<憑依>前世の記憶①~蘇る記憶~

彼女の”前世”は憑依されて終わったー。

ある日、突然
その時のことを思い出してしまった彼女の運命は…?

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「ーーえ~?ホントに?
 よかったね~!」

とある高校ー
教室で友達と楽しそうに話をしていた、
堀里 深夏(ほりさと みなつ)は、
笑顔でそんな言葉を口にしたー。

心優しい性格の彼女は、男女問わず人気があって
友達も多かったー。

「ーーうん!深夏ちゃんのアドバイスのおかげー」
深夏に対してそんな言葉を口にするのはー、
深夏の友達の一人、平川 雅美(ひらがわ まさみ)ー。

雅美には少し前から気になる男子がいて、
そのことを深夏に相談ー、
昨日、ついにその男子に告白してOKを貰えたようだったー。

「わたしは別に大したことはしてないし…
 雅美ちゃんが頑張ったおかげだよ!」
深夏がそう言葉を口にすると、
「でも、ホントによかったね~」と、まるで自分のことのように、
雅美の”告白成功”を喜ぶのだったー。

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「ーーお待たせ~!」
放課後、深夏がそう言葉を口にしながら、
隣のクラスの男子生徒・笹島 圭太(ささじま けいた)の元に
駆け寄って来るー。

「あ、深夏ー」
圭太がそう言葉を口にすると、
少し照れ臭そうにしながら
「まだ”彼女”と一緒に帰るーってこの状況に慣れないんだけどー」
と、そんな言葉を口にする圭太ー。

「え~?ちょっと~?もう付き合ってから半年になるのに~!?」
深夏が苦笑いしながら言うと、
圭太は「僕ー、彼女とか初めてだし、それにー…」と、
そう言葉を口にすると、深夏の方を見つめるー。

「ー小さい頃から遊んでた記憶がありすぎてー
 彼女…っていう響きに慣れないというかー」
圭太が困惑しながら言うー。

深夏と圭太は幼馴染同士ー
偶然、高校も含めて学校が一緒で、
半年前、二人は幼馴染から恋人同士にステップアップしたー。

「ーーた…確かに、その気持ちも分かるけどねー」
深夏も、少しだけ笑いながら圭太の気持ちにも理解を示すー。

「ーでも、呼び方が他人行儀になり始めた時はショックだったなぁ~」
深夏が思い出すような仕草をしながらそう言葉を口にするー。

「そ、それはーごめんってばー」
圭太は笑うー。

小さいころ、よく一緒に遊んでいる頃は
”深夏ちゃん”と呼んでいた圭太ー。

けれど、中学時代になったころぐらいからだろうかー。
次第に異性としても意識するようになったのか、
”堀里さん”と、深夏のことを呼ぶようになったー。

それは高校に入って、付き合い始めるまで続いてー、
付き合ってからも”堀里さん”と呼び続ける圭太に対して
「昔みたいに、深夏って呼んでくれたほうがいいなー」と、
そうお願いしたことで、呼び方が元に戻ったー。

「ーまぁ…でも、僕はまだ、”深夏”って呼ぶたびに
 ドキドキしてるんだけどー」
圭太がそう言うと、深夏は「え~~~」と笑いながら
「小さい頃は普通に呼んでたのにね?」と、揶揄うー。

「ーそ、それはー、そういうものだし!」
圭太が顔を赤らめながら言うと、
「名前なんて、ただの文字列だと思えば大丈夫じゃない?」と、
深夏が揶揄うようにして笑うー。

圭太も楽しそうに笑いながら、深夏との下校を楽しみつつ、
道を歩くー。

がー、そんな二人の後ろ姿を、
一つ上の学年の男子生徒・寺門 譲司(てらかど じょうじ)が、
不満そうに見つめていたー。

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学校生活も順調ー。
両親との関係も良好ー。
彼氏である圭太との関係も良好ー。

深夏は何ひとつ不安のない学校生活を
送っていたー。

今日、この日まではー…

けれどー…

その日の夜ー。

深夏は”ある夢”を見たー
妙に生々しい夢ー。

その夢の中では、深夏は
内田 幸恵(うちだ ゆきえ)という子になっていてー、
今から、50年以上も前ー、
まだ”昭和”と呼ばれていた時代が舞台の夢だったー。

夢の中の”幸恵”は、
男に追い回されていて、
やがて、路地裏に追い込まれていたー。

「ーーククククー
 お前の身体は、俺が頂くー」
”幸恵”に追い付いた男はそう言葉を口にすると、
”幸恵”が「や、やめてください!」と必死に叫ぶー。

が、男は笑みを浮かべると
「お前はこうなる運命だったんだよー」と、
そう言葉を口にしながら
夢の中の深夏ー、”幸恵”にキスをしたー。

幸恵の意識は、”そこで”途切れるー。

そしてー、
次の目を覚ました時には、
”血”を流して倒れていたー

「ぁ… あ… ぁ… ああああ…」
”幸恵”が目に涙を浮かべながらそう言葉を口にすると、
横に幸恵に憑依して散々好き放題をしてきた男が
立っていて、笑みを浮かべていたー。

「悪いなー。お前の身体で好き放題やりすぎて
 恨みを買っちまったー。
 もうお前の身体はダメだー」
男はそう言葉を口にすると、
最後に邪悪な笑みを浮かべながら”一言”付け加えたー。

そして、
苦しそうにする”幸恵”を無視して、
そのまま立ち去っていくー。

「ーーぁ… ぁ…ぅぅぅ…」
苦しそうに立ち上がろうとするも、
身体から血を流していた幸恵は、
そのまま力尽きて、起き上がることができないまま、
命を落としてしまうのだったー。

「ーーー!!!!!!!!」
そんな妙に生々しい”夢”を見た深夏は
荒い息を吐き出しながら
「い、今のはー」と、頭を抑えるー。

それと同時にー
”内田 幸恵”としての人生が深夏の中に流れ込んで来て、
深夏は驚きの表情を浮かべるー。

内田 幸恵ー
それは、深夏の”前世”ー。

昭和の時代を生き、
当時、高校生だった頃に”男”に憑依されて、
散々、身体を使われた挙句に命を落としたー。

「ーーーー…ーーー…」
深夏は困惑の表情を浮かべるー。

急に”前世”の記憶が戻ってしまったのだー。
内田 幸恵の生まれてから、死ぬまでー。
その記憶が唐突に蘇ってしまったー。

どうして、そんなことが起きたのかは分からないー。

けれど、これは夢じゃないと確信できるぐらいにー、
ハッキリと前世の記憶が蘇ってしまったー。

もちろん、全部ではない。
赤ちゃんの頃の記憶は”現世”と同じように残っていないし、
今、生きている人間だって当然、今までの出来事の中で
忘れてしまっている出来事はあるし、
それは深夏だって同じことー。

けれど、”内田 幸恵”がどう生きていたかー、
それは全て分かってしまうぐらいにハッキリ、鮮明と
記憶が蘇ってしまったー

「ーーーー…わたしはー……ーーー…幸恵ー…」
深夏は表情を曇らせながらそう呟きながら
”憑依されて終わった”自分の前の人生を改めて思い出し、
困惑するー。

がー、少し間を置いてから深夏はため息を吐き出すと、
「ー前世は前世ー今は今ー、だよね」と、そう言葉を口にしてから
「ー今のわたしは深夏だからー」と、
前世に振り回されずに、”今の人生”を生きなくちゃ、とそう決意するー。

ただー

「ーどうして、今のタイミング”前世”のことなんて思い出したんだろうー…?」
深夏は困惑の表情を浮かべるー。

”人間は生まれ変わるー”
前世の記憶を思い出したということはそういうことなのだろうー。

そのことに驚くと同時に、
”なんで、今になって前世のことを思い出したの?”と、
そんな不安も覚えるー。

何か、意味があるのだろうかー。
それとも、たまたまこのタイミングで思い出したのだろうかー。

そんなことをしばらく考える深夏ー。
けれども、答えは出ないー。

深夏はため息を吐き出すと
「あまり、考え過ぎちゃうのも良くないよね」と、
そう言葉を口にしてから、
「ーまだ起きる時間まで1時間ちょっとあるし、
 今日も学校だから、ちゃんと寝ておこっと」と、
前向きな表情を浮かべるのだったー。

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結局、あまり眠れずにやってきた深夏ー。

自分の前世
”内田 幸恵”の記憶をハッキリと思い出してしまった深夏ー。

幸いだったのは、前世の自分も
”今の自分とかけ離れた性格ではなかった”
ことだろうかー。

もちろん、全く同じ性格ではなかったし、
生きている時代も昭和と今では随分と色々なことも違うから、
考え方の違いもあるけれど、
少なくとも、前世の自分が大悪党だったりしたわけではないし、
男であったわけでもないから、
そういった部分では救いだった。

例えば前世が男で、大暴れしていたような人間だったら、
その記憶を全部思い出したら
”今のわたし”との差があり過ぎて
この先、自分がどう生きて行けばいいのかも分からなくなってしまうー。

最悪の場合、今回は女として生まれたのに
自分にドキドキしてしまうようなことにもなりかねなかったー。

でも、内田 幸恵は、今の自分ー、堀里 深夏と性格的には
大体同じであるために、
そういう、”前世の自分との狭間で苦しむ”みたいなことは
起きずに済んでいた。

「ーー大丈夫?」
彼氏の圭太が心配そうに、そんな言葉を口にするー。

「えっ!?だ、大丈夫って?」
深夏が少しハッとした様子で言うと、
「ーーえ、あ、あぁ…あのーなんだか、元気ない気がするから」
圭太が苦笑いしながらそう言葉を口にすると、
深夏は「あ、あははーそんなことないよー。ごめんね」と、
そう言葉を返すー。

”前世の記憶”を思い出したからと言って
今の人生が変わるわけじゃないー。

”内田 幸恵”としての自分が悲惨な最後を迎えたのだとしてもー、
”憑依”とかいう訳の分からないことで身体を乗っ取られて
最期を迎えてしまったのだとしても、
今の人生は今の人生だー。

あの時、内田 幸恵に憑依した男も、もういないだろうし、
仮にその男も同じように生まれ変わっていたとしても、
内田 幸恵=堀里 深夏 であることは分からないはずだ。

だから、心配する必要はないー。

そんな風に思いつつ、深夏は圭太の方を見つめると、
「ーーーそういえばー、今度のデートのことだけど~」
と、自分自身も”前世”のことを忘れようと、
話題を変えて、いつものように明るく話をし始めたー…。

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「ーーククククー
 お前の身体は、俺が頂くー」

「お前はこうなる運命だったんだよー」

男は、邪悪な笑みを浮かべながらそう言葉を口にするー。

”憑依”の力を手に迫って来る男ー。

そんな”夢”を見て、深夏は目を覚ますー。
荒い息を吐き出しながら”憑依される夢…”と、そう呟くと、
窓の外を見つめるー。

前世の記憶を思い出したことによって、
前世での”最期”の原因となったあの光景が
トラウマになってしまったー。

それは当然だ。
今の人生ではないとは言え、
”わたしが死んだ原因”の出来事がトラウマにならないはずがないー。

「ーーー…一度死んでも、もう一度人生があるって分かったのは
 ちょっと嬉しいかもだけどー…」
深夏は出来るだけ前向きな気持ちになろうと、
そんな言葉を口にするー。

前世の記憶が蘇ったー。
それはつまり、”一度死んでも、もう一度人生がある”ということを
意味している。

もちろん、今回のように前の人生のことを思い出せることは
まずないのだろうし、
次があるからと言って、今の人生を疎かにするつもりもないし、
やっぱり、それでも死ぬのは怖い。

”今の人生”を失うことになるし、
死ぬ時は痛いし、辛かったしー、
それに、”前回と今回”があるからと言って”次”もあるとは限らないー。

「ーー…前世に振り回されちゃだめー」
深夏は、自分に言い聞かせるかのようにそう言葉を口にすると、
深呼吸をしてから立ち上がるー。

前世は前世、今は今ー。
前世に振り回されてはいけない。

深夏は、”もう考えるのはやめよう”と、
そう心の中で決意すると、
いつも通りの日常へと戻っていくのだったー。

学校で、幼馴染であり、彼氏でもある圭太と合流した深夏は、
今日はいつものように明るく、楽しそうに圭太と話をし始める。

圭太も、そんな深夏の姿を見て安心した様子を見せているー。

がーーー

二人の先輩にあたる男子生徒・寺門 譲司は
そんな二人の後ろ姿を物陰から見つめながら笑みを浮かべていたー。

②へ続く

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コメント

ある日、突然前世の記憶が戻っちゃったら…!
戸惑っちゃいそうですネ~!

私にももし、そんなことが起きたら
今の私との違いにびっくりして
困っちゃいそうデス~笑☆!

今日もお読み下さり、ありがとうございました~!!

続けて②をみる!

「前世の記憶」目次

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憑依<前世の記憶>

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