憑依薬を手にしたまま戦国時代へと
タイムスリップしてしまった男ー。
異なる時代での、彼の運命はー…?
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「ーーーはぁ~~~~…」
女らしさをまるで感じない姿勢で座り込むと、
こうなるまでに至る出来事を考え始めたー
現在、修は「ゆき」という近くの村の娘に憑依して
その身体を使っているー。
「ーー…早く帰りてぇ」
可愛らしい声でそう呟くゆきー。
ゆきは、祖父と二人で暮らしていて、
貧しい生活を送りながも、祖父のことを一生懸命支えようとしている
健気な娘だったが、今のゆきにそんな面影はなく、
忍のような格好をして、しかも男のような座り方をしているー。
あの時ー
桶狭間の地で、修は”憑依”を披露して見せたー。
今川義元の目の前で、憑依薬を使い、
彼の武将の一人を乗っ取って見せたのだー。
だがー
「ーーそちも事前に打ち合わせをしていた可能性も
あろう?」
今川義元は、簡単には信じなかったー。
目の前で修が霊体となり、姿を消し、
近くの武将に憑依したにも関わらず、
”修が姿を消したのは何らかのトリック”で、
”憑依された武将と事前にそう見えるように打ち合わせしていた”
そんな説を唱えたのだー。
だが、修の作った憑依薬は、一度飲めば、憑依能力を
何度でも使うことができるー…ハズの優れものだー。
”ぶっつけ本番”状態にはなってしまったものの、
修の作った憑依薬に”間違い”さえなければ、
他の人間に”乗り換え”することができるー
「お疑いですかー」
武将の身体に憑依した修はそう呟きながら、
今川義元の方を見つめたー
「では、この場で今川様が指定した者に「乗り換え」してご覧に入れましょう」
と、言い放ったー
「ー儂が指定した人物に乗り移ると申すかー。面白い」
今川義元はそう言うと、信じられない言葉を口にしたー
「ーならば、この儂に憑依してみせよ」
とー。
「ー!?」
武将に憑依している修が、表情を歪めるー。
「ーと、殿!?」
周囲の武将たちも驚いた表情で言うー。
「ーどうした?できぬのか?」
義元の言葉に、修は「いえー」と首を横に振ると
「ーですが、自分が憑依されるということはー
それは即ち、そのままあなたの身体で何でもできるということー」と、
言い放つー。
”あえて”
修は義元を挑発したー。
自ら”儂に憑依しろ”と言ってくる人間には
この反応が良いだろうと判断したのだー
「ーー承知しておるー。
それをするような者であれば、お主はとっくにそれをしているはずー。
違うか?」
義元の言葉に、武将に憑依している修が頭を下げると、
「ではー」と、言葉を続けるー。
「ーーと、殿!?しかし!」
周囲の武将たちが、そう叫ぶと
「構わん」と、義元は姿勢を整えたー
「ー他の者が”憑依された”と言っても、儂は心から信じることはできぬー。
儂自身で”憑依”を経験しなければー、この者の言うことが
真かー、偽かを判断することは、できぬ」
「ーーー…(まさか、歴史上の人物に憑依することになるなんて)」
と、思いながら修は、その場で今川義元に憑依したー。
義元になった修は
「ーーーこれが憑依だ!」と、周囲の武将たちに向かい、叫ぶと、
今川義元本人が絶対にしないであろう仕草を、いくつか
その場でして、武将たちに見せつけたー。
「ーーーーこんなものか」
義元としてそう呟くと、修はすぐに他の武将の身体へと移動し、
義元の反応を見たー
目を見開いて意識を失っていた義元が目を開くとー
ハッとした様子で雨の中、周囲を見渡して、
「ーーーどこにいる?」と、”他人に憑依しているであろう修”を探したー
先程とは別の武将に憑依した修が
「ここに」と、言うと、
今川義元は「ーーそなたの”憑依”ー見事であった」と、
それを認める言葉を口にしたー
「ーはっー」
修は”殺される心配”が薄れたことを確信し、
少しだけ安堵の溜息をつくー。
「ーーー信長が奇襲を仕掛けてくると言うのは、真か?」
憑依が本当だと知った義元は、修に対してそう問いただすー。
「ーま、間違いありませんー
桶狭間の戦いで、今川様は信長の奇襲によって討ち死にー…」
「ーーなんだと!?」
武将たちが叫ぶー
修は、そこまで言って、はっ、と口を閉ざすー。
”しまったー…これじゃ俺がまるで未来を見てるような言い方じゃないかー”
「ーーーーー……」
義元は少し考えると
「ー考えもしなかったが、確かに、あり得ない話ではない」
と、言いながら武将に憑依している修のほうを見たー。
「ーーーー……名は?」
その言葉に、修は「魚沼 修と申しますー」と、呟くー。
「ーー…では、魚沼よ。
そなたの力で、その”未来”を変えることはできるかー?」
「ーーーーー!」
そしてー
修は、憑依能力を使い、次から次へと織田軍の武将に憑依し、
武将の身体で、仲間を攻撃ー、
織田軍は総崩れとなって、そのまま撤退したー。
そうー
本来、桶狭間の戦いで滅びるはずだった今川義元の軍勢は、
憑依薬を手に、この世界にやってきた修のおかげでー
逆に勝利を果たしたのだったー。
桶狭間の戦いに勝利後、
修は憑依から抜け出した状態で今川義元に呼び出されたー。
”殺される可能性”も考えたー。
だがー
義元は修に対して、こう言い放ったのだー
「ーーーそなたは、何者だ?
どこから来た?」
とー。
桶狭間の戦いでの反応から、修が”未来を知っている”と確信した義元は
修にそう問いただしたー。
修は隠すのは逆効果であると判断して、
自分が未来から来た人間であることを伝えるー。
「ー……なるほどなー」
義元は言うー。
「ー疑わないのですか?」
修がそう言うと、義元は「儂はそなたに憑依されたー。」と言葉を口にした上で
「憑依が本物だった以上、疑う余地はあるまい」と、頷いたー。
「ー本来、儂が信長に討たれるのだったとすればー
後の歴史では、儂は貴族の真似事とか、そんな風に言われているのであろうなー」
義元がそんな言葉を口にするとー
修は”現代の戦国時代のゲームソフト”を思い出すー。
修の知るそのゲームでは
義元は完全にネタキャラのような扱いになっていて、
こんなに威厳のある雰囲気ではなかったー。
「ーーー…話を戻そうー」
義元はそう言うと、
「ー儂はそなたを側に置いておきたいー。
だがー」
と、言葉を続けたー
「そなたの能力を危険視し、今すぐ排除するべし、という
家臣たちの声も大きい」
義元が言うー。
”儂が天下の中心になるときの障壁となるであろう、と言うものもいるー”
とー。
「ーそ、そんなこと、俺はー」
修は途端に命の危険を感じて声を上げたが、
義元は少しだけ笑うと「案ずるな。儂はそなたを殺すつもりはない」と、
笑みを浮かべたー。
その結果がーー
”今”だー
「ーーはぁ~~…いや、女に憑依したかったし、
するつもりだったけどさー」
町娘・ゆきに憑依した修は、
ゆきとして、この城に居座っていたー。
義元の世話役兼、直属のくノ一として
表向きは通っていて、
家臣たちには、”憑依の力を奪い取って魚沼修は処断した”と、
義元は伝えていたー。
「ーーーー…あ~~~~くそぅ…早く帰りてぇ~~~!」
ゆきは、可愛い声でそう叫びながら足をじたばたさせるー。
”鏡”で自分の姿を存分に確認したかったのだが、
この時代にはそもそも、現代のような”鏡”が
そこら中にあるようなこともなく、
また、大人のおもちゃの類もないー
当然、メイド服もチャイナドレスも、バニーガールも制服もー
何もないー
「あぁ…くそっ!近所の女子大生の須美ちゃんを乗っ取って
色々なコスプレを楽しもうと思ってたのに…!」
ゆきがそう叫ぶとー
「ーー殿がお呼びです」と、義元が護衛につけた兵士から、
声が掛かったー
「ーー…わ、分かりました!今行きます」
ゆきはそう言うと、そのまま義元が待つ場所へと向かったー。
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「ーーよく来たな
どうだー?その身体での生活には慣れたか?」
義元の言葉に、
ゆきに憑依した修は「まぁ…それなりにはー」と、頭を下げるー。
「ーしかし、ついこの間まで、貧しい小娘だったその娘が
病気の祖父を捨てて、このようなところで、その手を血に染めているとはー
憑依とは恐ろしいものよな」
義元の言葉に、ゆきは「選ばれたもののみが、使える力ですー」と、
頭を下げるー。
”あくまでも俺だけがこの力を使えるー…
という風にしておく必要があるー。
俺以外でも誰でも使えると義元が知れば、俺は消される可能性もあるからなー”
ゆきに憑依した修は、なんとか元に時代に戻ろうとしていたー。
早く元の時代に戻って、
女子大生の須美を乗っ取り、好き放題したいー
自分の散々な人生の復讐もかねて、須美の身体を使って
男たちを破滅させてみたいし、コスプレもしてみたいし、
存分にエッチなこともしてみたいー
だが、この世界ではコスプレもできないし、
男たちを破滅させようとして、自分が死んでしまうリスクも高いし、
存分にエッチなこともできないー。
いやー
”くノ一のコスプレ…ってか、リアルくノ一にはなれてるけどさ…”
「ーー今日呼び出したのは”このあとの歴史”を聞くためだー。
そなたは未来から来たと言ったー。
儂があの桶狭間で本来、討たれるはずだったー、ということは
分かったがー
そのあとは、どうなるー?」
その言葉に、ゆきは、この先の未来を
修が覚えている範囲で説明するー。
「ー信長めが、天下統一直前まで、行くとはなー
分からないものだな」
義元は、本能寺の変ー…
織田信長が天下統一直前で討ち取られる話を聞き、
そう呟くー。
そして、最終的には徳川家康が江戸幕府を開いたところまで
話をするー
「ーなんだとー?」
今川義元は驚くー
この時代では、家康はまだ若いー
そして、今川家の人質同然の扱いであり、
今川義元からすれば、その家康が天下統一をするー
など、信じられない話だったー
「ーそれは、真なのかー?」
義元の言葉に、「はい」と、ゆきは答えるー。
そのまま少し会話を交わすと、
「ーなるほどー…儂が桶狭間を生き延びた今、そうなるとは限らぬがー
今後、別の形で脅威となるのやもしれぬなー」と、
義元は考え込んだー。
「ーーまぁ良いー
それと、そなたに”頼みたい”ことがあるー
近頃、我が領内で山賊の一団がー」
”憑依”の依頼ー
内容は山賊退治だー。
修からすればたやすいことで、
山賊たちに次々と憑依して同士討ちをさせたり、
自殺をさせれば、それで終わる。
自殺の瞬間に、憑依から抜け出せば自分が死ぬ心配はないー。
「ーーー」
ゆきは、城の中を歩きながら、
自分の胸を見つめるー。
「ーーー今はここにいるがー…
別に俺はお前の家臣ではないからな?」
今川義元がいた部屋の方向を見つめながら
ゆきはそう呟くと、
「ーー…まぁ、戦国時代に来ちまったものはもう仕方ないー
帰ることができるようになるまでは、存分に楽しませてもらうかー」と、
不気味な笑みを浮かべたー。
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数日後ー
ゆきが、城下町を歩いているとー
「ゆき!」と、背後からゆきを呼ぶ声が聞こえたー。
「ーゆき…!ゆき…!こんなところで、何をー」
ゆきが振り返ると、
そこには、修が憑依して乗っ取っている”ゆき”の祖父がいたー
貧しい村で、ゆきと共に一生懸命生きていた祖父だー。
乗っ取られたゆきが突然姿を消したことで、
祖父はゆきを必死に探し回っていたのだー
「ーーチッ」
面倒なやつに見つかってしまったー
ゆきに憑依している修は
ゆきの身体で舌打ちをすると、
祖父を無視して、そのまま城の中へと引き返して行くー
「ゆき!!一体どうしてしまったんだ!」
叫ぶ祖父ー
「ーー(お前の娘は俺のものだー。お前の知るゆきはもういないー)」
ゆきはそう心の中で呟くと、不気味な笑みを浮かべたー
③へ続く
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戦国憑依物語は珍しく4話構成で考えた作品なので
あと2話あります~★
明日と明後日もぜひ楽しんでくださいネ~!
今日もお読み下さりありがとうございました~!
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