”記憶喪失のフリ”をして、
憑依したことによって、
”性格や振る舞いが変わること”
”今までの記憶がないこと”も、周囲に不自然に思われないよう
演出した男ー
男の計画は目論見通り進み、女子高生・澪の人生を
奪うことに成功したもののー…?
・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーひひっ…やっべぇ…」
澪が小声でそう呟きながら周囲を見渡すー。
体育の授業の前ー
澪に憑依した守は”女子”として
教室で着替えているー
周囲ではまさか、”澪”が、
守のような男に乗っ取られている状態とは知らずー
女子たちが普通に着替えているー
「ーーぁぁぁぁ…♡」
ゾクゾクしながら澪が周囲を見渡すー。
あまりの興奮に鼻血を垂らしてしまった澪に、
近くにいた友達の一人が気づくー
「ちょっと!?澪?大丈夫?」
そんな言葉に、澪も自分が鼻血を出していることに気付き、
”おっと、いけねぇ…”と思いながら
慌ててティッシュを手に「大丈夫大丈夫ー」と微笑むー
「ーー(へへへ…これからずっとこんな風に過ごせるなんてー
たまんねぇぜー)」
”記憶喪失”の設定を上手く作り上げたことにより、
周囲は澪の性格や振る舞いの変化に、違和感を抱かないー。
それどころか、
”記憶喪失”という状態のおかげで、
周囲の生徒たちは何かと澪に気遣ってくれるー。
「ーー(ククー…焦らず、少しずつ、”俺色の澪”に変えていってやるぜ)」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーごめんね…
いきなり”彼氏”って言われても、やっぱり実感なくてー」
昼休みー
澪が申し訳なさそうに呟くー。
「ーーーーいや…仕方ないよー」
秀雄は悲しそうな表情を浮かべながらも、笑いながらそう呟くー。
澪が学校に復帰してから、数日ー
澪と話す機会は多かったものの、
一方で、澪が”記憶喪失”になってしまう前とは
決定的に違う距離感を感じていたー。
秀雄は、戸惑いながらも、
”自分がもしも反対の立場だったらー?”
と、いうことを考えてみれば
仕方のないことなのかもしれないー、と、
澪との距離感の変化に戸惑いを感じつつも、
それを受け入れていたー。
自分が事故に遭って、記憶喪失になってー
目を覚ました時に
「わたしが彼女です」と急に言われたら
やっぱり戸惑うだろうし、
思い出もないし、その相手のことも知らないし、
愛着もないー、
そんな状況ではー
「はいそうですか」と、今まで通り
彼氏として振る舞う自信は、正直、秀雄にもないー。
”記憶を失う前の自分”と考え方が同じとも限らないー
だからこそ、今の澪の状態は、仕方のないことなのだー。
澪が無事だっただけでも、
そのことを喜ばないといけないー。
「ーーーあ、え~っと…職員室…どっちだったっけ?」
澪が困ったような様子で呟くー
「ん?あぁ、この廊下の曲がり角を右に曲がって先に進んだところだよ」
秀雄が指を指しながら言うと、
澪は「ありがとう」と、微笑みながら
職員室の方に向かっていくー。
「ーーーー……(あいつとは、だんだん距離を取るとしてー…)」
澪は、ニヤリと悪人顔で笑うー。
「(ーー俺好みじゃないし、せっかくだから色々な男とヤッてみたいしなー
あんな奴に用はねぇ)」
少しずつー
秀雄とは距離を置き、最後には上手く別れを切り出すー
澪に憑依した守はそうするつもりだったー。
「ーーー」
澪の”本当の状態”に気付いていない秀雄は
悲しそうに澪の後ろ姿を見つめつつも、
必死にで”澪は記憶喪失になってしまった”という
現実を受け入れようとしていたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーお姉ちゃんおかえり~!」
澪が帰宅すると、妹の咲が、澪を出迎えてくれたー
「ふふ…ただいま」
澪は嬉しそうに笑みを浮かべると、
そのまま咲のほうを見つめるー
「ーーーそうだ!咲、今日はお姉ちゃんと一緒にお風呂に入ろっか」
澪の言葉に、咲は「えっ!?」と驚いた様子で声を上げるー。
「ーーーあ…そういう感じじゃなかったー?
ごめんね…まだお姉ちゃん、記憶全然戻ってないしー」
澪が言うと、咲は「あ、ううんー。最近一緒に入ることもなかったしー」と、
少し照れくさそうに言うと、
「ーーあ、でも、せっかくだし!」と、咲は微笑んだー
澪は「ふふふ…」と、嬉しそうに咲を見つめるー。
”こんな可愛い妹とお風呂に入れるなんてー
お姉ちゃん、興奮しちゃうなぁぁ♡”
ゾクゾクしながらペロリと唇を舐める澪ー
「ーーじゃあ、お姉ちゃんが身体を洗ってあげるね」
お風呂場に入ると、澪はニヤニヤしながら自分の
身体を見つめた後に、興奮しながら咲に対してそう言い放ったー
”身体を洗ってあげる”と言いつつも、
咲の身体をニヤニヤしながら触っていくー。
「ーーーあぅっ…お、お姉ちゃんー…?」
咲が、身体の色々な場所を触られて
少し困ったような表情をうかべると
澪は「ーー咲ってわたしよりいい身体してるかもね…ふふ♡」と、
イヤらしい目つきで咲を見つめたー。
”まぁでも、お姉ちゃんの方が全体的には可愛い気がするしー
何よりこうして”お姉ちゃん”の立場を乱用できるとか
最高だな”
澪に憑依している守は、お風呂で散々欲望を満たすと、
満足そうに笑みを浮かべたー。
「ーーえへっ…やっべ… マジで興奮して
妹とヤッちまうところだったぜ」
部屋に戻った澪は鼻血を流しながら嬉しそうに笑うー。
「ーっていうか俺、女子高生の身体で興奮しすぎだろ へへへ」
澪は、鼻血を止めると、
「あ~~もう我慢できねぇ…晩御飯まで時間あるし、ヤるか!」と、
笑みを浮かべたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
翌日ー
昼休みに、”今はまだ”彼氏の秀雄に、
学校のことを色々聞きながら
二人で歩いていたー
「ーーで、ここはー、
まだ澪が復帰してからは一度も授業で使ってないけどー、
美術室だなー」
秀雄が美術室の場所を教えると、
澪は、微笑みながら頷くー。
”澪のツインテール姿なんて初めてみたな…”
と、思いながらも、秀雄は
そのことには特に触れなかったー
髪型の趣向とかも変わっているかもしれないし、
あまり”前の澪と違う”とばかり指摘していると
記憶を失って少なからず動揺しているであろう
澪を困らせてしまうことにもなりかねないー。
だから、なるべく
”日常生活に支障のない変化”に関しては、
秀雄は突っ込まないようにしていたー。
「ーー(はぁぁ…一度やってみたかったんだよな、ツインテ)」
澪は自分のツインテールをさりげなく触りながら
「(ってか、こいつ、さっきから俺のツインテール気にしてるよな)」と、
微笑むー。
”女が男子の視線を感じるってこういう気持ちなのかー”
澪が、笑みを浮かべながら、秀雄と一緒に
廊下を歩いているとー
突然、澪は頭に鋭い痛みを感じたー
「ーー!?」
立ち止まる澪ー
「ー澪?」
秀雄が心配そうに振り返るー
「ーーー…な、なんか、頭がー」
急にずきずきしてきた頭を押さえながら
澪はその場にしゃがみ込むー
「ーみ、澪…!鼻血が…!」
秀雄の声が聞こえると同時に、澪は突然激しいめまいも感じてー
そのままその場に倒れ込んでしまったー
「澪!」
最後に、そんな声が聞こえたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
気付けば、守は不気味な渦や光のようなものが見える
謎の世界にいたー
「ーー…な、なんだー…?」
守が周囲を見渡すー。
そして、すぐに、”澪”として行動していた自分が
急な頭痛や吐き気に襲われて倒れたことを思い出すー。
「ーー……ま、まさかー…じ…事故の影響がまだー?」
守はハッとしたー。
事故の際に、澪は頭を打っているー。
だからこそ”記憶喪失”も、より自然に演出できたー
だがー
頭の衝撃は、少し時間が経過してから影響が出てくることもあるー。
病院の先生が”少しでも異変があったらすぐに連絡してほしい”と
言っていたことを思い出すー。
そしてー。
その”異変”は、確実に出ていたのだー。
”鼻血”ー
元々、澪が鼻血を出しやすいのかもしれない、だとかー
”俺が興奮してるから”だとかー、
そう思っていた守だったが、
”鼻血”は、澪の”身体からの危険信号”だったー。
見えない頭部のダメージによってー
鼻血を引き起こしていたことに、澪に憑依した守は
”俺が興奮しているから”と思い込んでいて気づかなかったー。
「ーーくそっ!せっかくJKの身体を手に入れたのに!冗談じゃねぇぞ!」
守は謎の異世界の中で叫ぶー。
「ーーふざけるな…!ふざけるな…ふざけるな!」
誰に叫んでいるのかも分からず、守は叫ぶー。
自分は死ぬのだろうかー。
今までの人生、ロクな人生ではなかったー
それを、ようやく逆転させるチャンスが来たのにー
「ー自分の身体を捨てて、記憶喪失まで装って
女子高生の身体を手に入れたのに…!ふざけるなよ…!」
怒りの形相で、何度も何度も恨み言を叫ぶー
もしもこの世界に神様がいるのであれば、
この俺の怒りの声を聞かせてやりたいー
守はそう思いながら何度も何度も叫ぶー
「ーー高校生のうちはあのエロイ妹で遊んで、
大学生になったら一人暮らしを始めて…
くそっ!俺の夢を返しやがれ!」
”死神”かー?
”天使”かー?
誰でもいいー
苦労してようやく手に入れた楽園ー
それを失う恐怖から、守は必死に一人で叫んだー
だがーー
「ーーー!?!?!?!?!?」
突然、謎の世界に強烈な光が差し込みーーー
「ーーー澪!澪!」
「ーーー……あ…」
澪は、目を覚ましたー
「よかったー」
澪の母親が、嬉しそうに澪を抱きしめるー
澪の妹・咲もその場にいるー。
「ーーー…お… …わたし…」
”俺”と言いそうになったが、澪はすぐに言葉を修正するー。
事故の時の影響がまだ完全に取り除けていなかったことやー
鼻血という兆候が出ていたのに、それに気づかず無理をしていたことー
そして何より、澪の身体で守が何度も興奮したりしていたことで、
強い負担がかかり、軽い脳梗塞を起こして倒れたとのことだったー
だが、
幸い、後遺症が残る可能性は低いのだと言うー。
「ーー(へへ…危なかった…まだ俺にも悪運が残ってたみたいだなー)」
澪は、数日後ー
無事に退院を果たしたー。
「ーーーふふふふ…♡」
”しばらくは、あまり激しいことはしないようにしないとな”
そう思いながら、”記憶喪失の澪”を再び演じながら、
日常生活へと戻っていくー
しかしー
澪には少し気になることがあったー
「おはよ~!」
澪が彼氏の秀雄に声をかけるー
「あー…おはよう」
けれど、なぜか秀雄が他所他所しいー。
いや、秀雄だけではないー。
妹の咲まで、余所余所しいのだー。
理由を聞いても、二人は答えてくれないー
「ー(まぁ、こいつはいいんだけど、あの妹に嫌われるのは困るなぁ)」
澪はそんな風に思いながら”まぁ、いいか”と、笑みを浮かべたー
・・・・・・・・・・・・・・・・・
あの日ー
学校で倒れた澪を救急車に運びー、
秀雄から連絡を受けた澪の妹・咲はすぐに姉の元に駆け付けたー
だがー
その際に、澪はうわ言のように言ったのだー
「ー自分の身体を捨てて、記憶喪失まで装って
女子高生の身体を手に入れたのに…!ふざけるなよ…!」
「ーー高校生のうちはあのエロイ妹で遊んで、
大学生になったら一人暮らしを始めて…
くそっ!俺の夢を返しやがれ!」
とーーー
「ーーー…澪」
秀雄は、あの時、意識を失っていた澪が、うわ言のように言った言葉が
頭に焼き付いて離れなかったー
妹の咲も同じだー。
澪に憑依した守が夢の世界で叫んだ言葉がー
現実世界で、意識を失っている澪の口からも放たれてしまっていたのだー
澪の母親が後から駆け付けた際には、澪は既に落ち着いていたー
だから、その言葉を聞いたのは
彼氏の秀雄と、澪の妹・咲だけー。
「ーーーー………ただの………うわごとだよなー…?」
秀雄は、澪のほうを遠くから見つめながら
そんな風に呟くもー
”本当に澪は記憶喪失なのだろうかー”と、いう
不安がいつまでもいつまでも頭の中から消えなくなってしまったー
おわり
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
なんとか命は助かりましたが
周囲に少し感付かれてしまいましたネ~☆
このまま上手くやっていけるのかどうかは、
今後の振る舞い次第…☆!
お読み下さりありがとうございました~!
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