<MC>笑い続ける姉さん

ある日ー

普段は物静かな”姉さん”が
笑いながら帰宅したー

その理由とはー…?

・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーただいま~」

いつものように帰宅した高校1年生の
浦本 泰示(うらもと たいし)は、
手を洗い、うがいを済ませてから
2階にある自分の部屋に向かおうとしていたー。

ガチャー。

ちょうどその時、玄関の扉が開きー
姉であり、高校3年生の絵美(えみ)が帰宅したー。

「ーーあ、姉さんーおかえりー」
泰示がそう声を掛けるー。

だがー

「ーーあはっ…はははははっ…ふふ…ふ…あはははははっ!」
何が面白いのか、姉の絵美が嬉しそうに
笑いながら帰宅したのだー。

「ーーーーど、どうしたんだよ姉さんー」
あまりにも楽しそうに笑っている絵美を見て
思わず困惑する泰示ー。

姉の絵美は、物静かな性格で、
優しいのだが、感情表現が苦手なタイプー。

滅多にこんな風に笑うことはなくー
穏やかに、優しく見守ってくれるタイプの姉さんだー。

そんな、絵美がこんな風に笑って帰宅するのはー
異例中の異例…
そんな風に表現するのが正しいのだろうかー。

とにかく、普段は絶対にないような出来事だったー

「ーーあははは…ふふふふ…くくくく…はははははははっ」
笑いながら2階に向かう絵美ー。

「ちょ、ちょっと姉さん、どうしたんだよ!
 何がそんなに面白いんだよ!」

あまりにも楽しそうに笑っている絵美を見て、
困惑しながらも苦笑いする泰示ー。

だがー
姉の絵美は、泰示の問いかけにも答えずに、
そのまま笑いながら自分の部屋へと入って行ったー。

「ーーー…いやいやいや、笑いすぎだろ」
泰示は思わずツッコミを入れながらも、
「まぁ…普段は無表情すぎるぐらいだしー
 姉さんが楽しそうならいいかー」と、
笑いながら、自分の部屋の中へと入って行ったー。

”ははははははっ!あはははっ!あははははははっ!”

”ひひひひ…ひ…ふふふ…あははははははははっ”

しかしー
泰示はすぐに異変に気付くことになるー。

隣の部屋から聞こえる笑い声ー…
姉・絵美の笑い声が、一向に止まらないのだー。

”さすがに変じゃないか?”と、
そう不安を感じた泰示は、
そのまま自分の部屋を出て、
姉・絵美の部屋をノックしたー

「ね、姉さんー?ずっと笑ってるけどー
 どうしたんだよー」

泰示がそう呟きながら
部屋の外からノックを繰り返すー。

しかし、それでも絵美は笑い続けていて、
部屋の中からまともな返事が返ってくることはなかったー

「ね…姉さん?ほ、ほんと大丈夫か?」
流石に不安になってきた泰示がそう声を掛けるー。

しかし、それでも、姉の絵美は返事をしないー

「ね…姉さん…??」
戸惑いながら扉をこっそりと開けるとー
ベッドに座った状態で、制服姿のまま
着替えることもせずに、ずっと真っすぐを見つめて
繰り返し笑い続けていたー

「ーー…ちょ…ど、どうしたんだよ…?姉さん!」
慌てた様子の泰示ー

「あははははっ!ひひひひっははははっ!あははははははっ!」
狂ったように笑い続ける姉の絵美ー。

絵美がこんなに声を上げて笑っていること自体、
珍しいのに、今の状況はそもそも、どう考えてもおかしいー。

「姉さん!し、しっかりするんだ!姉さん!」
泰示が再び叫ぶー。

「ーーあははははっ…はははははっ!はっ… はっ… あ…はぁっ…」
笑いすぎて呼吸が苦しくなってきているのか、
時折苦しそうにする絵美ー。

しかしー
何度か苦しそうに呼吸をすると、
再び”我慢”できないという様子で笑いだすー。

「あははははははははははははっ!!ははははははっ!」

「ーー…な、な、何に笑ってんだよ!?姉さん!
泰示は何度も何度も絵美に言葉を投げかけるー。

けれどー、
一向に絵美が”ちゃんとした反応”を見せる様子はなく
それでもなお、笑い続けているー。

「ーーはっ…ぁ… あ… あはっ… ひっ…ひひひひひ」

絵美の顔が青ざめていくー。

「お…おい…な、なんなんだよー」

姉の”異様な雰囲気”を見て
ただ事じゃないと感じた泰示は、慌てて1階に
駆け下りていきながら
「母さん!母さん!」と叫ぶー

「ど、どうしたの…?そんなに慌てて」
1階にいた母親が、あまりにも慌てた様子で降りて来た
泰示を見て、困惑の表情を浮かべるー。

「ね…ね、姉さんが、ずっとー…ずっと笑ってて」
泰示がそう言うと、
母親は「え…?そ、それがどうかしたのー?」と、
まだ事態を理解できていない様子で首を傾げるー。

「と、と、とにかく来て!」
泰示がそう叫びながら、強引に母親を2階に呼び込むと、
苦しそうにしながら床に横たわって笑い続けている絵美を見て、
母親も呆然とした表情を浮かべるー

「姉さん…さっきからずっと笑い続けててー…
 な、何を言ってもちゃんと反応しないんだ」

泰示が困惑しながらそう言うと、
母親も慌てた様子で「絵美!?ちょっと!?絵美!」と
何度も絵美の名前を呼びかけるー。

それでも絵美は笑うのをやめずにー、
ついには明らかに呼吸困難のような症状が出始めたために、
母親が慌てて救急車を呼びー、
絵美は意識が混濁した状態のまま、
病院に緊急搬送されたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーー……無事でよかったー」

数時間後ー
泰示が病院に駆けつけると、
姉の絵美は、いつも通りの穏やかなー
そして、どこか感情表現に乏しいような、
そんな振る舞いに戻っていたー

「ごめんね…迷惑をかけてー」
絵美がそう呟くと、
泰示は「姉さん、ホントそのまま窒息しちゃいそうで、
心配したんだぞ?」と、
一時安静にしている病室で言葉を口にするー。

「ーーうん…ごめん」
絵美は、申し訳なさそうに言葉を口にすると
「泰示も、明日学校でしょ?
 迷惑かけちゃってー」
と、さらに付け加えるー

「いいよいいよー。
 姉さんが無事だっただけで、本当に嬉しいし、
 正直、ホッとしてるからー」

泰示が穏やかな笑みを浮かべながら
姉にそう言い放つと、
「ーでも、どうして、あんな笑ってたんだよ?」と、
絵美に質問を投げかけるー

「うん…それがー…
 わたしにもよく分からなくてー」

絵美は、そう呟くー。

急に他のことを考えられなくなって
とにかく面白くなってしまって、
ずっと笑い続けたー。

自分でも、何が何だか分からなくてー
笑うことしかできなかったー。

「ーーー…キノコとか、食べてないよな?」
泰示が不安そうにそう呟くー。

毒キノコの中に、”ワライタケ”と呼ばれる奇妙なキノコがあるー。
それを食べると、笑いが止まらなくなる、という話は
聞いたことがある。

泰示がそれを指摘すると、
絵美は「学校に行って、帰ってくるまでの間に、キノコを
拾って食べたりするわけないでしょ」と、少し
苦笑いしながら答えたー

「ーそうだよなぁ…」
医者も”原因不明”と言っていたが、
とりあえず鎮静剤で、絵美は落ち着きを取り戻したー。

今日、このあと、もう少し落ち着いたら日帰りで退院ー、
今後は経過観察を行うことになっているー

「あ~でも、お昼に買ったパンにキノコ入ってたけどー」

学校内のパンの販売で、昼休みにきのこパンを買って
食べた、と絵美は呟くー

「いやぁ…でもなぁ…
 売られているパンにワライタケ混ぜるパン屋なんていないだろ」

泰示のその言葉に、絵美は「だよね」と呟きながら、
「とにかく、心配かけてごめんね。今日はありがとう」と、
穏やかな笑みを浮かべたー。

夜遅くに絵美も無事に帰宅ー
幸い、何の異常もなく、
両親にも、弟である泰示にも申し訳なさそうにしている以外は
特に、変わったところはなかったー

”突然笑い出した姉”ー

その問題はこれで解決ー…
したかのように思えたー。

だが、その翌日ー。

絵美が、いつものように登校し、
いつものように友達と会話を交わすー。

穏やかで優しい雰囲気の絵美は、
周囲から何かと頼りにされやすいタイプー。

今日も、いつものように、その周囲には
人が集まっているー。

けれどー…
そんな絵美の姿を遠くから見つめている生徒がいたー

「ーチッー」
舌打ちをしていたのは、このクラスの男子生徒・千葉 隆(ちば たかし)ー。

彼は、先月、絵美に告白して振られているー。

最初、絵美は「今は彼氏とか、そういうこと考える余裕なくて」と、
隆の告白を断ってきたものの、
何度も何度もしつこく隆が”理由”を聞き続けたため、
絵美はついに、”本当のこと”を口にしたー

「いつも、わたしとか、他の子見て、ニヤニヤしてる千葉くんとは
 ちょっと付き合えないよ!」

とー。

隆はー”下心丸出し”の男子生徒で、いつも女子を見ては
ニヤニヤしているー
そんな、筋金入りの変態だったー。

だがー
その件で、隆は絵美を逆怨みしたー。

”僕のことを馬鹿にしやがってー”

そしてー
ネットで手に入れたのが”他人を洗脳するペンライト”ー

”喜怒哀楽”を調整する簡単な洗脳しかできないが、
”喜怒哀楽”の楽以外の感情を全てオフにして、
楽を最大レベルまで上げて”洗脳”すると、
昨日の絵美のようになることが分かったー。

”タイマー”も設定されており、
昨日は”半日”にあたる設定で、絵美を洗脳したー。

だがー

「ーーー僕がニヤニヤしていて気持ち悪いだってー…?
 ふざけるなー ふざけるなふざけるなー」

”気持ち悪い”とまでは言われていないものの、
勝手に過大解釈した隆は、
今日も絵美が普通に登校していることが
我慢ならなかったー

もう少しー、
昨日のことで、落ち込んだり元気がない絵美の姿を
期待していたー。

なのにー
絵美は今日も普通に登校しているー

歯ぎしりをしながら、隆は
洗脳ペンライトの横についている”タイマー”の部分を
”最大”レベルまで上げるー。

そこには”∞”と刻まれているー

こんなことしてはいけないー
それは分かっているー

一度このペンライトで洗脳すれば、
”タイマー”が切れるまで元には戻らないー

だが、それでもーー

隆は、放課後にー
絵美を呼び止めてー

”∞”に設定したペンライトを、絵美の目に当ててしまったー

「ーあはっ…あはっ…あはははははははははっ!」
再び笑い出す絵美ー

絵美は嬉しそうに笑いながら、学校から立ち去っていくー

「へへ…へへへへへ」
隆は、笑いながら下校していく絵美を見て、
ニヤニヤと笑うー

「僕を振った罰だー。
 ニヤニヤしてて気持ち悪いとか、言いやがってー

 お前の方が笑い続けてて、もっともっと気持ち悪いじゃないか!
 へへへへ…」

隆は、”自分がしたこと”の重大さを大して認識することもないまま、
そう呟くと、そのままご機嫌そうに歩き出したー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ね、姉さん!おいっ!姉さん」

帰宅後ー
再び”洗脳”により、笑いが止まらない状態の絵美は
救急車で搬送されたー。

だがー
今度は、病院に到着後、何をしても笑いが止まらず、
絵美は真っ青になりながらも狂ったように笑い続けたー

「お…おい!姉さん!もう笑うなって!おい!」
弟の泰示がそう叫ぶも、
姉の絵美はずっと、ずっと笑い続けたー。

呼吸困難に陥り、真っ青になっても、
なおも”呼吸”よりも笑うことを優先する絵美ー。

「おい!姉さんってば!」

そんな泰治の想いが届くこともなくー、
逆怨みによる軽い気持ちの洗脳は、最悪の結末を迎えたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーー……」
後日ー

学校で、絵美の死を告げられて
クラスメイトたちが悲しそうにする中ー、
絵美を洗脳した張本人である陸は、
青ざめた表情で、
「ーーー…し、し…死んだ……?」と、
自分のしてしまったことの重大さに気付きー、
ガクガクと身体を震わせー、
机の上で一人、「うあああああああっ!」と奇声を上げたー

突然叫び出した陸に、ビクッとするクラスメイトたちー。

しかしー、
その理由を知る者は誰一人としていなかったー。

おわり

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

毒キノコの1種から思いついた洗脳モノでした~!☆
何話も書くほどの内容ではない気がしたので
こうして1話完結で完成させました!
(2話とか3話やっても、笑ってるばっかりになっちゃいますからネ~笑)

お読み下さりありがとうございました~!

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コメント

  1. 匿名 より:

    すごくしょうもない逆怨みで命まで失った絵美が気の毒すぎます。
    仮に死ぬことはなくとも、ずっと笑いが止まらなくなったら周囲から気持ち悪がられて、人生めちゃくちゃでしょうけど。

    ところで、もし他の感情をマックスにしてたらどうなったのかが気になります。
    哀だったら、自殺しちゃうくらい落ち込んで悲しんだりとかするんですかね?

    • 無名 より:

      コメントありがとうございます~!

      他の感情だったら…
      それはそれで恐ろしいことが起きそうですネ~!
      喜怒哀楽…のうちの怒と哀は大変なことになりそうデス…!

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