<MC>お前の妹にラバースーツを着てほしい①~お願い~

ある日、親友から
”折り入って頼みがある”と呼び出された彼はー
突然、とんでもないお願いを親友にされてしまうー

そのお願いとは
”お前の妹にラバースーツを着てほしい”という
とんでもないお願いだったー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「なんだよ話ってー」
男子大学生の北島 光也(きたじま みつや)が、
親友の谷中 伸介(やなか しんすけ)に向かってそう言い放つー

二人は、同じ大学に通う親友同士。

だが、今日の午前中、伸介が神妙な面持ちで
”今日、終わったら少し時間あるか?大事なお願いがあるんだ”と
言ってきたー。

”何の話だ?”と思いつつも、別に断る理由もないため、
大学での1日が終わった今ー、
こうして伸介に呼び出された場所に
来ていたのだったー。

「ーーお前に折り入って頼みがあるー」
いつもふざけたことばかり言っている伸介が
珍しく真面目な表情でそう呟くー

「ー頼み…?急に改まってどうしたんだー?

 あ、俺に告白とかならやめてくれよ?」

光也は”冗談をよく言い合う仲”である伸介に対して
そんな冗談を口にするー

「ーははは、誰がお前なんかに告白するかよー。
 俺はそういう趣味はないし」

伸介の言葉に、
光也は「なら良かった」と、頷くー

「で、頼みってー」
冗談で続きを遮ったことを申し訳なさそうにしながら、
再度、伸介に”頼みってなんだ?”と確認すると、
伸介は「あ…あぁ」と、困惑の表情を浮かべるー

”いや、その…”と
なかなか”その先”を言おうとしない伸介を見て、
光也は「なんだよ?俺とお前の仲だろ?はっきり言えよ」
と、笑いながら言い放つー。

その言葉に、伸介は数度、頷くような仕草をしてからー
「…わかった」と、呟くと
「じゃあ、言うぞ」と、緊張した様子で息を吸い込んだー

”な…なんだ?何を言うつもりだー?
 そんなヤバい話なのか?”

いつもふざけている感じの伸介の様子からは
只ならぬ雰囲気を感じるー
相当良くない話ー
あるいはー

”金を貸してくれ”とでも、言われるのかー?

そんな風に思いながら伸介のほうを見つめると、
伸介は、ひと思いに言葉を吐き出したー

「ーお前の妹にラバースーツを着てほしい!」
とー。

「ーーーーー」

「ーーーーー」

光也は今、聞いた言葉の意味が分からず、まばたきを何度も
繰り返しながら伸介のほうを見つめているー

一方の伸介も、気まずくなったのか、沈黙しながら
光也の反応を見ているー。

「ーーー今、何て?」
光也がようやく振り絞った言葉は、それだったー

まるで、意味が分からないー。
宇宙人と遭遇してコミュニケーションが取れなかった時の人類の気持ちとは、
こういう気持ちなのだろうかー。

そんな風に思いながら伸介のほうを見ると、
伸介はさっきよりも大きな声で叫んだー

「お前の妹に…!!ラバースーツを!着てほしい!」
とー。

「却下」
光也は即答したー

妹の北島 絵美(きたじま えみ)ー。
現在高校生の、光也もとっても可愛がっている妹だー

”お兄ちゃん過保護すぎるよ~!”などと文句を言いながらも、
絵美も、兄・光也のことをよく頼って来てくれるー

時折、”利用されているような感じ”がしないでもないが、
兄である光也にとっては
”利用されているのだとしても、それでいい”と思えるぐらいには
妹の絵美のことを可愛がっていたー。

「ーなんでぇ!?」
伸介が”却下”されて声を上げるー

「ー当たり前だろお前ー…」
光也があきれ顔でそう言うと、
「ーってか、俺の妹をそういう目で見るなよ!」
と、伸介に対してムッとした様子で言うー。

「い、い、い、いや、違うんだよー」
伸介が慌てて手を振りながら
「べ、別に下心で妹のことを見てるわけじゃないんだ」と、
釈明するー

「じゃあ何なんだよー
 絵美にラバースーツを着せる意味は?」

光也があきれ顔で言うー。

伸介と絵美が初めて会ったのはー
少し前にこの大学で行われた学園祭の時だー。

光也の妹・絵美がちょうど休みだったこともあり、
兄の学園祭に遊びに来ていて、
兄・光也と一緒にいたところ、伸介が声を掛けて
光也を交えて三人で話したー

その時が、初めての対面だったー。

逆に言えば、光也の妹・絵美と、光也の親友・伸介の面識は
それしかなく、特別親しい相手というわけでも、何でもないー。

「ーーそのー何と言うかー
 ……えっとー」

伸介はそう呟くと
「ーエロイからに決まってんだろ!!」
と、単刀直入に叫んだー

「絶対却下」
光也はそう言うと「話はそれだけか?」と、
困り果てたような表情を浮かべるー

「なんでだよぉぉぉぉ!
 俺、一目見た時から思ったんだ!
 ”この子、絶対ラバースーツ似合うだろうし、エロイだろうなぁって”」

「ー気持ち悪いやつだな」
光也が苦笑いしながら、
「ーっていうか初対面の俺の妹をどんな目で見てるんだお前は!」
と、苦言を呈するー。

「ーーいやぁ…俺、女の子を見ると、”この服似合うかなぁ”とか
 そういう目でつい見ちゃうんだよなー」

伸介が頭を掻きながら言うー。

「ーお前、変態だなー…
 俺の妹で抜いたりするなよー気持ち悪いからー」
光也が言うと、伸介は「へへ…心配すんな!もう毎晩抜いてるぞ!」と、
笑みを浮かべたー

べしっ、と軽く肩を叩くと
伸介が「いたっ!」と叫ぶー

「とにかく!却下だ却下!
 大体、”妹にラバースーツを着てほしい”なんて頼まれて
 ”あぁ、いいぜ”なんてお兄ちゃんがいると思ってんのかよ?」

光也があきれ顔で言うー

だが、伸介は引き下がらなかったー

「だったら、本人にお願いさせてくれよ!
 お前の妹が自分で「いいよ」って言うなら、
 お兄ちゃんが出る幕じゃないはずだぜ?」

伸介の言葉に
「ーあ~面倒くせぇな…ダメだって言ってるだろ?」と
少しムッとした様子で光也が言い返すー。

「ー高校生はもう自分で判断できる立派な年齢だぞ!
 お兄ちゃんが勝手に断るなんて、おかしいぞ!」

伸介がなおも食い下がるー
光也は「ーはいはいはい」と適当に返事をしながらも、
”ーー…まぁ…絵美は100パーセント断るだろうしー”と思いながら、
「ー絵美に断られたら、諦めるって約束できるか?」と確認するー。

「ーもちろん。本人が嫌がってたらそれ以上
 強要したらやべぇやつだろ?」

「ー今でも十分やべぇけどなー…」
光也はあきれ顔でそう言うと、
「ーじゃあ、次の休み、絵美も家にいるから、遊びに来いよ。
 その時、聞かせてやる」と、
呆れながら返事をしたー

「ーーやったぜ!」
ガッツポーズする伸介に対して光也は
”1回でも断られたらそれで終わりにしろよ!?”と
何度も何度も釘を刺したー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

”人にお願いを絶対に聞いてもらう方法”
”お願い 絶対 聞いてもらう”
”お願いを聞いてもらうコツ”

帰宅した伸介は、そんな方法を何度も何度も
調べ続けていたー。

そしてー

「ーーおっ、これすげぇじゃん」

”他人にお願いを絶対に聞いてもらうためのおまじない”

「ーーー」
伸介は、そんなものを見つめるー。
その方法は”明らかに嘘”ーと、いうよりかは
迷信的なものであることは、伸介にもすぐに理解はできたー。

しかしながら、どうしても光也の妹・絵美に
ラバースーツを着てほしいー

自分でもどうしてそう思うのか分からないが、
とにかく、ラバースーツを着てほしいのだー。

「ーーま、試してみるか」
伸介は、”他人にお願いを絶対に聞いてもらうためのおまじない”を
見つめながらそう呟くと、
”それに隠されたまさかの秘密”に気付くことはなくー、
そのまま笑みを浮かべたー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

土曜日ー

伸介が家にやってくるー

「早く!絵美ちゃんにお願いさせてくれよ!」
伸介が家に来ると同時に、そんなことを呟き始めるー

「うるせぇやつだな」
光也は苦笑いしながら、
光也の母親に挨拶している伸介のほうを見つめるー

伸介は大きな紙袋を持参している。
恐らくはその中に”ラバースーツ”が入っているのだろうー。

”絵美がOKなんてするわけないじゃないか”

一応ー、
絵美にも先に事情を話してあるー。
何度も何度も絵美に頭を下げて、
”俺の親友、バカなやつだからさ、ほんとゴメンー
 あいつ、うるさくて”と、
説明しておいたー。

絵美になら、そういうふざけた話をしても大丈夫、
ということは兄として光也はしっかり理解しているつもりだー

事情を説明すると、絵美は笑いながら
「お兄ちゃんの友達、面白い人だね~!」と、
言っていたー。

”大丈夫大丈夫!断ればいいんでしょ
 っていうか、わたしにそんな服、似合わないと思うし”

絵美に事情を説明したときのことを思い出しながら
光也は、伸介を連れて、
妹の絵美の部屋の前にやってくると、
光也は絵美の部屋をノックしたー。

”いいよ~!”
絵美が返事をするー。

光也が先に部屋に入りー
「ーアホが来たーごめんな」と、苦笑いしながら言うと、
絵美は苦笑いしながら、
後から入ってきた伸介を見ると同時に、
「あ、お兄ちゃんがいつもお世話になってます~!」と、
愛想よく返事をしたー

「ーーあ、い、いや、こ、こちらこそー
 こいつに世話になりっぱなしでー」
伸介はそんな風に笑いながら照れくさそうに反応するー

”あ、そういえばお兄ちゃんの大学の学園祭の時、
 会ってますよね!?”

絵美がそう言いだすと、伸介は”え!覚えてくれてたのか?うわぁ、嬉しいなぁ”
などと、二人で話が盛り上がるー。

少し間を置いてから光也のほうを伸介が見ると、
光也は”絵美も暇じゃないんだから、早くしろよ”とだけ呟くと、
伸介は、少し照れくさそうに頷いてからー
絵美のほうを見て、何かをブツブツ三回ほど呟いたー。

すぅっ、と深呼吸をして、伸介は
「下心とか、変な意味じゃなくてー
 ラバースーツを着てほしいです!」
と、土下座しながら叫んだー

”いや、下心だろー…他に何があるんだよ”
光也はそう呟きながら、
土下座している伸介のほうを見るー。

当然、絵美は断るだろうー。
断れば、伸介は諦めると言っていたー

光也は妹である絵美の性格をよく理解していると同時に、
伸介の性格もよく理解しているー。

絵美は断るし、
伸介は本人に断られたら苦笑いを浮かべながら
諦めるー。
そういう人間だー。

変態な一面はあるが、
越えてはならない壁を、越えることはしないー

”いやー…俺の妹にラバースーツとか言い出す時点で
 壁を越えてる気もするけどな”

光也がそう思っていると、
絵美は「はい。着ます」と答えたー。

「ーーははは…ほらな、だから言っただろー
 伸介、約束通り諦めろー」
光也が笑いながら言うと、土下座していた伸介も
「ーーはははは…だな…いや、まぁ、分かってたんだけどさ…
 こうハッキリ断られるとスッキリとー」
と、光也のほうを見て笑うー。

だがー
次の瞬間、二人は「え…?」と困惑の表情を浮かべて
絵美のほうを見つめたー。

紙袋からラバースーツを取り出して
「ー着ます」と、絵美がもう一度呟いたー。

「ーえっ!?!?えぇぇぇっ!?えっ!?
 いや、いやいやいや、絵美、無理しなくていいんだって!
 こいつ、アホだから普通に断っていいんだからー」

光也がそう言うと、
伸介は「(やべぇ…おまじない本当に効果があるのか?)」と
思いながら勝ち誇った表情で
「ーへへへーっ!お兄ちゃん残念だったなー!
 本人が許可すればいいんだろー?!」と嬉しそうに叫ぶー

「ーぐぬぬ…」
光也はそう呟きながら、ラバースーツを夢中な表情で
見つめる絵美のほうを見て、不安を覚えるー

「ーわたし…ラバースーツを着るのー…
 わたし…ラバースーツを…」

絵美が小声でそう呟くー。

だが、内容を聞き取れなかった光也はー
「ーおい!」と、伸介の腕を掴んで、
「ー着替えは絶対に見るなよ!」と、
伸介をそのまま部屋の外に引っ張り出したー

「ーーーーー…」
「ーーーーーー…」
絵美の目の輝きが消えるー。

”おまじない”により、
自らの意思とは関係なく、ラバースーツを手にした絵美は
そのまま虚ろな表情を浮かべて、
一人、部屋でラバースーツに着替え始めたー

②へ続く

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

恐ろしいおまじないを無自覚で使ってしまった親友…!
続きはまた明日デス~!

今日もありがとうございました~!

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