<憑依>レーシング・ポゼッション

”ゲームの中のキャラに憑依できる”

そんな話を聞いた彼は
”憑依体験会”に参加するー。

しかし、あろうことか
彼が憑依した”キャラ”は、
”レースゲームのドライバー”だったー…!

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「憑依体験会?」
男子大学生の下川 隆太(しもかわ りゅうた)が
首を傾げるー。

「ーあぁ、お前、こういうの好きそうだと思ってー」

同じ大学に通う隆太の友人、脇 忠(わき ただし)が、
そう言いながらスマホを見せてくる。

そこにはー
”憑依体験会”と書かれていたー。

「ーーーー」
隆太はそれを見つめながら”いや、興味はないけどー”と、
苦笑いするー。

だが、忠は笑みを浮かべると
「下のほうをよく見て見ろよ」と、呟くー

忠が指を指した部分を見ると、
そこには
”あなたもゲームキャラになれる!”
と、書かれていたー

”ゲームのキャラクターに憑依して、ゲームの世界を実際に
 その登場人物として体験!”

とー。

「ーーうわっ!マジかーそんなことできるのか?」
途端に興味を示す隆太ー。

隆太はゲーム好きで、
とあるオンラインゲームではかなり上位にランクインしている
実力者だー。

そんな隆太は以前から、VR系のゲームにはまっていて、
”VRっていうか、実際にゲームのキャラになって、
 その世界に入ったりできたら、もっと楽しそうだよな”
などと呟いていたー。

だからこそー
そんな隆太に、この友人が”憑依体験会”の話を持ってきたのだー。

「ーでも、これ怪しくね?」
隆太が言うと、
忠はすぐに「大丈夫だよ」と、主催会社の名前を指さした。

”エンドオブゲームズ”
20年ほど前に設立されて、ヒット作品なども
そこそこ開発しているゲーム会社だ。
現在は、巨大オンラインRPGゲーム
”ラグナロクファンタジー(仮称)”を、制作中との噂もあり、
その発表が注目されているー。

「ーーあ~エンドが主催なのかぁ~」
隆太はそう呟くと、「じゃあマジの奴だな」と、
主催者の名前を見て、安心したような笑みを浮かべるー

「ーすげぇよなぁ…実際にゲームキャラに憑依して
 その中の世界に入れてしまうなんてー」

”エンドオブゲームズ”によれば、
”憑依体験会”は
”次世代オンラインRPGのテスト”を目的にしているのだと言うー。

「ーー…参加方法は?」
隆太は、さっそく興味津々という様子で、
忠の持つスマホを見つめると、
忠は「ここに書いてあったから、行きたきゃ読んでみろよ」と、
スマホを手渡すー。

「サンキュー」
隆太はそう言いながら、忠のスマホを手にすると、
”憑依体験会”が行われる場所や、日時、概要を確認するー。

「…ちょうど次の休みの日だし、行くしかないな」
隆太は忠に向かってそう言い放つと、
「あ、お前も一緒に来る?」と、笑いながら言うー。

忠は苦笑いしながら
「いや、俺はいいよ」と首を横に振るー。

「ーま~お前はVRとかも興味ないしな」
隆太の言葉に、忠は「そうそう、どうしてもああいうの酔っちゃうんだよ」と
苦笑いしながら「まぁ、どうせ行くなら楽しんで来いよ!」と、
隆太の肩を叩いたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

”エンドオブゲームズ”による憑依体験会の当日ー。

「ーーーここか」
隆太は息を飲みながら、”憑依体験会”の会場へとやってきたー。

会場内には”大型のマシン”が設置されているー。
どうやら、あのマシンが”ゲーム内のキャラクターに憑依するため”に
用いられるもののようだー。

エンドオブゲームズが現在開発中の
”次世代オンラインRPG”のちょっとしたPVが流れて
隆太は興奮した様子でそれを見つめると、
「ゲーム内の登場人物に憑依して、現実さながらの体験ができる…
 本当に発売されたマジで凄そうだな」と、呟くー。

「ーー次の方~!」

「ーーっと、いけね」

”憑依体験”は、順番に行われているー。
ついついPVを見て興奮していた隆太は、慌てて「はい!」と答えると
”憑依体験室”を書かれたその部屋へと入ったー。

中に入ると、次世代RPGゲーム開発プロデューサーの男が姿を現したー。

「ーー憑依体験会に、参加してくれてありがとう」
気さくな感じのプロデューサーに隆太は「いえ」と答えるー。

「君は、ゲームは好きかね?」
その言葉に隆太は「はい」と答えると
「さっきの開発中のRPGゲームの映像ーメチャクチャ興奮しました!」と
目を輝かせながら叫ぶー。

「ーそうかそうか。嬉しいね。
 あれは”ラグナロクファンタジー”というゲームでね…
 まぁ、まだ何年か先だが、必ず完成させるから、
 楽しみにしていなさい」

プロデューサーの言葉に、隆太は「はい!」と言うと、
「今日の体験会は、その新作のための”憑依技術”のテストなのだがー
 君はどんなキャラクターに憑依してみたい?」
と、プロデューサーが質問してきた。

隆太は「あ、いえー誰でもー…」と、呟くー

だが、隆太は”どうせ憑依するなら、ヒロインとか、お姫様とか、可愛い子がー”
と、内心で思っていたー。

しかし、何となく下心丸出しと思われるような気がして、
それは言えなかったー。

がー…
プロデューサーがそれを見越したのか、
「ーー憑依する相手は、ゲームのキャラだー。
 こんなこと、滅多に体験できることじゃないし、
 自分に素直になって貰って構わない」
とー。

「ーーあ、はい…そ、そうですねー」
隆太はそれだけ言うと、少しだけ照れくさそうにしながら
「じ、じゃあ…せっかくなので、可愛い女の子のキャラクターに…」
と、素直な欲望を明かしたー

プロデューサーは「ははは…素直でいいねぇ」と、言うと
そのまま「では、こっちの部屋に来なさい」と、
謎の装置が並ぶ部屋へと、隆太を案内したー。

そして、隆太を一つの装置に座らせると、
「この装置でゲームのキャラに君を憑依させる」と、
プロデューサーは説明したー。

安全性についても説明するプロデューサー。

”ゲーム内で死亡する”などのショックがあっても基本的には
戻って来れるものの、まだ”100パーセントそこまで安全とは言い切れない”ために
現在は”死ぬことのない安全なゲーム”のみに憑依する世界を絞っているのだというー。

「ー間違っても、ゲーム内で自殺なんかするなよ?
 さすがにその安全は保障できないからね」

プロデューサーが笑うと、隆太は「しませんよ」と、苦笑いするー

「ーそれじゃ、憑依対象は”可愛いキャラクター”に設定しておいたー。
 どんなゲームの世界に飛ばされるかは、行ってみてからのお楽しみだー。いいね?

 体験は1時間で終了予定だが、その前に気分が悪くなったり、
 体験をやめたくなったら各ゲーム内に”出口”を用意してあるから
 そこをくぐれば戻って来れるから、活用してくれー」

プロデューサーはそう言いながら
画面上に”出口”のグラフィックを表示させるー

「ではーーー…楽しい憑依ライフを」
エンドオブゲームズのプロデューサーはそう呟くと、
装置を起動させて、隆太はゲームの世界のキャラクターに
”憑依”したー。

・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・

「ーーうっ」
隆太が意識を取り戻すー

可愛い声が出たー。

「ーーえ…お、俺、本当にー」
その口からは、アニメ声のような
可愛らしい少女の声が漏れだしているー。

だがー
ここで問題が生じたー

「ーーーえっ!?!?!?!?!?」

まるで未来都市のような
派手な”ステージ”を走る、”未来の車”のようなマシンー

「ーえっ!!!?うぉぉっ!?」
可愛い少女の姿で、目の前に見えた障害物を、
慌ててハンドルのようなレバーを切って、回避した隆太ー。

「な、な、なんだこれー
 レースゲーム…!?」

悲鳴に似た声を上げる少女ー。

”お~っと、危機一髪だった~!
 ルミア選手のマシンはあわや大激突を起こすところだった~!”

レースゲーム内の実況のような声が響き渡るー

「うっ…うぁ…何だこの場所…!?」
レースゲーム内の少女に憑依してしまった隆太は、
コックピットのような部分から外を見て驚愕したー

”SFの世界”のようなステージ。

「ーみ、未来を舞台にしたレースゲームか…
 ってか、声可愛いな」

隆太は少女の身体でそう呟くと、
コックピットのモニターに表示されていた、
パイロットのデータを見つめるー。

”ルミア”
大富豪の屋敷にお仕えするメイドー。
ある日、ご主人様の付き添いで、”X-ソニック”を観戦したところ、
その魅力に取りつかれて、メイドとして働きながら
ドライバーデビューを果たした。
現在登録されているXソニック公式ドライバー86名のうち、
唯一の現役メイドドライバー

そう、書かれていたー

「ーーだ、だからメイド服みたいの着てるのかー」
ルミアの身体でそう叫ぶ隆太ー

バックミラーのようなものに反射したルミアの顔は
確かにとても可愛いー。

しかしー

「ーーこ、こんなんじゃ、何もできねぇ~!」
ルミアの身体で叫ぶー。

あまりにも起伏の激しい派手すぎるステージ。
ここで手を離したら、事故を起こしてしまうのは
目に見えているー。

「くっそ~…せっかく可愛い女の子になったのに」
そう呟きながら、ルミアは何とか特殊な地面から
少し浮遊している近未来の乗り物の操作に
慣れていくー。

「ーーー(周囲のドライバーも平気で
 激突してくるなー)」

”アイテム”のようなものもステージ上に確認した
ルミアは、表情を歪めるー。

”ーこんなゲームの操作方法もルールも知らないしな… 
 走りながらルールを把握していくしかないかー”

そう思いながら自分の身体を見つめると、
メイド服越しにも見える胸の膨らみや、
メイド服から覗く生足ー、
綺麗な手にドキッとしてしまうー

「や、や、やべっ!こ、興奮してる場合じゃないぞ俺ー」
ルミアの身体でそう呟く隆太ー。

しかし、その口から出て来るのはルミアの声ー。

「あ~~~…ダメだ、声でも興奮しちまうー」
”口にチャック”をするかのように、
口をしっかりと閉じたルミアは、そのまま運転に集中していくー

”メイドがこんな激しいレースに出てるなんてー…
 こんなゲーム見たことないけど、
 実際発売されてるならやってみるか”

そんなことも思いながらレースの周回数を重ねていくー。

途中では”未来都市が一望できるぐらいに高い場所”を
ジャンプするエリアもあり、非常に怖い思いをしたが
だんだん慣れて来ると楽しくなってくるー。

「ーーーははははっ!すげぇスリルだ!」
ルミアの身体で笑う隆太ー。

ルミアの声でこんな笑い方ー
こんな言葉を、と興奮しながらもー

”このレース、まだ周回数があるなー”と、
少し寂しそうな表情を浮かべるー。

体験は”1時間で終わり”だと
プロデューサーは言っていたー。

せっかく美少女の身体になったのに、
このままではレースしているだけで終わってしまうー。

「っていうかメイド服でレースとか、はぁ~いいなぁ~」

レースが終わったあとも、まだ15分ちょっと残るー
レースゲームの世界の中にトイレがあるのかは知らないが、
トイレがあれば、ルミアの身体のままトイレに駆け込んで
そこでお楽しみをしたいー

万が一トイレがなかった場合は、
仕方がないー
どうせ、もし見られたとしてもゲームの世界なんだし、
ここから外に出てしまえば、特に問dーーーーー

「ーーおっ~~~と!」
実況が叫ぶー

「ルミア選手のマシンがコーナーをカーブせず、そのまま壁に激突ー
 音速を超えるスピードのXソニックレースでは致命的な事故だァ!」

その言葉と同時に会場内のスクリーンに、
”ルミアの乗るマシン”が壁に激突して炎上している場面が
映し出されるー

「これでは、ルミア選手は助からなぁぁぁい!」
実況は、ルミアのことなど意にも介さずに
そう叫んだー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「おやーーー」

現実世界ー。
エンドオブゲームズのプロデューサーの男が
ふと、”一人の参加者”が戻って来てないことに気付くー。

「彼はー?」
プロデューサーがスタッフの一人に確認すると、
スタッフは「それが」と、”レース中に事故を起こして
ゲーム内で憑依したキャラが死亡した”と、告げたー。

「ーーーはは、そうかそうか。なら仕方がないー」
プロデューサーはそれだけ呟くと、
眠ったまま意識を取り戻さない隆太の身体を見て、
「君の大いなるゲーム開発のための犠牲になったのだ」と、
少しだけ微笑み、そのまま
「ー”いつものように処理”しろ」と、スタッフに命じたー。

おわり

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

1話完結のお話は
久しぶりな気がしますネ~!

ちなみに、今回のお話は
過去作品”オンライン憑依ゲーム”と少しだけリンク
させてあります~!☆
気になる方はチェックしてみて下さいネ~!

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小説

コメント

  1. 匿名 より:

    前にもゲーム世界に入ったまま、一緒に消されるような話がありましたっけ?

    ゲームなのに死亡したりするのは、やたらにリアルな作りのゲームですよね。

    普通なら、そこまでリアルにしなくてもいい気がしますが。

    ところで、この話に関するコメントではないですが、スケジュールに「妻は元アイドル」の続編がありますね。続きが気になってたので、しばらく先ですけど、今からとても楽しみです!

    第1章とついてるということは、結構長い続編になりそうですよね。

    • 無名 より:

      コメントありがとうございます~!☆

      ゲームの中に入ったまま消されてしまうお話は
      何回か書いてますネ~!

      妻は元アイドルの続きは、
      全4話ぐらいになると思います~!☆!
      楽しみにしていて下さい~!