<女体化>女体化犯罪者・室田③~決着~(完)

人々を女体化させる犯罪者・室田を追い詰めた元刑事ー。

室田は、そんな彼…彼女を前にしても
余裕の態度を崩さなかったー。

そしてー…?

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ー私は、もう一度会いたいのだー。美月にー」

廃墟地帯の一角ー。
元は病院だったその建物の高層階部分でー
祭壇のようなものを背にー

覆面で口元を多い、
ゴーグル越しに鋭い目を向けながら、
人々を女体化させて回っている犯罪者・室田はそう呟いたー。

「ーー美月?」
幸則がそう言うと、
室田は続けたー。

「ー私には、最愛の女性がいたー
 それが、美月だー」

歩きながら、身振り手振りを加えて、
まるで”ショーの主役”かのように語りだす室田ー。

「美月と私は、将来を約束しー、
 互いに、夢に向かって進んでいたー

 だが、ある日ー」

室田はそう言うと、幸則のほうを見つめて立ち止まるー

「美月は、仕事からの帰り道にー
 三人組の男たちに襲われたー。」

その言葉に、幸則は表情を歪めるー。

「美月から、助けを求める電話が入った私はー、
 必死に、男たちから身を隠しながら
 電話をしてきてくれた美月を助けるためにー
 その場所へ向かったよー。」

室田はそこまで言うと、言葉を止めたー

幸則が「ーーそれで…?」と、その先、どうなったのかを促すー。

室田は両手を動かしながら、
言葉を続けたー

「ー死んだよー」

とー。

「ーーえ」
幸則が少し驚くと、室田はさらに言うー

「私が駆け付けた時には、もう美月は死んでいたー。
 相当乱暴されたのが分かる状態でー
 人間としての尊厳はー
 そうー、踏みにじられていたー」

室田の言葉に、
幸則は”その件”に関しては同情しながらも
「ー今、お前がやっていることに何の関係があるんだ!」と、叫ぶー。

「ー目的は3つー」
室田は白い手袋をはめた手で三本の指を立てて叫ぶー

「ひとつー、美月にもう一度会うことー

 ふたつー、人類全員を女体化させて、男がいなくなってしまえばー
 美月のように乱暴される女性はいなくなることー

 みっつー、美月を乱暴した三人組の一人は、警察の偉い人の息子だったー
 それで、奴の罪は隠蔽されたー。
 美月の死をぞんざいに扱った社会への復讐だー!」

室田がそう叫ぶとー
幸則は「ーどうやってその、美月って人にもう一度会うんだ!?」と、叫ぶー。

室田は注射器を手に、笑みを浮かべたー。

「ー手当たり次第、男を女体化させていればー
 そのうち、美月にそっくりな女にも会えるはずなんだー
 ふふー」

とー。

その目はー
”正気”を失っていたー

冷静なように見えて、
この男ー室田洋平は既に正気を失い、狂気に飲み込まれているー。

仮に、女体化させられた人間の誰かが”美月”という女性に
そっくりな容姿になったとしても、それは美月ではないー。

仮に、人類全員を女体化させても、やはり乱暴をする人間はいるだろうし、
そもそも、子供が作れなくなり、その時点で人類は滅亡するー
それにー、室田のやり方では”全人類を女体化させるほど”の速度はないー
室田個人では絶対に”不可能”だー。

復讐については、何とも言えないが、
室田の野望は”破綻”しているー

幸則は、それを声に出して指摘したー。

「ふふふ…ふふふふふふふふ…ははははははははは!
 私は必ず美月に会うんだー!
 誰も私を止めることなどできないー」

室田に言葉など通じなかったー
やはり、こいつは力づくで止めなくてはならないー

「室田洋平!お前を止めてやる!」
幸則はそう叫ぶと、室田の方に向かって走り出すー。

”既に女体化”している身ー。
室田はこれまで、人殺し自体は、警察が確認している限り、
していないー。

女体化させられた人間が自殺している事例は
何件かあるが、それ以外には、ないー。

つまりー
”既に女体化している幸則”に対してはー
室田は無力と言ってもいいー。

「ーおっと!」
室田が、幸則の攻撃をかわすー

幸則は髪を振り乱しながら
室田に拳を振りー、
蹴りを食らわせようとするー

「しゅっ! しゃっ! ひひっ! ふはっ!」
室田はふざけた言葉を口にしながら、
おちょくるような奇妙な動きでそれを回避するー。

そしてー

「ーーー!!!」
幸則は、室田が注射器を手に、幸則にそれを打ち込もうとしてきたのに気づき、
咄嗟にそれを蹴り飛ばしたー

室田の注射器が音を立てて廃墟地帯に転がるー。

「ーーー残念ー
 せっかく”女の子”にしてあげようと思ったのにー」

室田は笑うー。

「ーーな、なんだってー?」
困惑する幸則が室田のほうを見つめると、
室田は笑みを浮かべながら続けたー。

「ーこれはー”若返り”の薬が入った注射器でねー。
 多量を摂取させればー
 そうだなー
 君は、女子大生、女子高生ー
 いいやー、JC…
 赤ちゃんにまで戻ってしまうー」

室田が注射器をくるくる回しながら笑うー。

「ー人を女にするだのー若返らせるだのー
 そんなもの、どこで手に入れた?」

幸則が言うー。

「ーそれは、君が知る必要は、ないー」
室田の言葉にー、
幸則が身構えるー。

再び激突する二人ー

だがー

「はぁ…はぁっ…はぁ… はぁ…はぁ」

幸則の身体が、弱弱しい息を上げ始めるー

「おやおや、”か弱い女性”が、
 そんな必死に戦えば、そうなっても仕方がないー」

室田は馬鹿にするようにして呟くー

「ーふ…ふざけるな… はぁ…はぁ…はぁ…」
幸則が、息をあげながら室田を睨みつけるー。

「ーーーー安心しなさい」
室田は、そんな幸則のほうを見つめると、
注射器を手に、くるくると回転させながら近づいてきたー

「ー何になりたい?
 女子高生?JC?それとも、女の子になるかー?
 赤ん坊でもいいー」

室田はニヤリと笑みを浮かべるー。

「ーー…く…ふざけるな!」
幸則が、蹴りを室田に食らわせようとするも、室田は
それを防ぐー。

「ーー…はっはははは…
 私の前で、股でも開くかー?」

挑発的に笑みを浮かべる室田ー。

「ー”女”になったお前を犯してやることだって、
 できるんだぞ?

 ーーーお前も、見るかー?
 ”地獄”をー?」

室田が耳元でそう囁いたその時だったー

パァン!

銃声が響き渡りー
室田がビクンと震えたー。

室田が幸則から視線を逸らして、
銃声がした方向を見つめるとー
そこにはー
幸則の同僚・川熊刑事の姿があったー。

「か…川熊ー…!」
幸則が叫ぶと、川熊刑事は
「ーこいつは俺がやるー!」と叫んだー。

幸則は、以前、同僚の刑事を女体化させられて、
その結果、その刑事が鬱になり、自殺してしまったことで、
室田に強い憎しみを抱いていたー

だが、その同僚は、川熊刑事にとっても大事な同僚だったー。

川熊刑事は、同じ悔しさを持つ幸則と共に、
今日、こうして室田を追い詰めようとしていたー。

”突き止めた室田の居場所を上層部に伝えず、独断で行動するー”

恐らく、自分は刑事失格だと思いながらもー
川熊刑事は室田に銃を向けるー。

何度も、何度も、室田に銃撃を与える川熊刑事ー
室田がついに吹き飛ばされて、”美月”が祭られている背後の
祭壇のようなものにそのまま突っ込むー

倒れ込んだ室田にさらに銃を撃ちこみながら
近付いていく川熊刑事ー

「こんなイカれたやつはー
 死ななきゃダメだー」

川熊刑事が言うー。

「ーーで、でも、元に戻る方法がー」
幸則が言うと、川熊刑事は「ーー悪いー」と、だけ呟くと
「ーでも、こいつは殺さないとダメなんだー!」と、叫ぶー。

”こいつを生かしておけば、ロクなことにならないー”
とー。

例えー
”女体化した人間を戻す方法”を聴いても、こいつは答えない、とー。

銃弾が無くなるまで、室田を撃った川熊刑事ー。

しかしー

「ーしゃああああああああああああっ!!!」
室田が突然起き上がり、川熊刑事に足を引っかけるとー
2本の注射器を川熊刑事に打ち込むー。

その動きは、もはや”神速”と言えたー。

「う…あ…あぁああああああ…」

もがく川熊刑事が、女体化していきー
さらにみるみる身体が縮んでいくー。

やがてー
小さな女の子になってしまった川熊刑事が
その場で泣き始めるー。

「ーーおぉぉ…可哀そうにー」
そう言いながら、室田が女の子になってしまった
川熊刑事から、幸則の方に視線を移すー。

室田のゴーグルは先ほどの銃撃で吹き飛びー、
覆面も取れかけているー。

穴の開いた服の下にはー
”見たこともないような鉄”のようなものが入っていて
それが銃弾を防いでいたー。

”銃弾を防ぐ何か”を、室田は着込んでいたのだー。

「ーーうっ…うあああああああああああ!!!」
咄嗟に、幸則は、室田に突進したー

同僚の川熊まで、あんなことになってしまったー。

その怒りー悔しさー、憎しみー
そして、恐怖ー

それを全て室田にぶつけて、突進したー。

「ーーー”恐怖”ーーー
 安心しなさいー
 君の恐怖も、私がー」

室田がそう言いかけて、表情を歪めたー。

手に握っていたはずの注射器の1本が、
幸則に突進された際に、手から零れ落ちてしまっていたのだー。

「ーーーチッ!」
2本持っていたうちの”若返らせる方”の注射器を落としてしまった
室田は舌打ちをするー。

幸則を”赤ん坊”にしてやろうと思ったがー
こうなったらー

室田は、白い手袋の中に隠していた”奥の手”を使おうとするー

しかしーーー

「室田!!!!!!!!!!!!
 お前のような、イカれた野郎はーーー!!
 ここで、俺が絶対に止めるーー!!!!」

室田から聞いた過去が本当ならー
”美月”なる最愛の女性が死んだ件は、
同情の余地はあると思うー。

だがー
だからと言って、
今やっている室田の行動は間違っているー

絶対にー

「ーーーお前はーーー俺が、止めるーーーー!!」
幸則が、可愛らしい声に精一杯の迫力を込めながらー
乱れ切った髪で、室田を睨みつけるー

そしてー

「ーー!待て!これ以上はー!」
室田は、自分が廃墟の壁際まで追い込まれていることに
気付き、そう叫ぶー。

ここは、元々病院だった廃墟地帯ー。

今、室田がいる場所は、病院の”4階”だった部分だー

「ーーー俺は、お前をー許さない!」
幸則は、そう叫ぶとー
室田もろともー、廃病院の高層階から共に宙へと身を投げ出したー

「うっ…うあああああああああああっ!」
室田は”奥の手”を使うことなく、真っ逆さまに落下していくー

「ーーーーー」
幸則は、どこか満足そうにその様子を見つめーーー
最後に、少しだけ微笑んだー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーー例の件はどうなっている?」

警察上層部の男に呼び出された上梨警視正は
そう報告を求められて、頭を静かに下げたー

「はっー。
 女体化事件はあれ以降起きていませんー」

その言葉に、
上層部の男は「そうか、ご苦労だったー」とだけ
呟くと、
「例の刑事二人は事故死で処理してくれ」と、
そう呟いたー

女体化した幸則ー、
そして、同僚の川熊刑事はー

あの廃墟で遺体となって発見されたー

幸則は転落したことによる死ー
川熊刑事は、女の子になってしまった時点では
まだ生きていたはずだが、警察が現場に駆け付けた際には
既に死亡していたー

「ーーー」

あれ以降ー
室田の目撃情報はなく、女体化事件も起こらなくなったー。

近くには”室田が持っていた謎の注射器”も転がっていてー
遺体発見には至っていないものの、室田もあの廃墟で
死亡したものと、警察はそう判断していたー

・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーーふふ」

街中を歩く若い女が静かに笑みを浮かべるー。

「ーーーーしばらくはー
 大人しく、身を隠すとするかー」

”白い手袋”をはめたその女は、静かに笑みを浮かべるとー

”転落したあとー…
 たまたま柔らかい地面に落ちたのは幸運だったー”

と、あの時のことを思い出すー。

落ちた際に持っていた”女体化”の注射器を、咄嗟に自分に注射した
室田は、女体化して姿を変えー、
そのまま警察からの逃亡を続けていたー。

「ーいったん、”女”になれるまでは”中断”だー」

女体化した室田は妖艶な笑みを浮かべると、
そのまま夜の闇へと姿を消したー

おわり

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

人々を女体化させる犯罪者のお話でした~!☆

凶悪犯が”憑依”の力を手にしてしまうよりかは、
まだ女体化の方が
混乱が少なくて済みそうですネ~笑

今日もありがとうございました~!

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