<MC>家電彼女①~狂気~

同居中の彼女と喧嘩してしまった彼は、
彼女のことを”洗脳”して、
”家電”にしてしまうー。

狂気の洗脳物語…

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「お前の扱いが悪いからいけないんだろ?!」

「どうしてわたしのせいにするの!?普通に使ってただけなのに!」

とあるアパート。
同居する二人の怒声が響き渡っているー。

大学卒業を機に同居を始めた
戸川 零児(とがわ れいじ)と、
森村 美咲(もりむら みさき)の二人ー

二人は、大学時代からの付き合いで、
大学時代は”仲良しカップル”と、周囲からも
言われているほど仲良しだったが、
同居を始めてから、お互いの嫌な部分が見えてきてしまったのか、
”喧嘩”が絶えないようになってしまったー。

今日の喧嘩も
ある意味では”日常茶飯事”と言えるような、
そんな、光景だったー。

「だ~か~ら~!勝手に壊れたんだってば!
 どうしてわたしのせいにするの!?」

洗濯機を使っている最中に、突然洗濯機が
壊れてしまったことで、美咲と零児が
喧嘩を続けているー。

ちょうど1週間前、電子レンジが壊れてしまったこともあり、
続けての家電の故障に苛立ちを隠せない零児は、
電子レンジと洗濯機の故障を、美咲のせいにして
怒りをぶちまけていたー。

だがー
美咲は特別乱暴な使い方をしていたわけでもなければ
異常な使い方をしていたわけでもない。

あくまでも”普通”に家電を使っていて
壊れてしまっただけなのだから
”お前のせいだろ!”と、彼氏の零児から言われてしまえば
怒りたくなるのも、当然と言えたー。

「ーーお金もかかるし、うんざりする気持ちはわたしにも
 分かるけど、
 だからって彼女に八つ当たりしないでよ!」
美咲が言うと、
零児は「ーお前のそういうところ、ホント、むかつくな!」と
言い返すー。

「ーー家電壊したんだから、まずは”ごめんなさい”だろ?」

「ーはぁ!?だから何でわたしが悪いみたいになってるの!?」

終わりのない平行線の喧嘩を繰り広げる二人ー。

やがて、零児はわざとらしく大声でため息をつくと、
そのまま部屋の外へと向かうー。

「ーちょっと!どこ行くの!?」
美咲が声を上げると、
零児は「お前の顔みたくねぇから友達の家に行くんだよ」
と、そのまま部屋の外に出かけて行ったー。

「ー何なの!?もう!」
美咲はそう呟くと、部屋の中に飾ってある
”大学時代”の自分たちの写真を見つめるー。

大学時代は、お互いにこんなじゃなかったー。
二人とも社会人になって精神的な余裕をなくしてしまったのか、
あるいは”同居”をきっかけとして
お互いに嫌な部分をイヤというほど知ってしまったのかー。

「ーーーー」
それは、美咲自身にもよく分からなかったー。

気付いた時には、もう、大学生の頃のような関係では
無くなってしまっていたのだー。

「ーーー…一度、ちゃんと話をしないとダメかなー…」

美咲は最近”あること”を考えていたー。
それはー
”同居を解消すること”ー。

このままでは、ダメな気がするー。
同棲を始めてからまだ、半年程度ー。
それなのに、この状況ー。

どんなに相手のことが好きであっても、
どんなに大学時代の良い思い出があったとしてもー
これ以上、この生活を続けることはできないー。

”交際”を続けるかどうかは別問題としても、
”このまま一緒にいる”ことがお互いにとってプラスに
なるとは思えないー。

美咲は、そんなことを思いながら
一人、悲しそうにため息をついたー

・・・・・・・・・・・・・・・・・

「また、美咲ちゃんと喧嘩かよ」
呆れた様子の友人・真柴 聡一(ましば そういち)が呟くー。

真柴は、零児の大学時代からの友人で、
何でも、家が金持ち一家らしく、大学時代から
”色々な変なもの”を大学に持ってきていたー。

「ーーしかしいいよなぁ、お前はこの年でマイホームなんて」
零児が言うと、聡一は「ははは…まぁ、生まれた家が金持ちだったからな」と、
苦笑いするー。

「ーー俺なんか、美咲のやつが電子レンジを壊すわ、洗濯機を壊すわで
 マジでうざいんだよ。
 本人、全然反省もしてないしー」

零児の言葉に、聡一は「ー家電なんて、普通に使ってても壊れるもんだろ?」と、
呆れた様子で言葉を返すー。

だが、零児は「いや、たった2週間で二つの家電が壊れるなんて、
完全におかしいぜ?」と、うんざりした様子で呟くー。

「いやいや、偶然はあるもんだぜ?」
聡一はそれだけ言うと、
零児は「そういや、お前の家って、家電あんまりねぇよな」
と、呟くー。

「ーーん?あぁー」
聡一は奥の部屋のほうを見渡しながらそう呟くと、
少し考えてから呟いたー。

「ーお前さーーー
 美咲ちゃんのこと、もう嫌いになったのか?」

その言葉に、零児は戸惑いながら

「ーー今はムカつくだけだなー」
と、答えるー

聡一は「そっか」と、言うと突然奥に向かって歩き出して
引き出しから何かを取り出したー。

「それは?」
零児が尋ねるー。

聡一は笑みを浮かべながら答えたー。

「ー人間を”洗脳”して、”モノ”にすることができる
 すげぇ道具さー。
 俺の実家の、海外の取引先から仕入れたヤバい代物だー」

その言葉に、零児は「は?」と首を傾げるー。

聡一は「まぁ、当たり前の反応だな」と言いながら、
その道具の説明を始めるー。

何でも、人間を洗脳して”モノ”にすることができる
特殊な液体で、
この液体を体内に何らかの方法で摂取させることにより、
”その人間を意のままに操ることができる”のだと言うー。

しかもー
この液体には、人間の身体の仕組みそのものを作り替える力があり、
”命令”することで、洗脳した人間を”変形”させて、
そのモノにしてしまうことができるー、

と、聡一は説明したー。

「ーイマイチ意味がわからねぇって顔だな」
聡一が言うと、
零児は「あまりに現実離れしていて理解が追い付かない」と答えるー。

聡一は「そうだな。百聞は一見に如かずとかいう言葉もあるー。
見せてやるよー」と、ソファーから立ち上がって、
そのまま奥の部屋に零児を案内したー。

そこにはーー

「ーーーな…なんだこれは…!?」
唖然とする零児ー。

”洗濯機”と、”人間”が一体化したかのような女が、
化け物のような大口を開けて、口の中で服を”洗濯”していたのだー。

「ーー人間家電」
聡一は静かにそう呟いたー

「ーな…なに…?」
零児が言うと、
聡一は「さっきお前に見せた液体だよー。人間家電製造液」と、呟くー。

零児は表情を険しくするー。

「言ったろー?人間の身体の仕組みそのものを作り替えて
 意のままに操ることができるってー

 俺が命令すればこの女は洗濯機にも、冷蔵庫の代わりにも
 なるんだよー」

そう言いながら聡一は、”洗濯機”にされた女から
服を取り出すー。

「ーーーごほっ…ごほっ」
苦しそうに咳き込む大口を開けた女ー。

「ーそ、その人はー?」
零児が少し震えながら言うと、
聡一は「あぁ、俺を裏切って浮気した大学の時の元カノだよー」
と、笑いながら言うー。

「裏切者にふさわしい姿だろ?」
それだけ言うと、「おい!次は電子レンジだ」と、
その女に命令するー。

女が苦しそうにうめき声を上げながら、
ゴリゴリと不気味な音を立てつつー
”変形”していくー。

お腹のあたりに、電子レンジのようなスペースが出来上がったのを
見て「へへ…これで加熱できる」と、聡一は笑みを浮かべたー

「ーく…狂ってるー…」
零児は、思わずそう呟いてしまうー。

人間を洗脳し、言いなりにした上で”家電”にするなどと
完全にサイコパスの発想だー。
とても、普通の人間の考えることではないー。

「ーへへ…褒め言葉だね」
聡一はそう言うと、「ほら、お前にもやるよ」と、引き出しから
液体の入った小瓶を飛び出したー。

「こっちの赤い液体が、”支配する側”が飲むもので、
 こっちの緑の液体が”支配される側”に飲ませるものだー。」

淡々と説明する聡一。

だが、零児は「ガーーーー」と、声を出しながら
食べ物を変形した身体で暖めている女のほうを見つめると、
険しい表情を浮かべたー。

「ーこ、こ、ここまでは流石にー」
零児がそう呟くー。

「ーなんだよ?美咲ちゃんに腹立ってたんじゃないのか?」
聡一が言うと、零児は
「い…いや、でもー」と、電子レンジにされている女のほうを見つめるー。

「ーーそ…そこまでしたいわけじゃないしー」
零児の言葉に、聡一は「ははは、そっか」と、笑うー。

一瞬、”俺の秘密を知って、そんな風に逃げることが
許されると思うのか?”みたいなことを言われるかと思って
少し内心ビクビクもしていたのだが、
そんなことはなく、聡一はあっけなく笑顔でそう呟いたー

「でもまぁ、それはやるよ。
 どんな風に使っても自由だー。」

聡一はそう言うと、そのまま”家電”にした女の方に向かって
「ーーおい!次は掃除機になれ!」と叫ぶー

女がうめき声を上げながら、
ボキボキと音を立てて、とても人間とは思えない
変な形に変形していくー

顔が下向きになって、
大口を開けて、床のゴミを吸い取っているー

「すげぇだろ?へへっ」
掃除機にした女を掃除機代わりに、床を掃除しながら
「ーーあ、でも他の人には言わないでくれよ?
 俺は親友のお前を信じてるから、こういう話をしたんだし、
 使う、使わないは自由だけど、お前なら悪いようにはしないって
 思って渡したんだ。だから頼むぜ?」と、聡一は言ったー

「あぁ、わかったよー」
零児はそう呟くと「じゃあ、俺はそろそろ帰るわ」と、
青ざめた様子でそのまま聡一の部屋から外に出たー

”親友がとてつもないサイコパス”に見えて、怖かったー。

立ち去っていく零児を見て、
聡一は、掃除機女の腕を掴んで、部屋の掃除をしながら
笑みを浮かべるー

「ーまぁ、いずれ使うだろうさー。
 人間は”力”を手元に置いておくと
 使わずにはいられない生き物だからなー」

静かにそう呟いた聡一は
「おい!次はテレビになれ!」と、
洗脳した女に向かって、そう呟いたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

人間を洗脳しー
人間を細胞レベルで作り替えて
”人間家電”に変形させてしまうー

そんな、恐ろしい薬を手に、
零児は、家に向かって歩いていたー。

美咲との思い出を思い出すー。

最近の美咲に対しては、
確かに零児は腹を立てているし、
学生時代のように、仲良しではないー。

けどー
いつか美咲は自分に謝ってきて、
昔のようにまた、仲良しカップルに戻ることができー
いずれは結婚、幸せな家庭を作ることができるー、と、
何の根拠もなく、零児は思っていたー。

「ーーーー(これは流石に使えないな)」

真柴聡一から貰った薬を自分のポケットにしまうと、
”まぁ、部屋に置いておくか”と、ため息をつく零児。

ようやく家の前にたどり着いた零児が
玄関の扉を開けて、そのまま自分の部屋にしている場所に
向かおうとすると、美咲が声をかけて来たー。

「ーーーーごめん。ちょっと話があるの。いい?」
美咲の言葉に、零児は「いいけど」と、言いながら
話に耳を傾け始めるー。

だが、美咲が口にした言葉はー
”同棲の解消”だったー。

もう、これ以上は一緒にいられない、とー。
お互いのためにも、一度距離を置いた方がいい、とー。

その言葉を聞いた零児は、頭に血が上りー、
気付いた時にはー
聡一から貰った薬を美咲に無理やり飲ませていたー。

「う…う… ぁ… うぁぁあああ… ぅ…ぅぅ」
美咲がものすごく苦しそうに床を転がりまわっているー

そんな光景を見ながら、零児は青ざめたー

”感情的になって、美咲に”あの薬”を使ってしまったー”

そんなことを後悔しながらも、
零児は、もう、後戻りすることはできずー、
支配する側が飲む薬を、そのまま口にして、
静かに呟いたー。

「ーまずは、そうだな…洗濯機になってもらおうかー」

とー。

②へ続く

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かなり変わった感じのお話ですネ~!
好みがとっても分かれそうですが、
好きな人は、ぜひ、明日の続きも楽しんでくださいネ~!

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MC<家電彼女>

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