とある日の放課後ー。
ハンバーガーショップで談笑する4人の女子高生たちー。
その”近くの座席”で座っていた男は、
彼女たちを見て決意したー。
”憑依でお前らの友情を引き裂いてやるー”とー。
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放課後ー。
スイート・バーガー 南口駅前店の2階で、
女子高生4人が、楽しそうに談笑しているー。
ハンバーガーを食べている者もいれば、
ポテトを食べている者もー、
ダイエット中なのかドリンクだけの子も、
アップルパイを口にしている子もいるー。
放課後に、仲良しの友達同士で、
このスイートバーガーにやって来ていた4人は、
楽しそうに談笑を続けていたー。
学校での授業の話題ー
好きな男子の話題ー
最近買った服の名前ー
アイドルの話題ー
メイクの話題ー
この前家で見かけた虫の話題ー
受験のことー
新曲の話題ー
色々な、日常的な話が繰り広げられているー
「ーーえ~、それヤバくない?」
4人のうちの一人、ポニーテールの少女がそう呟くと、
「ーう~ん…ヤバいのかなぁ~?」と、
天然そうなツインテールの少女が呟くー。
「ーまぁ…真夜中にそういう音がするっていうのはー
気味わるいよねー」
眼鏡をかけたいかにも真面目そうな子がそう呟くー。
「ーおばけじゃね?」
ショートヘアーの口調もがさつな少女が笑うー。
今、4人は、
”ツインテールの少女の子の家で、夜中に物音がする件”について
話をしている様子だったー。
「ーーおばけはいないと思うけど…
えっ…おばけなのかな…?」
ツインテールの少女が、他の3人の言葉に、
不安そうな表情を浮かべるー
「大丈夫大丈夫!おばけならアタシがぶん殴ってあげるからね!」
ショートヘアーの少女がそう宣言すると、
「ー凛々子(りりこ)ちゃんは、佳奈絵(かなえ)ちゃんの家に
夜中にいないでしょ?
それにオバケは殴れないからー」と、
眼鏡をかけた真面目そうな少女が冷たくツッコミを入れたー
「気合で殴るぅ~!」
ショートヘアーの子ー…凛々子が勇ましくそう叫ぶー。
「ーーーーーー」
彼女たちは知らなかったー。
そこに”危険人物”がいることをー。
そうー
彼女たちから少し離れた壁際の座席に座っているその男ー
城戸 悟志(きど さとし)ー。
彼は”憑依能力”の持ち主だったー。
テーブルに一人で着席し、ドリンクと食べかけのチキンナゲットを前に、
腕を組み、何か考え事をしているような表情を浮かべているー。
「ーーー…あいつらにするか」
悟志の”考え事”は、よからぬことだったー。
それはー”誰に憑依するか”ー。
それを、考えていたのだー。
彼に視線の先には、
放課後のひと時をスイートバーガーの店内で楽しんでいる
4人の女子高生たちの姿ー。
彼はー、これまでにもたくさんの人間に憑依してきたー。
悟志がその気になれば、
”ずっと憑依を続けて”相手の人生を奪うこともできる。
だが、悟志はそういう憑依をするつもりはなく、
あくまでも”一時的に楽しむ”ことに徹していたー。
また、乗っ取った身体で犯罪行為をしたことはないし、
乗っ取った身体でその本人の肉体を傷つけたり、
そういったこともしたことはないー。
あくまでも彼は
”彼の中でのルール”を守って、楽しく憑依を続けていたー。
もちろんー
憑依される側にとっては
どのような憑依であろうと
たまったものではないことには、変わりないけれどー…。
「ーーーそういえばさ、このスイートバーガーって、
”カップルが別れちゃう”とか、そういう噂あるの知ってる?」
ポニーテールの少女が笑いながら言うー。
「え~?なにそれ~」
ショートヘアーの凛々子が笑いながら言うと、
ポニーテールの少女は続けるー。
「ーB組のいつもイチャイチャしてるカップル知ってる?
ほらー」
「ーーあ~知ってる知ってる!」
「ーーあの子たち、一度も喧嘩したことなかったのに、
先週、スイートバーガーに来た後から
すっごく仲が悪くなっちゃって、一昨日ぐらいに
別れたんだって!」
ポニーテールの少女が言うと、
「うそ~!こわい~!」と、ショートヘアーの凛々子が笑うー。
「他にも、1年生の子がここで大喧嘩したって噂もあるし、
あと、ネットでも時々噂になってるよ!
”スイートバーガー南口駅前店には仲違いの神様がいる”って」
その言葉に、
眼鏡をかけた真面目そうな雰囲気の少女が
「千里(ちさと)ってば、そういう都市伝説とか噂の類の話、
好きだよね」と、クールに呟くー。
それを聞いたポニーテールの少女・千里は
「あ!ほら!そういうこと言うと、喧嘩が始まっちゃうかもだよ!」と、
揶揄う様にして、真面目そうな生徒のほうを指差すー。
ツインテールの少女・佳奈絵は、ストローでオレンジジュースを
口に運びながらそんな会話を聞いているー。
”それは、俺だ”
悟志は思ったー。
悟志は週に1回程度、このスイートバーガーにやってきて
”ターゲット”を見つけては憑依ー
”仲違い”をさせているー。
”憑依”など、現実離れしているし、”悟志がいる時間帯にいつも
仲違いが起きる”と、仮に誰かが気づいたとしても、
誰も悟志のせいだとは思わないだろうし、
悟志のせいだと疑ったとしても、それを”証明する手段”はないー。
それ故に悟志は、スイートバーガーや、他の数か所で
”いつも”憑依を楽しんでいた。
場所を変えるなどと、面倒なことをする必要は、ないー
悟志は、人を物理的に傷つけたり、犯罪行為をさせたりはしないー。
こうして”憑依で人々を仲違いさせて”楽しんでいるのだー。
その理由はいくつかあるー。
一つは、男が生まれて初めて見た”憑依”のアニメが
仲良し二人組のうちの一人に憑依して、
その二人を喧嘩させる、というシーンだったからだー。
それ以降、そういったシチュエーションに、悟志は
取りつかれたかのように、魅力を感じている。
そして、もう一つの理由はー
悟志は”群れ”が嫌いだったー
”弱い奴ほど、よく群れる”
彼は、そう思っていたー。
自分は、唯一無二の孤高の存在であるとー。
学生時代、群がって勉強していたやつらを横目に、
悟志は一人で勉強し、そいつらよりも高い点数を取り、
学年トップの成績だったし、
群れてサッカーの練習をしていたやつらよりも、
体育のサッカーでは活躍してみせたー。
”嫌いな群れ”を破壊するー
”小さい頃に見た欲望”を自らの手で満たすー
そんな目的のために、
彼は憑依能力を必死の努力で手に入れー、
そして、それ以降”群れ”を引き裂いているー。
”群れることで、”あたしたち最強”みたいなオーラを
出しやがってー
滑稽な光景よな”
悟志はそう心の中で呟くと、
”俺も仲間に入れておくれー”と、
心の中で笑みを浮かべたー。
ニヤリと笑みを浮かべた悟志は、腕を組んだままの姿勢で
目を閉じたー
周囲からは寝ているようにしか見えないー
幽体離脱する悟志ー。
”同じ店内”で憑依を楽しむのは、悟志にとっては好都合だー。
”自分の身体の安全”も、確認しつつ、憑依を楽しむことが
できるからだー。
「ーーでもね~、健吾(けんご)ってば~」
ポニーテールの少女・千里が、彼氏らしき名前を
口にしながら、惚気話を繰り返しているー。
その話をツインテールの佳奈絵、ショートヘアーの凛々子、
真面目そうな雰囲気の文香(ふみか)が、聞いているー。
「ーーー”まずは”この子にするかー」
笑みを浮かべる悟志ー。
悟志が”最初のターゲット”に決めたのはー
ツインテールの天然っぽそうな雰囲気の少女・佳奈絵だったー
”お邪魔するぜ”
佳奈絵に自分の霊体を重ねる悟志ー
「ぅ」
小さくうめき声をあげて、佳奈絵が一瞬ピクッと震えるー。
隣に座っていた真面目そうな眼鏡の子・文香が
「大丈夫ー?」と、首を傾げるー
「ーう…うん…大丈夫大丈夫ー」
憑依されて乗っ取られてしまった佳奈絵は
笑みを浮かべながらそう答えると、
”惚気話”を続けているポニーテールの少女・千里のほうを見て
笑みを浮かべたー。
「ーーど、どうしたの?急にニヤニヤして」
ポニーテールの千里が言うと、
憑依されたツインテールの佳奈絵は、笑みを浮かべながら答えたー。
「ーううん。どうせ別れるのに、惚気ちゃって笑えるなぁ~って思って」
そんな佳奈絵の言葉に、
ポニーテールの千里も、ショートヘアーの凛々子も、
眼鏡をかけた文香も、呆然とした様子で、一瞬、
佳奈絵が何を言っているのか分からない様子だったー。
「ーもうエッチなことしたの?
ヤルだけやって、どうせ捨てられるんだし、
今のうちに楽しんでおきなよ」
佳奈絵がさらに挑発的な発言を続けるー。
手に持っていたポテトを机の上にぽろっと落とした千里は、
自分が何を言われているのかようやく理解して、
みるみるその表情から笑顔を消していくー。
「ーーー彼氏自慢とかさ~
正直、周りは誰も興味ないし、寒いよ?
自分だけ楽しんじゃってバカみたい!」
ツインテールの佳奈絵の暴言は続くー
「ーちょ…ちょっと?佳奈絵?どうしたの?」
眼鏡をかけた文香は、困惑しながら
佳奈絵の暴言を止めようとするー。
佳奈絵に散々言われた千里は、
「ーー何でそんなこと言うの?」と、
少し怒りを込めながら佳奈絵に対して言い放ったー
「ー何でって?うざいからに決まってるじゃん」
普段大人しい佳奈絵の突然の反撃に千里は、
「ーう、うざい? わ、わたしは普通に彼氏の
話してただけでしょ!何なの急に!?」と、
ついに怒りを露わにしたー。
”へへへ…いいぞいいぞ…!群れを破壊するのは
本当にたまんねぇぜ”
佳奈絵に憑依した悟志は笑みを浮かべながら
さらに続けるー
「どーせ半年もせずに別れて
今度は彼氏の愚痴を言い出すんだし!ほんと、バカみたい!」
佳奈絵はバカにしたように笑いながら、腕組みをして、
千里のほうを見つめるー
千里は「ーいくら佳奈絵でも、怒るよ!」と、机を
少し乱暴に叩いたー。
「ーふ、二人とも、落ち着きなって!」
ショートヘアーの凛々子がたまらず口を挟むー。
「ーーうるさい!部外者は黙ってて!」
佳奈絵が、凛々子に対しても攻撃的な発言を口にするー。
凛々子は「ぶ、部外者!?ちょっと何それ!」と、
声を荒げるー。
千里、佳奈絵、凛々子が口論を始めてしまうー。
だがー
その時ー
眼鏡をかけた文香が「ストップ!」と、言いながら机を叩いたー
千里、凛々子、
そして憑依されている佳奈絵が、文香のほうを見つめると、
文香は「みんな、やめて」と、呟いてから言葉を続けたー
「さっき、”このお店には仲違いの神様がいる”って、
千里、自分で言ってたでしょ?
そういう都市伝説があるって。
このままじゃホントにそうなっちゃうよ。
だから、みんな落ち着いて」
文香の言葉に、
千里は「た…確かにー」と、都市伝説の類が好きな
自分が先ほど、みんなに言ったばかりの話を思い出して
冷静さを取り戻すー
ショートヘアーの凛々子も、文香の言葉を聞いて
一気に冷静になるー
「ーーごめんね。健吾の話ばっかでつまらなかったなら、
謝るから、そんなに怒らないでー」
冷静さを取り戻した千里の謝罪に、
憑依されている佳奈絵は「ーーチッ」と少しだけ舌打ちすると、
そのまま佳奈絵が憑依される前に飲んでいたドリンクを
ストローで口にしたー
”憑依で間接キスだな…へへ”
そんなことを一瞬思いながらも、
”意外と簡単には引き裂けねぇか”と、
佳奈絵は、他の3人を見つめたー。
”でもまァー、
俺はいくらでも”乗り換え”できるから
時間の問題だけどなー”
ジュースを飲みながら、佳奈絵はそんなことを
心の中で思うと、不気味な笑みを浮かべたー
②へ続く
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コメント
仲違いさせることを楽しむ憑依人による
憑依ですネ~!!
今のところはまだセーフ…★!
続きはまた明日デス~!
コメント
現実にもカップルが行くと必ず別れるとかいう噂がある公園と神社みたいな場所ってありますよね。
もしかしたらこの話みたいな憑依人がいたりとかするんですかね(笑)?
ところで女の子達の話に出たイチャイチャカップルが憑依される話もとても興味深いですね。
コメントありがとうございます~!☆
作中のお店が噂になってるのは、
現実のそういう場所をイメージして書きました~笑
過去のカップルの話…!確かに面白そうですネ~!