<憑依空間5周年記念>わたしが盗まれたモノ②~月下茫洋~

憑依空間5周年記念小説第3弾★!
今日は第2話をお送りします~!

「果実夢想」様(@fruitsfantasia)
との合作デス!

①、③を果実夢想様、
②、④を私(無名)が担当しました!☆
最終回の⑤は、憑依空間では私が書いた”光ルート”
果実夢想様のサイトでは”闇ルート”を掲載します~!
(※昨日から5日間、順番に掲載していきます!)

※今日の小説は、午前中に既に更新済みデス

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②~月下茫洋~
作…無名

「ーーーーーー」
鏡で改めて自分の姿を確認する珠音(斗真)ー

”まさかこんなことになるとはー”

鏡に映るのは、弱弱しそうな自分の姿ー。

「ーーー…」
斗真になった珠音は困惑の表情を浮かべたまま
珠音(斗真)が目を合わせると、すぐに目を逸らしてしまうー。

「ーーー」
再び鏡のほうを見つめる珠音(斗真)ー

”俺はこんなことしてる場合じゃないのにー。
 とにかく、早く元に戻る方法を探さないとなー…”

「ーーあ…あの………ど、どうやって… その…」
斗真(珠音)がやっとの思いで弱弱しく呟くも、
人見知りな性格である上に、相手が泥棒ということで、
その言葉を最後まで発することはできず、
声は言葉の途中から小さくなり、次第にはっきりと
聞こえなくなってしまうー。

珠音(斗真)は
ため息をつきながら
「別に何もしやしねぇよ。そんな怯えるなー。
 元に戻るまでの辛抱だー。」と、斗真(珠音)に伝えるー。

正直、こんな弱弱しい”自分”の姿を見ることに、困惑してしまうー。

「ーーだって…泥棒だし」
ボソッと呟く斗真(珠音)ー

「ーわ、わ、わかったよ!悪かったよ!」
珠音(斗真)はそれだけ言うと、
斗真になった珠音はようやく
”お互いとして生活するって…どうすれば…?”と、
珠音(斗真)に確認したー。

いきなり”お互い相手のフリをして過ごすしかない”と
言われても、正直なところ、
どうすれば良いのか、全く分からないー。

「ーーーまぁ…普通に家にいればいいさー。
 大学はしばらく休みにしておくから」

「ーーーーだ、大学生ー…?」

泥棒の斗真は現役の大学生だったー。
表向きは”礼儀正しい大学生”として、大学に通いながらも、
裏ではこうして”窃盗”を繰り返しているー

全てはー
”あいつ”のためにー。

「ーーーんだよ。大学生が泥棒に入っちゃわるいのかよー」
珠音(斗真)の言葉に斗真(珠音)がビクッとすると、
「ーー…だよな。悪いよな」と、呟きながら
自分のスマホを珠音の手で手にしたー。

”赤月(あかつき)”
スマホの画面には、そう表示されているー。

「ーーさて、赤月のやつはどうするかー」
心の中で、そんな風に考える珠音(斗真)ー。

赤月 刃(あかつき やいば)ー
斗真と同じ大学に通う親友でー
非常に頭の回転が早く、
頭が”キレる”ために、仲間に引き込んだ人物だー

斗真が泥棒の実行役ー、
そして、この刃が斗真のサポート役として
活動し、これまでに何度も何度も窃盗を成功させてきたー。

刃の仕入れて来る情報やサポートはいつも適格でー、
それ故に、斗真も絶対の信頼を置いていた。

けれどー

珠音と入れ替わってしまった今ー、
その赤月 刃の存在が”非常に厄介な存在”になりつつあったー。

刃には”善悪の概念”が存在しないー。
非常に頭は良いし、面白いやつなのだがー
”どこか、壊れているー”

人間、全知全能の存在ではない、ということが
彼を見ていると、よく分かる。

連日の窃盗行為もー
斗真には理由があるー。

だが、赤月 刃には”理由”などないー
只々ー、”面白そうだから”という理由だけで、
斗真に付き合い、実行犯ではないにせよ、”犯罪行為”に手を染めているー。

”問題が起きた”

珠音(斗真)は、珠音の手でそう打ち込むー。

”ここに、引きこもりの女がいたー。
 そいつに見つかったー
 なんとか、誤魔化すことができたが、
 当分はまずいー。”

外で待機している刃に、そんな風にメッセージを送るー。

そこに続けてー
”しばらくの間、泥棒は一旦中止すること”
”万が一に備えて、斗真と刃の接触を避けること”
などを、メッセージで提案したー。

こうすることで、斗真になった珠音は、
”泥棒”をしなくて済むし、
”刃との接点”も最低限に済ませることができるー

「ーーね…ねぇ…あ…あの…」
メッセージを必死に入力していた珠音(斗真)に対して
声を掛ける斗真(珠音)

「ーーーお前が、俺の家から出なくてもいいように、
 色々連絡してるんだー。少し待ってろ」

珠音(斗真)が少しイライラした様子で言うと、
ようやく連絡が終わったのか、
「ーー…俺の家に一人で行けるか?」と、
珠音(斗真)は、スマホで斗真自身の家の場所を示したー。

「ーーー………う」
斗真(珠音)がオドオドしながら返事をするー。

「ーーーなんだよ!高校生だろ?場所が分かれば一人でもー…」
そう言いかけた珠音(斗真)は、ふと、
斗真になった珠音が、自分の袖を掴んで、不安そうな表情を
浮かべているのに気づいたー

”お兄ちゃんー…わたし、死ぬのかなー?”

ふと、そんな言葉を思い出すー

”妹”の言葉ー。

「ーーチッ!わかったよ!一緒に家まで送ってってやるから!
 それでいいよな?」

珠音(斗真)がうんざりした様子で乱暴に言い放つと、
斗真(珠音)は安心したかのような表情を浮かべて
「ありがとうー」と、小声で呟いたー

外に出て、移動を始める二人ー。

「ーーーー!」

そんな二人の後姿を、買い物からちょうど帰宅した
母親の波音が目撃してしまったー

「ーーー…珠音?」
娘の名前を呟くと、彼女は表情を曇らせながら、
”男と歩いていく娘”の姿を見つめ続けたー。

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「ここが俺の家だー。」
珠音(斗真)が言うと、
「ーーーありがとう」
と、斗真(珠音)が言葉を口にするー。

「ー俺は一人暮らしだから、
 家のいる間は特に何も心配しなくていいー。

 家に誰か来た場合も、居留守を使えばいいから、心配すんな」

珠音(斗真)が今一度、そう説明すると、
斗真(珠音)は頷いてから、家の中へと入って行くー。

「ー何かあったら、スマホで連絡しろよ?
 俺も分からないことがあったら、聞くから」

珠音(斗真)がそう言うと、
斗真(珠音)が、じっと珠音(斗真)のほうを見つめているのに気付くー

「な、なんだよー。まだ何かあるのか?」
珠音(斗真)がうんざりした様子でそう呟くー。

すると、斗真(珠音)が少しだけ
照れくさそうに呟いたー

「ーーあの…なんか…今の”わたし”…
 強そうだなって…」

とー。

「ーーーあ?何だよそれ?」
珠音(斗真)が首を傾げると、
斗真(珠音)は自分が学校でいじめられていたことを
口にしたー。

「ーーーー…はぁ…なるほどなー。それで学校に行ってなかったのかー」
珠音(斗真)はそう呟くと、
「ーせっかくこんな可愛いのに、勿体ないな」と、言葉を口にするー

その言葉に、俯いてしまう斗真(珠音)ー

「ーーあぁ、いや、悪い意味じゃないんだー。
 そんな顔すんなってー。

 俺の身体にそんな顔、似合わないし」

珠音(斗真)は、慌ててそう言葉を口にすると、
改めて二人で必要な情報を再確認して、
「ーーじゃ…早く元に戻れるように頑張ろうな」と、
珠音(斗真)は立ち去っていくー。

斗真(珠音)は不安そうな顔をしながら、
仕方なく、斗真の家の玄関の扉に手をかけ、
その中へと入って行ったー…。

「ーーーーーーーーーーーーーー」
だが、”斗真”が”珠音”と一緒にいるのを
見つめている男がいたー

斗真と共に”窃盗”を繰り返している男、赤月 刃ー。

「ーーー……」
夜空に浮かぶ月を背に、刃の表情が不気味に歪んだー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーただいま~」
珠音(斗真)は、ひとまず珠音の家に帰宅し、
そのまま元に戻る方法を調べようとするー。

だがー

「ーーーあんた、どこ行ってたの?」

帰宅すると同時に、母親の波音が、
睨むようにして珠音(斗真)の方に近付いてきたー。

「ーーえ…あ…う、うん…ちょっと…買い物に」
珠音(斗真)は戸惑いながら言うー。

「買い物ー?」
波音は不愉快そうにそう呟くと、
「ー年上の男の人と一緒に?」と、険しい表情で言葉を続けたー。

「ーーー…そ、それはー…」
珠音(斗真)は母親から思わず目を逸らすー

「ーーあんた!どうしてそうやってわたしを困らせるの!?」
母の波音が声を荒げるー

「ち…ちがっ…そ、そういうつもりじゃー」
珠音(斗真)は、母・波音にどう接していいかも分からず
困惑の表情を浮かべると、
「ーーそんなにわたしを困らせて喜んでいるなら、出て行きなさいよ!」と、
母・波音はヒステリックに叫んだー。

珠音によれば、母親の波音は、元々は優しい穏やかな母親だったものの、
自分が不登校になってしまったことで、変わってしまったー
とのことだったー。

珠音(斗真)を散々罵倒すると、
母・波音は呟いたー。

「ーーー…学校に行かずに男遊びなんかしてるならー
 出て行きなさいよ」

とー。

「ーーち、ちょっと待って!」
珠音(斗真)はそう叫ぶも、

「ーーあんたなんか産まなきゃよかったー」と、
きつい言葉を投げつけられて
珠音(斗真)は、そのまま渋々と家の外へと出たー。

「ーーーーっ…」
綺麗な髪をイライラした様子で掻きむしる珠音(斗真)ー

”ったく、しくじったなぁ…。
 こいつも困るだろうしー”

とは言えー、
見られてしまったものは仕方がないー。

夜道を一人で歩きながら、
”女子高生が一人でウロウロしてるのも、まずいな…”と
ため息をつくー。

しばらく考えた結果ー

「仕方ないな…」
と、呟いた珠音(斗真)は、
この身体のまま、斗真の家に向かったー。

本当は、あまりこの姿で自分の家には行きたくないー。

珠音の身体で斗真自身の家に行けば
少なからず”リスク”が生じるー。

”女子高生を家に呼んでいる”と思われるのも良くないし、
珠音自身も、そんな風に思われたくないだろうー。

だが、他にどうすることもできなかったー。
早いところ、元の身体に戻ってー

”っ…あの母親はどうすっかなぁ…
 仮に元に戻れても、このままじゃこの子がなぁ…”

斗真はー
”ある人物”と、珠音の姿を重ねるー。

似てはいないー。
斗真の”大切な人”は
不登校ではなかったし、明るく、元気な性格だー。

けれどー
体格や、雰囲気は、似ているー。

「ーーーーは~~~~~」
”こんな子のこと、考えてる暇ないんだけどなぁ…”

そう、思いながらも、
仕方がなく、結局斗真自身の家に向かうことにして、
珠音は静かに歩き出したー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・

♪~~~~

インターホンが鳴るー。

斗真(珠音)は部屋の端っこで一人、身を潜めていたー

”と~~う~~ま~~~!
 さっきの見たぜ?盗みに入った家の子と
 仲良さそうに歩いてたけど、あれはなんだぁ~?”

部屋の扉がガンガンとノックされるー。

斗真の”泥棒”の相方、赤月刃ー。

彼は、偶然、
”斗真”と”珠音”が、一緒に歩いているのを
目撃してしまっていたー。

”まさかとは思うけど、
 盗みに入った家の子供に情でも沸いたのか?

 なぁおい?
 居留守してんのは分かってんだよ斗真ー。

 なんなんださっきの?
 出て来て説明しろや!オイコラ!”

刃の口調がどんどん激しくなっていき、
乱暴に玄関の扉が叩かれ始めるー

そんな状況に、斗真(珠音)は
部屋の隅で震え続けることしかできなかったー。

”なぁ斗真ー
 妹の治療費が必要なんだろぉ~?
 ほら、早く出て来て説明しろや!!”

その言葉に、
珠音(斗真)は”妹ー…?”と、
刃の言葉に首を傾げながらも、
部屋の隅で震えながら、
刃が帰るのを、ただひらすらに待ち続けるー。

「ーーーー!」

その時、ちょうど外ではー

母親に追い出されてしまった珠音(斗真)が、
斗真の家の近くまでやってきていて、
”斗真の家の扉”を、乱暴にノックする
赤月 刃の姿を目撃していたー

”おいおい…マジかよー”

怒り狂う刃が、自分の家の扉をノックしているー。
あの中には、自分と入れ替わった珠音がいるー。

しかもー
”妹”の件は、刃には伝えていなかったはずだがー…。

そう思いながら、
最悪の状況に、ため息をつきながらも、
斗真は”珠音の身体”で、なんとか刃を帰らせようと、
作戦を考えながら、自分の家の方に向かって歩き始めたー。

③へ続く

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コメント

②は私が担当したパートでした~!☆
明日掲載の③は、果実夢想様の担当ですネ~!

こうして受け渡しながら作っていく作品は
いつもと違う感覚でとっても新鮮デス…!

明日もぜひ楽しんでください~!☆

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