<憑依>通話中に彼女がおかしくなった①~豹変~

遠距離恋愛中の彼女と、
通話をしていた彼氏ー。

しかし、その電話の最中に
突然彼女の様子がおかしくなりー…?

・・・・・・・・・・・・・・

「ははは…来月にはそっちに戻れると思うからー」
社会人1年目の三島 徹太(みしま てつた)は、
スマホを手にしながら
”遠距離恋愛”の彼女、崎森 菜々美(さきもり ななみ)と
通話を続けていたー

二人は、元々は遠距離恋愛ではなかったー。

二人の出会いは、大学ー
お互い、映画好きで共通の趣味を持っていたことから
意気投合、次第に親しくなっていき、
共に過ごす時間も増えていったー

大学生活2年目には正式に付き合い始めて
それから目立つ大きな喧嘩もなく、
二人でたくさんの思い出を作ってきたー

そして、大学を卒業した二人ー
徹太も菜々美も新社会人となり、
”お互いに落ち着いたらそろそろ結婚もー”
なんて雰囲気になっていた時に
”それ”は起きたー。

”研修”ー」
徹太の会社では新人研修が行われており、
3か月程度、九州の研修センターで色々な研修が行われることになっていたー。

別にブラック企業、ということではなく、
勤務時間や休日等はしっかり確保されているのだが
専門的なスキルを求められる企業であったために、
こうした研修が必要になっていたのだー

そのため、現在は”遠距離恋愛”なのだー。

「そういや、この前の休みに例の新作、見たよ」
徹太が笑いながらお互いの趣味である”映画”の話を持ち出すー。

”あ、見たんだ!面白かったでしょ?”
声を弾ませる菜々美ー。

今でも二人は映画好きだー。

「ーははは 菜々美のおすすめの映画はホント、
 いつも当たりばっかだなぁ~
 俺は結構怪しいの引くけどー」

苦笑いしながら徹太が言うと
菜々美は”でも、徹太の見つけて来るとんでもない映画もわたし、好きだけどね”
と、微笑むー。

「ーーはは、ならよかったー
 でもやっぱ、早く菜々美と一緒に映画見に行きたいなぁ…」

徹太がそう言うと、
菜々美は”もう少しもう少し!頑張って!”と応援の言葉を口にするー。

「ーーありがとうー 
 菜々美も頑張ってな」

徹太の言葉に、菜々美は”うん!”と嬉しそうに返事をすると、
”あ、そういえばこの前、駅前の~”
と、二人が暮らしていた町の話を菜々美が口にしようとしたー

その時だったー

”うっ…!”
菜々美が突然苦しそうなうめき声をあげて、
スマホを落とすような音が、スマホから聞こえて来たー

「え…?」
スマホの落下するような音と、何かが倒れるような音ー。

「ーーーな…菜々美?」
疑問に思い、すぐに徹太は菜々美を心配する言葉を口にするー。

だが、菜々美から返事はないー。
”菜々美が急に倒れた”そんな、最悪の考えまで
頭をよぎってしまうー

菜々美の名前をさらに呼びかけようとしたその時だったー

”ふふふ…はは、はははははははっ”
菜々美の笑い声のような音が電話の向こうから
聞こえて来たー

「菜々美?」
菜々美の声がしたことで、
少し落ち着きを取り戻す徹太ー

”マジかー…やった…ふふふ…ひひ、あははははははははっ”
菜々美の意味深な笑い声が聞こえてくるー

徹太は困惑しながら「菜々美?どうかしたのか?」と
再び言葉を投げかけるー。

しかしー
菜々美から返事はないままで、
菜々美は何やら電話を放置したまま
何かを呟いている様子だー

少しスマホから離れた場所で
何かを喋っているらしく、
その言葉は、はっきりとは聞き取れない。

”さ~て、アイツが来るまではー”

菜々美がそんな風に呟いたのだけは聞こえたー。

「ー菜々美?どうしたんだ?菜々美!?」

流石に少し心配になり、もう一度電話に向かって叫ぶと、
菜々美の”あん?”という声が聞こえた気がしたー。

そしてー

”ーーあ、電話中だったのー
 ご、ごめんね~!ちょっと、え~っと、そのーうん!”

と、歯切れの悪い返事が返ってくるー。

「ー大丈夫か?今、変な音がしたけどー」
徹太が心配そうに、菜々美に対して
状況の確認を繰り返すー。

すると菜々美は舌打ちをしながら
”ーーこいつ、彼氏持ちかー”と、少し小さく呟いたー

がー…
それは、徹太には小声すぎてよく聞き取れなかったー

”ーーー急にゴキブリが出て来てびっくりしちゃって”

菜々美が今の騒ぎをそう説明するー。

徹太は「あ~ははは…そんな季節かぁ~」と、
呟くと、再び雑談に戻ろうとしたー。

しかしー
菜々美が、突然気持ちよさそうな声を漏らすー。

「ー?」

徹太は気づいていないー。
電話の向こうの菜々美が”自分の胸を揉みながら”通話を
続けていることをー

「ーどうかした?」
徹太が心配そうに聞くと、
菜々美は少しだけ笑うー。

そして、信じられない言葉を口にしたー

”今から、男の人がうちに来るの”
とー。

「ーーえ?あ、そ、そうなんだ」

だが、徹太はあまり大きなリアクションはしなかったー。

何故ならー
徹太と菜々美は長い付き合い。
お互いのことをよく知っているし、
菜々美が浮気などするはずがない、ということは
徹太が一番よく理解しているからだー。

だがー
それは”菜々美が正気なら”の話ー。

「ーーーククク」
菜々美が邪悪な笑みを浮かべるー

電話中に”男”に憑依されてしまった菜々美ー。

菜々美に憑依した男は、
ネットで偶然手に入れた憑依薬を使い、
”街中で見かけた好みの女”をマークし、
帰宅したあとに憑依するー、
と、いうことを繰り返しているー。

菜々美に憑依した男は”名前”と共に
憑依を日々、堪能しているー

”♪~”

「クク…来た来たー」
菜々美が邪悪な笑みを浮かべながら立ち上がるー。

”ーーーーー”

そんな菜々美と電話を続けている徹太は
困惑しながら菜々美の返事を待つー。

”うぉぉぉぉ~最高じゃん!マジでかわいい”

そんな男の声が電話の向こうから聞こえてくるー

”だろ?へへへ しかもこの女、彼氏持ちだぜ!”

”マジかよー”

”へへ しかも今、ちょうど電話中”

男と菜々美の声が交互に、電話に聞こえてくるー。

菜々美の態度や発言が全く理解できないまま
徹太が「菜々美…?」とスマホに向かって呟くと、
ようやく菜々美は”ごめんごめん”と呟きながら
電話の方に戻ってきたー。

「ーーー友達?」
不安になった徹太は思わず電話の向こうの菜々美に対して
そう聞いてしまうー

菜々美はクスクスと笑いながら
”これからわたしがヤる相手だよ♡”と、
返事をしてきたー

「ーーーー」
徹太は、頭の中が真っ白になるー
菜々美が何を言っているのか
しばらくの間、理解することすらできなかったー。

「ーーーえ…や、やるって?」
徹太は何かの聞き間違いー、
いや、勘違いだと思いながら菜々美に対してそう確認すると、
菜々美は”ばかだなぁ~”と、電話の向こうで笑ったー

「え…いや…その」
徹太は混乱してしまうー。
普段の菜々美とは明らかに態度が違う気がするー。

”ーーはっきり言わないと分からない?”
菜々美が馬鹿にしたように呟くー。

菜々美の背後では”おい、いつまでそいつと遊んでるんだよ~
早くヤラせろよ~!”という声が聞こえてくるー

”へへへ、待てって”
菜々美が電話を少し離して、喋っているのか
声の距離が少し遠くなるー。

「ーーーど…どういうことなんだー?」
困惑する徹太ー
スマホを握る手が、手汗をかいているのを感じながら、
菜々美が一体何を考えているのか、全く理解できずに
困惑してしまうー。

”ーどういうことって~?
 はぁ~バカだなぁ~
 だから~”

菜々美はそこまで言うと、言葉を続けたー

”あんたの知らない男と、これからわたし、
 セックスするの”

笑いながらー
全く悪びれる様子もなく、
恐ろしい言葉を口にする菜々美ー

「え……え…な…… え…???」
徹太は、どう言葉を吐きだしていいかも分からず、
ただひたすらに混乱したー。

菜々美が何を言いたいのかも全く理解できないし、
菜々美が何をするつもりなのかも、全く理解できないー

「ーーう……浮気ってことー?」
徹太は首を傾げてしまうー

菜々美が浮気をするような子じゃないということは、
当然理解しているし、
今までのお互いの信頼関係からも、
そんなことは絶対にないと断言できるー

ではー
菜々美はいったい何をしようとしているのかー

”ん~まぁ、ほら、だから、
 他の男とヤるってことねー。
 浮気と思いたければ浮気でもいいんじゃないー?”

菜々美が、まるで開き直ったかのような
おかしな発言をすると、
そのまま”わたし、ほんと~は性欲まみれの女なの!うっふふふふ”と
嬉しそうに笑ったー

あまりの出来事に徹太は震えながら
スマホを握りしめて
そのまま言葉を失ってしまうー。

これは、どういうことなのかー
菜々美は、浮気をしている、ということなのかー

会社の研修で長距離恋愛となってしまった間にー、
他の男と親しくなってしまったー…と、いうことなのかー。

”ーーふふふ…あ、そうだー
 わたしが他の男とヤッちゃうところー
 電話の向こうで聞く?”

菜々美が悪びれる様子もなく、
そんな言葉を呟くー。

「ーー…な…菜々美…」
戸惑いながら、ようやく言葉を口から振り絞る徹太ー。

”ーーふふふ じゃあまずー
 ……ってか、あんた名前なんだっけ?”

菜々美がバカにしたように笑うー

”いやいや、スマホ見りゃ分かんだろ?”

菜々美の家にいると思われる男の声が聞こえるー

”あははっ!そうだったな ん~徹太! 徹太! ぷふっ!徹太!”

意味不明な言葉を繰り返すと菜々美は

”じゃあ~徹太!今からわたし、まずはーー
 徹太以外の男とキスしちゃうからね?”

と、笑いながら言い放ったー。

「ーーお、おい…冗談…だよな?」
菜々美の言葉に対して、徹太は振り絞るようにして
そう言い放ったー

菜々美がそんなことをするなんて思えないー
これは何かの間違いだと。

しかしー
電話の向こうからは、菜々美がわざと電話の向こうに聞こえるように
音を立てながら”男”とキスをしているー

”へへへ?彼氏さん?聞こえるか?
 お前の彼女の唇、柔らかくて最高だなぁ?
 いつも、こんな風にキスしてるのか?”

男の言葉に、
徹太はハッとしたー。

”菜々美は、この男に脅されてこんな言葉を言わされているのだー”
とー。

「ーだ、誰なんだ!?菜々美に何をしようとしてるんだ!?」
徹太が電話に向かって叫ぶー

”おっほっ!怒られちまった!”
ふざけた調子の男に対して、
徹太はさらにこみ上げて来た怒りをぶつけるー。

”この男が、菜々美を脅しているに違いない”

菜々美の家に暴漢が入ってきて、
菜々美に乱暴をしようとしているのだと、
そう思ったー

菜々美は脅されて、あたかも”自分の意思で電話をさせられている”のだとー。

しかしー
そんな徹太の想いを打ち砕くように、
電話の向こうの菜々美は笑ったー

”何を勘違いしているの~?徹太~
 この人を誘ったのは、わたし♡

 ふふふふ…わたしがエッチなことしようって自分から
 誘ったのー

 ふふふふ…”

その言葉に、徹太は「嘘だ!そいつに脅されてるんだろ!?」と、叫ぶー

「い、今、警察を呼ぶからー…今ー!」

”バカじゃないの”
菜々美の冷たい言葉が、徹太の想いを打ち砕いたー。

”ーーあんたのそういうところが、大っ嫌いー”

”うほぉ~!”

後ろで男の茶化す声も聞こえるー

”もう、わたしがあんたの女じゃないってことー
 聞かせてあげるー”

菜々美のその言葉に、
徹太は、震えながらスマホを握りしめることしかできなかったー。

②へ続く

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先程お知らせした通り、
今日と明日は私の都合上で、
いつもと違う時間帯に更新になります~!☆

今日はこの時間に、
明日は予約投稿でお昼(土曜日と同じ感じ)になりますが、
更新自体はいつも通りしっかりご用意しているので、
ぜひ楽しんでください~!☆

今日もお読み下さり、ありがとうございました~!

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