<入れ替わり>狙われたお嬢様③~復讐~(完)

悲劇が起きてしまったー。

犯罪組織に命を狙われたお嬢様ー。
血塗られた悲劇の結末はー?

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーーーー」
蘭(トーマス)は隠れ家で、
大量の武器を見つめていたー。

薄汚れたお嬢様の服そのままにー
その表情からは笑顔が消えー、
瞳の輝きは、完全に色褪せているー

ふと、鏡を見つめる蘭(トーマス)

いつも笑顔が眩しかった”お嬢様”の顔は、
今や嘘のように無表情で、
その瞳にはもはや、何も映っていないー。

「ーーお嬢様ー」
蘭(トーマス)に残されたのは復讐のみー。

国際犯罪組織ガルフに、ご主人様の会社が
目をつけられてしまった時点でー…
城ヶ崎家の運命は尽きていたのかもしれないー。

”復讐”ー
蘭は、優しかった蘭は、そんなことを望むだろうかー。

それは、分からないー

”そんなことやめてよトーマス!”と、
言うかもしれないー。

”トーマスだけは幸せに生きなさい!”と、
言われるかもしれないー。

けれどー。

「ーお嬢様…申し訳ございませんー」
蘭(トーマス)に、そんな道を選ぶことはできなかったー。

地獄のような人生を生きていた彼を救ってくれた
ご主人様ー

そして、小さい頃からずっと近くでお仕えしてきてー
まるで本当の娘のようでもあった蘭ー。

それを、全て奪われて
そのまま”はいそうですか”なんて言っていることは、できないー。

蘭(トーマス)は、武器を手に、
そのまま隠れ家を後にしたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーー”アビス”との取引は、こちらが有利に進めるー。
 いいなー?」

車に乗りながら移動しているのは
国際犯罪組織ガルフの日本支部代表・カナハラー。

今日は、別の犯罪組織・アビスとの交渉が
行われる予定で、
カナハラはその場所へと向かっていたー。

アビスは以前は、強大な勢力を誇っていた組織だったが、
警察の潜入捜査により大打撃を受け、
現在、その勢力はかなり衰退している状態ー。

「ーーー今日は頼むぞ」
カナハラが電話相手にそう呟くー。

”歩く嘘”の異名を持つ交渉人”リュウザキ”ー。
国際犯罪組織ガルフの日本支部が誇る交渉のエースと共に、
カナハラは、今日の交渉を絶対に成功させようとしていたー。

だがーーー

”交渉場所”の廃墟地帯に入ったところで、
カナハラの乗る車が急ブレーキを踏んだー。

「ーーーどうした!?」
カナハラが叫ぶー

「ーい、今、急に女が!」
運転手の言葉に、カナハラは「女ー?」と困惑するー

「ー誰もいないじゃないかー?
 どんな女だ?」

カナハラの言葉に、運転手は「わ…若いお嬢様みたいな女がー」と、
困惑しながら呟くー

その直後だったー。

銃声が響き渡って、運転席に血が飛び散るー

「ーー!?」
カナハラの顔にも少し血が飛び散り、
一瞬驚きの表情を浮かべたものの、
仮にも国際犯罪組織の日本支部代表であるカナハラは
動揺することなく、すぐに車から飛び降りたー。

他の部下たちと共に、数台の車の影に身を隠すカナハラー

「ーー何のつもりだー?
 アビスの差し金か!?」

交渉相手の犯罪組織アビスの仕業だと一瞬思ったがー
すぐに、姿を現した女を見て、カナハラは表情を歪めたー

「ーーお前…城ヶ崎の小娘ー…!」
カナハラの言葉に、蘭(トーマス)は無言で銃を放ったー。

カナハラの横に立っていた男が倒れるー。

「ーーな…何のつもりだ!」
カナハラが叫ぶと、蘭(トーマス)は言ったー。

「ー”復讐”でございますー」
とー。

「ーーな、なんだと?」
蘭と執事のトーマスが入れ替わっていたことを知らないカナハラは
表情を歪めるー

”この女ー
 屋敷でやりあった時も、見た目に反して、結構強かったからなー…”

カナハラはそう呟くと、
少し笑みを浮かべながら言い放ったー

「ーお前の親父は、俺たちに逆らったー
 だから死んでもらったー」

とー。

「ーーー」
蘭(トーマス)は、少女とは思えないぐらいの恐ろしい形相で、
カナハラを睨みつけるー

「ーおいおい、そんな怖い目で見るなよー。
 可愛い顔が、台無しだぞ?」

カナハラは警戒しながらもそう呟くー。

しかし、蘭(トーマス)は、なおもカナハラを睨みつけるー。

「ーーそんな可愛い服を着てー
 そんな物騒なものを持ってー…
 
 この先、いいことないぞ?

 どうだー?
 どうせ親父も死んだんだー。
 我々のところに来れば
 今まで通り”お嬢様”として贅沢な生活をさせてやるー?

 悪い話ではないだろうー?」

二人とも、相手の動きを警戒しながら、
言葉を交わすー。

だが、蘭(トーマス)が、カナハラの交渉に乗ることはなかったー。

「ーーー私には、復讐しか残されていないー」
そう呟くと、銃を手にカナハラの部下を容赦なく撃っていくー

「クソが!」
カナハラはそう叫ぶと、車の背後に身を隠しながら表情を歪めるー

”ーー小娘がー
 調子に乗るなよー
 ”犯罪のサーカス”の異名を持つこの俺がー
 貴様みたいな小娘に、やられるわけがないだろうがー”

ニヤッと笑みを浮かべるカナハラー。

”交渉”のために潜ませておいた狙撃手
”ウルフ若林”に、合図を送るー

「殺れ」
笑みを浮かべるカナハラー

国際犯罪組織ガルフの幹部になるための条件の一つがー
”冷徹”であることー。

ガルフの幹部たちは皆、躊躇なく人を殺すー
それが、仲間であったとしてもー。

パァン!

銃声が響き渡るー

だがー
蘭(トーマス)は、戦っていたガルフの構成員を盾にして、
それを防いだー

「ーー!」
自分が狙いを外したことに驚くウルフ若林ー。

すぐに再度銃撃しようとするも、既に蘭(トーマス)の姿は
見えなくなっていたー

”どこだー?”

そんな風に思いながら、ウルフ若林がすぐに
再度狙いを定めようとするとー、
背後から強い殺気を感じて振り返ったー

そこには、蘭(トーマス)の姿がー。

「ーー…っっ!」
すぐにウルフ若林が蘭(トーマス)に襲い掛かるー

”こんな小娘に何ができるー”
そう、見くびっていたのかもしれないー。

けれどー

「ーー!」
蘭(トーマス)が、スカートの中に隠していたナイフを
ウルフ若林の首に突き立てたー。

びゅっ、と赤い血が飛び散り、その場に崩れ落ちる
ウルフ若林ー。

返り血を浴びた蘭(トーマス)は、
そのまま怒りの形相で、次々とガルフのメンバーたちを
葬り去っていくー。

「ーーーーーーーー」
”お嬢様”の身体が血に染まって行くー。
可愛らしい洋服が返り血を浴びー、
可愛らしい顔が返り血を浴びるー

けれども、蘭(トーマス)は止まらなかったー。

まるでー
主人である彼ー、重治と出会う前に戻ったかのような
暴れっぷりを見せる蘭(トーマス)

「ーーー~~~~…~~~」
カナハラは表情を歪めながら、
部下たちが次々と倒されていく様子を見つめていたー

”くそっー”
舌打ちをするカナハラー。

”国際犯罪組織ガルフ”は、味方にも敵にも冷徹非道な組織ー。
”優れた能力を発揮している人間”は甘い汁をたっぷり吸うことができるがー、
逆にーーー
”失敗した時には”
仮に幹部であろうとも、待っているのは”死”あるのみー。

「ーーーーーぐああああっ!」
また一人、部下が蘭(トーマス)に始末されるー

「ーーワンダフル!」
カナハラは、そう叫びながら物陰から姿を現すー。

「ーーーーーー」
蘭(トーマス)は、血まみれの姿で、カナハラの方に近付いてくるー。

弾切れを起こしたのか、既に蘭(トーマス)は
剣のようなものを手にしているー。

「ーーー気に入ったよー。
 まさか、我がガルフの構成員をこんなにも簡単に始末
 してしまうとはー」

笑みを浮かべながらカナハラが呟くー。

「ーーー…しかしー
 お前のような”お嬢様”がそんなに戦えるとは思わなかったー。
 一体、どこでそんな立ち回りを覚えた?」

カナハラが問いかけるー。

「ーーふっ…」
蘭(トーマス)は思わず笑みを浮かべたー。

「ーーーーそんなこと、教える必要はございません」
蘭(トーマス)が言うー。

入れ替わったことなど、教える必要はないー
こいつは、ここで死ぬのだからー。

「ーーーー最後のチャンスだー。
 俺の女になれー。
 そうすれば、命だけは助けてやるー
 存分に甘い汁を吸わせてやるー

 どうだー?」

だがー
そんな交渉に、蘭(トーマス)が乗るはずはなかったー。

剣を手に、そのままカナハラを切り捨てようとするー。

「ーーーくそが!」
何とかそれを避けたカナハラは、笑いながら上空高くへと飛びあがるー

「ーー!?!?!?!?」
蘭(トーマス)が少しだけ驚くー

どうやら、カナハラは服の下に小型のジェットのようなものを
装備していたようでー、
煙を噴きだしながら、上空から蘭(トーマス)を見つめているー

「ーこれがこの俺ー”犯罪のサーカス”の異名を持つ
 国際犯罪組織ガルフ日本支部代表・カナハラの奥の手だ!」

高らかに宣言したカナハラは、
ジェットを噴射して、上空から蘭(トーマス)に突進しー
隠し持っているブレードで、蘭(トーマス)の頭を
斬り飛ばそうとしていたー。

「ークククー ジ・エンドだお嬢様ー…
 地獄で御父上と感動の再会でもしなー!」

そう叫ぶと、カナハラは上空から、蘭(トーマス)に向かって突進したー

”お嬢様ー…
 ご主人様ー”

蘭(トーマス)は静かに目を閉じるとー
向かってきたカナハラの攻撃のわずかな隙間を塗って
カナハラを一刀両断したー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーーー」

浜辺にやってきた蘭(トーマス)

穏やかな波の音が聞こえる中ー
長い髪が風でゆらゆらと揺れるー。

前に、一度この場所に”お嬢様”と一緒にやってきたことがあるー。

”ねぇ、トーマスー。
 わたし、またここに来れるかな?”

蘭が呟くー。

”えぇ。お嬢様が望むのであれば、必ず”

トーマスが答えるー。

その言葉に、蘭は少し不満そうに笑うー

”でも、お父様過保護だから、なかなか
 こういう場所にも来させてくれないし、
 次は、いつになるか分からないわー”

蘭のその言葉を聞いて
トーマスは少しだけ戸惑うー。

確かにー
蘭の父・重治はとても過保護で、
なかなかこういう遠出は許してくれないー。

今回も、蘭のためにとトーマスが必死に”ご主人様”である
重治を説得して、こうして、海に蘭を連れて来たのだー

”お嬢様ー。お約束しますー”

トーマスは蘭に向かって言い放つー

”必ずまたー、お嬢様を海にお連れします”
そんなトーマスの言葉に、
蘭は”本当~?”と、疑うような目をしながらも、
少ししてから微笑むと
”ーじゃあ、約束”と、トーマスに対して、
指を指しだしたー

波の音が、そんな”思い出”を消していくー

「ーお嬢様ーーーー…」
蘭(トーマス)が呟くー。

「ーーーー………こんな形でしかー
 約束を果たせず、申し訳ありませんー」

蘭(トーマス)は、国際犯罪組織ガルフのカナハラを倒して、
この場所にやってきたー。

果たせなかった約束を、ほんの少しでも果たすためー

「ーーーーーー」
蘭(トーマス)は、寂しそうにしばらくその場に
立ち尽くすると、
少ししてからようやく歩き出したー。

もう、蘭は何も言ってくれないー。
蘭の身体は、ここにあるのにー、
蘭は叱ってもくれないし、喜んでもくれないー。

「ーーーー」

蘭(トーマス)は
その場から姿を消したー

その後、姿を消した”お嬢様”が、
どこで、何をしているのかは、誰にも分からないー。

おわり

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

狙われたお嬢様の最終回でした~!☆

読んだことが無くても全然影響のないように
書いていますが、
「カナハラ」という人物は
過去作品”狂気の動物園”にいた人物と
同一人物デス~
(たまたま名前が重複してしまったわけではないですよ~笑)

お読み下さりありがとうございました~!☆!

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