<憑依>記憶を失くした彼女②~入院生活~

交通事故に遭い、
記憶喪失になってしまった彼女。

しかし、本当に彼女の身に起きていることには
誰一人として、気づいていなかったー。

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「ーーお姉ちゃん……」

妹の咲が、事故に遭った姉・澪の病室に
やってきて心配そうな表情を浮かべていたー

「ーごめんね……今はまだ、何も思い出せなくてー」
澪が悲しそうな表情で咲のほうを見ると、
咲は、涙を浮かべながら澪のほうを見るー

澪はそんな妹の咲を見て
”可愛い妹だな…クククー”と、心の中で笑うー。

”お姉ちゃん”の立場を利用すればー…

「ーーごめんねー…
 でも、咲ちゃんに色々教えてもらえれば
 思い出せるかもー」

澪はそう言いながら咲の頭を撫でたー。

”へへへ…俺がこの子の頭を撫でたら通報されるだろうけど、
 今は”お姉ちゃん”だからなぁ…
 それにー…
 ”お姉ちゃん”って呼ばれるだけで、この身体、
 すげぇ興奮してたまんねぇぜ”

そんな下心を、目の前にいる
”記憶喪失の姉”が抱いているとは夢にも思わず
咲は「うんー…お姉ちゃんに思い出してもらえるように頑張る…!」
と、明るく振る舞いながら、澪のほうを見つめたー。

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夜ー

「ーーはぁぁぁ~…触り放題なんて…へへ」
澪は、病室で笑みを浮かべながら
嬉しそうに両胸を揉んでいたー

「ーはぁぁぁ…この胸も、これからは俺のもんだー…
 揉み放題だぜ…へへへへへっ」
両胸を揉み続けながら、激しく興奮してきた澪は、
ニヤニヤしながら自分の唇に手を触れたり、
髪を触ったり、お尻のあたりを触ったりするー。

「ーー記憶喪失の設定にしてるから、
 俺好みにどんどんカスタマイズできるしー…
 たまんねぇなー」

澪は、そう呟くと、これからの自分のことを考え始めるー。
退院したらー
まずは女子高生として高校に行くことになるだろうー

高校復帰を果たしたら、まずはクラスで一番エロイ女子と親しくなりー、
女子の友達をできる限り増やしたいー。

「ーーってか、体育の授業前とか…楽園じゃんー」
鼻血を吹き出しそうになりながら、澪はそう呟くと、
体育の授業前の着替えや、休み時間に女子トイレに入ることなどを
妄想しながら、ニヤニヤと笑うー

記憶喪失になって辛いはずの少女がー
病室で一人、クスクスと身体を震わせながら笑っているー

「ーーー今まで、ロクな人生じゃなかったからなー…
 くふふふ…やっぱり、神様ってのはいたんだー…!
 俺に、こんな身体を与えてくれて…
 ふふふふ…はははっ!ははははははははっ!」

澪とはまるで別人のような笑い声を上げるとー
「やべっ!」と澪は笑いながら鼻のあたりを押さえるー

「興奮しすぎて鼻血出ちまったー」
と、慌てて病室内のティッシュを手に取ると、
そのままニヤニヤと笑みを浮かべながら、
「ーにしても、女子高生に鼻血出させちゃうとか…
 それもまた興奮するぜ…」と、鼻血を流しながら
笑みを浮かべたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーごめん…」

数日後ー
お見舞いにやってきていた秀雄が、
澪に向かって頭を下げるー。

澪は「ううん。気にしないで。こうして命だけでも助かったんだし」と
微笑むー。

「でもさー…あの時、もっと早く俺が気づいてればさー…」
秀雄は、”事故”の時のことを思い出しながら
後悔するー。

秀雄は、澪を守るために澪を突き飛ばそうとしたがー
逆に秀雄を庇おうとした澪に突き飛ばされてしまいー
自分が澪に助けられてしまったことを
情けなく感じていたー

「ーー(まぁ、実際にはお前を突き飛ばしたのは俺だけどな)」
澪は笑みを浮かべながら心の中でそう思うー。

車が追突する直前に、守は澪に憑依したー。
恐らく、守が何もしなければ、
澪は、秀雄に突き飛ばされて、
事故に巻き込まれたのは秀雄になり、
澪は助かっていただろうー。

だが、記憶喪失を演出するため、
”澪”が車に追突される必要があったー。

だからー、あの瞬間に澪に憑依して、
秀雄を突き飛ばしたのだー。

「ーー最初、敬語使われた時には、正直、ショックだったけどー」
秀雄が苦笑いしながら言うと、
澪は「ごめんごめんー…少しずつ、頑張るからー」と、微笑むー。

「ーまだ、記憶は全然?」
秀雄は、”澪が記憶喪失”ということを心の底から
信じてしまっているー

それだけ”あの事故”は、澪が記憶喪失になってしまったー、
という状況を作るのに、説得力のある光景だったー。

「ーーうん。全然ー。
 でも、秀雄が彼氏だってことは分かったし、
 お母さんとかお父さんのことも、ちゃんとまた覚えたし、
 妹のことも、ねー」

澪の言葉に、
秀雄はまた、ショックを受けたー

”妹のこと”
記憶を失う前の澪ならそんな言い方はしないし、
澪は、病弱な妹・咲が体調を崩すたびに、
ものすごく暗くなってしまうような、そんな子だったー

でも、今の澪からはそんな気配は全くないー。

「ーあ、そうだ!一つ聞きたいんだけどー」
澪が口を開くー

「ーん?何?」
秀雄が言うと、
澪は「ーわたしと…あなたって、その……アレしたの?」と
顔を赤らめながら聞くー

”この女が新品か、中古か確かめておきたいからな”
澪に憑依している守は笑みを浮かべながらそう、心の中で呟くー。

「あれって?」
秀雄が首を傾げると、
澪は「その…エッチなことー」と、言葉を続けたー。

「ーーーーはっ!?えっ!?い、いきなりー何だよ!?」
秀雄はあまりの驚きに戸惑ってしまうー。

「ーー…わっ!?そ、そんなに驚かないでー!?」

澪がそう叫ぶと、
秀雄は、澪の身を改めて案じるー。

”日常的なこと”の記憶は残っていたー。

だが、”そういう部分”にも多少は影響があるのか
”澪だったら言わないようなこと、しないようなこと”も
するようになっているー。

澪の人生に関する記憶以外にも、やはり影響があるのかもしれないー

と、秀雄は考えていたー。

「ーーし、してないけどー…」
秀雄が恥ずかしそうに言うー。

「み、澪、そういうの苦手だったしー
 俺も、苦手な澪にそういうこと無理やりさせるような
 趣味はなかったからー」

秀雄の言葉に、澪は「そっか」と、嬉しそうに微笑んだー。

”やったぜーこの女は新品だぜ!へへ”

澪がニヤッと笑っているのを見てしまった秀雄は
少し不安そうに
「だ、大丈夫か?」と呟くー

澪は「あ、うん!身体の気分はいいの!
まだ腕と腰と頭はちょっと痛いけどーあとは全然ー
後遺症とかもないみたいだし」と微笑むー。

初日以外ー
澪はとても元気だー
記憶喪失になったことを不安そうに思う素振りは、
あまりないー。

まぁー
”生まれたて”みたいな感じで、
ある意味新鮮な気持ちなのかもしれないけれどー…。

「ーーじゃあ…俺はこれで」
秀雄が言うと、澪は「うん。いつも心配かけてごめんね」と微笑むー。

「いや、いいよー。
 澪も、あまり記憶のことで焦ったりしないようになー
 ゆっくり思い出していけばいいと思うし、
 学校でも俺とか、澪の友達がサポートしてくれると思うからー」

秀雄の言葉に、澪は「ありがとう」と頷くと、
そのままベッドに身体を横たわらせたー。

立ち去っていく秀雄ー。

「ーー…まぁ…お前みたいなやつは好みじゃねぇし
 男とヤル趣味もあんまねぇからー
 お前は、残念だけど、お別れだなー」

澪は静かにそう呟くと、
秀雄を馬鹿にするようにして、クスッと笑ったー。

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そしてー
澪は退院の日を迎えたー。

「ーーやべっ…想像しただけで鼻血がー」
退院直前に、病院のトイレでニヤニヤしながら
鼻血を垂らすと、
澪は、そのまま廊下の方に向かって歩いていくー。

これから始まる楽園ー。

コスプレ趣味を始めてみたいし、
バイトをしているかどうかは知らないが、バイトもやってみたいー
それも”女”を生かすようなバイトを、だー。

学校では百合の世界を作り上げたいー。

彼氏の秀雄とは少しずつ距離を取りー
家では妹の咲を”お姉ちゃん”として愛でていきたいー。

「ーークククー」
トイレから出たばかりの澪が鼻血を拭きながら
廊下を歩いていると、
「あ!お姉ちゃん!」と、笑いながら背後から妹の咲が声をかけて来たー

ギクッ!とする澪ー

”今、素で笑っていたのを見られたかもしれないー”
そんな風に思ったものの、
咲は、姉の澪が不気味な笑みを浮かべていたことには
気付かなかったのか、
そのまま「やっと退院だね!待ちきれなくて迎えに来ちゃった!」と
笑みを浮かべたー。

病弱な咲は、今は元気でも、
またすぐに風邪を引くだけで、寝込んでしまうぐらいに
体調を崩してしまうー。
そんな咲のことを、姉・澪はとても心配していたー。

だが、今の澪には、そんな感情は、ないー
”妹の咲を性的な目で見る姉ー”

そんな、悪魔のような姉に変わってしまったー。

「ーお姉ちゃん、鼻血出てるよ?」
咲が言うー。

澪は”まさか興奮して鼻血出ちゃった”なんて言えないー、と
思いながら「大丈夫大丈夫!」と笑うと
「ーじゃあ、咲ちゃん…手をつなごっか!」と微笑むー。

「ー咲ちゃんはいや~!咲って呼んで~!」
咲が不貞腐れた様子で言うー。

「ーあ~ごめんごめん…
 記憶が無くなっちゃったからついー」

澪は笑うと”記憶喪失設定はほんと便利だぜ”と
笑いながら、「じゃあ咲…いこっか!」と、
病院の外で待っている両親の元へと二人で向かったー。

”へへへ…これから俺はこんなかわいい子のお姉ちゃんになるんだー
 しかも、俺自身可愛いお姉ちゃんとしてなー”

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澪が退院して1週間が経過したー。

明日からはようやく、澪が学校に復帰するー。

澪の両親に聞いたところによれば、
澪の記憶は失われたままで、
戻ってはいないものの、
今は記憶喪失に対する不安や、悩むような素振りも見られず、
案外元気にやっているのだというー。

各種検査の結果、脳に異常はひとまず見られず、
外傷もほぼ治癒したことからの退院とはなったものの
”記憶喪失”が続いていることから、
澪は今後も、通院は続けることになる様子だったー

「澪ー…」
彼氏の秀雄は、そんな澪の退院を喜びながらも、
どこか寂しい気持ちでいっぱいだったー。

澪は無事だったー
でも、”あの時までの澪”は、もう戻ってこないのかもしれないー、とー。

そしてー
秀雄は気づいていないー
”本当に起きていることは、記憶喪失などではない”ということをー。

いやー、秀雄だけではない。
澪の妹の咲も、澪の両親も、”澪に憑依した守”の記憶喪失演出に
完全に騙されてしまっているー

澪は”記憶喪失”になったのではないー。
”憑依されて、身も心も乗っ取られてしまった”ー

そんな、事実を、周囲の人間は、誰一人気づかないままだったー。

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「うん、大丈夫ー。ありがとうー。
 先生からは”体調に異変がなければ、身体のほうはもう心配ない”って
 言われてるしー
 あとは、そうー記憶だけ元に戻れば、ねー」

澪はそう言いながら笑うー。

「ーーそっか。よかったー。
 クラスのみんなのこととか、分からないことがあればー
 何でも言ってくれれば教えるからー」

秀雄が言うと、澪は「うん」と、微笑んだー。

「ーーーー」
秀雄が去って行ったあとー
澪は、口元を手で隠しながら
笑みを浮かべ始めるー

「ー可愛い女子高生ーいっぱいいるじゃねぇかーへへ」
澪は、自分も女子高生とは思えないような言葉を
呟くと、不気味な笑みを浮かべたー

③へ続く

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記憶喪失を装い、自然な形で
女子高生の人生を奪った男ー…

次回が最終回デス~!
ぜひ、どうなるのか見届けて下さいネ~!

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