<憑依>ポゼッション・ハラスメント③~欲望の代償~(完)

上司から”望まない憑依”のターゲットに
されてしまった彼女。

ポゼハラを受ける彼女を前に、彼はー…?

・・・・・・・・・・・・・・・

「ーふふふふっ♡ ふふふふふふふふ♡」

夜のオフィスー

”憑依された”愛華と、社員の風見が、
お楽しみの時間を繰り広げているー。

「ーーはぁ…はぁ…す、すごい…」
風見が、呆然とした様子でそう呟いていると、
メイド服姿で、風見にフェラをしていた愛華が
欲望に満ちた表情で笑みを浮かべたー。

「ーーこんなことが、できるなんてー」
風見の言葉に、
愛華は「へへへへへ…憑依には色々抜け道があるからな」と、
ニヤニヤしながら言うー。

この世界の”憑依薬”は、
憑依する側の人間が、憑依される側の人間の
”人生”そのものを奪ったりできないように、
”時間制限”が設定されているー

用途によって何種類か存在しているものの、
医療用など、厳しい条件を元に作られているものなどを除き、
市販されているものは5分や10分程度の憑依が限界だー。

しかし、”それだけ”では、
連続して憑依薬を使い、長期憑依する可能性もあるー。

”それ故”に、憑依薬には”あえて”特殊な成分が混ぜられていて、
連続して飲むことができないようになっているー。

特殊な睡眠作用のある成分が入っていて
2回分以上、同時に飲むと、憑依者は急激な眠気に襲われて
そのまま熟睡してしまうー。

こうすることにより、憑依薬を10本使って50分憑依するー…
と、いったことはできないように、設計されているー。

”徹底的に管理さえされていれば”
憑依薬には利点もたくさんあるー。

娯楽にも使えるし、医療用にも使えるし、
学習にもそれなりに使い道があるー。

だが、悪用されれば、憑依薬は悪魔の薬となる。

だからこそ、厳しいルールがたくさん設けられていたー。

しかし今ー
愛華は既に30分以上憑依されているー。

「ーーまさか、”そんな抜け道”があったなんて思いませんでしたよー」
風見が言うと、愛華は「へへへへ…まぁな」と、笑うー。

”憑依薬”の睡眠作用は、少し間を開けることで抜けるー。

”通常”ー
憑依薬を連続で飲むことさえできなければ、
正気を取り戻した本人が、その場を離れる時間は十分にあり、
近くの人間にしか憑依できないという特性もある以上、
連続で憑依される心配はないー。

しかしー。

「ー複数の人間で憑依しちまえばー、何も問題ないからねぇ」
おばさん社員の三美子が笑うー。

そうー
今、愛華は
岩村部長⇒おばさん社員の三美子⇒風見に連続して憑依されていたー。

最初に岩村部長が愛華に憑依し、5分経過するタイミングで、
三美子が憑依し、さらに5分経過したら風見が憑依するー

そして、風見が5分経過する頃には、
最初に憑依した岩村部長の、睡眠の作用が抜けているため、
すぐにまた、愛華に憑依するー。

こうすることにより、愛華は正気を取り戻さず、ずっと憑依された
状態になってしまうー。

”憑依薬の連続使用を防ぐための睡眠作用”は、10分もあれば抜けるー。
あくまでも”連続して同じ人間が憑依薬を使い、同じ人間を支配し続ける”
ことを阻止するための作用であり、
”ある程度連続して使用しなければいけない場面”があるのも事実なため、
その作用は短めの時間に設定されているー。

だからこそー
こうして”三人”でグルになってしまえばー

「ー2年目の癖に彼氏とイチャイチャしてるような社員にはお仕置きしないとなぁ」
愛華がそう呟くと、
「そろそろ、始める?」と、三美子が笑うー。

「あぁ、そうだなー」
愛華は邪悪な笑みを浮かべながら、オフィスの机の上に乗せた
ストップウォッチが鳴り響くとー、
「ー10秒前ー」と呟いて、三美子が憑依薬を飲みー、
”部長が憑依してから5分”経過したタイミングで、
部長が愛華からはじき出されて、その瞬間ー、愛華に三美子が憑依したー

「ーうっ… ふふふ…すごいわねぇ…」
愛華は”若い手”を嬉しそうに見つめると、
そんな風に笑みを浮かべたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

彼氏の大和は、愛華がそんな目に遭わされているとは
夢にも思わず、
”会社の上層部に相談する準備”を進めていたー。

今朝、愛華から”まだ憑依されている”と相談を受けたあとー
部長に再び、直接話をしようと考えたものの、
おばさん社員の三美子から”部長に憑依された愛華が他の社員と
キスさせられている”写真を見せられて考えを変えたー

”直接部長を説得するのは不可能に近い”
とー。

加えて、
”自分があんなことをさせられていた”と知れば
愛華は相当ショックを受けることになるー。

岩村部長と直接対決すれば、
当然、岩村社長は”わざと”それを暴露したり、と言ったことを
やりかねない。

それを阻止するためには、
やはり、会社の上層部に相談し、なんとかしてもらうのが
一番であると考えたのだー

もちろん、セクハラやパワハラ、ポゼハラを相談するような外部機関も
この世界では存在しているー。

しかし、まずは会社に相談し、
それで穏便に済むのなら、それでー

♪~~~

「愛華ー」
スマホに”愛華”の名前が表示されて、電話に出ると、
愛華が、はぁはぁ言いながら話し始めたー

”ふふふふ…ねぇ、わたしたち、付き合ってるよねぇ?”

愛華の唐突な言葉に、
「え?な、なんだよ今更ー?急にどうしたんだ?」と、
返事をすると、
愛華は”そう思ってるのは、あんただけなんだよねぇ”と、
クスクス笑いながら答えたー

「ま、愛華ー?」

愛華の様子がおかしいことにすぐに気づきー、
大和は怒りがこみ上げてくるのを感じるー

「ーま、まさか部長…!部長なんですか!?」
敬語で話しながらも怒りを隠し切れない大和ー

”え~?部長~?
 ふふふ…わたしは正気だよぉ~?”

愛華の喋り方が明らかにおかしいー。

”部長が愛華に憑依して、電話を掛けて来たー”
そう思ったー。

”わたしね~男とヤるのが趣味な女なの!
 知ってた?
 ふふふふ…

 だからぁ~あんたとも”彼女ごっこ”してたけど
 もう飽きちゃったから!ふふふふふ”

愛華は面白そうに笑うと、
”今からわたし、他の人とエッチするからー”
と、笑いながら呟いたー

「ぶ…部長ー…!愛華に、愛華に何をさせるつもりなんですかー?」

社内恋愛を隠すことも忘れて、大和が焦りながらそう言い放つー

”だ・か・ら・ぁ、部長じゃなくて、わたしは愛華”

愛華がそう呟くー
いや、”言わされているー”

続けて、電話の向こうからキスのような音が聞こえてくるー

「ーーやめろ!!!それはポゼハラだろ!!!やめろよ!」
大和は敬語も捨てて、怒りの形相でそう叫んだー。

だがーー
大和は、あることに気付くー

”電話が始まってから5分以上ー”

「ーー…!?」

市販の憑依薬は基本、5分で”解除”されるー

なのに、なぜー?

”だから、正気って言ったじゃん?”
愛華が笑いながら言うー

「う…嘘だろ…?」
呆然とする大和ー

”えへへへへ…これから、フェラしちゃおっかな~?
 あ、電話じゃ聞こえないかなぁ~??
 ふふふふふ”

”電話の向こう”では、愛華の”中身”が
三美子から風見に変わったものの、
大和にはそんなことは分からないー

5分ー
10分ー
15分ー

地獄のような電話は続くー

そして、何分経過しても、愛華はそのままー

「愛華ー…まさか、お前…本当にー?」
大和がそう言い放つと、
愛華は”普段大人しくしてるから、騙されてたんでしょ?”と
クスクスと笑うー

”わたし、ヤらないと生きていけない女だから…
 ククッ…あははははは♡

 でもねー
 あんた、わたしのこと、満足させてくれなかったからー

 もう、”いらない”ー

 ばいばいー”

愛華はそれだけ言うと、電話を一方的に切ってしまったー

震える大和ー。

電話はー40分ぐらい続いたー。

そんな長時間憑依できる薬は、少なくとも普通の人は入手できないー

と、いうことはー……

「う…嘘だろー…愛華…」
大和は、呆然とすることしかできず、
その場で絶望の表情を浮かべたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーさて、と…服を着てー

 …っていうか、つい2時間も憑依しっぱなしになっちまったな」

笑う愛華ー

「ーへへへ…部長のおかげで楽しめました!」
風見がそう言うと、
愛華の身体を会議室に座らせて
部長は5分経過したのを確認すると、
そのまま憑依から抜け出したー。

「ーーでも、流石にポゼハラで訴えられたりするんじゃないかしら?」
少し不安そうにしている三美子ー。

「ーーはははは 大丈夫さー
 ポゼハラポゼハラ言うけど、実際に問題になってる
 ポゼハラなんて、ほんのごく一部だろ?

 昔のセクハラパワハラもそうだけどー
 ちゃんと気を付けてれば、何も問題ないさ」

岩村部長は、まるで他人事のように言うー。

各種ハラスメントで実際に問題になっている人間は
この世界でもそれなりに存在しているー。

だが、岩村部長はまるで自分が
そうならないかのような言い草ー。

「ーーー…それにーーー
 社内恋愛なんて、生意気だしな」

”独身”の岩村部長が、愛華らを目の仇にしている
本心をボソッと口にするー

「あらやだー中年のおじさんの嫉妬なんてみっともない」
三美子が笑いながら言うと、
風見は「愛華ちゃん、出てきませんね?」と、
少し心配そうに、静かにそう呟いたー。

会議室で解放したはずの愛華の身体ー。

憑依されていた人間は、基本的に数秒程度で
意識を取り戻すー。

確かに、もう出て来てもおかしくはないー。

「ーーー…確かに、遅いわね」
三美子が不安そうにそう呟くと、
会議室の中を確認しにいくー

そしてー

「ーーーひっ!?!?!?」
三美子が驚きの声を上げたー

「ーな、なんだ?」

岩村部長が後から会議室に入るとー
そこにはー
口から泡を吹いて、白目を剥きながら
ピクピクと痙攣している愛華の姿があったー

「ーーお、おい…ど、ど、ど、どうすればいいんだー!?」
岩村部長が呆然とするー。

”憑依薬”の普通ではない使い方をしー
2時間も連続で憑依を繰り返したことで、
愛華の身体への負担が限界を超えてしまったのだー

「ーき、き、救急車!早く!」
三美子が慌てた様子で言うと、
男性社員の風見が「は、はい!」と青ざめた様子で
電話のほうを向かったー。

苦しそうに痙攣しながら、愛華が口から
泡を垂れ流しにしているー

やがてー
救急車が到着しー、
愛華は一命を取り留めたものの、
昏睡状態になってしまい、いつ目を覚ますか
分からない状態になってしまったー。

こうなってしまってはー
”ポゼハラ”を隠し通すことはできないー。

三人が繰り返し、2時間にわたり憑依したことも
発覚しー、
岩村部長、三美子、風見の三人は懲戒解雇ー

さらには”主犯格”である岩村部長は
近日中に逮捕される見込みになったー

「ーーーくそっ……愛華ー」
病院で、意識を取り戻さない愛華を見て
悲痛な表情を浮かべる大和ー。

大和はあの日、
”5分以上”経ってもずっと、豹変したままの
愛華と電話で話してー
”もしかして憑依じゃないんじゃないか”と
思ってしまったことを恥じたー。

愛華を疑ってしまったことを恥じたー。

「ーー許せないー…」
怒りに震える大和ー。

怒りが消えないまま、大和は
自分でもよく分からないまま、憑依薬を手に入れていたー。

怒りに支配されるまま、
憑依薬を購入したのだー。

「ーーーーー」

懲戒解雇になった岩村部長は
そそくさと荷物をまとめているー。

「ーーー……」
大和が出社したのを見ても、岩村部長は何一つ言わず、
逃げるようにして立ち去ろうとするー。

だがー
大和がそんな岩村部長に声を掛けたー。

「ーー部長ー…
 愛華が部長に何をしたって言うんです?」

大和が震えながらそう言うと、
岩村部長は青ざめながら「こんなことになるとは、思わなかったんだー」と
だけ返事をしたー。

そして、そのまま立ち去ろうとするー。

だがー
大和は叫んだー

「ー憑依薬、買いました」
とー。

「ーーーえ?」
岩村部長が振り返るー。

「ーーー昨日1日、頭を冷やそうとしたんですけどー
 無理でしたー。
 今の俺は、部長のことを殺してやりたいほど憎いですー。

 憑依薬を使って、部長を自殺させたいぐらいにー」

憑依薬を手に、怒りに震える大和ー。

「ーひっ!?」
岩村部長が悲鳴を上げるー

「ーそんなことしたら、君も…犯罪者だぞ!」
その言葉に、大和はカチンとなって、ついに憑依薬を飲み干したー

「ーーー絶対に、許せないー」
と、言いながらー

・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーー…ひっ!?!?!?!?」

岩村部長が目を覚ますと、
そこはビルの屋上の、落下すれすれの場所だったー

”大和”に憑依されていたー

岩村部長は、憑依薬の仕様により、それを理解しー、
身体を震わせるー。

「ーーーーーー……俺は、あんたとは違うー」
大和の声がしたー。

「ーーー二度と、愛華にも、俺にも近づくな」
怒りの形相で、大和がそう言い放つとー
”岩村部長と同類”にならないために、
憑依したまま自殺することをギリギリで
思いとどまった大和はー、
そのままビルの端で座り込んで、
あまりの恐怖にお漏らししてしまった
哀れな岩村部長を無視して、そのまま立ち去って行ったー

「ーー愛華ー…俺、待つよー…いつまでも」

意識を取り戻さない愛華の病室にやってきた大和は、
愛華の手を握りしめながらそう呟くー

一瞬でも疑ってしまったことを謝りたいー
だから、戻ってきてほしいー

そう、願いながら大和は今日も、病室を後にすると
会社に向かって歩き出したー

おわり

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

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ポゼハラの最終回でした~!

作中では憑依薬が当たり前のように存在する世界の
悪い部分だけが描かれていますが、
この世界の中では色々良いことにも
使われている設定デス~!

お読み下さりありがとうございました~!

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