2年前ー。
大学卒業と同時に結婚して家を出た
姉さんが離婚して帰ってきたー。
しかし、帰ってきた姉さんは
以前と”人が変わったかのような”状態だったー。
・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーえ?姉さんが?」
大学生の駒田 直幸(こまだ なおゆき)が、
母・千賀子(ちかこ)の言葉を聞いて、
思わず声を上げたー。
「ーうん。わたしも急でびっくりしちゃったけどー、
”離婚”したんだってー」
母の言葉に、直幸は
「り、り、離婚!?」と、困惑の声を上げたー。
「ーーそうなのよ。
今までそんな話、全く聞かなかったから
少し驚いちゃったけどー」
母・千賀子は戸惑った様子でそう呟くー。
「ーーそ、そ、そっかー…
何かあったのかな?」
直幸はそう言いながら、
姉のことを思い出すー。
直幸の姉・梨奈(りな)は、
2年ほど前に、大学卒業を機に、
結婚し、実家を出たー。
相手は小学生時代からの知り合いでもあった
川上 元春(かわかみ もとはる)という男だー。
姉の梨奈とは小さい頃から仲が良い
”幼馴染の男の子”で、
よく、小学生時代には、家にも遊びに来ていたため、
直幸も、元春とは面識があるー。
直幸自身、結構元春には世話になっていて、
”まるで兄のような感じ”で慕っていたー。
「ーーいやぁ、でも兄貴がそんなー」
直幸が呟くー。
姉の幼馴染でもあった元春のことを、
小さい頃から「兄貴!」と呼んで慕っていた直幸は、
姉と結婚して”義理の兄”になった今でも、
兄貴と呼んでいるー。
とても優しい性格で、穏やかで、
包容力もある感じの元春ー。
そんな彼と姉の梨奈が”離婚”してしまうなんて
正直、夢にも思わなかったー
「元春くん、本当にいい子だったのにねぇ…」
母の千賀子も残念そうに呟くー。
千賀子が言うには、
梨奈に理由を聞くと”お互いのすれ違い”と言うだけで
ハッキリとした理由は教えてくれなかったー、とのことだったが、
”急に離婚になって、ショック受けてるだろうから”と、
それ以上は、”今は”詮索しない方がいい、と判断した様子だったー
「ー俺、姉さんと兄貴に連絡とってみようかなー」
直幸がそう呟くと、母・千賀子は「あんまり根掘り葉掘り聞かないようにねー」と、
直幸に釘を刺したー。
「わかってるって」
直幸はそう言い放つと、部屋に戻ってため息をついたー。
部屋には、姉が結婚式を挙げた時の写真が
飾られているー
姉の梨奈と、姉の結婚相手で直幸自身も兄貴と慕う元春ー、
そして、直幸本人の三人で映った写真だー
とても明るい性格で、
おしゃれな姉・梨奈と、
穏やかで優しい雰囲気の元春ー。
二人はお似合いだと思っていたー
これからもずっと”姉さん”と”兄貴”は、
夫婦円満でいると思っていたー
けど、結果は”離婚”だったー
「ー結婚って分からないもんだなー」
直幸はそう呟くと、少しだけ寂しそうにため息をついて、
姉の梨奈、そして姉の夫”だった”元春に
それぞれ連絡を入れたー。
数時間後に、姉の梨奈の方から先に返事があり、
”う~ん、いろいろあったからなぁ~”と、
ぼかすような内容が返ってきたー。
やり取りをする感じでは、姉の梨奈は
ショックを受けている感じは感じられず、
むしろ”いつもよりハイテンション”に思えるぐらいだったー。
「ーー…」
そんな姉とやり取りしていると、
”無理してるんだな”と、どうしても思ってしまうー。
あんなに小さい頃から仲の良かった元春と離婚に至ったということは
やはり、色々な事情があったのだろうし、
少なからずショックを受けていると思うー。
それなのに”いつもよりハイテンション”な反応は、
”無理をしてる”と感じざるを得なかったー。
一方ー、
”兄貴”と呼び慕う姉の夫だった元春からは
翌日になっても、次の日になっても返事はないままだったー。
「ーー俺とももう話したくないってことかなー」
直幸は少し寂しそうに呟くー。
小さい頃から、姉の”友達”だった元春とは、
直幸もずっと接点のあった間柄だー
兄貴と呼び慕っていたし、
中学生になっても、高校生になっても何かとお世話になったー。
だがー
今の元春からすれば、
そんな直幸は”別れた妻の弟”ー。
もう会いたくないのかもしれないし、
何となく話をしにくいのかもしれないー。
けれどー…
こうして”一気に関係が終わってしまう”ことは、
直幸にとってはとても悲しいことだったー。
「ーーーー…」
最後に話をしたのは、先月のはじめだっただろうかー。
その時は”いつもの”兄貴だったのにー。
その間に一体、何があったというのだろうかー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
その翌週ー。
姉の梨奈は予定通り実家に戻ってきたー
「お邪魔しま~す」
笑いながら家の中に入って来る梨奈ー。
梨奈は、「急に帰って来ちゃってごめんね~!」と、
両親に言うと、両親は少し気まずそうにしながらも
「全然大丈夫」と、梨奈に言葉を掛けるー。
”離婚の理由がハッキリとしない”ために、
両親も梨奈にどう言葉をかけて良いのか、
戸惑っている両親ー。
そんな両親の戸惑い悟ってか、
それとも、直幸自身が天然だったのか、
「ー姉さん、どうして兄貴と離婚しちゃったんだよ」
と、問いかけたー。
元々、姉・梨奈と弟・直幸は
”何でも相談できる間柄”でもあったー。
だからこそ、両親以上に聞きやすかったのかもしれないー
「え~…だって”あんなやつ”と一緒にいてもさ~」
梨奈は笑いながらそう言うと、
冷蔵庫から飲み物を取り出して、
そのままそれを飲み始めるー。
「ーーーあ…あんなやつ…?」
直幸は困惑の表情を浮かべるー
「な…何があったんだよ?何かされたのか?」
直幸がそこまで言うと、冷蔵庫から取り出した
カルピスを飲み終えた梨奈は、
「まぁ、それほど大きなことじゃないんだけどー」と
言い放つと、「あ、そうだ!荷物、わたしの部屋にまた戻さないと」と
言いながら、実家に持ち帰ってきた荷物を手に、
自分の部屋に向かって歩き始めるー。
「ーー……姉さんー」
直幸は2階に上っていく梨奈の後ろ姿を見つめながら、
表情を曇らせるー
「本当に、何があったのかしらー」
困惑の表情を浮かべる母・千賀子ー。
相手のー
元春側に確認しようとしても、
元春の両親は、元春が大学時代に二人とも既に他界しており、
高齢の祖母がいるぐらいしか、
親族は残っていないー。
一人っ子でもある以上、
元春側の親族に状況を確認することも
なかなか難しいのが現実だったー。
「ーーあれ…そういえばー」
直幸は、ふと、姉の梨奈が
”カルピス”を飲んでいたことを思い出すー。
台所に置かれたカルピスの空のペットボトルを見つめる直幸ー。
「ー姉さん、これ、苦手じゃなかったっけ?」
直幸が聞くと、父が「あぁ、確かにー嫌いだったな」と、頷くー。
「ーーー…」
直幸は、カルピスの空のペットボトルを見つめながら
少しだけ不安そうに、その容器を見つめたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーここが、梨奈の部屋かぁ…」
梨奈がニヤッと笑みを浮かべるー。
自分の部屋にやってきた梨奈は、
まるで”初めて自分の部屋を見たかのような”
言葉を口にすると、
不気味な笑みを浮かべながら、
鏡のほうを見つめたー。
「ーーくくくくくくく…」
鏡を見つめながら胸を両手で揉み始める梨奈ー。
「あぁ、たまらないよー梨奈…」
自分のことを”他人のように”言いながら
一心不乱に胸を揉み続ける梨奈はー
やがて、顔を赤らめながら、自分が映る鏡に向かって
一人、キスをし始めるのだったー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・
姉の梨奈が帰宅してから3日ー
直幸は、ふとある言葉を口にしたー
「姉さん、なんか変わったよなー」
とー。
その言葉に、母の千賀子は少し戸惑った表情を浮かべるー。
”結婚して家を出る前”と
”3日前に離婚して帰ってきた姉”
確かに、同じ梨奈であることに
変わりはないのだが、
明らかに行動・発言・趣向が変わっているー。
人間は、変わるー。
それは分かっているー。
2年間も実家を離れていて、その間に会ったのは、
お正月や夏休みなど、特定のタイミングだけだ。
だからー
色々な部分が変わったのかもしれないし、
表面上、明るく振る舞ってはいるものの、
”離婚”に至ったことでショックを受けている
可能性も十分にあるー。
けれどー
”それだけじゃない”気がするー。
確かに、帰ってきたのは姉の梨奈で
あることに間違いはないー。
しかし、
”見た目”が梨奈なのに、
”姉さん”と話をしているという実感が
まるで湧いてこないー。
何故だか分からないー。
でも”姉さんと話をしている”という実感が、
何も、何も沸いてこないのだー。
「ーー元春くんと、離婚することになったしー
やっぱり、ショックなのよー」
母・千賀子はそう言い放つー。
母も、娘である梨奈の異変を感じ取ってはいたものの、
それは”元春くんと別れたから”だと、解釈していて、
それ以上疑問には感じていなかったー。
”元気に振る舞っているけど、やはり離婚はショックなことだろうから”
とー。
「ーま、まぁ、そうだよなー…いや、それならいいんだけどさー」
直幸が言うと、
「しばらく、見守ってあげましょ」と、千賀子はそう呟いたー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「え~!お姉さん帰ってきたんだ~?」
翌日ー。
大学で、彼女の愛唯(めい)と雑談している最中に、
姉が離婚して帰ってきたことを告げると、
愛唯は驚いた様子でそう呟いたー。
愛唯は、直幸の彼女で、直幸とは高校時代からの付き合い。
直幸の姉である梨奈とも何回か、会ったことがあるー。
「あ~あれ、いつだったっけ?
高校生の時、お姉さんと一緒にお祭り行ったときは
楽しかったなぁ~」
愛唯が懐かしそうにそう呟くー。
そういえば、そんなこともあったー。
高校生の時ー、姉・梨奈が結婚して家を出る少し前の夏休みに、
直幸と愛唯、そして姉の梨奈と当時はまだ”彼氏”だった元春の
4人で、夏のお祭りに行ったことがあったー。
「ーでも、お姉さんと結婚した元春さん、だったっけー?
すごくいい人そうに見えたけどー…
やっぱ、人って見かけによらないのかなぁ?」
愛唯がそう言うとー、
「ま、まぁ…それは、そうかもなー」
と、笑いながら直幸が愛唯のほうを見つめたー。
「ーな~んで、わたしのほうを見てるの?」
愛唯は、笑いながら直幸のほうを見ると、
直幸は「だって愛唯、よくみんなにそう言われるじゃん」と
笑いながら答えたー
直幸の彼女・愛唯は、
”とても大人しそうな見た目”の小柄な子なのだが、
見た目に反して、とてもおしゃべりで明るい性格ー。
そのため、よく”最初は全く喋らなそうな子に見えた”とか
”中身と外見が真逆”とか、
”口を開かなければ物静かな子”とか、言われているー
高校でも言われてたし、今も言われているー。
「ーーでも、お姉さんもたぶん、思うところもあるだろうし、
しばらくは優しくしてあげてね!」
愛唯の言葉に、直幸は頷くと、
「あ、そうだ、今度の休み、久しぶりに家に遊びに来る?」と、
愛唯に提案するー。
「ーえ!?いいの? じゃあ行く行く!
最近、遊びに行けてなかったしー」
次の土曜日に、直幸の家に彼女の愛唯が遊びに行くー
そんな約束をして、直幸は大学での1日を終えたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーふ~~~…どうしてもたまに脱がさないと”蒸れ”ちゃうよなぁ」
同時刻ー
自宅の姉の部屋ではー
梨奈がーーー
”ペラペラ”の状態になって、
床に横たわっていたー
まるでー
”脱ぎ捨てられた洋服”のようにー。
「ーーーへへへへ」
欲望に満ちた男の目が、
そんな脱ぎ捨てられた梨奈の姿を見つめているー。
男は、ペロリと自分の唇を舐めると、
「ーー梨奈は俺の”洋服”だ…へへへへへ」と、
笑みを浮かべながら呟いたー。
②へ続く
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
離婚して実家に帰ってきた姉…!
でも、何だか様子が変ですネ…!
続きはまた明日デス~!
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