<MC>明日、世界は終わるから

”明日、世界は終わる”

生意気な妹を驚かせてやろうと、
兄は、妹に
”明日で世界は終わる”と思い込ませる洗脳を行ったー。

その結果ー…?

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーはいはい」
大学生の日野 勝(ひの まさる)は、
現在高校生で妹の日野 尚美(ひの なおみ)から
今日も文句を言われて面倒臭そうにそう答えたー

勝は面倒臭がり屋で、人付き合いが苦手なタイプー
性格にも難があることから、
学校での友達は小さい頃から少なく、
彼女もいないー。

最も、勝自身も彼女という存在に興味はなく、
別に彼女がいないことも気にしていないし、
作る気もない。

そのためか、勝は容姿にも無頓着だったー。

そんな勝とは正反対なのがー
妹の尚美だ。

尚美はしっかり者で、成績優秀、友達も多く、
彼氏もいるのだとかー。

あまりにも無気力でやる気のない勝に対して
尚美はよく、まるでお姉さんのように
苦言を呈していたー。

だがー。
それが、兄の勝にとっては
昔から気に入らなかったー。

”キラキラした学生生活を送りやがって”

そんな風にも、いつも考えていたー

”明るく、希望に満ちた妹”が、
兄の勝からしてみれば、不愉快だったー。

”ちょっと、驚かしてやるかー”

そんな兄・勝は、
ネットで目的もなく、何となく色々なサイトを
見て回っていた際に
”あるもの”を見つけたー。

それがー

”洗脳術”だったー。

相手を洗脳することができる特殊なヘッドホンー。

このヘッドホンに、”相手の脳に刷り込みたいこと”を事前に記録し、
それを洗脳したい相手に装着させることで、
相手を”洗脳”することができるというのだー。

例えば妹の尚美に対して
”お兄ちゃんが大好き”と刷り込めば、
そうすることもできるー…ということなのだろうー。

勝は、少しでも気になるものがあると、
すぐにネットで買ってしまうー
そんな性格だったー。

その結果、成功したこともあれば
失敗したことも今までにあったが、
今回は特に、”賭け”だったー。

普通に考えれば
ヘッドホンで人を洗脳などできるはずがないー。

だが、99パーセント”詐欺”的な商品だろうと
思っていても、
勝は”気になるものがあれば、買う”というー
そんな、性格だったー。

後日ー
注文したヘッドホンが届き、勝は笑みを浮かべるー。

まずはパソコンでこのヘッドホン専用のUSBメモリとソフトを使い、
”相手の脳に刷り込むこと”を記載していくー。

勝は”くだらねぇな”と思いながらも、
妹の尚美を”どのように洗脳するか”設定していくー

文章を入力し終えた勝は、ニヤッと笑みを浮かべるー。

勝の目的は、
妹の尚美を言いなりにすることでも、
妹の尚美にエッチなことをすることでもなかったー

いつも生意気なー
勝にとっては”眩しすぎる”妹の尚美が、不愉快だったー

だから、ちょっと”懲らしめてやろう”と、
そう思ったー

尚美は別に何も悪いことをしておらず、
完全に勝の逆怨みであったものの、
少なくとも勝は、そう思っていたー。

”明日、世界が終わる”

勝は、尚美をそう洗脳するつもりだったー

つまり、
尚美を洗脳して
”明日世界が終わる”と、そう思い込ませるのだー。

「尚美ー…お前に希望なんてないんだぜ」
小型の特殊なUSBメモリに、明日世界が終わると書き込んだ勝は
そのUSBをヘッドホンの方に戻し、
そして、尚美の部屋へと向かったー

「ー尚美、入っていいか?」
勝は部屋をノックしながらそう言うと、
”あ、うん。いいよー”と、尚美が返事をしたー

尚美は学校のテストが近いらしく、
机に向かって勉強をしている最中だったー

「ごめんなー勉強の邪魔して」
勝がそう言うと、
尚美は「なに、急にー?いつもよりなんか礼儀正しくて不気味ー」と、
苦笑いしたー。

「ーーさてはー…!わたしに何かお願いごとー?」
尚美がそう言うと、
勝は「ははは…そうそう…バレちゃったかー」と笑みを浮かべるー。

勝と尚美は表立って不仲なわけではないー。
勝は尚美のことを”鬱陶しい”と思っているものの、
尚美の方は”お兄ちゃんにもっとしっかりしてほしい”と言う感情から
小言を言うだけで、別に勝自体のことは嫌っていないー

「ーー実はー
 ちょっと大学の先輩から頼まれて
 サークル用の曲を作ったんだけどさ、
 俺、聞いてもらうような友達とかいないじゃん?

 だからー…
 一番年齢の近い尚美に感想をー
 って、思ってー」

勝はそう言いながら”洗脳”に使うヘッドホンを差し出すー。

尚美は少し不思議そうな顔をしていたものの
「お兄ちゃん、曲なんて作れるの?」と言うと、
「長くなければ、聞いてあげるよ」と、テスト勉強を中断して
尚美はヘッドホンを手にしたー

”洗脳は10秒ほどで完了しますー”
ヘッドホンにはそう書かれていたー

解除するには、24時間そのまま経過させるか、
または付属の解除用ディスクを使って
所定の操作をすることで、洗脳を解除できるー
とのことだったー。

「ーーーこのボタン押せばいいのかな?」
尚美の言葉に、勝は少しニヤッとしながら
「あぁ…」と呟くー

尚美がヘッドホンのボタンを押すー。

すると、次の瞬間ー
尚美はビクンと震えてー
ヘッドホンを取ると、
途端に表情が変わったー

「ーーー……はぁ」
尚美がため息をつくー

勝はニヤニヤしながら”本当に、洗脳できたのかー?”と、
半信半疑だったヘッドホンの効果を疑うー。

だがー

「ーーはぁ~~~~……勉強とか、わたし、何でしてるんだろ」
尚美はそれだけ言うと、教科書をゴミ箱に放り投げて
机に顔を付けて、泣き始めたー

「ーな、尚美ー?何泣いてんだよー」

”分かっていて”
わざと聞く勝ー

「ーー…お兄ちゃんは怖くないの?
 だって明日、世界が滅亡するんだよー?
 わたし、もっとやりたいことあったのにー」

尚美はそれだけ言うと、泣きながら深くため息をついたー

机に顔を押し付けたまま
「もう、どうにでもなっちゃえ」と、自暴自棄な
言葉を呟くー

”へへ…すげぇ…”
勝は、そんな尚美の後ろ姿を見つめながら、
「ーーどうしたんだよ~?いつも頑張ってたのに~」と、
意地悪そうに呟くー

「ーだって!」
尚美は顔を上げて勝のほうを見つめると、
勝を睨みつけながら叫んだー

「明日!世界はなくなっちゃうんだよ!?
 何もかも消えちゃうの!
 もう、頑張ったって意味ないよ!」

尚美は泣きながらそう言うと、再び机に顔を押し付けて
一人、泣き出してしまうー。

「ーーす…すげぇ…」
勝は、そんな尚美のほうを見つめながら
”洗脳”の効果を実感してニヤニヤと笑みを浮かべるー。

「ーだから~俺みたいに毎日楽しくやってた方がいいって言っただろ~?」
勝が揶揄うようにして言うと、
「もう放っておいて!」と、尚美はヒステリックに叫んで、
後はひとり、泣いているだけだったー

”やべぇなこれー すげぇ”
勝は、ヘッドホンの洗脳効果に関心しながら、
尚美の部屋を後にするー。

時々、尚美の部屋から叫ぶような声や、
何かを投げるような音が聞こえてくるー

”明日、世界が滅ぶー”
そんな風になった時ー、
人間はあんな風になってしまうのだろうかー。

そんな風に思いながら、勝は
「へへ…まぁ、これで尚美も少しは大人しくなるだろ」と、
笑みを浮かべるー

何もしなければ、洗脳の効果は24時間で切れるー。
散々、世界が滅ぶ、世界が滅ぶ、と恐怖を感じた挙句ー
元に戻った瞬間、尚美がどんな反応をするのか楽しみだー。

ガタッ

隣の部屋の扉が開く音が聞こえて、
勝も部屋の外に出ると、どうやら尚美は
外に出かけようとしている様子だったー

「尚美ーどこに行くんだ?」
勝が言うと、尚美は「今日中に全部お金使うの!」と、
バイトで貯金していたお金を全部使うことを宣言して、
勝のほうを見つめたー。

「ーーーえ…あ… そ、それはやめた方がー」
勝は少し洗脳を甘く見ていたー

勝の頭の中では
”明日、世界が終わる”と、尚美に思わせてー
尚美は怖がって、泣いてー
一人、夜まで怯えながら過ごしー
翌日にはー”実は世界は滅びないんだよ”と、伝え
その反応を試すー

そんな、軽い感じの流れを考えていたー

だがー
”お金を使う”と言い出した尚美を見て、
流石に勝は焦りを感じて、
「いや、ちょ、ちょっと待てよ」
と、尚美を呼び止めるー

「ー止めても無駄だよ!
 どうせ明日には全部なくなっちゃうんだから!」

尚美はいつもは見せないような険しい表情で
勝を睨みつけるー。

「ーーい…いや、落ち着けってー…!」
勝はそれだけ言うと、
「あ、明日、世界が絶対に滅ぶとは限らないだろ?
 もしかしたら意外と平気かもしれないしー」と、
慌ててそう言葉を付け加えるー。

しかし、尚美は「何のんきなこと言ってるの?」と
目に涙を浮かべながら言うー

「明日、世界が滅びるのはもう決まったことでしょ!?
 だって、巨大隕石が地球に直撃するんだから、
 逃げようがないし!

 なんでそんな気楽なこと言えるの?」

尚美の言葉に、勝は
「い…いや、そ、そのー」と、困惑の表情を浮かべるー

「ーお兄ちゃんはいつもそう!
 ちゃんと物事を真剣に考えないから!

 いつもいつもいつもー
 最後だから言わせてもらうけど、
 お兄ちゃんのそういう適当なところ
 わたし、嫌で仕方なかった!」

尚美はそれだけ言うと、
勝は「ーーえ…あ…ご、ごめん…」と、
黙り込んでしまうー。

「ーお兄ちゃんも、最後の1日ぐらいやりたいこと
 やった方がいいよ

 どうせ、明日には死ぬんだし!
 ふふっ…」

尚美は少し精神的に参っている様子で、
不気味な笑みを浮かべると、そのまま
「今日中に全部貯金使ってやろ」とだけ呟いて
そのまま家の外に向かうー

「あ、いや、ちょっと待ーー」
そこまで言いかけて勝は「いやー」と、
振り返って、自分の部屋にある
付属の解除用ディスクを使おうとするー

「あんなにマジになるとは思わなかったー

 いやー……
 明日世界が滅ぶって本気でそう思っちゃったらー
 ああもなるか…」

そう呟きながら、勝はヘッドホンを回収して、
ディスクを手に、説明を読むー。

”解除用ディスクをパソコンに挿入”

”ヘッドホンを”洗脳した主”が装着し、
 解除用ディスク挿入後に画面に表示される
 指示に従い、操作を行ってください”

説明書通りに、作業を進める勝ー。

妹をちょっとビビらせてやりたかったが
あそこまで影響が出るとは夢にも思わなかったー

貯金を全額使ってしまうとか、
そういうレベルにまで話が進んでしまうとなると
”ちょっとした仕返し”程度に考えていた勝からすれば
顔色真っ青の状態だー。

”早くー…早くー”

その時だったー

「ーーーあ!」
勝は、ふと、背筋が凍るような思いをしたー

「ーーーーー!!!!」
ボタンーー。

ヘッドホンについている”洗脳”ボタンを
間違えて押してしまったー

勝は”しまった!”と直感的に焦りを覚えるー

だが、次の瞬間ー

「ーーやべぇ…」
勝は呆然とした様子でヘッドホンを外したー

妹の尚美に”怪しまれないように”と、
ヘッドホンのことは認識しないー
気にしないようにする命令も書き込んでいたため、
勝は、ヘッドホンを床に置き、
自分が今、何をしようとしていたのかも気にせず、
呆然と空を見つめたー。

「ーー俺…何やってるんだー…
 明日、世界、滅びるんだったなー」

勝はそんなことを思いながら
頭を抱えるー

「くそっ……くそっ…」

”自らが設定した洗脳”に、自分もかかってしまい、
明日、世界が終わると思い込んでしまう勝ー。

「どうせ死ぬならー」
勝はそう思いながら、
家の外に向かうー。

そしてーーー
自暴自棄になった勝は、
街中で可愛い子を見つけては襲いー、
お店でほしかったものを盗みー
パトカーのサイレンが響き渡る中ー

「みんな、最後の日まで普通に生活してるとか、バカだなぁー」
と、呟きながら
「ー世界が滅ぶ瞬間にビビるなんてごめんだぜー」と、呟いてー
そのまま立っていたビルから、勝は悔しそうな表情を
浮かべながらー…

”飛び降りたー”

そんなことも知らずに
同じく”明日世界が終わる”と洗脳されている妹の尚美は
自分の全財産を使い、帰宅すると、
泣きながら部屋の中で暴れてー
疲れ切って、そのまま眠りについたー

明日ー
目を覚ます頃には洗脳は解けるー。

だがー
その時にはー

自分の貯金を全部使ってしまったことやー、
兄が”世界の滅亡を前に”自殺してしまったことをー
尚美は、知ることになるー。

”明日、世界は終わる”

そんな洗脳を妹に施した兄の勝はー
自分自身の世界が、今日、終わってしまったのだったー

おわり

・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

先週の土曜日に続き、1話完結のお話でした~!☆!

私のネタのストックに長い間眠ったままのネタが
結構あるので、せっかくですし、
こういった土曜日の枠なども活用しつつ、
実際に形にしていければ、と思います~!☆
(※土曜日だけは予約投稿の都合上、
 1話完結モノか、続編モノが多いデス)

お読み下さりありがとうございました~!☆

小説
憑依空間NEO

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