”悪魔に自分の身体を提供すること”
禁断の儀式により、彼女は自らの身体を”皮”にして、
悪魔と契約ー、
その見返りとして、
永遠の美貌を手に入れていたー。
しかしー…?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ー姉さんってホント、いつまでも若いよな」
30代後半の弟、松西 浩明(まつにし ひろあき)が呟くー
「そんなことないよ~!」
姉の松西 美奈(まつにし みな)は、
去年、40代に突入したー。
それなのに、その見た目は、まるで女子大生のような
若々しい風貌だー。
美魔女、と呼ばれるような、
中年になっても美貌を保つような
女性も確かにいるー。
しかし、彼女ー、美奈の場合は
それともまた違うー
”年老いても美しいー”と、いうよりかは
”全く老化していないー”
そんな風に見えるー。
「ーーーーそんなことなくないだろ~?
俺はどんどんおっさんになってるのに、
姉さん、ずっと昔から変わらない気がするし、
一体どうなってんだよ?」
苦笑いしながら弟の浩明が言うと、
美奈は「ふふふー…」と、微笑むだけで
後は何も答えようとしなかったー
「ーーーーー」
弟・浩明の家に久しぶりに遊びに行っていた美奈が
帰宅するー。
帰宅した美奈が鏡を見つめるとー
美奈は少しだけ笑みを浮かべたー
「ーーーふふふ…
わたしがいつまでも”若いまま”でいられるのは
全部、あなたのおかげー」
美奈がそう呟くと、美奈の後頭部にピキッと亀裂が入りー
中からーーー
ファンタジーモノに登場するような”人型の悪魔”のようなものが
姿を現したー
笑みを浮かべたまま、床に垂れ下がり、
脱皮するかのように脱ぎ捨てられた美奈ー
「ーーぐふふふふ…人間とは面白いものだなー
己の老いを恐れ、いつまでも美しくありたいと、願うー」
美奈の中から出て来た”悪魔”は
皮になった美奈を見つめながらそう呟くー。
40代になっても、
まるで”女子大生そのもの”の美奈はー
”悪魔と契約”を行っていたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
約20年前ー。
美奈は小さい頃から”老い”に対して
異常な恐怖心と、
若さを保つことに、異様な執着心を見せていたー
特に、その傾向が見られ始めたのはー
”モデル”として活躍していた母親が、
”引退”したころからだったー。
美奈の母親はモデルで、美奈が生まれた当時は
まだ現役だったー。
その後も、全盛期ほどの仕事は無くなっていたものの、
美奈が小学生、中学生の頃までその活動は続けていて、
美奈も、そんな母親のことが大好きだったー
だが、中学卒業間近のころー
母親はモデルを引退したー。
美奈が小さい頃に比べると、母親の容姿は
娘の美奈から見ても”露骨に衰え”が始まっていて
体形も、何もかも、急激に”中年”らしい感じになったー
もちろん、人は誰にでも衰える時が来るー。
どんなに宝石のような見た目だったとしても、
そうでなかったとしても、
人は等しく老いるー。
それが、人間に課せられた運命(さだめ)ー。
しかし、小さい頃から母親がモデルで
間近でそれを見て、
そして、そんな母親に憧れを抱いて居た美奈にとっては
モデルであった母親が老いて、急激に衰え、
そして、引退したというのを間近で見て、
強いショックを受けてしまったー。
引退後の母親は、美容に気を使わなくなり、
美奈が大学生になるころには
”太ったおばさん”と呼べるような、
そんな状態になっていたー。
だからだろうかー
美奈は”異様なまでに老化を恐れ”
異様なまでに”今の自分を保つこと”に執着したー。
大学生になっていた美奈は、
病的なまでに、見た目に気を使う様になっていて、
友達や、弟の浩明も、当時の美奈のことを
とても心配していたー。
そんな、ある日ー
美奈はある都市伝説のような話の存在を知ったー
それはー
”美を司る悪魔”の話ー。
その悪魔と”契約”することで、
その人間は、永遠の美貌を手に入れることができるー、と、
そんな”伝説”だー。
本を読むのが好きな一面もあり、
古文書なども読む美奈は、
ある古文書で、そんな記述を見つけたのだー。
しかも、その悪魔が封印されているという場所ー
”契約を行うための場所”は
大学生になった美奈が住んでいる地域から
それほど離れた場所ではなかったー
「ーーーー」
もちろん、そんな伝承を信じるような人間は
そんなにはいないだろうー。
だが、”老い”に異常なまでの恐怖心を持つ美奈は、
その話を信じー、
休日に早速、その場所に向かったー
隣町に存在する山のふもとに広がる森林ー。
その一角にある洞窟のようなところに、
その”悪魔”は封印されているのだと、
その古文書には書かれていたー
一部のページは汚れていたり、
解読できなかったりで、
全ての内容を読むことはできなかったがー
とにかく、その”悪魔”と契約することにより、
永遠の美貌を手に入れることが
出来るのだというー。
「ーーーここがー」
大学生時代の美奈がそう呟くー。
不気味な洞窟に臆することなく入って行った美奈は、
奥にある祭壇のようなものを見つけたー
ゴクリ、と唾を飲み込みながら
その祭壇の方に向かっていく美奈ー。
「ーーーー…」
美奈は深呼吸してからー
「ーーーーーーーーわたしは松西 美奈ー…
ここにいる悪魔にお願いがあってきましたー」
と、言葉を続けるー。
美奈は”一人で何をやってるんだろう”と思いながらも、
古文書に書かれていた通り、持参した蝋燭に火をつけてー
そして、古文書に書かれていた通り、願いの言葉を口にするー
すると、次の瞬間ー
”我を呼び覚ましたのは、お前かー?”
そんな声が聞こえたー
「ー!?!?!?」
美奈が驚いて目を見開くと、
そこにはガーゴイルのような形をした悪魔が
姿を現していたー
「ひっ!?」
思わず声を上げてしまう美奈ー。
「ーーぐふふふふ…人間、我を自分で呼んでおいて
その反応は失礼であろう?」
悪魔が言うと、美奈はすぐに
「そ、それもそうですねー」と言うと、
「ーお願いがあってここに来ました」と
単刀直入に、”永遠の美貌”を求めたー。
古文書を読んだことを告げ、
その”契約”を自分もしたい、と、
そう説明したー。
「ほぅー。
老いは人間の運命ー。
それに逆らいたいと、申すか?」
悪魔の言葉に、美奈は
「わたし、歳を取って、ヨボヨボのおばあさんになんて
なりたくないの!」と叫ぶー
「いつまでも、若いままでいたいの!」
とー。
「ーー人間とは、欲深い生き物よな」
悪魔が少し笑みを浮かべながらそう言うと、
「ーーそれでー、できるんですか?できないんですか?」と
美奈は悪魔に対し言い放ったー
最初でこそ、驚いていたものの、
その後は案外堂々とした態度の美奈に、
悪魔は少しだけ笑みを浮かべたー
「もちろん、できるともー」
とー。
「ーーほ、本当ですかー!?」
嬉しそうに目を輝かせる美奈ー
だがー
悪魔は言ったー
”その身を我にー
委ねる覚悟は、あるか?”
とー。
「どういうことですか…?」
美奈が言うと、悪魔は笑みを浮かべたー
「ーーー」
古文書を指さす悪魔ー。
「ーー貴様は読めなかったのかもしれんがー
我との契約には”代償”もあるー。
我の肉体自身は、既にこの場に封印され、
朽ち果てておるー。
我が力を与えるためには、我の魂を受け入れる
”器”が必要だー」
悪魔がそう言うと、
美奈は「ーーー器」と、口返すー。
「そう、貴様の、身体だー」
とー。
その言葉に、美奈は命の危険すら覚えたー
悪魔の言葉を鵜呑みにするのであれば
自分はこの場で殺されるかもしれないー
だが、美奈はそれでも一歩も引かず、
悪魔のほうをまっすぐと見つめたー。
「わたしを殺すってことですかー?」
美奈の言葉に、悪魔は
「器にするだけだ。永遠の美貌が欲しいのであろう?
それには、我の力が必要だー。」と、呟くー。
「ー……わたしの意識は消えるってことですかー?」
美奈はその確認もするー
だが、悪魔は首を横に振ったー
「ー消えぬ。
お前はただ、我の魂を受け入れればいいー」
悪魔の言葉に、美奈は流石に困惑したのか、沈黙するー。
「ー我は強制しないー。
人間よー。我が恐ろしければ
そのまま来た道を引き返せばよいー。
我は何もしないー。
だがー
お前の望む、永遠の美貌が欲しいのであればー
我を受け入れるしかないー。
さぁ、選ぶが良いー。
我は気まぐれー。
我の気が変わらぬうちにー」
悪魔がそこまで言うと、
美奈が目を見開き、
まるで、人間相手に普通に返事をするかのように
口から言葉を吐き出したー。
「よろしく、お願いしますー」
とー。
悪魔はそんな美奈を見て、笑みを浮かべるー
”面白い人間だなー”
とー
悪魔の姿を見ても、そこまで驚かずー
己の欲望を堂々とぶつけてきた美奈ー
しかも、”悪魔の魂を受け入れよ”と言われても
それを受け入れることができるほどの、根性ー
いやー…何か精神的に壊れているのかもしれないが
いずれにしても、面白いー。
そう思った悪魔は、突然、紫色のオーラを纏う剣のようなものを手にしたー。
それを、美奈の方に向けるー。
美奈は逃げると思ったー。
だが、逃げなかったー
「ー気に入ったー」
悪魔はそう言うと、美奈にその剣を振るったー。
美奈の身体は、たちまち空気が抜けるかのようにして
ペラペラになり、
悪魔は何やら呪文のようなものを唱えてからー
それを、着たー
目を覚ました美奈は驚くー。
「ーーわ…わたしー」
美奈が呟くと、
”人間よーお前の願い、確かに受け取ったー”
と、頭の中に声が響き渡ったー
「ーー…あ、あなたは今、どこにー?」
美奈が言うと、悪魔は”お前の、中だー”と、呟くー。
”お前の身体は、今日より、お前の望む永遠の美貌を手に入れたー。
歳を老いることもなく、ずっと今の姿のままで
いることができるー”
その言葉に、美奈は目を輝かせながら
「ーーありがとうございますー」と、
静かに囁いたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
あれから20年以上ー
美奈は”あの時”の容姿のままー。
悪魔の言った通り、美奈の身体は年老いることなく、
今でも”女子大生”の状態のままー。
周囲の人間が老いていく中ー
美奈だけは、あの時のままだったー。
勤務している会社でも、
毎年、新入社員が入って来る度に、
”えぇっ!?松西さん、同期かと思いましたよ”とか
”松西さんって、えっ!?そんなにー!?
1歳ぐらい年上なだけかと”とか、
戸惑う顔を見せているー
「ーーふふふふ」
夜になると美奈は呟くー
「ーー…今日はどうするの?」
とー。
美奈の言葉に、悪魔は少し考えてから
”我の時間を貰おうか”と、返事をしたー。
美奈を皮にし、その内側に潜む悪魔ー
悪魔の力により、美奈は永遠の美貌を保っているー。
だがー
美奈は”あなたに何かメリットはあるの?”と、
首を傾げたー。
聞けば、悪魔は、操ろうと思えば美奈の身体を自由に
することもできるのだというー。
それを聞いた美奈は
”家から出ないこと”や”他の人に連絡しないこと”など
色々な条件を提示した上で、
夜、週に数回ほど、悪魔に自分の身体を貸していたー。
「ーー本当に面白い女だったー」
美奈の身体を支配した悪魔が美奈の身体で呟くー。
最初、美奈から”わたしの身体を貸してもいい”と
提案されたときには、悪魔は心底驚いたー
やはり、この女、普通ではないー、と。
だが、美奈は
”わたしがずっと綺麗なままでいられるなら、
このぐらいお礼しなくちゃ”などと、大学生当時、言っていたー
そして、今もそれは続いているー。
美奈との約束で、いつも2時間ほど身体の主導権を握っている悪魔は
美奈の身体で人間の食事を経験したり、
美奈の身体で一人、エッチなことをしたり、色々なことを
体験していたー
「ーーはぁ♡ はぁ…」
今日も、美奈の身体で気持ちよく快感を味わうと、
”あなた、それ好きねぇ…”
と、美奈の意識が頭の中で苦笑いしたー
「ー我の肉体では、感じることのできない快感だからなー」
美奈の身体で悪魔はそう呟くと、
「ーそろそろ時間だー。お前に身体を返すぞ」
と、美奈に身体の主導権を渡したー。
自由を取り戻した美奈は、鏡を見つめるー。
”ずっと、綺麗なままー”
永遠の、美貌ー。
40代になった今でも、身体は女子大生の時のままー
「ふふー」
美奈は満足そうに笑みを浮かべ、
今日も1日を終えるのだったー
②へ続く
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
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1話完結っぽい終わり方になっちゃってますが、
②もあります~!☆
続きはまた明日デス~!
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