<憑依>節約のための憑依①~ケチな男~

彼が”憑依”する目的は
他の憑依人たちとは少し異なっていたー。

彼の憑依理由ー
それは”節約”するためー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーーぁ…」
ビクッと震える女子大生ー。

”男”に憑依されてしまった彼女は
彼氏と楽しそうにメッセージのやり取りをしていた手を止めて、
無表情になると、そのままため息を吐き出して、
「さて、とー」と、そう言葉を口にするー。

当然、彼氏と楽しいやり取りをしていたのを
”急にやめる”などということは、
この子の望んだことではないー。

けれど、人間は”憑依”には逆らえない。
”憑依”されてしまえばそれに抗うことは出来ず、
身も心も”憑依”した側に完全に支配されてしまうー。

憑依された女子大生は暖房をつけると、
そのまま、スマホを手にネットで
サイトを見たり、動画を見たりをし始めるー。

「ーーーーーー」
が、そういった”普通のこと”しかしておらず、
特に乗っ取った子の身体で
胸を触ったり、揉んだり、過激なコスプレをしたり、
そういうことをする様子も見受けられないー。

只々普通に”くつろいでいる”だけー。

時折、かゆそうに太腿のあたりを触ったり、
だらしない姿勢をしたりはしているものの、
それもただ単に”足がかゆいからかいた”だけで、
だらしない格好も、彼女に憑依している人物が
”男”で、元々そういう格好でよく本を読むから、
他人の身体でも”そのまま”なだけだったー。

「ーーーーー」
結局彼は0時ぐらいまでダラダラすると、
憑依している女子大生の身体で
「そろそろ寝る時間か」と、そう呟くと、
そのまま女子大生の身体から抜け出し、
自分の”家”へと戻っていくのだったー。

”何かをするわけでもなく、ただダラダラしていただけー”

そんな憑依人の目的は、
他の憑依人からすると、”なかなか理解しがたいもの”
であるのは事実だったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・

”ケチすぎる”ー
周囲からそう言われ続けてきた男、
迫田 将介(せこた しょうすけ)ー。

そのケチっぷりは恐ろしいほどで、
彼の妹・茜(あかね)はもちろん、
両親までも”将介はケチすぎる”と、
そう言葉に漏らすほどー。

そして、大学でも友達から、
”迫田はセコすぎる”などと言われてしまっていて、
その異様なまでの倹約ぶりは、
周囲を時に戸惑わせていたー。

「ーーまた、それかー」

「ー安いからなー」

大学ー。
昼食の食堂で、近くのスーパーで購入した
半額ー…50円ほどのおにぎりと、
具もほとんど入っていない100円ちょっとで複数入っている
インスタント味噌汁を口にしながら、
将介はそう言葉を口にしたー。

「ーー腹、減らねぇのかよー…?」
将介の友人の一人、守亮(もりあき)が少し戸惑いながら
そう言葉を口にすると、
「心の中で”俺は喰った”って念じ続けると、満腹になるんだよ」と、
そんな言葉を返してきたー。

「ーーよ、よくそんなんで倒れねぇなー…」
守亮がそう言うと、
「ー安いサプリメントでも栄養を補給してるし、問題ない」と、
将介は堂々とそう宣言してみせるー。

どうやら、100円ショップで販売されているような
安いサプリメントで栄養を補給しているらしいー。

「それ、絶対よくないやつだろー」
健康に良いとは思えない、と、守亮がそう言葉を口にすると、
将介は「倒れなきゃいいんだ。倒れなきゃ」と、そう言葉を返した上で、
「それにー…昼メシ喰ってるだけ今日はマシな方だろ?」と、
笑いながらそう言葉を口にしたー。

確かに将介は”昼食”すら取らないことも多い。

50円のおにぎりとインスタント味噌汁だけとは言え、
今日はこうして食べているだけマシなのだー。

「ーこのラーメン、安くてうまいのにー」
守亮は少し戸惑いの表情を浮かべながら、
そう言葉を漏らすと、
「390円だろー?俺のメシは約60円だ」と、
自慢気にそう言葉を口にするー。

「ーー~~~~~」
守亮は”ダメだこりゃ”と思いながらも、
”まぁ、将介のそこを見てるのが面白いんだけどな”と、
内心でそんな風にも思うのだったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーーー」

大学での1日が終わると、
今日はバイトがなかったため、将介は
徒歩で2時間の道のりを歩いて帰宅した。

バスや電車を使えば30分程度でも
帰宅できるものの、
”とにかくセコい”将介は、
「電車代払うなら歩くだろ」と、
そう言葉を口にしていたー。

そして、2時間の道のりを帰る最中に
100円ショップに立ち寄ると、
そこで、サプリメントを購入するー。

夕食らしきものも並んでいたものの、
それには目もくれずにそのまま店から出ると、
将介はそれから1時間近く、再び歩いて、
ようやく、自分のアパートに到着したー。

バイトがある日は、バイトに遅刻してしまうために
流石に電車やバスを利用するものの、
バイトがない日はいつも”こう”ー。

”家にいない方が電気代もかからないし、水道代もかからないからな”と、
そんなことも将介は口にしていた。

そしてー…
帰宅した将介は、家の電気も暖房もつけることなく、
その場で目を閉じるー。

彼はーー
”憑依人”ー。
他人に憑依することができる能力を持つ人間だー。

彼は数年前にそこそこの金額の”憑依薬”を購入ー、
それを飲んだことにより、以降、自由に幽体離脱して
他人に憑依することができるようになったのだー。

家の中にも、何の娯楽用品もないような、
”超”がつくほどセコい彼が、憑依薬を購入したのには理由があるー

それはー…
”節約”のためー。

異性に対してドキドキするとか、そういった目的よりも、
Hなことをしたいとか、そういう目的よりも、
彼は憑依薬を見た時にまず”これがあれば節約できる”と、そう思ったー。

憑依薬と出会った時に、第1に”節約”を頭に思い浮かべてしまうような
人間は、彼ぐらいしかいないかもしれないー。

数万円という価格ではあったものの、
この先の長い人生、憑依薬を使って他人に憑依することで
”節約”できると彼はそう考えたのだー。

何故、憑依薬が”節約”に繋がるのかー。

それはーー

「ーーーよしー」
自分の身体から幽体離脱した将介は
そのまま「今日は茜でいいかー」と、そう言葉を口にするー。

憑依薬による節約ー。
それは、”自分の身体”で生活をしないことによって
自分の家の電気代・暖房代・水道代、
それらを節約することができるー…という節約だー。

自分の身体が低体温になってしまうと困るため、
夜、睡眠をとる時と同じように、布団をかけた状態にした上で
幽体離脱、少なくとも低体温で死んでしまう、などというようなことに
絶対にならない状態を作り出した上で、
将介は、”他人の身体”を求めて飛び立つー。

自分の身体ではなく、他人の身体に憑依して生活すればー、
光熱費を大幅に削減できるのだー。

彼の憑依は”そのため”の憑依ー
乗っ取る身体は”メインの目的”ではなく、
女だけではなく、男に憑依することもあるー。

ただ、たまたま現在”憑依しやすい環境にいる相手”が
異性が多いために、異性に憑依する機会が多いものの、
根本的には、彼は”どっちでもいい”と、さえ思っていた。

彼の憑依は”欲望を楽しむため”のものではなく
”節約するため”のものなのだからー…。

「ーーうっ…」
今日は妹の”茜”に憑依した将介ー。

「ごめんな茜。俺がケチだってことは知ってるだろ?
 自分の光熱費もケチりたくてなー」
将介は笑いながらそう呟くー。

もちろん、”茜”にその言葉は届かないー。
今は将介が茜の身体で喋っている状態であるために
言葉は届きようがないー。

「ーーー…なんて謝っても、本人には聞こえないんだけどなー」
茜に憑依した将介は、どこか自虐的にそんな言葉を口にすると、
そのまま椅子に座って、茜のスマホを弄り出すー。

「ーーーーーー」
妹に憑依して、色々と欲望のままにお楽しみをする人間も
いるかもしれないー。

しかし、彼、将介の場合はそういったこともせず、
只々、淡々と”節約のための憑依”をするだけだったー。

茜の身体ですることと言えば、
自分のー…将介自身の趣味の動画を見たり、
ネットで調べ事をしたり、そういったことをする程度ー。

茜に限らず、異性の身体に憑依したから
胸を揉みまくってやろう、みたいなこともないし
色々なポーズをしてみよう、みたいなことも
色々な表情を楽しんでみたい!みたいなことも
そういったこともないー。

彼はただ、ひたすらに他人の身体で”節約”することだけを
追求していたー。

こうして茜の身体に憑依していれば
自分の家は電気を全く付けずにいられるために
”電気代”はかからないー。

水道を使うこともないから、水道代もかからないし
ガス代もかからないー。
その上、こうして幽体離脱している間は通常よりも
自分の身体のエネルギーを使わずに済むため、
食費を浮かせることにもつながるー。

流石にお風呂だけは、乗っ取った他人の身体で
入っても、自分の身体が綺麗になるわけではないため、
”入らない”という選択をすることはできないけれども、
それ以外の費用に関してはかなり浮かせることができるー。

そしてー…将介は”憑依する対象”は、
必ず一人暮らしの人間を選ぶようにしているー。

家族や恋人と同居しているような人間の場合、
将介自身が”どう振る舞って良いのか”、ハッキリと理解できないまま
変な対応をしてしまい、トラブルになる可能性もあるからだー。

乗っ取る相手のことを考えているー…
と、いうこともそうだし、
憑依する側である将介自身にとっても、トラブルに
巻き込まれるのは”面倒”と、そう思っているため
その点は気を付けているー。

加えて、憑依した相手の”記憶の調整”も楽で、
将介の使った憑依薬には、憑依した相手の記憶を
”ある程度補正できる”力を持っているー。

流石に乗っ取った身体で、”本人が絶対にしないようなこと”を
させたりした場合、補正しきれないこともあるものの、
将介のような憑依した後にただスマホを眺めている…ぐらいであれば
簡単に”のんびりしていた” ”寝落ちしていた”みたいに、
乗っ取った側の記憶を調整することも可能なのだー。

もちろん、将介に乗っ取られている間に
本人が何をさせられていたかなど、そう言った記憶は
残さないようにしつつ、本人自身も違和感を抱かないように
することができるー。

「ーーしかし、茜もどんどん可愛くなるよなー」
スマホでサイトを見つめ終えた将介が、
鏡で茜をー、今は”自分の身体”である茜の姿を
見つめると、感心した様子で言葉を口にするー。

「ーーーーー」
しばらくじっと、茜の姿を鏡で見つめる将介。

がー、茜を見つめているのも、ただ単に
兄の目線で”茜も成長したなぁ” ”茜も可愛くなったなぁ”と、
思っているだけで、Hな気持ちになったりしているわけではないー。

「ごめんなー。週に1,2回だから許してくれよー?」
茜の身体でそう言葉を口にすると、将介は再び座って、
茜の部屋にある本を読み始めるー。

茜が小さい頃から好きだったような少女漫画だー。

将介自身、少女漫画に興味があるわけではなかったものの、
”節約のため”に憑依した相手の家に漫画だったり、映画などのDVDやブルーレイだったり、
ゲームソフトだったり、そういったものがある場合は
”暇つぶし”に遊ぶことがあるー。

これもー、そう。節約だ。

たとえ興味のないものであっても、
暇つぶしになることもあるし、
将介からしてみれば、未知の世界でもある”少女漫画”を読むと
予想以上に面白いモノもあるー。

「お、新刊が増えてるぞー」
茜の身体で嬉しそうにそう言葉を口にした将介は、
前にも茜の家で読んだ漫画の”最新刊”があることに気付いて
嬉しそうにそれを読んでいくー。

こうして”他人の身体で”面白いと思った漫画も、将介は
自分では決して買わない。
また、その子の身体に憑依して、その子が新しい巻を買ったら
将介もそれを楽しむのだー。

「ーーへへ 面白いなぁこれー」
茜の身体でそう呟く将介ー。

今日も彼は”節約のための憑依”を続けるのだったー。

②へ続く

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コメント

欲望のための憑依ではなく、
節約のための憑依…!
(節約したい…!っていうのも、ある意味欲望かもですケド…笑)

憑依にも色々ありますネ~!

続きはまた明日デス~!

続けて②をみる!

「節約のための憑依」目次

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