<憑依>浮気現場の目撃者②~言い訳~

悪びれる様子もなく浮気を続ける彼氏ー。

そんな彼を懲らしめようと、彼女は
浮気相手の後輩に憑依するも…?

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーーー」
浮気相手の後輩・里菜に憑依した詩織は、
彼氏である正博の後ろ姿を睨みつけていたー。

憑依する前に”昼食に行く予定”になっていたらしい
正博と里菜ー。

まさか、”里菜に彼女の詩織が憑依している”などとは
夢にも思っていない正博は
何も知らずにその予定通り、
昼食を食べようと歩き出すー。

「ーーー…(正博)ー…」
悔しさ、怒り、悲しみ、困惑ー
色々な感情が浮かんでくるー。

正博の弟である昭から、正博の浮気については
聞いていたものの、
実際にこうして”浮気相手の身体”で、
その浮気現場を目撃ー…いや、体験すると、
より一層悲しくなってくるー。

そしてー
”懲らしめなくちゃ”という気持ちが強くなるー

里菜の小さな手をぎゅっと握りしめて拳を作りながらー、
詩織は、そのまま里菜として歩き続けるー

”他人”の身体になるー。

憑依相手が同性であろうとも、
やっぱり、身体の感じも、歩幅も、歩くときの感覚もー
声も、髪も、何もかもが違うし、
”自分ではない他の誰かになる”ということは
とても新鮮で不思議な感覚だー。

しかし、今はそんなことをじっくりと味わっている余裕もなくー、
ただ、彼氏であり、幼馴染でもある正博に対する
複雑な感情でいっぱいの状態だったー。

歩きながら深呼吸をする里菜ー。

里菜に憑依した詩織の目的を、
詩織は自分の中で改めて整理するー。

彼氏である正博の”浮気”を
どうにかして懲らしめようとしていた詩織ー。

そんな詩織は”浮気の対処法”をネットで調べるうちに
”憑依薬で確実な証拠を掴んで、浮気をする相手にお仕置き”という
方法にたどり着いたー

”浮気対策”として憑依薬をプッシュしているサイトを
見つけたのだー。

普段であれば、そんな怪しいサイトを利用したりはしないのだが、
自分でも気づかないうちに”正博に浮気されている”という事実は、
詩織を苦しめていたー。
自分の想像以上に、詩織は”正博の浮気”に強いショックを受けていたのだー。

やがてー、
その憑依薬を注文した詩織はー、
色々調べてその憑依薬が本物である確信を抱き、
今日、”浮気”している正博の浮気相手である後輩・里菜に憑依したー。

とー言っても、
里菜の身体で正博を殺したりするつもりはないし、
里菜の身体で滅茶苦茶なことをして里菜の人生を壊すつもりはないー。

里菜と詩織は直接の接点はほとんどないものの、
里菜のことは知っているー。

大人しくて、穏やかで、真面目な少女だと聞いているし、
実際に大学で見かける時も、その噂通りだし、
周囲の評判も悪くないー。

それに、正博は恐らく”彼女持ち”であることを
里菜に伝えていないし、里菜はそれを知らないー。

里菜のような純粋な子は、正博のような相手には
すぐに騙されてしまうだろうー。

だからー
詩織に、”憑依した里菜”を傷つけるつもりはないー。

もちろんー、
女として、浮気相手の里菜にも複雑な気持ちはあるものの
”憑依して身体を借りる”だけで済ませるつもりだし、
それ以上のことをするつもりはないー。

詩織の目的はー、
正博ー。

里菜の身体で正博にたっぷりお仕置きをするー。
それが、詩織の目的だー。

昼食を食べる場所は既に決まっていたようで、
スイーツの美味しいファミレスにやってくると、
正博は「今日も俺が奢るよ」と、笑みを浮かべながら
ファミレスの店内に入っていくー。

「ーーー」
後をついて、一緒に入店する里菜ー。

着席すると、正博は
「ーー俺は何にしようかな~」と
メニューを見て微笑み始めるー。

「ーーーー」
里菜はそんな正博を見つめながら
口を開いたー

「ーーー正ひー…いえ、先輩ー」
つい、いつもの癖で、”正博”と呼んでしまいそうになるのを
堪えて、里菜が正博を呼ぶときの呼び方で、正博のことを呼ぶー

「ん?」
正博がメニューを見つめながら里菜の言葉に返事をすると、
里菜は言葉を続けたー

「ー先輩、浮気とかする男の人ってどう思います?」
にこっと、意地悪そうな笑みを浮かべる里菜ー。

「ーーーえ… え… えぇっ!?」
メニューを見るのをやめて、明らかに動揺した様子で、
正博が言うと、
里菜はさらに続けるー

「ーーわたしは浮気する人とか、本当に最低だと思うんですけど、
 先輩は、どう思います?」

里菜のフリをして、そう言い放つー。

正博は青ざめながらも
「は、ははは…そりゃ~まぁ、最低だよなぁ~」と、笑うー。

「ーですよね~!」
顔をピクピクと引きつらせながらも、それを悟られないように
里菜は微笑むー。

里菜の身体中に怒りが充満してくるのが分かるー。

憑依してると、他人の身体でもこんな風に
怒りを感じることができちゃうんだね…と、思いながらも
さらに言葉を続けるー。

「ーー先輩は、浮気なんかしてないですよね?」
里菜が言うと、
正博は「もちろん!もちろん!」と頷くと、
「ーー俺は里菜一筋だからな!」と再び言い放ったー。

コップの水をそのまま正博にかけたくなってしまうのを
堪えながら、里菜は「ふ~~~~~ん…」と頷くと、
少し間を置いてから、言葉を続けたー。

「ーーーー」
正博が、何度も何度もコップの水を飲み始めるー。

明らかに動揺しているー。

目はキョロキョロと色々な方向を向き、
落ち着いていないのが分かるー。

「ーーー………どうしたんですか?
 メニュー、見ないんですか?」

里菜に憑依している詩織は意地悪な気持ちに
なりながらそう言うと、
正博は「あ…あぁ…見るよー」とメニューを手にしようとすると、
コップを倒してしまい、水が机の上にこぼれ始めるー。

冷や汗をかきながら「あ、あぁぁ…」と、正博が
慌ててこぼした水を拭き始めると、
やがて、落ち着かない様子で再び着席をしたー。

正博はー、友達も多い性格だが、
”本質的には臆病”であることを、幼馴染の詩織は
よく理解しているー

遊園地に行けば絶叫マシンに怯えるし、
映画館に行けばホラー映画に怯えるし、
ゲームを遊べば、やっぱりホラーゲームに怯えるー。

そんな、詩織から見れば”可愛い”一面があるのが
正博だー。

「ーねぇ。先輩ー。
 本当に、”わたしのこと”が一番好きなんですか?」

”里菜”としてそう聞く詩織ー。

”少しは迷ってほしい”と思いながらも、
その希望を打ち砕くかのように、
正博は「もちろん!もちろんだよ!」と、何度も何度も頷くー。

思わず怒りのあまり、大きくため息をついてしまうとー
「ーー先輩、”いつも仲良さそうにしている”人いますよね?」と、
里菜のフリをしながら詩織の話題を口に出したー。

「ーーえ…え??あ、あぁ、し、詩織のことー?」
正博が混乱しながらそう言うー。

”里菜のフリ”をしながら、”自分”のことを聞いた詩織は、
正博からどんな返事が返ってくるのかと思いながら、
緊張した様子で正博を見つめるー。

「ーーー……し、詩織はほら、ただの幼馴染だからー。」
正博は苦笑いしながらそう言うー。

”俺は詩織一筋だからさー”
そんなことを言っていた正博のことを思い出しながら
歯ぎしりをする里菜ー。

「ーーーじゃあー…その、詩織さんのことはただの幼馴染で
 一番好きなのは、この女ーいえ、わたしってことですか?」
里菜は不機嫌そうにそう呟くー。

「ーそう!そう!もちろん!!!
 好きなのは里菜で、
 詩織はただの幼馴染!
 
 ほらー、詩織は小さい頃からずっと一緒だったから
 なんていうかー こうー

 え~っと、
 そ、そう!女として見ることはできない!

 ってか、そう!うん!そうだ!
 
 詩織はほら、男みたいなもんだからー!」

動揺しながら咄嗟に考えた言い訳なのだろうー。

だがー
その言葉に、詩織の怒りはついに爆発してしまったー

ドン!と机を叩くー。

「ーさ、里菜…?」
困惑した様子の正博ー

この場で”詩織”として怒りをぶちまけそうになってしまったものの、
寸前のところで、すぅっ、と息を吸って
それをこらえるー。

ここはファミレスー。
里菜の身体で怒鳴り散らすようなことがあれば、
当然、周囲から白い目で見られるだろうし、
里菜に迷惑をかけてしまうー。

”浮気相手”である里菜に対しても思うところはあったものの、
恋愛経験のなさそうな子だし、
そもそも、正博は”浮気”を隠しているために、
里菜は自分が浮気をされているなどと、夢にも思っていないのだろう。

その里菜に”罰”を与えることはー
詩織にはできなかったー。

こうして、身体を借りて、正博を懲らしめるだけで十分だー。

「ーーー………まーー…いえ、先輩。”浮気”してますよね?」
里菜の身体で脅すような口調で言うー。

「ーう…う、う、…うわ…!?」
正博が困惑した様子で挙動不審になりながら言うとー、
里菜は「ーーーわたし、知ってるんですよ?」と、
さらに言葉を続けるー

「ー先輩には、わたし以外に彼女さん、いますよね?
 先輩の幼馴染の、あのー」

里菜がそこまで言いかけると、
正博は真っ青になってオロオロとし始めたー。

分かりやすすぎる反応だー。

「ーま、ま、ま、待ってくれー……!
 だ、だからって早まらないでくれー…!」

正博は意味不明な言葉を呟きながらー、
里菜のほうを見つめるー。

「ー早まってなんかいません!
 確実な証拠があるんです!!!!!」

そう言い放つと、
正博は「あ、いやー…」とだけ呟いてから
「そ…そ、それはー…」と、表情を歪めたー。

「ーーーー……」
困惑する正博ー。

”浮気”がバレないとでも思っていたのだろうかー。
落ち着かない様子でソワソワとしー、
かなり焦っているのが分かるー

手はガタガタと震えて、
激しく動揺し、話し方もおかしくなっているー。

「ーーそんなになるなら、最初から浮気なんかしなければいいのにー」
里菜として、敬語で話すのも忘れて
そう言い放つ詩織ー。

詩織は心底、正博には失望したー。

幼馴染として、小さい頃から一緒で、
正博のことは本当に好きだったー。

お調子者なところや、小心者なところはあるけれど、
人のことを大事にする一面はあって、
困っている人を放っておけないような、優しい性格だったー

だからこそ、詩織は正博のことを恋愛対象としても
見るようになったし、好きになったー

それなのにー

「ーーーーー」
里菜に憑依したまま、目から涙がこぼれ落ちるー。

「ーー…う…ぁ…な、泣かないでー」
戸惑いながら正博がそう言うと、正博は
青ざめて身体をガタガタと震わせたー

「ーわ…別れる…別れるからー…だからー
 だから、sーーー」

正博が、ついに”別れる”と言葉を口にしたー

この展開は、彼女である”詩織”と別れて
浮気相手の”里菜”と一緒になるー

そういうことなのだろうー。

正博はまだ何かを言おうとしていたが、
里菜に憑依した詩織はついに理性もはじけ飛ぶぐらいの
怒りを感じて、コップの水を正博に向かって投げつけたー

「最低!!!!」
そう言い放つと、詩織は”これ以上この子に憑依してると
この子の身体で怒鳴り散らしちゃいそう”だと思いー、
そのまま里菜の身体から抜け出したー

「ぅ…」
里菜がテーブルの上でそのまま倒れ込むー。

「ーー…お、おい…さ、里菜ー!?」
青ざめた正博は里菜の名前を呼びながら困惑の表情を浮かべたー

”酷いよ正博ー”
自分の身体に戻った詩織は、そう呟くと
正博に心底失望して、一人、部屋で涙を流したー

③へ続く

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コメント

これで最終回…ではなく、
まだあと1話あります~!☆

何が起きるのでしょうネ~?

続きはまた明日デス~!

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