クラスにやってきた転校生の美少女ー。
しかし、その振る舞いは時々妙におじさん臭かったり、
長い間生きて来たかのような言葉を口にすることもー。
そんな彼女に違和感を抱いたクラスメイトはー…
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「へへっーーへへへへへへへっ♡」
夜ー
自分の部屋で、真鈴は胸を揉みながら
ニヤニヤと笑みを浮かべていたー。
「ーー真鈴ちゃんには悪いけどー
へへへへ、やめられねぇ♡」
気持ち良さそうに、顔を真っ赤にしながら
胸を揉み続ける真鈴の顔はー、
学校で見せている真鈴の雰囲気とはまるで別人だったー。
「ーーーはぁ…はぁ…はぁ…」
やがてー、十分に楽しみ終えた真鈴は、
ふらふらと立ち上がると、
机の上に飾ってある写真を見つめるー。
「ーーーーー自分の娘が、こんなことになってるのを見てたらー
この二人は、どう感じてるかなー」
真鈴は、乱れた髪を触りながら、
写真に写る”真鈴の両親”を見つめるー。
真鈴の両親は、もう、いないー。
真鈴は今、親族に引き取られて親族の家で世話になりながら、
暮らしているー。
「ーーーーーー」
”真鈴”は、今、どうしているのだろうかー。
この身体の中で眠っているのかー、
あるいは既に”魂”は死んでいて、あの世で両親と再会したのだろうかー。
それは、分からないー。
けれどーーー
「ーーーこの先どうなろうと、今を生きるしかないからなー」
真鈴は自分の顔に手を触れながらそう言葉を口にすると、
”もしも、”その時”が来たら、その時考えるー”と、
そう思いながら、写真のほうを今一度見つめるのだったー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「~~~~~~」
間違えて男子トイレに入りそうになってしまった真鈴が
自虐的に笑うと、偶然近くを通りがかった陸翔が
「ーおいおい、そっちは男子トイレだぜー?」と、
揶揄うようにして言葉を口にするー
「わ、分かってますよ!」
真鈴が恥ずかしそうにそう言い返すと、
「幸澤さんの反応を見るためにやったんです!」と陸翔の反応を
見るためにわざと男子トイレに入ろうとしたのだと、そう言葉を口にしたー。
「ーはははは 神里さんはやっぱ面白いなぁ」
陸翔はご機嫌そうに自分の教室に向かっていくー。
そんな様子を見て、真鈴は「ふ~…」と、安堵の息を吐き出すと、
「ーまだ時々男子トイレに入っちゃうんだよなー」と、
そう言葉を口にしながら、そのまま女子トイレの扉を開けたー。
がー、ちょうど、トイレから出ようとしていた
涼介の幼馴染・美雪と鉢合わせしてしまうー。
”やべっ!?今の独り言、聞かれたかなー?”
真鈴がそんな風に思っていると、
美雪は「ー今日の昼休み、少し、お話したいんだけどー」と、
そう言葉を口にしてきたー。
「ーえっ!?あ、はいー…わ、分かりましたー」
真鈴は戸惑いながらそう言葉を口にすると、
美雪が先にトイレから出て行ったのを確認してから
険しい表情を浮かべたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
昼休みー。
「ーーあれ?美雪ー今日は昼食べないのかー?」
涼介が、美雪が昼食を食べずに移動しようとしているのを見て、
そんな風に声をかけるー。
美雪は、昼休みが始まると
いつも最初に、家から持ってきている弁当を食べ始めるー。
が、今日は弁当を食べる様子もなく、移動しようとしたために
”珍しいなー”と、そう思って声をかけたのだー。
「ーえ?あ、うんー。ちょっと用事があってー」
美雪がそう言葉を口にすると、
「なんだ~?もしかして、彼氏とどこかでー」と、
幼馴染ゆえの揶揄うような言葉を口にするー。
「ーー彼氏いないって前から言ってるでしょ」
美雪が少し不機嫌そうに言うー。
「ーーははー、ま、いてもいなくてもいいんだけど」
転校生にも最初、興味を示さなかった涼介らしい言葉を口にすると、
美雪は苦笑いしてから「あ、もう行くねー」と、教室の外に向かっていくー。
そしてーー
先に移動していた真鈴と合流すると、
美雪は「急に呼び出して、ごめんねー」と、そう言葉を口にするー
美雪は”何となく嫌な予感”を感じて、
スマホのアプリで音声を”録音”しながら、真鈴と対峙していたー。
真鈴は美雪のほうを見つめると、
「ーわたしに話ってなんですかー?」と、そう言葉を口にするー。
美雪は少し躊躇ってから言うー。
「ー神里さんーーー
”何か”隠してないー?」
とー。
そして、妙におじさん臭く感じることや、
”本当に高校生?”と思ってしまうような言動を指摘するー。
真鈴は「あ、あははー」と、笑いながら
「ーわたし、よくおじさんっぽいって言われるんですよぉ~」と、
それだけ言うと、
美鈴は”こんなこと言いたくないけどー”と、思いつつ、
”真鈴がかつて巻き込まれたバス事故”のことを指摘したー。
半年前ー、観光バスが事故を起こし、
真鈴の両親と、他数名が死亡した事故ー。
真鈴が以前、言っていた父親の名前と被害者の名前が同じな上に、
苗字も”神里”で、さらには被害者には高校生の娘がいて、重症ー、だと
そう報じられていたー。
恐らく、真鈴本人と、真鈴の両親だと、美雪はそう思っていたー。
「こんなこと言ったら嫌われちゃうかもしれないけどー」
と、美雪はそう前置きした上で、
言葉では上手く言い表せないけれど、
真鈴に違和感を感じていること、
何か企んでいるのではないかと不安を感じてしまうこと、
両親が健在であるようなことをどうしていつも言っているのか、
思っている”違和感”を、全て言葉にして、その思いを真鈴にぶつけたー。
「ーーー神里さんを傷つけたいわけじゃないけどー
どうして、モヤモヤしてー」
美雪のその言葉に、真鈴は少しだけ笑うとー、
「ーーーそこまで違和感を抱かれちゃったらー…
”このまま”放置しておくわけにはいきませんねー」と、
そう言葉を口にしたー。
「ーーー!」
その言い方に、美雪は警戒心をあらわにするー。
がー、真鈴は敵意を感じない笑みを浮かべると、
「ーー”誰にも言わない”って約束してくれるならー、
全部、お話しますー。モヤモヤされたままより、
いいと思いますしー」と、
そんな言葉を口にしたー。
美雪は戸惑いながらも頷くと、真鈴は静かに言葉を口にしたー。
「ー確かに、わたしの両親は夏川さんの言う通りー
半年前の事故で死んでいますー
そして、わたしも大怪我をしましたー」
真鈴はそう言うと、制服の袖を少しめくって、
腕にある傷を見せるー。
「ーそれで、わたしは親戚に引き取られて、
こっちに引っ越してきて、この学校に転校しましたー」
真鈴は、この学校に転校してきた理由と”事故”のことを語るー。
「ーーーーーーごめんねー辛いことを思い出させて」
美雪はそう言いながらも、
”親”の死んだ話をしているのに、全く悲しそうに見えない真鈴を見て
さらに不安を強めるー。
”半年前”の事故ー
もう、そんなに割り切ることができたのだろうかー。
そう思っていると、真鈴は美雪の表情を見ながら
それを読み取ったのか、言葉を続けたー。
「ーわたしの行動に違和感がある理由はーーー」
真鈴はそう言い放つと、自分の頭を指差すー。
「その事故の時にー、
同じバスに乗っていたおじさんの記憶が
流れ込んで来たからー、だと思いますー」
と、そう言いながらー
「ーえっ」
美雪が表情を歪めると、
「ーー崎本 幸太郎(さきもと こうたろう)ー」
と、それだけ言葉を口にしてからー
「わたしが巻き込まれたバス事故で、死んだ人の一人です」
と、そう言葉を続けるー。
「ーーーー」
美雪がスマホで改めて確認すると、
真鈴の両親の名前のほかの、数名の犠牲者の中に
”崎本 幸太郎”という49歳の男性の名前も確かに載っていたー
「ーーその記憶と意識がーわたしの中に流れ込んで来たんですー」
真鈴が自分の頭を指差しながらそう言い放つと、
「ーーーーその人が知ってた知識も、考え方もー」
と、そう言葉を続けるー。
「そんなことがー…」
美雪は呆然としながら言うと、
そんな美雪の様子を見て、真鈴はにこっと笑うー。
「ーでも、いいこともあったんですよー?
わたし、そのおじさんのおかげですっごく勉強できるようになったのでー
元々は、苦手だったんですけどー、
おじさんは、小さい頃から成績がすっごくよかったみたいでー」
そう言いながら笑う真鈴ー。
だから、授業中に天才的な振る舞いをしているのだと、
美雪は納得するー。
「ーただー…その人の記憶とかが流れ込んで来たせいでー、
時々男子トイレに入りそうになっちゃったりー、
古臭いこと言っちゃったりー
そういうこと、しちゃうんですー
わたしは、わたしなんですけどー
どっちの記憶だか混乱しちゃうっていうかー
そんな感じでー」
真鈴がそこまで言うと、
「ーーこれで、全部ですー
でも、こんなこと言うと、頭おかしいって思われちゃうのでー
誰にも言えませんでしたー。
ごめんなさいー」と、ぺこりと頭を下げるー。
美雪は少し戸惑ってからー
「ううんー…神里さんも、辛かったんだよねー?
わたしも、変な疑いを持ってごめんねー」と、
そう言葉を口にするー。
「ーーでも、納得したー。
モヤモヤしてたのが晴れた気分ー」
美雪がそう言うと、真鈴は嬉しそうに笑いながら
「よかったですー」と、そう言葉を口にするー。
「ーーーどうか、内緒にしていただけますかー?
ーーおかしな子だと思われちゃうと、悲しいのでー」
真鈴は、申し訳なさそうにそう言うと、
美雪は「ーーうん。わかったー約束する」と、
静かにそう頷いたー。
美雪との話を終えた真鈴は、教室から立ち去ると
ひとり、ニヤッと笑みを浮かべたー
「ー信じて貰えて、よかったー」
そう呟く真鈴ー。
さっきの話は、”半分本当で、半分嘘”だー。
事故に遭ったのは本当だし、
事故が原因で、同じバスに乗っていた”崎本 幸太郎”の
意識が入り込んだのも本当だー。
ただー、”真鈴に崎本 幸太郎の記憶が流れ込んだ”のではなくー、
”崎本 幸太郎が、真鈴に憑依してしまい、その身体を乗っ取ってしまった”
というのが、”真相”だー。
今の真鈴は、
”同じ事故で死んだ崎本 幸太郎の意識が流れ込んで来た真鈴”ではなく、
”真鈴の身体を乗っ取った崎本 幸太郎”だー。
真鈴本人の意識は消えたか、奥底で眠りについているか、
どちらか分からないものの、いずれにせよ、封じられている状態だー。
「ーーまぁ、こっちの地方には”元の真鈴”を知ってる人間はいないからー
ちょうどいいよなー へへー」
真鈴はそれだけ言葉を口にすると、笑みを浮かべながら廊下を
歩き始めたー。
”崎本 幸太郎”は、小さい頃から努力家で、
優等生だったー。
成績も、学年トップー。
社会人になった後も努力を欠かさず、それなりに仕事でも重宝されてきたー。
ただー、”つまらない”人生だったー。
プライベートには全く恵まれずー、
とにかく、”つまらない”と、彼はそう思っていたー。
このまま真面目に仕事を続けて、そのうち死ぬのかー、と
そう思いつつ、休日に一人旅をしようと、観光バスに乗っていたあの日ー、
”事故”に遭ったー
そして、幸太郎の身体は死亡し、気付いたら真鈴に憑依していたー。
”こんな美少女になれるなんてー”と、
夢のように思ったー
「最高の人生を手に入れたぜー」と、そう有頂天になったー。
「ーーこの人生、もう手放したくないー」
真鈴はそう呟きながら、嬉しそうに笑みを浮かべたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーおはようございますー」
翌日ー
美雪に挨拶をする真鈴ー
「あ、神里さんおはよ~!」
美雪は穏やかな表情で挨拶を返すー。
いつものように、近くの座席の陸翔や、涼介と話し始める真鈴ー
真鈴は楽しそうに話をしながら、
”この二人も、中身が男…しかも俺みたいなおっさんだと知ったら
驚くだろうなぁ”と、そんなことを考えるー。
ただーー
”自分の新しい人生”で、悪さをするつもりはないー。
元々、幸太郎は真面目な人間だー。
誰かを傷つけるつもりは、ないー。
クラスの人間に対しても、別に悪さをするつもりはないのだー。
”真鈴”の身体を奪ったことは申し訳ないとは思いつつも、
元に戻る方法も分からず、戻れない可能性も高そうな現状では
”楽しむ”しかないー。
いつまでも悩んでいても、それで真鈴が帰って来るわけじゃないのであれば、
楽しんだ方がマシだと幸太郎はそう考えー、
”神里 真鈴”として女子高生ライフを堪能していたー。
「ーーーえ~でも、昔はそんなことなかったですけど~!」
真鈴が、涼介との話の中でそんなことを言うと、
涼介は「昔!?いつの話!?」と、驚いた様子で笑うー。
真鈴は「あっーえ、えーっと、おじいちゃんがー」と、
いつものように言い訳をすると、
その会話を横で聞いていた美雪が少しだけ笑うー。
なんだか、不思議な転校生ー。
これからも、彼女の言動に振り回される日々が続くのかもしれないー。
おわり
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
最終回でした~!★
今回は、悪意はないタイプの憑依ですネ~!!
ひとまず、周囲の子たちも含めて
穏やかな日常がこの先も続きそうデス~★!
お読み下さりありがとうございました~~!

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