ハンバーガーショップで
放課後のひと時を楽しんでいた
4人の女子高生。
しかし、そのうちの一人が憑依されてしまい、
口論が始まってしまう…。
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”憑依能力を持つ男”
悟志は、ハンバーガーショップ・スイートバーガー駅前南口店の
2階の座席に座り、腕を組んだまま目を閉じていたー。
一見すると、昼寝をしているようにしか見えない彼ー。
しかし、実際には”彼の中身”は今、
その身体の中にはおらず、
少し離れた座席で談笑していた4人の女子高生のうちの一人、
ツインテールで天然そうな雰囲気の少女・佳奈絵に憑依していたー。
「ーーーふ~、みんな、喧嘩とかしちゃダメでしょ」
眼鏡をかけた文香が、憑依された佳奈絵の挑発的な言葉で
始まりそうになった喧嘩をなだめると、
ポニーテールの千穂と、ショートヘアーの凛々子は「そ、そうだよね」と、
頷いたー。
「ーーーいい子ぶっちゃって」
だがー、佳奈絵の”口撃”は止まらないー。
普段の佳奈絵なら、こんなことは言わないー。
しかし、今の佳奈絵は悟志に憑依されているー。
しかも、その悟志の目的は”群れの絆を引き裂くこと”ー。
文香がどんなことを言って、喧嘩に発展するのを止めようとしても、
無駄なのだー。
今の佳奈絵は”友達と喧嘩すること”を目的に
動いているのだからー
「ーーえ?」
文香が困惑の表情を浮かべるー
「ーいつもいつもさ、自分はクールな優等生です、お姉さんです!
みたいな感じでさ、わたしたちを見下すのもいい加減にしなよ」
ツインテールの佳奈絵は、普段とはまるで違う雰囲気で、
文香に絡むー。
文香は「わ、わたしはそういうつもりで言ってるんじゃないんだけど」と、
少しだけムッとした様子を見せつつもー
「ーーとにかく、お店で喧嘩なんかしたら、周囲の迷惑にもなるし、
そういうのは良くないよ」と、優しい笑顔を浮かべながら
なだめるようにして言ったー。
「ーー勉強しかできないブスのくせに」
佳奈絵は、心底馬鹿にするような口調で言い放つー
”ほらほら、キレろよ”
佳奈絵に憑依している悟志が笑みを浮かべるー。
「ーーー……」
文香が黙り込んで、その表情から笑顔が消えていくー。
「ブース!
わたしのほうが、あんたなんかより、100倍可愛いから!」
佳奈絵はツインテールを揺らしながら、
さらに攻撃的にそう言い放つー
「ちょ、ちょっと!さっきから佳奈絵、変だよ!」
ショートヘアーの凛々子がたまらず止めに入ろうとするー。
だがー
佳奈絵はニヤッと笑みを浮かべると、
突然ピクッと震えてー
すぐにいつものような穏やかな表情に戻りー、
「あれ…わたし…?」と首を傾げるー。
”平常時”だったら、突然佳奈絵が”あれ…わたし…?”なんて
呟けば、すぐに周囲が心配したかもしれないー。
しかし、今の彼女たちはそんな状況ではなかったー
「ーーっ…」
ピクッとショートヘアーの凛々子が震えるー。
”へへ…髪型が違うだけで、こう…首筋とか、全然感触が違うよな”
ツインテールの佳奈絵からショートヘアーの凛々子に
乗り換えた悟志は、そんなことを思いながらも、すぐに笑みを浮かべたー
「アタシもそう思う!文香ってばブスだよね~!はははははっ!」
”憑依されていた佳奈絵”の言葉に賛同してみせる凛々子ー
「り、凛々子!?」
ポニーテールの千里が困惑した表情で叫ぶー。
眼鏡をかけた文香は、引きつった笑顔を浮かべながらも、
流石に怒りだしそうな雰囲気に見えるー。
「ーあれ?怒っちゃう?怒っちゃう???ん???」
凛々子が挑発的に笑みを浮かべながら、文香に
顔を近づけると、
正気を取り戻した佳奈絵は「え…?え…?」と、
只々困惑している様子だー。
”まだ”一度も憑依されていない千里は、
佳奈絵に続き、凛々子までおかしくなったことに
混乱している様子を見せているー。
「ーーーー」
文香は、怒りを抑えるかのような深呼吸をすると、
「ー別にブスでもいいけどー」と、だけ言い放つと、
それ以上は何も言わず、黙々とアップルパイを食べ始めたー
大人しい性格のツインテール少女・佳奈絵は、
憑依されていた間のいきさつも分からず、
困惑して黙り込むー
気まずい雰囲気に、ポニーテールの千里は周囲をチラチラ見ながら
既に中身の入っていないドリンクのストローに
何度も何度も繰り返し口を付けているー。
ブスと言われて怒りを堪えている文香も、
何も言葉を口にしないー
「ー(ククク…いいぞいいぞ…こんなJKの群れなんてすぐにこの通りだ)」
凛々子はニヤニヤしながら、
”気まずい4人”になった女子高生の座席の空気を、
美味しそうに「すぅっ」と吸い込むー
さっきまでの”楽しそうな空気”が一変しー、
張り詰めた気まずい空気の漂う空間へと
早変わりしてしまっているー。
「ーーーー」
黙々と残っている食べ物を口に運ぶ3人ー
その様子をニヤニヤしながら”鑑賞”する凛々子ー
まるで”一つの作品”を見るかのように、
男は、気まずい雰囲気になった3人を見つめるー
”さてさて…このまま気まずいままじゃ終わらせないぞ”
悟志はそう呟くと、凛々子から抜け出すー
凛々子が「ぅ」とだけ、声を上げると
「あれ…今、あたし寝落ちしてた?」と、
横にいる佳奈絵に対して、言い放つー
「え…」
”今まで普通に起きてたじゃん”と思いながら
意味が理解できない佳奈絵は首を傾げるー
佳奈絵自身も、最初に憑依されて記憶が
飛んでいるはずなのだが、
佳奈絵の天然すぎる性格のせいで、
佳奈絵はそれに気づいていなかったー
ドン!
突然、眼鏡をかけた文香が机を叩くー
「ーー文香ー?」
気まずい雰囲気に誰よりもドキドキしていた
ポニーテールの千里が文香のほうを見ると
「何がブスよ…」と、文香が呟くー
「ーーえ?」
佳奈絵と凛々子が困惑するー。
自分たちが文香に対して”ブス”と
言い放ったのだが、
お互いに”自分が憑依されているとき”に
自分自身が言った、ということは理解しておらず、
「ーーほ、ほら!佳奈絵、謝りなよ!」
「ーーえ…!?え…!?なんでわたし!?」と、
凛々子は”佳奈絵が文香にブスと言った”と思っていて、
佳奈絵は”凛々子が文香にブスと言った”と思っているー
まさか、”自分も言わされている”なんて
夢にも思っていないー。
「ーいつもいつもいつも、わたしよりバカなクセして偉そうに!
わたしが”仲良くしてやってるの”分からないの?」
佳奈絵、凛々子に続き憑依されてしまった文香は、
さっきまでとは別人のような態度で、
佳奈絵、凛々子の二人に対し、厳しい言葉を投げかけるー。
「ーーーえ…え…な、何言ってんの?」
ショートヘアーの凛々子も困惑した様子で文香のほうを見つめるー。
「ーーーふふっ…わたしのことブスって言う前にー
自分のバカさ加減をちゃんと自覚しなさいよ!」
文香の突然の言葉に、凛々子は「はぁ!?あたしはブスって言ってないし!」と
怒りの反論を口にするー。
”憑依されていた間の記憶”が飛んでいる凛々子からすれば
”文香にブスと言い放ったのは佳奈絵”であり、自分も”言わされた”自覚はないー。
「ーーバカ!」
文香が叫ぶー
「ーはぁ!?あんたそんな風にあたしたちのこと見下してたの!?
滅茶苦茶感じ悪い!」
凛々子が文香を睨みつけるー
「ちょ、ちょっとやめなよ!」
ツインテールの佳奈絵が慌てて二人を止めようとするも、
”憑依されている文香”は佳奈絵に対しても
「あんたもバカのくせに!」と、叫んだー
「ーホントはあんなのこと、いつもいつもうざいって思ってるけど、
”仲良くしてあげてる”んだから、感謝ぐらいしなさいよ!バカ!」
文香に憑依した悟志は、文香の身体で言いたい放題ー
佳奈絵は震えながら「ふ…文香…わたしのこと…そんな風に思ってるの…?」と、
目に涙を浮かべるー
「ー当たり前でしょ。あんたみたいなやつと、誰が
本気で仲良くするの?
バッカみたい!」
文香がそう言うと、
佳奈絵は座席で声を上げて泣き出してしまうー
「ーちょ…ちょっと…み、みんな何だかさっきからおかしいよ?」
唯一まだ”一度も憑依されていない”ポニーテールの千里が
困惑の表情を浮かべながら言うと、
「ーみんな?」と、不愉快そうにショートヘアーの凛々子が叫ぶー
「ーだ、だって凛々子もさっき、文香に急にブスって言ったりして…」
千里がそう呟くー。
しかし、凛々子に”憑依されていた間の記憶”はないー。
凛々子からすれば、文香にブスと言ったのは、佳奈絵であり、
自分ではないー
「ーーそれあたしじゃないでしょ!?」
凛々子が不機嫌そうに叫ぶー
「ーり…凛々子も言ってたよ!」
千里が反論するー。
眼鏡をかけた文香はニヤニヤしながらその様子を見つめるー
”クククー
そうだー
群れの絆なんて、簡単に壊れるんだー
俺が”ちょっと後押し”をしてやるだけで、このざまだー”
千里と凛々子が口論していて、
佳奈絵は泣いているー。
”憑依されている文香”が加わらなくても、
地獄のような状態ー。
”あ~やべ…興奮してきた…
友達を喧嘩させて興奮するなんて、この女、やべぇな…
あ、いや、興奮してるのは俺か。はははっ”
文香は顔を赤らめながら、続く千里と凛々子の口論を見つめるー
そしてー
男は文香から抜け出し、霊体に戻るとー
自分の身体へと一旦戻るー
腕組みをしたまま、何食わぬ顔で
”バーガー店の中でうとうとしていた男”みたいな風を
装い、目を開くと、そのまま”放課後の少女たち”のほうを見つめるー
「ーーあれ…わ…わたし…
って、ちょっと何してるの!?」
憑依されていた文香が正気を取り戻し、
口論している千里と凛々子を止めようとするも、
二人の言い合いはヒートアップして、
ツインテールの佳奈絵は泣いたままー。
「ーーすみません。すみませんー」
周囲の客に謝りながらも文香は
「ちょっと!いい加減にしなさいよ!」と叫ぶー
「ーあんたがあたしたちを馬鹿とか言うからだろ!」
ショートヘアーの凛々子が怒りの形相で文香に向かって言うー。
「ーちょっと!その言い方はないでしょ!
だいたい、ブスって言ったのはそっちだし!」
「ーは?言ってないし!」
文香と凛々子まで口論を始めてしまうー
「はははっ いいぞやれっ!もっとやれ!」
憑依していた男ー、悟志は笑みを浮かべながら
その様子を見つめるー。
周囲の客も驚いた様子で何組か、少女たちのほうを見つめているし、
悟志があの少女たちを見つめていても、
何もおかしなことはないー。
だが、先ほどまで凛々子と口論していた千里は
「ー何かおかしいよ」と、呟き始めて
この状況に違和感を感じている様子だー。
「ーねぇ!みんなちょっと落ち着いて!」
千里の言葉に、凛々子と文香、
泣いている佳奈絵は千里の方に注目したー。
「ーーあ、あのさ!凛々子さー
文香のこと、ブスって言ってないって言ったよね?」
千里が言うと、
凛々子は「いうわけないでしょ!」と頭に血がのぼったような
状態で叫ぶー。
「ーー…ふ、文香は…?」
千里が言うー。
「文香、さっきわたしたちのことバカって言ったけどー」
そう指摘されると文香は「そ、そんなこと言ってない!」と、
反論するー。
佳奈絵にも「文香にブスって言ったのはー?」と
確認すると、佳奈絵は首を横に振るー
「ーーー…どういうことー?」
ようやく、普段クールな文香が怒りの感情を抑えて
不思議そうな表情を浮かべると
「ーー…ほら、さっき言ったじゃんー
このお店に”仲違いの神様”がいるって都市伝説ー」と、
千里が言うー。
「ーー…わたしたち、何かー…このままここにいたらダメな気がするー」
”得体の知れない何か”を感じ取った千里の言葉に、
文香と凛々子は顔を見合わせて
「た…確かになんか変かも」と呟くと、
泣いていた佳奈絵も「は…早くお店から出ようー」と、呟いたー
”はははー そうくるか。まぁ、それが賢いよな”
自分の座席から、そんな少女たちの会話を聞いていた悟志は
うんうん、と頷くー
だがー
”群れで逃げようとしたって無駄だぜ”
悟志は一人、静かに不気味な笑みを浮かべたー
③へ続く
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コメント
次回が最終回デス~!☆
今日もお読み下さりありがとうございました~!
(何かを書こうとしたのに、忘れたので普通のコメントで…★笑)
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