<憑依>たった一人の立てこもり①~発生~

ある日ー
立てこもり事件が発生したー。

しかしーー
その人物は、”たった一人”で、
自分自身を人質に立てこもりを続けていたー…

・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーー島川(しまかわ)さんー」

若い警察官が
立てこもり事件が発生している現場に駆け付けた
年配の刑事の名前を呼ぶと、
島川と呼ばれた刑事は、他の警察官に囲まれている
民家を指さしたー。

「ーーあの家か?」
刑事・島川 竜太郎(しまかわ りゅうたろう)が、
そう確認すると、若い刑事は「えぇ」と、頷いたー。

その家はー
警察の間では”ちょっとした理由で有名”になっている
家だったー。

小暮 稔(こぐれ みのる)ー。
”ご近所トラブル”を何度も起こしている60代の男性が
一人暮らしをしている家で、
これまでに何度も、近隣住人とのトラブルで
警察が出動するような事態も起きているー。

稔は、10年ほど前に同居していた親を亡くしており、
そのころから、近隣住人とトラブルを起こすようになり、
数年前に定年退職を迎えてからは
さらにそれがエスカレートしたー。

ついこの間も、下校中の高校生に急に怒鳴り声を
あげたりして、問題になっていたー。

その家で、立てこもり事件が起きているのだー。

「ーー近寄って来るんじゃねぇ!」
小暮の家から聞こえてくる叫び声ー

だがー
その家から響いてくるのはー
小暮 稔の声ではなかったー。

乱暴な口調の、
興奮した様子で叫ぶその声はー
”女”の声だったー。

しかも、立てこもっているのは
制服姿の女子高生なのだと言うー。

「いったい、どうなってるんだ?」
竜太郎が若い刑事に確認すると
若い刑事は困惑した表情で首を横に振ったー

「ー分かりませんー。
 ただ、立てこもってるのは、近くの高校に通う
 2年生の深山 優花(みやま ゆうか)という子ですー」

若い刑事の言葉に、
深山優花の写真を見せられた竜太郎は困惑の表情を浮かべるー。

「この子にー何か問題とか、トラブルとかは?」
竜太郎が写真を見ながら言うー。

深山優花はとても優しそうな雰囲気の少女で、
写真でも穏やかな笑顔を浮かべているー

とても、立てこもり事件など起こすようには見えないー。

「ーーいえ、確認したころ、これまでに
 補導されたり、トラブルを起こしたようなことは
 一切ありませんでしたし、
 学校でも一切問題を起こしたこともなかったですー

 同級生にも確認しましたが
 ”優香ちゃんがそんなことするなんてありえない”って
 子ばかりでしたねー…」

若い刑事の言葉に、竜太郎はますます表情を歪めるー

「ーこの子以外に、誰かいるのかー?
 小暮はー?」

その言葉に、「小暮の居場所は不明ですがー
少なくとも、あの家には、深山優花以外は誰もいないようです」と、
静かに呟いたー。

「ーーならどうして確保できない?」
竜太郎が確認すると
「それがー」と、家のほうを見つめながら
若い刑事は険しい表情を浮かべたー

「ーー絶対に誰も近寄るなよ!
 近寄ったら、”この女”ぶっ殺すぞ!」

そう言いながらー
優花は自分の首筋に刃物のようなものを
突き付けているー

「ーーー」
警察官たちは、それ故に、優花のいる小暮の家に
近付くことができないー。

「ーーーじ…自殺しようとしてるってことかー?」
竜太郎が言うと、
「ーーええ…そういうことになりますね」と
若い刑事は頷いたうえで
「ただー」と、言葉を続けるー。

「ーー今も聞いた通り、
 彼女がおかしなことを言ってるんですー」

「おかしなこと?」

竜太郎が聞き返すと、

「今、深山優花は”この女をぶっ殺す”って言いましたよねー?」
と、若い刑事が言うー。

「ーーーあぁ、俺もそれは気になったー」
竜太郎が頷くー。

「ーーふつう、自分のことを”この女”なんて言いますかね?」
若い刑事が表情を曇らせながら言うと、
「いやー…言わないと思うけどなー」と、竜太郎は首を傾げて、
小暮の家のほうを見つめたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーーどいつもこいつも、俺を舐めやがって」

家の中に入り込んだ優花は不満そうにそう呟くと、
制服姿のまま、ドカッと椅子に座り、
焼酎をコップに入れると、それをそのまま飲み干すー

「ーあいつら、ただじゃおかねぇー
 舐めたマネしやがったら、この女をぶっ殺してやるー」

優花は、ナイフを片手に、イライラした様子で呟くー

その表情は鬼のように歪み、
仕草も、言動も、何もかも女子高生とは思えないー。

”ーー深山優花!ご両親が到着したぞ!”

外を取り囲んでいる警察官の声が響き渡るー

「ーーっ」
イライラした様子で優花が、外の声に耳を傾けるー

”優花!どうしてこんなことするの!”

”優花!何か理由があるなら聞かせてくれ!”

警察から事情を説明されて現場に駆け付けた
優花の母親と父親が必死に外から叫ぶー。

けれどー
”今の優花”にそんな言葉は通じないー

玄関から顔を出すと、
「ー自治会長と、町長と、あと市長もつれて来いって言ってるんだよ!」
と、鬼のような形相で優花が叫ぶー

「優花!」
母親が泣きながら叫ぶー

「ーうるせぇ!この女が死んでもいいのか!」
優花はナイフを再び首筋につきつけると、
母親はその場に泣き崩れてしまうー。

「ーーー落ち着くんだ!」
現場に到着したばかりの竜太郎も叫ぶー

「ーーあ?何だお前は」
優花が竜太郎のほうを見つめるー

竜太郎は、自分の名前と所属を名乗ると
「どうして、こんなことをするのか、聞かせてくれないかー?」と、
なだめるような口調で呟くー

「ーーどいつもこいつも、俺を馬鹿にしやがったからだ!」
優花が叫び返すー

”俺ー?”

立てこもっている女子高生の優花は、
さっきから、まるで”男”のような言動を繰り返しているー。

一体、どういうことなのだろうかー。

竜太郎はそう思いながらも話を続けるが、
優花は頭に血が上っていて、とてもまともに話し合いが
出来る様子じゃないー。

「ーーーごちゃごちゃうるさいんだよ!若造が!」
優花はそう叫ぶと
家の中から銃のようなものを取り出して、
上空に向かって発砲したー。

”銃も持っているー”
現場の緊張感がさらに高まるー

「ーーわ…若造?君は高校2年生のはずだー!」
竜太郎が言うと、
「ーあぁ、身体はな」と、優花が答えるー。

「ーーどういう意味だ?」
竜太郎が聞き返すと、
「ーうるせぇな!早く町長と市長と自治会長呼んで来い!
 この女が死んでもいいのかぁぁぁ?」
と、優花は銃を口にねじ込んで、怒り狂った表情で叫んだー

「やめろ!待て!分かった!分かった!」
竜太郎はそう言うと、近くにいた同じぐらいの年齢の刑事に
「ー指定された三人は今、どこに?」と、呟くー。

「現在、町長と自治会長はこちらに向かっているー」
と、その刑事は答えるー。

「ーそれと、小暮 稔は今、どこにいるー?」
竜太郎の言葉に、同年代の刑事は「わからない」と、
首を横に振るー。

何故、女子高生が小暮稔の家に立てこもりをしているのかー。

もしかしたら、小暮稔と何か関係があるのかもしれないー。
小暮に脅されているとか、そういうこともあるかもしれないー

「ー君は、小暮稔に脅されているのか?」
竜太郎が、優花に向かって叫ぶー

「ーーなんだと?」
優花が表情を歪めるー。

「ーーそこの家の持ち主だー。
 何で君がそこにいるー?
 小暮稔から、何か言われたのかー?」

竜太郎が再度確認すると、優花は
「ーうるせぇ!うだうだ言ってんじゃねぇぞ!」と
怒りの声を上げるー。

女子高生らしい可愛らしい声なのにー
その口からは、恐ろしい言葉の数々が投げかけられているー。

その時だったー

「ーー島川さん!」
背後から声がして、竜太郎が振り返るー。

そこには、先ほどの若い刑事がいたー

「なんだ?」
竜太郎が振り返って、若い刑事のほうを見ると、
「ーーー今、連絡があってー」
と、竜太郎に小声で情報を伝えるー。

小暮稔の家に立てこもっている優花に、
万が一聞こえてしまうことを考え、
小声で話す若い刑事ー。

「ーーーなんだと?それは本当なのかー?」
竜太郎が言うと、
「ーええ…今、現場の捜査官から連絡がー」と呟くー。

「ーーー小暮稔が死んだー?」
竜太郎はそう呟きながら
女子高生・優花が”自分を人質に”立てこもっている
小暮稔のほうを見つめるー。

”小暮稔の家に立てこもる女子高生ー”

しかし、家の主である小暮稔は人質になっているわけでも、
優花と一緒にいるわけでもなく、不在ー。

そうなれば当然、”何らかの形で小暮が関与している可能性”は高いー。

だがー
その小暮稔が、こことは別の場所で
遺体となって発見された、というのだー。

「死因はー?」
竜太郎が確認すると、
若い刑事は「それが…外傷は全くなくー」と、困惑した表情で呟いたー

現場からの連絡によれば、小暮稔は、
外傷も全くない状態で、遺体となって発見されたらしいー
交通事故でも、事件性のあるような死に方でも、自殺でもない、
とのことだー。

「ー…どういうことだー?」

外傷もなく、事故でも自殺でも事件でもないとなれば、
急病だろうかー。

だがー
”女子高生が、小暮稔本人の家に立てこもり”をしー、
かつ、”別の場所で小暮稔が偶然病死する”なんてこと、
起きるものだろうかー。

「ーーーー…おい!早くやつらを連れてこい!」
優花が怒りの形相で家から怒鳴り声をあげるー。

「ーこの女をぶっ殺すぞ!あぁ!?」
優花が怒り狂った声で叫ぶー。

「ーー優花!もうやめて!」
周りを取り囲む刑事たちに守られながら
優花の母親が叫ぶー。

しかし、優花はまるで聞く耳を持つ様子は見せずに
普段とは”まるで別人”のような振る舞いを続けているー。

「ーーー深山さんの担任の先生と、ご友人が到着しましたー」

優花の通う高校で、話を聞きつけた先生と数名の友人が
現場に到着したー。

普段ー
とても優しい性格の優花は
先生たちからの信頼も厚く、
友達も多かったー。

そんな優花を説得しようと、先生と数名の友達が
現場に駆け付けてくれたのだったー。

「優花ちゃん!」

「深山さん!こんなこと、やめましょう?」

「ー何があったの!?ねぇ!」

警察官たちが、駆け付けた友人や先生たちの安全を
十分に確保しながら、拡声器で優花の説得を続けるー。

竜太郎はそんな光景を見つめながら、
様子を見守るー

だが、優花は教師の言葉にも、
友達の言葉にも全く耳を傾ける様子を見せず、
同じような主張を繰り返しているー。

「ーどいつもこいつも、バカにしやがって!」

優花はそう叫ぶと、銃を再び上空に向けて放つー。

悲鳴を上げる人々ー
警察官が、一度先生や友達、家族を後ろまで
下がらせると、
そのまま優花の説得を再び開始するー

「ーそんな説得はいらねぇよ!
 俺が求めてるのは、町長と自治会長と市長だ!」

全く説得に応じる気配もなく、
普段の優花からは想像もできないような行動を繰り返すー。

しかも、優花は”自分が死ぬ”と、言っているため、
人質はいない、とは言え、警察官たちは
なかなか近づくことが出来ずにいたー。

”前代未聞の女子高生による立てこもり”

そんな、状況に報道関係者まで現場に
集まり始めて、事態は悪化していくー

「ーーチッ ふざけやがって」
家の中に戻った優花は、髪を乱しながら、何度も何度も
机を叩いたー。

「ーーーーー」
優花はふと、家の中にある”容器”を見つめたー

その容器にはー
”憑依薬”と呼ばれる薬が入っていたー

だが、その”中身”は、既にその容器の中には入っていないー。

優花はイラついた様子でそれを見つめると、
「ーーあいつら、俺をなめやがってー」と、小声で呟くと、
再び家の外を囲む警察官たちに向かって怒りの形相で叫び始めたー

②へ続く

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コメント

憑依による恐ろしい事件…!?
続きはまた明日デス~!

何が起きているのかも、②以降で描いていきます~!☆

憑依<たった一人の立てこもり>
憑依空間NEO

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