<女体化>無人島サバイバル②~理由~

ある日、目が覚めたらいきなり女体化していて、
いきなり無人島にいた男子大学生。

意味が分からないまま、彼のサバイバル生活が始まるー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーーー…誰もいねぇ」
魁人は、ため息をつきながら
空き家の中へと戻ってくるー

空き家…と言っても原始時代によくある簡素な感じの建物で、
普段、魁人が普通に暮らしている家とは
全くイメージの違う場所だー。

「ーーー…」
ボロボロの布切れのようなものを着て、
女体化した魁人は、
「こんな状況じゃー…あれだなー」と、
お腹のあたりを触るー。

女になって、無人島で目を覚ましてから
3回目の昼を迎えたー。

あれから、ロクに何も食べておらず、
空腹が続いているー

水は、この近くにある川の水を
やむを得ず飲んでいるものの、
普段、水道から出て来るような水しか
飲んだことがない魁人にとっては、
困惑の連続だったー。

「ーやっぱ、人いないのかなぁ…」
魁人は女の姿のまま、一人胡坐をかいて呟くー。

あれからも色々と周囲を探してみたが
どうやら、この島に人がいる気配はないー。

つまりここは、無人島ということになるー。

「ーーーったく…どうすりゃいいんだ…」

スマホもないー
パソコンもないー
電気もないー
食料もないー
安心できる場所もないー

何もかもが、ないー

現在地を調べることもできないし、
知り合いに連絡を取ることも
大学に欠席の連絡を入れることも、
バイト先に欠勤の連絡を入れることもできないー。

「あ~…っていうか俺、どうなってるんだよマジでー」
魁人は、髪をぐしゃぐしゃにしながら呟くー。

「あぁ…腹減ったー」

水分は確保できているが、
正直なところ、このままでは餓死してしまうー。

「ーこういう状況だと、あれだなー
 性欲みたいなものも沸かねぇな…」

魁人は可愛い声でそう呟きながら
自分の胸や足ー
身体を見つめるー。

自分の顔も、昨日、初めて確認することができたー。
近くに川を見つけた際に
水面に映る自分の顔を見ることができたのだー。

顔は、知らない女だったが、
かなり可愛らしい感じだったー。

平常時なら”俺がこんな美少女に!?”と、
喜んでしまったかもしれないー。

だが、今はそれどころではないー。
この謎の無人島から脱出してー…
男に戻らないといけないー。

そんな、過酷な状況が続きー、
初日のように胸を触ってドキドキしたり、
そんなことも無くなっていたー。

「ーーー…食べ物、どうにかしないとな」
そう呟いて、建物の外に出る魁人ー。

集落のような場所に置かれていた槍を手に、
近くの森のような場所へと向かうー。

「ーーー…は~~~何なんだよこれ」
魁人は愚痴を呟きながら
森の中を探すー。

「っていうか、この髪、邪魔だなホントー」
長い髪を邪魔そうにかき分けながら
”でも、切る道具もないし”と、愚痴を呟くー。

どうして女になってしまったのかは分からないがー
こういう状態だし、魁人としては髪をさっぱりと切って
ショートヘアーにしてしまいたかったー。

その方が、動きやすいし、色々気にならないー。

だがー
こんな無人島に理髪店があるわけがないし、
ハサミのようなものも存在しないー。

ハンティング用のナイフのようなもので切ることは
できるかもしれないが、そんな経験はないし、
ネットが繋がらないー、いや、そもそもスマホやパソコンなども
存在しないこの島では調べ事をすることもできなかったー。

愚痴をブツブツ呟き続ける魁人ー

「あ~!もう、ダメだ気になる!くそっ!」

”胸がある状態で走る”のと、
”胸のない状態で走る”のは、
感覚や視界に入るものも異なるし、
木登りなどをしようとすれば、
胸がある・ないではその感覚・感触は変わるー

魁人が一生味わうことのないはずだった感触を
味わいながら
「胸って自分がなってみると、案外ジャマだな!!!」と、
胸を見つめながら叫んだー。

愚痴を呟きながらー
ようやく、森の中で木の実を数個、そして
小さなイノシシのような生き物の遺体を発見したことで、
それを回収し、集落のある場所へと戻ったー。

「ーー食えるのか?これ?」
魁人はそう呟くと、スマホで木の実の写真を参考に
ネットで調べようとするー

だがー

「ーうあ~~~~!ネットないんだった!くそ!」

現代では、”分からないことがあれば、調べる”
これは、常識だー。

しかし、ここでは、それすらもできなかったー

魁人は、木の実を見つめながら
困惑の表情を浮かべると
「こんな得体の知れないもの、喰えるか…」と、
飢えを耐えて、”早くこの島を脱出すればいいんだ”と
表情を歪めたー。

夜になると、獣の遠吠えのようなものが聞こえるー
魁人は身を潜めながら集落で過ごすー

第1、集落のような場所が存在していたということは
少なくともここには”人間”が以前はいたのだろうー。
しかし、何故、今はいないのだろうかー。

”偶然、まだ出会っていない”だけなのかー
”この島から既に移住していて、どこか違う場所にいる”のかー
それとも
”全滅”したのかー。

険しい表情を浮かべながら、魁人は
”とにかく、助かるための行動をしよう”と、静かに呟いたー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌日ー

太陽の位置から午前中であると思われる時間帯にー
最初に目が覚めた浜辺の方に向かう魁人ー。

ここで、火を起こして外部に合図を送ろうと考えていたー。

この場所がどこなのかもわからないし、
煙を上げたところで、誰かに見てもらえるかは分からなかったが
それでも、何か外部に合図を送ることは大事だと思ったー

「はぁ…はぁ」
”女”になったからだろうかー。
いつもより自分の身体の体力がないことを感じ、
魁人はため息をつくー。

集落にあったコップの筒のようなものを川で洗い、
川に水を昨日の夜のうちに汲んできておいたー。

それで水分補給をしながら、火を起こす準備をようやく済ませてー
遠くに合図を送るための火をつけることができたー

煙が上空まで届くのを見つめるー

「…火をつけるだけでも大変だな…」
ぐったりとしながら、近くの岩場に座り込み、
川で汲んだ水を飲み込むー。

「ーーはぁ…」

そういえば今日は今朝から身体の調子が悪いー

気分がすぐれないし、
何となく、お腹も痛い気がするー。

頭痛もするし、
今までに感じたことのない”体調不良”だー。

「やっぱ、川の水…ダメだったかなぁ…」
魁人は、そう思いながらも、立ち上がって、海岸沿いをずっと歩いてみるー。

しかし、どの方角を見ても、
他に何も見えず、この島からの”脱出”の方法は現時点では
見当たらなかったー。

”そろそろ戻るかー”
太陽の位置からすると、昼過ぎー。

夕方以降は、獰猛な獣がこの辺りを徘徊することを
既に魁人は確認しており、
比較的安全な可能性が高い集落に一人、戻っていくー。

「ーーー……はぁ~…」
ますます体調が悪くなっていくー

そんな不安を覚えながらも
”あの煙で…誰か気付いてくれればー”と、心の中で願うー

島の外部から救助が来るのが一番だが、
この島全体を捜索できたわけではないー。
まだ、この島に人間がいる可能性も0ではないため、
浜辺の火を焚いた場所の近くに
”この先の集落にいます”と、棒で砂に文字を刻んできたー。

とにかくー
誰かー

「ーー!!!!」
魁人は、ふと”物音”が聞こえて表情を曇らせたー。

壁際に身を潜めた際に、胸が壁に当たって
”邪魔だなもう!”と、不満そうに呟くー

今はとにかく、胸がジャマに感じたー

息をひそめる魁人ー。

建物の隙間から外の集落の様子を見つめるー

”やっぱ、人がいるのかー?
 それともー”

ここで目覚めてから数日、
獣たちがこの集落に来ることは
今日までは一度もなかったが、
もしかしたら、獣がここにやってきたのかもしれないー。

森になっている地帯や、
砂浜の方に行かなければ、
獣と遭遇することはない…と、いう根拠のない
謎の安心感を勝手に抱いていたものの、
そうではなかった…と、いうことだろうかー。

強い不安を抱きながら、魁人は
女の身体のまま、外を覗くー。

するとそこにはーー…
誰の姿もなかったー。

「ーーー…き、気のせいかー」
魁人がそう思いながら、自分がいる建物の中のほうを
振り返ると、

「ーーうっ…うっ…うわあああああああああああ!?!?!?」

まるでー
ゆるキャラのような不気味な可愛らしいもふもふとした
謎の生き物が立っていたー

「ーひっ!?」
女の身体のまま尻餅をついてしまい、
ガクガクと震える魁人ー

「ーー…な…な…な… な、なんだー…
 せ、潜入民族ー?」

いや、それにしてはおかしい。
遊園地で子供が握手して喜びそうな感じの
キャラクター的な何かに見えるー

「き、着ぐるみを被ったおじさんー!?」

魁人は泣きそうになりながらそう叫ぶー

いや、待てー
可愛らしい見た目をしたこの島特有の獣かもしれないー。

近寄った瞬間に急に怖い顔になって襲ってくるような
よく分からないけどとにかくヤバい生き物かもしれないー。

そんなことを考えながら
魁人が逃げようとすると、
そのゆるキャラみたいな生き物は
「待つんじゃ」と、見た目とは真逆の老人のような声を出したー

「ーひっ!?喋れるの!?
 やっぱ、中身はおっさん!?」

魁人がそんな風に叫ぶと、そのゆるキャラらしき
生き物は呟いたー

「失礼な。わしは神様じゃ」
とー。

「ーーーーー」
魁人は目を何度もパチパチしながら、
神様を名乗るゆるキャラ風の生き物を見つめるとー、
思わず、笑い出したー

「か、神様…!?ははっ…はははは、そんな神様がいるかよ」
魁人が笑いながらそう言うと、いきなり
ゆるキャラが、チョップを魁人に食らわせて来たー

「いっ…いってええええええええええ!?」
女の悲鳴を上げながら、魁人が
神様を名乗るゆるキャラのほうを見つめると、
「ー人間が怖がらないように、この姿で人間界に来た
 わしの優しさが分からぬか?」と、言い放ちながらー
次の瞬間、突然その場に土下座したー

「ーーはっ…?」

もはや”なんだこいつ”以外の感想が沸いてこないー

「ー人間よー。すまなかった」
神様を名乗るゆるキャラみたいな生き物が土下座しながら
そう叫ぶー

「ーー……はい?」
魁人は、もはや意味が分からなかったー

謎の謝罪はいらないー
この状況を早くなんとかしてくれー。

身体もメチャクチャ調子が悪いし
吐き気がするー。

そう思いながら魁人が神様を名乗るゆるキャラのほうを見つめていると、

「ーーバグじゃ」
と、呟いたー

「ーは?」
魁人が首を傾げる

「ーお主の今の状況は、この世界の、いわば、バグじゃ」
神様の言葉に、魁人は「いや、意味がわからないー」と、呟くー

「この世界は、我々…そう、お主ら人間が言う”神様”が作ったのじゃ。
 わしも、その一人ー。
 
 …でな…ちょっとわしがミスっちゃってなー。
 お前の居場所とか、身体とか、色々なものがバグっちゃったんじゃ」

神様が少しニヤニヤしながら言うー。

「ーー……」
魁人は困惑しながら神様を名乗るゆるキャラのほうを見つめるー

「ーーえ…?で…こ、ここはどこなんだよ…?」
魁人が言うと、
神様は「ここは日本から遠く離れた無人島じゃ」と、頷くー。

「ーお主のことを何となく見つめてたら、わしが間違えて
 お主を転送しちゃってなー
 慌てて元の場所に戻そうとしたら、ちょっとミスして
 お主の性別を変えちゃったんじゃ」

ゆるキャラ風の容姿の神様がそう呟くー

魁人は「じゃあ、この状況はあんたのせい?」と、問うー。

神様は「そうじゃ」と、頷いたー。

魁人は思わず無言で、神様を名乗るゆるキャラに、
仕返しと言わんばかりにチョップを食らわせたー。

「ーーー………まぁ、良かったー…」

少し間を置いてから
「そういうことなら、早く俺を元に戻してください
 居場所も、性別もー」
と、呟くー

神様は、その言葉に静かに頷くと、
笑みを浮かべながら魁人のほうを見つめたー

「それは、無理じゃ」
と、笑いながらー

③へ続く

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

ある日の朝、突然女体化して、
しかも無人島にいた…

その真相は明らかになったものの、
まだまだ無人島での生活は続くようデス…

次回が最終回デス~!

今日は18:30に合作(憑依空間5周年記念作品第3弾)も
掲載するので、そちらもぜひ楽しんでくださいネ~!

コメント