”人を皮にする注射器”を手に、
欲望の限りを尽くす男たち。
ある日、その中の一人が
とても可愛らしい雰囲気の”皮”を見つけた。
が、周囲の男たちは”その皮だけはやめておけ”と
口々に言葉を口にしてー…?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーへへへ 今日も可愛い”服”着てるなぁ」
ニヤニヤしながら、そう言葉を口にしたのは、
眼鏡をかけた優しそうな雰囲気の
セーラー服姿の女だったー。
「ーはははー哲夫(てつお)さんこそー
可愛い”服”を着てるじゃないですかー」
そう答えるのはツインテール姿の美少女ー。
お互いに、見た目から受けるイメージとは
少し異なる、おかしな喋り方をしているー。
「ーーへへーどうだ?
さっき”手に入れた”ばっかりだぜー?」
”哲夫”と呼ばれたセーラー服姿の女が
嬉しそうに笑うー。
この見た目で名前が”哲夫”ー。
実は見た目が美少女なだけで、男の娘なのだろうか。
それとも、男の子が欲しかった親が、
産まれて来たのが女だと知ってもなお、
男としての名前をつけたのだろうかー。
「ーーはははー、いいですねー。
俺もこの身体より、そっちの方が良かったですよ」
ツインテールの美少女は自分の髪を触りながら、
そう言葉を口にするー。
二人とも、まるで男のような口ぶりー。
それもそのはずー。
二人は今”皮”にされていて、
男たちに身体を乗っ取られている状態だったー。
”人を皮にする注射器”ー。
社会の裏で出回る、そんな禁断のアイテムによって、
人々はこうして”皮”にされて、弄ばれていたー。
”哲夫”と呼ばれた眼鏡の美少女も、
身体の名前は、笹原 菜々美(ささはら ななみ)という子で、
名前は”哲夫”ではないー。
身体自体も、正真正銘の女性だー。
”哲夫”と言うのは、その菜々美を皮にして
乗っ取っている男の名前で
”人を皮にする注射器”を使って
欲望を満たしている人間の一人だー。
ツインテールの美少女の方もそうー。
彼女の中には、北村 英介(きたむら えいすけ)という
男が潜んでいるー。
二人に似合わぬ廃墟地帯で、
二人は、欲望の限りを尽くしていくー。
「ーえへへへーせっかくだし、キスしちゃいません?」
英介が乗っ取っているツインテールの子・美由紀(みゆき)が
嬉しそうにそう言い放つと、
”哲夫”が乗っ取っている菜々美も、「へへーいいねー」と、
二人はそのまま抱き合って激しいキスを始めるー。
そんな中ー、
「お~おつかれさん」と、
OL姿の女がやってくると、
「吉村(よしむら)!よく来たな」と、
キスをしていた菜々美が笑みを浮かべながら笑うー。
菜々美とキスをしていたツインテールの美由紀を着ている
英介も、ニヤニヤしながら
「ーーえ…吉村さんなんですか?」と、OL姿の女のほうを見て笑うー。
「ーーおぅ、そうだぜ
今日はOLで遊ぼうと思ってさー」
OLを乗っ取っている”吉村”という男が、
そう言葉を口にするー。
「ーっていうか、哲夫さん、よく中身分かりますよねー。
別に俺たち、中身が分かるように名札とかつけてるわけでもないのに」
ツインテールを揺らしながら、美由紀を着ている英介が言うと、
セーラー服の美少女・菜々美を着ている哲夫は笑うー。
「分かるさ」
とー。
皮にされて、乗っ取られている人間は
”外見”からではそもそも判別が出来ないー。
例えば、この菜々美も、
普段と、乗っ取られている時で、”見た目”に違いはないー。
脱ぎ捨てている際や、着るタイミングを目撃されでもしない限り、
周囲に気付かれずに菜々美として振る舞うことも可能だ。
当然、菜々美の身体に”中身は哲夫です”などと
名札をつけているわけでもないために、
外見でパッと見て判別することは、なかなか難しいのだー。
ただ、哲夫はそれでも”中身はすぐに分かる”のだという。
「仕草とか、表情で分かるのさー。
北村、お前ならこういう仕草や表情ー
そして、吉村ならこういう仕草や表情ー
みんなそれぞれ”癖”ってもんがあるからなー」
菜々美の皮を着たまま、哲夫がそう言うと、
「ーへ~、そんなもんなんですかねー
俺には全然分からないですけど」と、
ツインテールの美由紀はそう言葉を口にしながら
「今日は、他の皆さんは来ないんですか?」と、
OLを乗っ取っている”吉村”のほうを見て言葉を口にしたー。
この廃墟地帯は”人を皮にする注射器”を持つ人間たちの
憩いの場とも言える存在ー。
乗っ取った身体で、この場所にやってきて
欲望を楽しむー。
そういったことに使われる場だー。
「ーふぅ~…今日も最高でしたー」
少し乱れた雰囲気の美由紀がそう言葉を口にすると、
「ーーじゃ、俺は明日も大学があるのでこれでー
この身体は適当に返しておきます」と、
美由紀を着ている英介はそう言葉を口にしながら、
帰る支度をするー。
ここに来ている”人を皮にする注射器”を使う男たちは、
基本的に”欲望”の限りを尽くしたあとには
借りていた身体を返すことにしていて、
そのまま乗っ取ってしまう…ということはない。
もちろん、それでも人の身体を勝手に乗っ取っていることには
違いはないし、
本人たちも、自分自身が悪党であることは自覚している。
それぞれ、考え方は異なるものの、
”乗っ取った身体”を返すのは、
乗っ取られた側のことを考えてのことではなく、
”自分たち”の身を守るため、つまりは保身のためだ。
他人を皮にしたまま乗っ取ってしまっては
当然、乗っ取った相手の家に帰らなければ、
行方不明扱いになってしまい、騒ぎになってしまう。
かと言って、ここに集まっている人々には
自分の人生もあるし、他人の家に行って
窮屈な状況で生活するつもりもない。
だから、皮にして乗っ取った身体で
十分に遊んだ後は”返却”することを
基本としているー。
一人がそのルールを破れば、ここにいる
”人を皮にする注射器”を使っている全員が
ピンチを招く可能性もあるために、
ルールを守ることは”絶対”となっているー。
「に、しても、北村くんも大分楽しそうにしているよなー」
OLの身体を乗っ取っている”吉村”がそう言うと、
「へへー最初にここに来た時は戸惑ってばかりだったのになー」
と、セーラー服の美少女・菜々美の身体を乗っ取っている哲夫は、
ニヤニヤしながらそう言葉を口にした。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
数日後ー。
英介は今日は、誰かの身体を乗っ取ることなく、
”人を皮にする注射器”を持つ者たちが集まっている
この場所にやってきていたー。
「お?今日はどうしたー?」
ニヤニヤしながら、猫背の女が近付いて来るー。
”人を皮にする注射器”を手に入れてから
まだ日が浅く、この場所に出入りするようになったのは
一番最近である英介。
そんな英介でも、この人ー、幸保(ゆきやす)だけは、
一目見て、すぐに判断できるー。
幸保は普段から、姿勢が非常に悪く、
常に猫背のような状態で歩いていて、
乗っ取った身体でも、そのままの歩き方をしているために、
見れば分かるのだー。
「ーあ、ヤスさんーこんばんはー」
英介がそう挨拶すると、
「ー自分の身体でここに来るなんて、珍しいじゃないか」と、
廃墟地帯を見回しながら、幸保が乗っ取っている女が笑うー。
「ーえぇ、まぁー」
英介はそう言うと、「少し前から気になっていることがあって」と、
そう言葉を口にするー。
「気になっていることー?」
幸保が乗っ取っている女が、猫背のまま首を傾げると、
「ここの奥の方に”すごくかわいい子”の皮が、置かれている場所を
見つけたんですけどー、あれは何なんですか?」と、
そう言葉を口にする英介ー。
”人を皮にする注射器”を持つ人たちが集まる、
この廃墟地帯ー。
その奥の方に存在する廃屋に、”美少女の皮”が置かれているのだー。
これまでにも、色々な人間の身体を乗っ取ってきた英介。
しかし、そこに置かれている美少女の皮は
これまでに乗っ取って来たどんな相手の皮よりも
美しく、そして可愛く見えたー。
一度見たら忘れられない、
そんな吸い込まれるような魅力を持つ美少女の皮だー。
「ーあ~~~~…あれはー」
猫背の男・幸保に乗っ取られて猫背になっている女が
少しだけ気まずそうに言葉を口にする。
「ーー……悪いことは言わない。”アレ”に関わるな」
猫背のまま、幸保に乗っ取られた女は言う。
普段、いつもニヤニヤしているような、
軽い調子の幸保が、突然、険しい表情で
そう言い放ったことに、不安を覚える英介。
「ーど、どういうことですか?
誰かの使っている皮ってことですか?」
英介はなおもそう確認する。
ここに出入りするようになってから、
英介は、まだ日が浅く、
ここに出入りする”人を皮にする注射器”を持つ者たちのことを
全員、知っているわけではない。
ここにいる誰かが大事に使っている皮だと言うのであれば、
ここの人たちとトラブルは起こしたくないし、
それを奪うつもりもない。
「いやーーー……とにかく、あの皮のことは気にするな。
忘れろ」
猫背のまま、幸保に乗っ取られている女はそう言うと、
それ以上は何も語らずにそのまま立ち去っていくー。
「ーーーーー…」
英介は首を傾げると、
ため息を吐き出す。
幸保には、何か事情を説明したくない理由があったのかもしれないー。
が、好奇心旺盛な英介には、それは逆効果だったー。
”ヤスさんの言い方的に誰かが使っている皮じゃなさそうだなー”
そう思いながら、英介は廃墟地帯の奥ー、
以前見つけた”美少女の皮”が置かれているその場所へと
向かっていくー。
途中で胸を揉みながら笑っている女や、
女同士で抱き合っているお楽しみ中の人々を
見かけながら、
英介は少しだけ笑うー。
もちろん、”皮にされて乗っ取られた人たち”だー。
この廃墟地帯では、それぞれ、
乗っ取った身体で欲望を楽しんでいて、
こういった光景が日常茶飯事的に広がっているー。
いくら、人里離れた廃墟地帯とは言え、
こんな風にお楽しみを続けていれば、
いずれその噂が広まり、
ここにも”捜査”の手が及ぶかもしれない。
”人を皮にする注射器”などという裏で出回っているものが
いくら法律上で言及されていないとは言え、
このようなものを”放置”しておくことはしないはずだー。
ただー…
この廃墟地帯に出入りしている人間の中に
”警察上層部の人間”もいるらしく、
それでここが騒がれないようになっているのだとか。
そんな噂を、英介は以前、ここに出入りしている男の一人、
哲夫から聞いたことがある。
本当かどうかは分からないけれど、確かにそれなら
ここが野放しになっている理由も分かるような気もした。
それはともかく、
謎の美少女の皮がどうしても気になってしまった英介は、
もう一度、その場所へと向かっていたー。
英介が人を皮にする注射器を手に入れて、
それを使い始めたそもそもの理由は
その”好奇心”ー。
もちろん、下心だとか欲望だとか、そういったものは
あったけれど、
それ以上にその強い好奇心が、英介を
”人を皮にする注射器”を使う道へと、足を踏み入れさせた。
「ーーー…」
英介は、廃墟地帯の奥へとやってくると、
そこには、美少女の皮が置かれていたー。
まるで、吸い込まれてしまいそうなー、
漫画にでも出て来そうな、幻想的な雰囲気さえ感じさせる美少女ー。
「ーーーーー」
その皮をじっと見つめていた英介は、
やがて、吸い込まれるかのようにして、その皮の方に向かっていくー。
「ーーー…英介くんー!」
背後から、声がして、英介が振り返ると、
そこには猫背の女がいたー。
先程会話した、幸保だ。
「ヤスさんー」
英介がそう言葉を口にすると、
幸保に乗っ取られている女は言ったー。
「その皮だけは、やめておけ」
とー。
「ーーどうしてですか?何かあるんですか?」
英介が首を傾げながら言うと、
幸保が乗っ取っている女は、困惑した表情を浮かべながら言ったー。
「その皮はーーー…」
その皮は、決して使ってはならない、
禁忌の皮ー。
誰にも手に負えず、そして最終的に廃墟の奥地へと
封印された、恐るべき皮…。
けれどー、英介はその魅力に魅入られてしまったのだったー…
②へ続く
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コメント
危険な雰囲気漂う皮の魅力に
魅入られてしまった英介くん…!
なんだか大変なことになっちゃいそうですネ~!
続きはまた明日デス~!!

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