分の手や身体を見つめながら
「しかし、憑依ってすごいよなー」と、そう言葉を口にすると、
数日前ー、”この二人”に憑依した時のことを思い出したー。

”憑依している男”二人はー、
独身の40代男性二人組だったー。

一人は、笹倉 誠司(ささくら せいじ)ー、
もう一人は、長岡 健太郎(ながおか けんたろう)ー。

誠司と健太郎の二人は、同じ商社で働いていたサラリーマンで、
二人ともあまり趣味もなかったために、
”変わり映えのない日常”を送り続けていたー。

そんなある日ー、
髪の長い女の方に憑依している誠司が、
健太郎に対して言葉を口にしたー。

「なぁ、長倉ー
 この前の海外出張で、取引先から
 面白れぇもん貰ったんだけどー」

誠司がそう言葉を口にすると、
健太郎は「ん?」と、不思議そうにしながら、
持っていた缶コーヒーを飲み干すー。

「ーー憑依薬ー」
誠司がそう言葉を口にすると、
健太郎は「憑依薬?」と、表情を歪めるー。

誠司は、健太郎に対して
海外出張の際に取引先から貰ったのだという、
憑依薬について説明をするー。

そして、説明を終えた上で、
「ーなぁ、俺とお前でこれを使ってみようぜー」
と、そう言葉を口にする誠司ー。

「つ、使うってー?
 いやー……ー 
 でも、絶対他人に憑依するなんてこと、できるわけないだろ?」
健太郎は戸惑いながら、誠司のほうを見つめるー

「でももし、本物だったらー?」
誠司がそう言葉を口にすると、健太郎はゴクリと唾を飲み込むー。

「ー俺たち二人で、新しい人生を手に入れられるってことだぜー?
 どうせー、俺もお前も、このままだったら
 働き続けて、定年を迎えて、
 でー、大したこともないまま人生を終えるんだー

 だったらー、逆転のチャンスに賭けてみようぜー?」

そう言葉を口にしながら誠司は笑うー。

「ーーーーー」
比較的無口なタイプの健太郎は、少しだけ考えるような表情を浮かべると、
数秒後ー、顔を上げてから言葉を続けるー

「よし、やるかー」
とー。

こうして、誠司と健太郎の二人は”憑依”で他人の身体を
奪うことに決めてしまったー。

そしてー、
その翌日、誠司と健太郎は、憑依薬を飲んでから、
”好みの子”が現れるのを待っていたー。

憑依薬を飲んだ状態で、”相手にキス”をすることー
それが、憑依の条件ー。

「ーリスク高すぎだろー」
健太郎がそう言葉を口にすると、
誠司は「失敗したって別に俺たちに失うものなんてねぇだろ?」と、
そう笑うー。

「ーいや、全くないってわけじゃないけどー」
健太郎はそう言葉を口にすると、
「ーん?なんだ?まさか恋人でもできたってのか?この歳でー」
と、40代の自分たちを自虐するかのような口調で言うー。

すると、健太郎は「あぁ、いやー。来月、読んでる漫画の新刊が
発売されるんだよー。失敗したらそれ、読めなくなるなぁってー」と
そう言葉を口にするー。

「ーははは、なんだー、そんなことかー」
笑う誠司ー。

笑われたことに少しムッとすると、
「俺にとっては、大事なことなんだよ」と、健太郎はそう言葉を口にするー。

「ーへへーまぁまぁー
 万が一失敗したら、俺に脅されてやらされたって言えばいいー
 お前の罪は少しでも軽くなるかもしれないぜー?」
誠司はそう言うと、
健太郎は”なんだかなぁ”と、いうような表情を浮かべたー。

がー、その時だったー。

「おっ!」
近くの女子大の出入り口を見つめていた誠司が声を上げたー。

「あの二人組、可愛くないかー?」
誠司がそう言いながら指を指したのはー、
その大学に通っている、
園崎 千穂(そのざき ちほ)と、
倉沢 絵里(くらさわ えり)の二人だったー。

二人とも、髪の長い子で、
とても可愛らしい見た目をしているー。

誠司はニヤッと笑うと、
「あの二人にしようー」と、そう健太郎に提案するー。

健太郎も千穂と絵里の姿を物陰から確認すると、
「ーーーーーまぁ、悪くないなー」と、そう言葉を口にするー。

誠司は「いいか?すぐにキスするんだぞ?
そこで失敗したら、憑依薬が本物か偽物か以前の問題だからな?」と、
そう言い放つと、健太郎は、
「ーー…もし、憑依薬が偽物で、キスしても憑依できなかったらー
 俺はお前にやらされたって言うからなー?」と、
改めて確認するー。

「ーははー構わねぇよー。本物だって確信が俺にはあるから、
 そうはならないー」

そう言葉を口にして、誠司は千穂・絵里の二人に近付いていくと、
「すみませんー」と、千穂・絵里の背後から声をかけて、
振り返った千穂の方にいきなりキスをしたー。

「!?!?!?!?」
千穂が驚いた表情を浮かべているー。

それと同時に、健太郎は”あぁ、もう、どうにでもなれ”と
そう思いながら「ち、千穂!?」と、声を上げている
絵里の方にキスをしたー。

するとー、誠司がその場に倒れ込んだのが見えてー、
同時に健太郎の意識も薄れるような感覚がしたあとにー、
その場に倒れ込んでしまったー。

「ーーーー…!」
絵里が目を覚ますと、そこには、ニヤニヤと笑みを浮かべた千穂の姿があったー。

「ーーーー…~~」
絵里は、少しだけ不安そうに千穂のほうを見つめると、
千穂は「言っただろ?憑依薬は本物だってー」と、そう言葉を口にするー。

「ほ、本当に笹倉なのかー?」
絵里はゴクリと唾を飲み込みながら、目の前にいる千穂に
そう言葉を投げかけると、
千穂は、目の前で自分の両胸を揉んで見せながらー
「この子が、こんなことすると思うかぁ?」と、
ケラケラと笑うー。

「ーーー!!」
絵里に憑依した健太郎は、少しだけ戸惑いながらも
「う、嘘だろー…?夢みたいだー」と、そう言葉を口にすると、
「俺たち、本当に憑依できたんだなー」と、嬉しそうに千穂のほうを見つめたー。

千穂は「へへーそうそうー」と、
言いながら絵里の髪を触ると、
「これからたっぷり楽しもうな」と、甘い声でそう囁いたー。

それがー、
二人が憑依した時の出来事ー

その後、健太郎と誠司の二人の”身体”は死亡が確認されたものの、
二人にとっては、そんなことはどうでもよかったー。

やがて、絵里に憑依した健太郎は
”俺、髪が短い方が好みだから”と、絵里本人が伸ばしていた髪を
勝手にバッサリと切り、短髪でボーイッシュな雰囲気にイメチェンしー、
一方の千穂に憑依した誠司は、地雷系の服などを好んで着るようになったー。

そしてー、夜の街で二人で遊んでいたところ、
男が声をかけて来たりー、逆に自分たちが男に声を掛けたりするうちに、
”今の遊び”にたどり着き、今日、芳樹に声をかけたようにー、
男に声をかけては相手の反応を見て楽しんでいたー。

「ーさっきのやつ、全然ダメだったなー」
髪の短い女=絵里が、そう言うと、
髪の長い女=千穂が笑いながら、
「まぁ、明日もこの辺通るだろうし、明日こそ遊んでやろうぜ」と、
そんな言葉を口にしたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌日ー。

今日も仕事を終えた芳樹は、
昨日と同じ繁華街を通過して、
家へと向かっていたー。

昨日、声をかけて来たあのおかしな二人組と
また遭遇する可能性も考えたものの、
芳樹にとって、帰宅するために
”この道を通る”のが最も早いルートで、
このあたりの繁華街を迂回して通過するとなると、
10分か20分、そのぐらいの時間、帰宅が遅くなってしまうー。

あんな訳の分からない二人組のせいで時間を無駄にするのも
何となく腹立たしい気持ちだった芳樹は、
今日も昨日と同じ繁華街を通過して、
自宅へと向かっていたー。

がーー

「あ~!昨日のー。
 こんばんはー」

背後からそんな声が聞こえたー。

その声が聞こえると同時に、
芳樹は振り返ることもせずに、速足で歩き始めるー。

”うるせぇうるせぇー俺の仕事後の時間の邪魔をするなー”
芳樹がそう思いつつ、そのまま繁華街を突破しようとすると、
その”前”から、”男装した”髪の短い女=絵里が姿を現したー。

「ーー!」
芳樹が仕方がなく立ち止まると、
背後から「今日もお疲れ様ですー」と、
昨日の髪の長い女ー、今日は髪を束ねている千穂が、
そう言葉を口にするー。

やはり千穂も男のような格好をしていて、
昨日と違うメイクの雰囲気だー。

「ーー男が好きなあなたのために、
 ちゃんと男として今日は会いに来ましたよー」
憑依されている千穂がそう言葉を口にしながら、
芳樹を見つめると、
芳樹は大きくため息を吐き出してからー、
「ーーあぁーー面倒臭いなー」と、そう言葉を口にしたー

③へ続く

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次回が最終回デス~!

憑依されている二人組に翻弄されている
彼の運命を見届けて下さいネ~!

今日もありがとうございました~!!

続けて③をみる!

「どう考えてもそうは見えない」目次

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