夏のお祭りを楽しむ少女たちー。
しかしー…
とても仲の良さそうに見える彼女たちは
”全くの他人”だったー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・
「お待たせ~!」
可愛らしい少女が手を振りながら
友達のところにやって来るー。
今日は、夏に毎年この地域で行われる
お祭りの日ー。
色々な屋台が立ち並び、
毎年この時期には賑わいを見せているー。
そんな、お祭り会場の一角…。
賑わいからは少し外れた場所の木の下で、
木に寄りかかっていた少女が「遅かったじゃんー」と、
笑みを浮かべながら、
手を振りながら近づいてきた少女のほうを見つめるー
「いやさ…だって、どの子にするか迷っちゃってさ~!」
笑いながら近づいてくる少女に対して
「ー迷いすぎだろー。」と、木に寄りかかっていた方の少女は笑うー。
「ーーいやいやいや、それに、この子、
友達と一緒だったから、うまく抜け出してくるのに
時間がかかってさ」
優しそうな顔立ちの少女がそう言うと、
「なんだよ!友達捨てて来たのかよ!」と、木に寄りかかっていた方の少女が
笑みを浮かべるー。
「ーーまぁ…この子は彼氏とデート中だったみたいだから、
俺なんか彼氏を捨てて来たんだけどな!」
木に寄りかかっていた少女がゲラゲラと笑うと、
少し間を置いてから
「ーーで、その身体はJK?JD?」
と、おかしな言葉を口にするー
「ーへへ…この身体はJKだぜ」
そう言いながら、嬉しそうにくるくると回転して見せる少女ー。
「ははは、”俺の身体”はJDだけどー
ま、外から見りゃ友達同士か姉妹にしか見えないだろ?」
木に寄りかかっていた方の少女は、そう言いながら笑うー。
お祭り会場の脇で、合流した
女子高生と女子大生ー
彼女たちに”面識”は今まで一度もなかったー。
だがー
こうして親しげに話をしているー
「へへへ…でも、健(たける)のアレ、ほんと、すごいんだなぁ」
女子高生の方がそう呟くと、女子大生の方が「おい!」と、叫ぶー
「ー健なんて呼ぶなよ!せっかくのムードが台無しだろ!?」
と、女子大生が言うと、女子高生が「あ、わりぃ」と、
苦笑いするー。
だがー
二人とも”自分の名前”をそもそも知らないー。
おかしな話だが、ここにいる二人の少女は
”自分の名前”を”今は”知らないのだー。
「ーーー何て呼べば?」
女子高生が言うと、女子大生は「へへ…まぁ…適当に名前つけちゃおうぜ」と、
笑いながら呟くー
いいねいいね、と応じる女子高生ー。
女子大生の方が「じゃあ~俺…いや、わたしは~萌咲(もえ)って呼んで!」と、
にこにこしながら言うー。
「ーえへへへへ…萌咲ちゃんか~!いいねぇ」
女子高生の方は、そう言うと、「俺は友梨佳(ゆりか)で!」と、
笑みを浮かべながら言い放ったー
「ーーふふふ…萌咲と友梨佳! なんか興奮するなぁ」
勝手に名前をつけた二人はー。
女子大生=萌咲の方が、「で、あいつはどうしたんだよ?」と
見た目からは全然想像もつかないような言葉遣いで
言葉を口にすると、周囲をキョロキョロと見渡したー。
「さぁ?まだ来てないけど」
女子高生=友梨佳がそう言い放つー。
「ったく何してんだ次郎(じろう)のやつー。
まぁ、あいつ優柔不断だかー」
萌咲がそこまで言いかけると、
ようやく「悪い悪い!待たせたな!」と言いながら
お祭り会場脇の大木のところまで、
メイド服の少女がやってきたー。
「ーうわっ!メイドじゃん!やべぇ」
萌咲が興奮した様子で叫ぶと、
友梨佳は「どこでそんな身体見つけたんだよ!」と、
笑いながら言い放つー。
後からやってきたこの”メイド”も、
友梨佳とも、萌咲とも面識は全くないー。
だが、初対面とは思えないような態度で
雑談する三人ー。
「ーいやぁ、一人で可愛いメイドが歩いてたからさぁ、
この身体、使ってください!って言ってるようなもんだろ?」
笑うメイドー
「ははは、しかしお祭りにメイドが来てるなんてなぁ~」
ニヤニヤしながら萌咲がそう言うと、
メイド姿の少女が、「え…」と、表情を歪めたー
”股間のあたりがかゆい”と思って
なんとなくメイド服の上からそのあたりを触って、
ふと、あることに気付いたのだー。
「ーーへへ どうしたんだよ?」
友梨佳が笑いながら言うと、
「え…いやー」と、メイド服の少女が表情を
歪めながら呟いたー
「この子ー…ついてるんだけど」
とー。
「は?」
友梨佳は”意味が分からない”という様子で
声を上げると、
メイド服の少女が「この子、ついてるんだよ!」と、
股間のあたりを触りながら言い放ったー
「ーな、なにが?え?まさかー」
そう言いながら女子高生の友梨佳が、メイド服の少女(?)の、
股間のあたりを何も気にせず触ると、
「うぉぉああああ!マジだ!ついてる!」と叫んだー
「ーーへ?ホントかよ」
女子大生の萌咲も笑いながらメイド服の少女のソレを確認するとー、
「おいおいおい!この子、男じゃん!」と、
メイド服の少女(?)が叫んだー。
「ーーいいじゃねぇか。可愛いのについてるなんて、
一粒で二度おいしいだろ」
萌咲が言うと、
茶化すようにして、友梨佳が「美味しさ2倍ー!にばーい!」と叫ぶー
「いや、…え…えぇ…俺は純粋な女の子に憑依したかったぁ…」
と、メイドの格好の男の娘が叫んだー。
「ーまぁまぁ…で、名前は?」
萌咲が言うと、
メイドの男の娘は「し、知らないよーこの子の名前なんて」と、
言葉を返すー。
「ーははは。名前なんて適当でいいんだよー
俺ー、あ、いや、わたしは萌咲って勝手に名前つけたし~!
あいつは、友梨佳だし~!」
萌咲と友梨佳が笑いながら言うと
「じ、じゃあ、もう、この際だから女の子っぽい名前をつけちゃうぞ!」
と、メイド服の男の娘が叫ぶー。
「ーーえ…え~っと、え~っと…じゃあ、尚美(なおみ)でー!」
「ーへへ、尚美ちゃんね」
萌咲が、三人全員が揃ったことを確認すると
「よし!じゃあ~!女の子としてお祭り楽しんじゃお~!」と、
可愛らしい仕草を交えながら嬉しそうに宣言したー。
「お~!」
友梨佳と尚美も嬉しそうに叫ぶとー
女子二人と男の娘一人が、賑わうお祭り会場に向かって
歩き出したー。
二人の少女と、一人の男の娘は、
”憑依”されていたー。
全く知らない男子たちにー…。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
”なぁ、明日のお祭りなんだけどさー”
前日ー。
仲良しの男子高校生三人組
健(たける)と輝明(てるあき)と、次郎(じろう)は、
明日に迫ったお祭りのことを話していたー。
その最中、健が突然、神妙な面持ちで何かを
言い始めたのだー。
「ーなんだ?急用でこれませんってか?」
次郎が笑いながら言うと、
「違げぇよ」と、健は笑いながら
言葉を続けるー
「なぁー一度ぐらい女の子として浴衣を着て
お祭りを楽しんでみたくないか?」
とー。
「ーーーは?」
意味不明な言葉に、輝明は思わず首を傾げるー
「ーまさかお前、女装でもしてお祭りに行くつもりか!?」
輝明はそこまで叫ぶと
「あ、いや、まぁー…お前がそうしたいなら別に俺は止めないけどな」
と、笑いながら頷くー。
「ーいやー、違うー。
女の子になって、お祭りに行くんだー」
健が堂々とそう言い返したのを聞いて
輝明も次郎も、口をぽかんと開けたまま
”何言ってるんだこいつ?”と言いたげな表情を浮かべるー
「ーおいおい、そんな顔するなよ」
健はそう言うと、鞄から何かを取り出したー。
それがー
”憑依薬”だったー
「何それ?なんかゲームで見るようなウイルスの容器みたいだな」
輝明が言うと、
健は笑みを浮かべながら言うー。
「ーこれはウイルスじゃないぜー」
とー。
「ーじゃあ、何なんだよ?検尿?」
次郎が言うと、
「バカ!紫のおしっこなんて出てたら死んでるだろ!」と、
健はツッコミを入れるー。
「ーーー憑依薬って知ってるか?」
健が笑いながら言うー。
「ひ、ひ、ひ、憑依薬ー!?」
少し天然な性格の次郎が叫ぶと、
健は「しっ!声が大きいぞ!」と、慌てて次郎を黙らせるー。
「ー憑依薬って?」
輝明の言葉に、健は、憑依薬について説明するー。
ネットで見つけた薬で、
これを飲むことで幽体離脱して
他人に憑依することができる薬ー…
なのだと言う。
「ははは!怪しすぎるだろ?」
あまりにも怪しいその薬に、次郎は笑いながらツッコミを入れると、
続けて輝明も「ぶどうジュースみたいな色だもんな」と、
”ただのぶどうジュースではないか?”と指摘するー
「ーーへへへ…安心しろ。本物だ」
健が断言する。
輝明は「お前、どこからそんな自信がー」と、言いかけて
「まさか!」と叫ぶー
「お前!試したのか?」
輝明が言うと、健は「あぁ」と、笑みを浮かべながら頷いたー。
「昨日、届いたばっかりのこれを飲んでみたらさ、
本当に幽体離脱できてさー
試しに母さんに憑依してみたんだー。
母さんの身体で試すエッチもなかなかだったぜー」
健が笑うと、
輝明は「おいおい、ママで試したのかよ?」と
揶揄う様にして言うー。
「ってか、そんな得体の知れない薬、よく飲んだな!?
ネットで買った本物かも分からない憑依薬なんて名前の
怪しい薬を平気で飲むのなんて、お前ぐらいだぞ?」
輝明の言葉に、健は
「ー勇気を持って1歩を踏み出さなければ、人間、前へは進めない」と
堂々とした口調で答えたー。
「ーーはぁ…お前いつか死ぬぜ?」
輝明があきれ顔で言うと、
健は「それはともかく、だ」
と、呟いてから「明日の夏祭りー…」と、笑みを浮かべながら言う。
”この憑依薬を使って、俺たち三人で好きな女の子に憑依して、
女の子としてお祭りを楽しむっていうのはどうだ?”
健の言葉に、
輝明と次郎はゴクリと唾を飲み込むー
「明日、夜に各自、自分の部屋で憑依薬を飲んでー
そうだなー…
あの祭りの会場の敷地に大木があるの知ってるだろ?
そこでー
憑依した身体で集合ってのは?」
笑う健ー。
輝明と次郎は、あまりの展開に驚きながらも、
”既に健が実際に毒見を済ませている”ことで、
安心感もあったしー、
その提案を断る理由はなかったー。
「よし、やろうー!」
それが、昨日の出来事ー。
そしてー、
お祭り本番の今日、
憑依薬を手に入れた張本人である健が女子大生に、
輝明は女子高生に、
次郎は、間違えてメイド服を着た男の娘に
それぞれ憑依したのだったー。
「ーーへへへ…なんだか女の子三人組って感じがしていいよな」
健が憑依している女子大生・萌咲がそう呟くー
本当の名前は知らないが、とりあえず萌咲と名乗っているー。
「ーーまぁ、一人は男だけどな」
輝明が憑依している女子高生・友梨佳が笑うと、
メイド服の男の娘・尚美は笑いながら
「ーーど、どうせ名前も偽名なんだし!」と、答えるー。
「あ~あっちにチョコバナナがある~!
あ、わたあめもたこやきも食べた~い!」
女の子っぽく嬉しそうに叫ぶ萌咲ー。
「ーおいおい、女子大生の身体でそんな食べたらー」
友梨佳がツッコミを入れると
「わたし、ダイエットなんかもうやめるんもん!」と、
ふざけたポーズを取りながら萌咲が答えたー。
「ーへへ…あいつに憑依されたあの子も災難だなぁ」
友梨佳はそう言いながら、早速焼きそばの屋台に
並んでいる萌咲のほうを見つめるー。
その時だったー。
「ー麻奈美(まなみ!)」
そう叫ぶ男の声が聞こえたー
焼きそばの屋台から少し離れた場所にいた友梨佳と尚美が
その男のほうを見るとー
その男は、ちょうど焼きそばを買い終えた
健が憑依している女子大生・萌咲の方に向かって叫んだー
「ーよかった!急にいなくなっちゃうからどうしたのかとー」
男が言うー。
「ーーまぁ…この子は彼氏とデート中だったみたいだから、
俺なんか彼氏を捨てて来たんだけどな!」
”あぁ…あの子の彼氏かー”
そういえばさっき、女子大生に憑依した健が、
デート中の子の身体を乗っ取ったと言っていたー。
恐らく、あの男は、健に乗っ取られた女子大生の彼氏なのだろうー。
「ーー面倒なことになりそうじゃん」
メイド服の尚美が、近くの屋台で買ったチョコバナナをペロペロしながら笑うと、
友梨佳は「まぁ、でも面白そうだから眺めてようぜ」
と、笑いながら答えたー。
②へ続く
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
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夏なのでお祭りのお話デス~!
憑依で堪能するお祭り…!
続きはまた明日を楽しみにしていて下さい~!!
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