<憑依>優等生に変貌した娘①~豹変~

不登校で引きこもりになってしまっていた娘が、
ある日、突然”優等生”に変貌したー。

その、理由とは…?

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーーー」
ボサボサな髪を気にする様子もなく、
生気のない表情で、
トイレにやってくる少女ー。

この家の長女・市原 涼香(いちはら りょうか))は、
不登校になって既に長い時間が経過している少女ー。

特別、いじめがあったわけではないー。
だが、”学校が面倒臭い”という理由で
次第に学校を休むようになり、
ついには不登校になってしまったのだー。

母親の結衣(ゆい)が事情を聞いても、
父親の孝雄(たかお)が事情を聞いても、
妹の紗枝(さえ)が事情を聞いても、
ロクに事情を説明もしてくれず、
只々、部屋の中に引きこもり続けたー。

「ーーーあ…お姉ちゃんー」
現在高校1年生の紗枝が廊下ですれ違うと
気まずそうに涼香のほうを見るー

「ーーん」
涼香は面倒臭そうに反応すると、
特に会話を交わすこともなく、首筋のあたりを
ボリボリと掻きながら、そのまま部屋の方に戻っていくー。

「ーーね…ねぇ…お姉ちゃんー
 そろそろ、学校に行った方がいいんじゃないの?」
妹の紗枝は、そんな姉・涼香に対して心配そうに言葉を呟くー。

だが、涼香は「いい 面倒くさい」とだけ言って
そのまま自分の部屋に入って、再び引きこもってしまったー。

「ーーーーーーー…」
弱弱しい雰囲気の妹・紗枝はそんな姉・涼香の部屋のほうを
みつめながら「ーーうざ」と、小声で呟くー。

「ーー誰のために心配してやってると思ってんのー?
 ほんとウザい」

紗枝が先ほどとはまるで別人のように毒を吐くー。

偶然、近くを通りがかった母・結衣が「どうかしたの?」と
紗枝に声を掛けると、
紗枝は笑顔を浮かべながら「ううん!お姉ちゃん心配だな~って思って!」と、
明るく答えたー。

不登校で引きこもりの姉・涼香と、
裏で毒を吐く妹・紗枝ー。
妹のほうはともかく、両親は姉の涼香の現状に、
頭を悩ませていたー。

だがー
”その異変”は翌日に起きたー

「ーーー?」
妹の紗枝は表情を歪めるー。

「ーーーーーー」
紗枝が時計を見ると、まだ朝の5時だったー。

父親も、母親も、この時間には起きないー。

だが、1階の方から物音がしているー

”まさか、泥棒ー!?!?!?”
紗枝はそんな風に思いながら、
ゴクリ、と唾を飲み込むー。

”泥棒とか、やめてよねー…
 わたし、そういうトラブルに巻き込まれるのとか
 ホントお断りだからー!”

紗枝はそう思いながらも、
怯えた表情を浮かべながら、
1階の方に、こっそりと近づいていくー。

姉・涼香の部屋の前を通りながら

”大体なんで可愛いわたしが、こんな危険なことしないといけないの!?
 あんた、お姉ちゃんでしょ!?!?!?!?”

と、心の中でブツブツと文句を言う紗枝ー。

そしてー
ようやく1階にたどり着くと、
洗面台の方の明かりがついていることに気付くー。

「ーーーー………なに?下着でも盗むの?」
紗枝は”気持ち悪い…”と、呟きながら、そのまま
フライパンを手にして洗面台の方に向かうとー、

「ーーーー!!!!!!!!!!!」
人と目が合ってー
紗枝は悲鳴を上げたーー

「ーひっ!?!?!?」
洗面所にいた人物も、軽く悲鳴を上げるー。

そこにいたのはー
泥棒などではなく、紗枝の姉の涼香だったー

「ーお、お、お、お姉ちゃんー
 な、なんでこんな早朝にー…」
驚いて尻餅をついた状態のまま紗枝が言うと、
涼香は「ーご、ごめんねー」と、呟きながら、
紗枝のほうを見つめるー。

「ーーえ…」
紗枝は、ずっとボサボサな頭だった涼香が
ちょうど、お風呂に入ったあとだったのか、
清潔感のある雰囲気に変わっているのに気づくー

「ーお、お、お風呂に入ったの?」
紗枝が困惑しながら、浴室のほうを指差すと、
涼香は「う、うんー」と、戸惑いながら答えるー。

”そ…そうなんだ…こんなに朝早くにー?”

「ーーお、お風呂なんてめったに入らない
 汚物みたいなお姉ちゃんが、お風呂にー!?」

紗枝は心の声と口に出す言葉を間違えてしまい、
そう言葉を口にすると
涼香は「ご、ごめんねー…今まで」と、苦笑いしたー

”ど、ど、どうしたの急にー?”

「お、お姉ちゃんが笑ってる!?き、きもっ…!?」

紗枝はなおも、心の声にするべき内容を
口にすると、涼香は「わたし、今日から学校に行こうと思ってー」と、
微笑みながら言葉を口にしたー。

「ーが、が、が、がっこうぉぉぉおぉぉお??????」
紗枝が変な声を出してしまうー。

「ー……だって、え~っとーーー紗枝も、
 その方がいいでしょ?」

涼香が言うと、紗枝は「う、う、うん…まぁ、うんーそうだけど」と、
戸惑いながら返事をするー。

「ーき、き、急に何の風の吹き回しー?」
紗枝が驚いた様子で涼香のほうを見つめると、
涼香は「今まで、ごめんねー。わたし、今日から頑張るからー」と、
穏やかな笑みを浮かべたー。

「ーーし…し…し…信じられないー」
紗枝はそれだけ呟くと、
”急に豹変したお姉ちゃん”のほうを見つめながら
只々、困惑の表情を浮かべたー。

・・・・・・・・・・・・・

「ーーえぇっ!?」

「ーどうしたんだ急に!?」

母・結衣と
父・孝雄も困惑の表情を浮かべるー。

「ーーうん。今日からちゃんと、学校に行こうと思ってー」
制服姿で、整った髪型になった涼香を見て、
両親は唖然とするー。

妹の紗枝もまだ、”信じられない”という様子で
そんな姉・涼香のほうを見つめているー。

「ーずっとこのままじゃいけないかなってー
 せっかく女子高生なんだし、今をちゃんと生かさないと
 勿体ないかなってー」

涼香が言うと、紗枝は「ーーー」と、涼香のほうを
横目で見つめるー

「で、でもよかった~涼香が学校に行く気になってー。
 わたしも、どうすればいいか、本当に困ってたしー」

母親の結衣の言葉に、
「心配かけてごめんねー」と、涼香は穏やかな
笑みを浮かべながら呟いたー

「いってきま~す」
涼香が学校に向かうー。

家を出た涼香は、静かにため息をついたー

「ーーーふぅーいい家族だなー」
涼香は、ふとそんな言葉を呟いたー。

涼香が突然”学校に行く”と言いだしたのはー
涼香本人が改心したためではなかったー。

”人生面倒臭いー。何も、やる気がおきないー”

昨夜ー
涼香は、そんな書き込みをいつものように
ネットに書き込んでいたー。

その書き込みでさえも、面倒臭い、と思いながらも
”ずっと寝てたい”などと、さらに書き込みを続けていくー。

その時だったー

”その身体、僕にくれませんか?”
と、謎のメッセージが届いたのはー。

涼香はボサボサの髪を掻きむしりながら
”どういうこと?”と、返事を返すー。

”ずっと寝てたいなら、その身体、僕にくれませんか?”

再度、同じような言葉を繰り返す相手ー

”ーーーー…そういうのもダルイから。
 とにかく何もしたくないの。他を当たって”

涼香はエッチなことを誘われているのだと判断して、そう呟くー。

だが、メッセージを送ってきた相手の目的は
そういうことではなかったー。

”いえ、そうじゃなくてー
 僕があなたの身体を借りて、
 生活してみたいんです”

その言葉に、涼香は”意味わかんない”と返事を返すー。

するとー
男は”憑依”について言葉を口にしたー

男は、生まれつき容姿に恵まれず、
これまで”キモイ”と言われ続けながら
生きてきたのだと言うー。

一生懸命勉強して、何もかも一生懸命やってきたのにー
努力の末に就職した大企業では、
”何もしていないのにセクハラ”扱いされて
ついにクビになってしまったー

”お前のその顔ー、歩いてるだけでセクハラだからな!”
などと、理不尽な言葉を、これまでずっと
言われてきたのだと言うー。

”あなたは人生が面倒臭い
 僕はキモイと言われない身体が欲しい
 どうですか?僕があなたの身体を貰えば、
 お互い、損はしないと思うのですけど”

そのメッセージを見て、
それすらも面倒臭いと思った涼香は、
つい、こう返事をしてしまったー

”好きにして。わたしは何もしないから”
とー。

”ありがとうー。
 僕はこれでようやくまともな人生を
 送ることができるよー”

その言葉を見て、
涼香は”面倒臭い”と思いながら
スマホを見るのもやめて、そのまま寝転ぼうとするー

しかしー
その時だったー。

スマホが突然光りー
そこから、霊体のようなものが飛び出して、
涼香の口のあたりに突っ込んできたー

「ーえっ!?」
涼香が驚いた時には、既に手遅れで、
そのまま霊体のようなものは
涼香の中へと突っ込んでしまったー。

まるで、霊体に攻撃されたからのように
その場で気を失う涼香ー。

「ーーーーーぅ」
1分ぐらいーだっただろうかー。
そのぐらいの時間が経過したタイミングで
涼香は意識を取り戻したー。

だがー
その身体を動かしているのはー
涼香自身ではなく、涼香に憑依した”男”だったー。

「ーーやったー……僕は…僕はこれでー」
ついさっきまで、無表情で生気のない雰囲気だった涼香が、
突然笑みを浮かべて、ニヤニヤしながら鏡のほうを見つめているー。

「ーーやっと、僕はまともな”人間”として生きることができるー」
涼香は嬉しそうに笑みを浮かべるー。

”人間扱い”すらされずに、
生きて来た自分がー
こんなに可愛い子の身体を手に入れることができたー。

彼は別に、容姿さえ馬鹿にされず、
人並に扱ってもらえるのであれば、
憑依する相手は男でも女でも、どちらでもよかったのだが、
イケメンと美少女を天秤にかけた結果、
”より、自分とは真逆の、人間扱いして貰える生活”ができるのは、
イケメンよりも美少女のほうである、とー、
彼はそう解釈し、涼香に憑依したー。

「ーーは~~…こんなに可愛いのに、こんな引きこもっちゃって…
 勿体ないじゃないないかー。
 両親も心配してるぞ」

支配された涼香は、一人、そう呟くと、
まだ明るくなる前の時間であるにも関わらず、
起き上がって
「ー早速、学校に行かなくちゃなー」と、そう呟いたー。

それが、昨夜の出来事ー。

学校に向かいながら
「不登校だったこの子が、急に登校したら驚くだろうなぁ」と、
一人、呟く涼香ー。

だが、幸いなことに、この涼香は
高校に入学してから比較的早い段階で不登校になったために、
”高校の同級生”とそれほど接点が元々ないらしいー

つまりは、”あれ?誰だったっけ?”みたいなことを
涼香が言ったとしても、
周囲はさほど、そのことを不審には思わないー、という状態なのだ。

それも、涼香に憑依した大きな理由の一つと言える。

彼は元々コミュニケーションは苦手ではないー。
普通にできるし、何なら良く喋れるほうだと思う。

けど、それでも”容姿”に恵まれなかった彼は、
それだけで、そのコミュニケーション能力も生かせないほどに
周囲から弾圧されたー。

人は見た目じゃないー、
と、いう言葉は嘘であり、綺麗ごとであると、彼は思っているー。

「ーーでも、今日から僕は、もうそんな思い、しなくていいんだー」
涼香は嬉しそうに呟くー

「ー僕は、君の身体を使って、人間扱いされる人生を送るー」

「君は、面倒臭い人生を、何もせずに、心の奥底で過ごすことができるー」

涼香はそれだけ呟くと、
「僕にとっても、君にとっても、最高の話だー」

と、一人満足そうに笑みを浮かべたー。

②へ続く

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コメント

憑依されて悪い子になる…の逆パターン、
憑依されて良い方向に変貌する…パターンの憑依モノですネ~!

”本当に悪いことに走ったりしないのか”も、
含めて続きもぜひ楽しんでくださいネ~笑

GW最終日の今日も、お読み下さりありがとうございました~!
(もちろん、後日お読み下さってる皆様もありがとうございます~!)

コメント

  1. 匿名 より:

    涼香は一応、同意はしてるけど、自分が身体を奪われるということを理解してないから、騙されたみたいな物ですよね。

    • 無名 より:

      コメントありがとうございます~!

      ”どうにでもなっていい”みたいな感じの涼香でしたが、
      まさか身体を奪われるとは思ってなかったでしょうネ~…!

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