隣人の暴言ばかりの女性配信者に
憑依してしまった彼ー。
状況が分からないまま、何とか元に戻る方法を
探そうとするもー…?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
部屋に戻った茉莉は、
ネットで”憑依してしまった どうする?”
などと検索してみるー。
しかしー、表示されたのは
悪霊に憑依されてしまっただとか、
小説投稿サイトの小説だとか、
そういったものばかりー
「あぁ、くそっ!」
茉莉はそう言葉を口にしながらも、
「あ~いい声で余計にむかつくー」と、
自分の口から出る茉莉の声にも不満を感じるー。
「俺が平沢さんと同じような内容で配信してたら
絶対に炎上するか、そもそも誰も見ないかどっちかだもんな」
茉莉に憑依した洋平は、そんな不満を呟くー。
「あ~あ…可愛いってずるいなぁ」
自分が悪口を言われていたことを知ってしまったからか、
尚更茉莉のことが嫌いになった洋平ー。
見た目が良くて、声も良くてー、
でも性格は最悪ー。
それでも、茉莉の暴言配信は人気で、
それなりに登録者数もいるー。
「ーーーん?」
ふと、パソコンがつけっぱなしになっていることに気付いて、
色々なものを確認していくー。
「あ~~~…」
その気になれば、茉莉の身体になった自分は、
茉莉として”配信”することもできそうだー。
一瞬、”大嫌いな”茉莉が二度と配信するようなことが
できなくなるような”内容”の配信をしてしまおうかと、
そんな黒い感情が芽生えるー。
がーー
パソコンの画面に反射した”茉莉の顔”が
邪悪な笑みを浮かべていることに気付いて、
思いとどまるー。
「ーー…ーー俺、今、あんな怖い顔をー…」
茉莉の身体で、怖い顔をしてしまったことを後悔しながら、
罪悪感を覚えるー。
「ーーひ、平沢さんがしてることは
褒められたことじゃないけど、
だからと言って、俺にそれを壊す資格なんてないよなー」
茉莉の身体でそう呟くと、ため息を吐き出すー。
もちろん、配信の中で暴言を言われていた洋平には、
茉莉に文句を言う資格はあるかもしれないー。
しかし、こんな風に不本意とは言え、身体を乗っ取ってしまった状態でー、
茉莉本人が反論も抵抗もできない状態で、
反撃するのは卑怯な気がして、思いとどまったー。
「ーーーー」
こうして、勝手に隣人女性のパソコンを見つめるのも、
アレだよなぁ、などとそう思いながらも、色々なものを
見つめていくー。
そしてーー
「~~~~~っっ…」
茉莉は思わず不満そうに舌打ちをするー。
それもそのはずー…
茉莉の”収入”を確認できるファイルをパソコン内で見つけて
なんとなくそれを眺めてしまった洋平はー、
社会人2年目である自分よりも、茉莉の方がはるかに収入が多いことを
知ってしまったのだー。
「ーーー…ーーは~~~、やっぱ嫌いだ」
茉莉の身体で、不満そうにそう呟いた洋平は、
その場で頭を抱えたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
元に戻ることができないまま、時間ばかりが経過していくー。
さっき、トイレに行きたくなった際には
”お、女としてトイレに行くなんてーダメだー”と、
粘っていたものの、やがて漏らしそうになってしまい、
”も、漏らすのはもっとダメだ!”と、顔を真っ赤にしながら
トイレに駆け込んだー。
異性の身体でのトイレは、物凄く違和感があるー。
けれどー、それをなんとか済ませて、
元に戻る方法をあれこれ調べたり、何か手がかりはないか
探し回るー。
けれども、手がかりはなくー、
茉莉の身体で変な事をすることもできないまま、
夜を迎えたー。
「ーね、寝れば治るかー?」
茉莉はそんなことを呟くー。
起きたらこうなっていたのだから、
寝れば治るかもしれないー。
そんな希望を抱きつつ、茉莉に憑依してしまった”初日”を終えるのだったー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーも、戻ってないー」
翌日ー。
茉莉の身体のまま、絶望の表情を浮かべる洋平ー。
残念ながらー、寝ても元に戻らなかったー
困惑しながらも、どうしていいか分からず、
そのまま過ごすことになってしまいー、
途方に暮れるー。
「ーそうだー…直前の配信とか、色々見てみるかー」
茉莉になってしまった洋平は、そんな言葉を呟くと、
”茉莉”が憑依される前に配信していた内容を
確認し始めるー。
”次回の配信は明日の20時から!
え??なに?もう見ない?は?消えろよ”
最後の配信のラストでは、そんな言葉を口にしていたー。
相変わらずリスナーのコメントに喧嘩腰で対応していたようだー。
「ーって、明日の20時って昨日じゃんー
配信すっぽかしちゃったなぁ」
茉莉の身体でそう言葉を口にしながらも
「まぁ、俺には無理だしー」と、そう呟くー。
そして、さらに動画の内容を確認していくとー、
ふとー、
あるシーンがひっかかったー。
”え~?これマジで何なの?
美味しいの?”
茉莉が、リスナーの一人から送られてきた
”謎の飲み物”を飲む場面があったのだー
たしかーー
憑依してしまう前日、洋平がお風呂に入ろうと
準備をし始めたころ、
そんなやり取りをしていた気がするー。
「ーこの飲み物はなんだー…?」
茉莉の”最後の配信”の内容におかしなところはないー。
相変わらず腹立つぐらいの暴言まみれの配信ではあるものの、
言ってしまえば、”いつも通り”だ。
がー、リスナーから送られたという、少し不気味な色の
飲み物を、茉莉が飲んでいるシーンがどうしても気になったー
”まずっ!こんなもの送らないでよ!死ね!”
茉莉がそんな言葉を口にしているー。
それ以降、茉莉は普通に配信して、最後に”明日の20時”と予告して、
そのまま配信を終了しているものの、
次の日にはこの通りだー。
「ーーー…これが、原因だったりするのかー?」
茉莉は表情を歪めながら、
配信をさらに確認して、”この飲み物”を送ったと思われる
リスナーを発見したー。
”黒いアザラシ”
そんな名前の人物に、茉莉に憑依してしまった洋平は
連絡を取ったー。
するとー
”ーーあなたは誰ですか?”
と、そう返事が返って来たー。
茉莉の配信者としての名前を名乗ると、
”本当ですか?”と、何度も確認してくるー。
茉莉に憑依している洋平は困惑しながらも
「どうして、そこまで疑うんですか?」と、そう言葉を口にすると、
渋々と、”黒いアザラシ”は言葉を口にしたー。
”その身体に憑依している別人ーではありませんか?”
とー。
「ーーー!!!!」
茉莉は驚きの表情を浮かべると、
”意味が分かりません なんでそんなことを?”と、そう返事を返すー。
本当は、すぐに話を聞きたかったものの、
”配信中に茉莉が飲んでいた液体”が原因とはまだ確証が持てなかったため
回りくどい確認を繰り返していくー。
相手の”黒いアザラシ”もそんな感じだったー。
そして、ついにー
”そうですー。僕の送った飲み物のせいですー”
と、”黒いアザラシ”がそう認めたー。
”黒いアザラシ”から話を聞く茉莉に憑依した洋平ー。
その結果ー、茉莉が配信中に飲んでいた飲み物は
”他人の魂を自分の中に憑依させる”力を持つ飲み物だと判明したー
”黒いアザラシ”は、茉莉のファンだったものの、配信中に
とある暴言で大恥をかかされたことがあり、
それ以降、復讐を目論んでいたようだー。
そして、
茉莉の性格上、”リスクがあっても、負けず嫌いだから飲むはず”と、
茉莉に”他人に憑依される薬”を送りつけて、
思惑通り、それを飲ませたー。
その薬は就寝後、”一番近くの人間の魂”を吸い寄せて
自分に憑依させる力を持ち、
結果、”寝ている茉莉の一番近くの人間”は、隣人である洋平であったため
洋平が茉莉に憑依してしまったのだー。
”ーご迷惑をかけてすみませんー
ただー。あなたも彼女に馬鹿にされていたようですし、
どうですかー?
その身体、見た目だけは可愛いですし、上手く配信者として
やっていけばー、いい人生、送れるかもしれませんよ?”
黒いアザラシがそう言葉を口にするー。
「ーーい…いやいやいや…えっ…!?」
洋平は茉莉の身体で戸惑うー。
”憑依”は仕組まれたものだったー。
確かに、見た目だけ良くて、
アパートの廊下ですれ違った時の外面はいいけれど、
毎日暴言ばかりの茉莉のことは嫌いだー。
この”黒いアザラシ”を名乗る男の気持ちも分からないでもないー。
別にファンでなくても、彼女の暴言ばかりの配信は
どうかとも思うー。
けれどー
”じ、じゃあ、俺は元に戻れないってことですかー?”
”そうなりますね”
黒いアザラシの無情な返答に、茉莉に憑依してしまった洋平は
呆然としながら、パソコンの画面を見つめることしかできなかったー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
最初は落ち込んでいた洋平ー。
茉莉にずっと憑依したまま、ということは
洋平は死んだも同然だー。
”俺の身体、ずっと寝てる状態ってことかー…
家賃とかどうすりゃいいんだー?
いやー…もう、自分の身体には戻れないんだし、
家賃払えなくて追い出されても、それはそれでいいのかー…
職場もあまりいい職場じゃなかったしー…
放っておけばいいかー…”
茉莉になった洋平は、
だんだんと”茉莉”として配信をするようになりー、
元の茉莉がしていたような暴言はやめて、
”営業職”だったトークスキルを活かして、
また、茉莉の美貌を活かしてコスプレなどをしながら
配信を続けていたー。
元の茉莉とは全然違う配信にはなったもののー
それはそれで人気となって、
今では”茉莉”として、”配信者”として、
それなりにー…いや、元々の自分の人生よりも
楽しい人生を送っていたー。
隣人であった茉莉ー…平沢さんに憑依して
結果的にその人生を奪ってしまう形になってしまったのは
悪いとは思うけれど、
洋平自身が仕組んだことではないし、
そもそも”もう元に戻れない”のに、ずっと悩んでいたら
自分の人生を無駄にしてしまうー。
自分が仕組んで茉莉の人生を奪ったならともかく、
巻き込まれただけの洋平がずっと悩んでいても仕方がないー。
だったら、この身体で生きていくしかないと
ポジティブに考えていたー。
そんな、ある日ー
「ーーそれにしても、やっぱみんな、平沢さんの見た目
好きなのかなぁ」
茉莉として過ごす洋平は、
リスナーの反応を見ながら微笑むー。
そして、明日もまた配信をするために、
その準備をしていると、インターホンが鳴ったー。
「ーーはい」
茉莉が応答すると、
そこにはー”警察官”の姿があったー
「?」
茉莉はそう思いつつも
”あ……隣の部屋の俺がずっと意識不明だから、その関係かなー”と、
そう心の中で呟くー。
洋平が意識不明のまま会社にも行かず、家賃も払っていないー。
そんな状況で誰かが通報すれば、隣人に聞き込みに来るかもしれないー。
そう思いつつ、茉莉がやってきた警察官に対応するため、
玄関の扉を開けると、
警察官が言葉を口にしたー
「平沢 茉莉さんですねー」
警察官の言葉に、茉莉は「はい」と返事をするー。
するとーーー
警察官は言ったー。
「隣人の乃村 洋平さんの件について、お話を伺えますかー?」
とー。
「ーえ、あ、はいー」
茉莉はそう言葉を口にするー。
がーー
「ーー乃村 洋平さんの死亡当日、
あなたが乃村さんの部屋にベランダから侵入したという
目撃情報がありましてねー」
警察官のその言葉に、
茉莉は目を見開くーー
茉莉に憑依してしまった初日ー、
洋平は、”自分の身体”がどうなっているのかを確認するため、
ベランダ経由で隣の部屋である自分の部屋に侵入したー。
そしてー、自分の身体の状況を確認、玄関から出て
茉莉の部屋へと戻ったー。
しかしー、それを誰かが目撃していた上に、
憑依で中身がなくなった影響か、
洋平の身体はその日の夜に既に死亡してしまっていたー。
がー、それ以降、洋平の部屋に、茉莉に憑依した洋平は
一度も入っていなかったため、気付かなかったー。
そのためーー
”洋平の死亡当日、ベランダから洋平の部屋に入った茉莉”に
殺人容疑がかかってしまっていたのだー
「えっ…あ、いやー、俺ー、いや、わたしはー」
茉莉が慌ててそう言葉を口にするー。
しかしーー
あの日ー、”また俺の部屋に帰る機会があれば”と
回収しておいた洋平自身の部屋の鍵が、茉莉の家の中にあるのも
発見されてしまい、余計に疑いが膨らんでしまうー。
「ーーちょっと待て!!ち、違うんだ!」
茉莉はそう叫ぶー。
けれどもーー
茉莉はそのまま、警察に連行されてしまい
とんでもないことになってしまうのだったー
おわり
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
ただ巻き込まれ続けただけの
災難な憑依でした~……★
憑依した初日に自分の部屋に侵入していなければ…
快適な配信者ライフ(?)を送れたかもですネ~!
お読み下さりありがとうございました~!★!
コメント
洋平くんの災難だらけでしたネ…あわわわ~!汗
細かい展開がさすがっ!!
無名さんマジック!☆!★
飲み物が原因だと気付きましたがハッピーエンドと思いきや…全て繋がってましたネ(-_-;)汗
自分がマリに憑依したら
脱童貞くんプロデュースやモテ男くんになるプロデュースやお悩み相談の配信をサブチャンネルで( *´艸`)笑
マリは見た目いいしお肌のケアやメイクの仕方など配信や動画アップしたいですネ☆笑
あとインスタも超ミニスカ履いてオシャレに着こなしてマメにアップして稼ぎたいのデス笑
マリの見た目も維持したいので日頃からのケアやジムなど日々の努力はしっかりするのデス\(^o^)/笑
洋平くんはひたすら巻き込まれちゃった
可哀想な子なのデス…!
飲み物に気付いたTSマニアさま…☆!
勘がだんだん鋭く…☆!
見た目を維持するのは大変なので、ふぁいとデス~!笑
茉莉は性格に大いに問題あるとはいえ、理由のわからない内に人生乗っ取られて、さすがに少し気の毒ですね。
洋平も自分殺しの犯人と誤解されて大変です。しかし、いくら怪しい行動があっても、やってないものはやってないのだから、その内、釈放されそうですが。
それにしても、憑依する薬ではなく、憑依させる薬というのはとても面白い、斬新なアイテムですね。またいつか、同じ薬が出てくる他の話とか読んでみたいです☆
感想ありがとうございます~~!★
二人とも災難な目に遭ってしまいましたネ~…!
憑依させる薬…★
確かに言われてみれば珍しいですネ~!
また機会があれば登場させるかもデス~!!