<憑依>止まらない嫌がらせ③~計画~(完)

”豹変した隣人”による嫌がらせー。

止まらない嫌がらせを前に、野島家はー…?

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーやめて…お願い…やめて!」
下校中だった麻鈴が、隣人の娘、美咲に
連れられて向かった先は、
人の気配のない廃墟だったー。

”なんでこんなところにー?”と、
麻鈴は途中で何回か確認したものの、
美咲は”すごいもの見つけたの!”の一点張りで、
普段から麻鈴は美咲と仲良しであったことから、
廃墟の奥まで一緒にやってきてしまっていたー。

しかしー
廃墟の奥には何も存在せずー、
美咲が突然豹変して、麻鈴に乱暴を始めたのだー。

「ー怖がる顔も、可愛いじゃんー」
美咲がニヤニヤしながら言うー。

「ーみ…美咲ちゃん…ど、どうしちゃったのー…?」
目に涙を浮かべながら言う麻鈴に対して、
美咲はクスクスと笑うー。

「ーー麻鈴ちゃんみてたらさぁ、わたし、ムラムラしちゃってー
 うふふふふふふ♡」
美咲が無理やり麻鈴の胸を触り、スカートの中に手を入れるー

悲鳴を上げる麻鈴ー。

美咲に憑依している和也の親友・恒吉は、
和也の妹・麻鈴とは面識がなかったー。

隣人の美咲に憑依して、麻鈴を見かけた恒吉はー
麻鈴に一目ぼれしたー。

そして今日、美咲の身体のまま、麻鈴を襲ったのだったー。

”和也への復讐にもなるしー最高だぜー”

美咲が麻鈴に無理矢理キスを繰り返すー。

泣きながら美咲を拒む麻鈴とー
狂ったように笑いながらキスを繰り返す美咲ー。

「ーーはぁぁぁ…たまんねぇ…もう我慢できねぇー」

”女の子同士だけど、ヤッちまうかー”
そんな風に思いながら美咲は、麻鈴を無理やり押し倒すー。

そんな美咲の”狂った行為”に、麻鈴は悲鳴を上げながら
足で美咲を押し飛ばしたー

麻鈴が叫ぶー

「どうしてこんなことするの!?」
とー。

足で突き飛ばされた美咲はへらへら笑いながら立ち上がるー。

「ー麻鈴ちゃん見てたらー興奮してきちゃったんだもんー
 女の子同士なんだし、いいじゃん!」

美咲の言葉に、麻鈴は「美咲ちゃんなんて、大っ嫌い!」と叫びながら
廃墟の出口の方に向かっていくー

美咲はニヤニヤしながら
「あ~~あ…嫌われちゃったなぁー」と、美咲の顔を自分で
つんつんとつつきながら、そのまま歩き出したー

・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーそういえば、美咲、遅くないか?」
帰宅していた父・茂雄が言うー。

「ーー…」
長男の和也は表情を歪めたー。

そういえばさっきー
大学から帰宅した際に、家のすぐそばで
隣の家の美咲が、麻鈴を連れていくのを見かけているー。

「ーーーーーー」
少し前に、家の玄関に紙を貼ろうとしていたのはー
女だったことをふと思い出すー

顔を見ることはできなかったがー
そういえばー…

”どことなく、隣の子…美咲に体格が似ているようなー”
そんな気がしたー。

「ーーー俺さ…」
和也が、”さっき隣の美咲ちゃんが、麻鈴の手を引っ張ってくのを見た”
と、呟くー。

「ーーえ?」
戸惑う母の知代子ー。

「ーーー俺、ちょっとその辺、見てくるー!」
心配になった和也が家から飛び出すー。

少し前を置いてから、父の茂雄も「何だか嫌な予感がするー」と
家から外に向かうー。

母の知代子も後に続こうとしたがー
その時ー
”電話”が掛かってきたー

また、いつもの無言電話ー
そう思いながら、知代子が「はい…」と電話に出るとー

”もしもし~~~????”
と、いう声が聞こえてきたー。

「ーーーあなたはー…」
知代子が表情を歪めるー

その声は、隣の家の真田家の母親ー…美由紀の声だったからだー。

”ふふふふふふー
 そんな怯えた声出しちゃって~…”

美由紀はそこまで言うと、
低い声で脅すような口調で続けたー

”だから、新聞取った方がいいって言ったでしょ?”

とー。

「ーー!?!?!?!?」
電話がそれで切れるー。

「ー!?」
知代子は戸惑うー

「どういうことー?」

嫌がらせが始まる少し前まで、知代子は
しつこい新聞勧誘に頭を悩ませていたー。

だがー
それと隣人の美由紀に、何の関係がー?

そんな風に思っていると、
玄関の扉が開いたー。

そこにはー
隣人の美由紀の姿があったー

「ーーちょ…!?さ、真田さんー…勝手に家にー?」
知代子がそう言うと、
美由紀は笑みを浮かべたー。

「ーーへへへへへへへー」
不気味な笑みを浮かべる美由紀ー。

その直後ー
美由紀が「ぁ…」と、声を上げてその場に倒れてー
美由紀から霊魂のようなものが飛び出すとー
しつこく新聞勧誘をしてきていた小汚い新聞勧誘の男が姿を現したー

「ーーえ…!?!?え…!?!?!?」
混乱する知代子ー

倒れたままの隣人・美由紀は動かないー。

「ーー我々はネットで知り合ったんですよー」
新聞勧誘の男は、笑みを浮かべながらそう呟いたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーどういうことだー?」
家から飛び出した野島家の父・茂雄は
家から少し離れた場所で隣人一家・真田家の父・隆介と対峙していたー。

「ーー別の人間の身体でこうして、お前とまた
 会うことになるとはなぁ」

隣人の父・隆介は、茂雄に不正を暴かれ、懲戒免職になった
会社の同僚・丹沢部長に憑依されていたー。

「ー俺が、お前の家への復讐をネットで呼びかけたんだー
 お前たちの家の個人情報を晒してなー。

 復讐を呼び掛ける専門のサイトがあってな、
 そこでお前たちに恨みを持つ人間がいるかどうか、
 探してみたら、
 俺以外にも二人、集まったんだよー。

 案外、集まるもんなんだなーこういうのー」

憑依された隣人の父・隆介が煙草を吸いながら笑うー。

茂雄が隆介を睨みつけると、
丹沢部長に憑依された隆介は笑みを浮かべたー。

「ーー裏取引で手に入れた”憑依薬”
 これを使って、俺たち三人は、お前の隣人一家に憑依してー
 嫌がらせをすることにしたんだー。

 この親父には、俺がー
 この男の妻・美由紀には、新聞勧誘の男がー
 そして、この家の娘・美咲には、お前の息子を怨んでいる男子大学生がー
 それぞれ憑依したんだー」

丹沢部長に憑依された隆介の言葉に、
茂雄は表情を歪めるー

「なんだってー…?真田さんはー…三人とも…」

「ーそう。お前の隣人は、この男を含めて全員、憑依されてるんだー
 クククククー」

隆介が笑うー。

茂雄は唖然としながら、隆介のほうを見つめながらー
”まず、一ついいかー?”とだけ、呟くー。

「ーーーなんだ?」

”丹沢部長”は女好きだったはずー
それがなぜ、隣人の父親に憑依しているのか、茂雄は気になったのだー。

それを問うとー
隆介に憑依している丹沢部長は、不満そうに呟いたー

「ーくそっ!俺だってこの男の娘か、最悪でも妻に憑依したかったんだ!
 くじ引きでこいつさえ引かなければー!」

悔しそうに言う隆介ー
丹沢部長・新聞勧誘の男・恒吉の三人はどうやら”くじ引き”で
憑依対象を決めたらしいー

「ーーーー!」
隆介が目を見開くー

”変な質問”をしたのは、
隆介の油断を誘うためー。

隙をついた茂雄は、隆介にタックルを食らわせー
隆介を取り押さえたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーみ~つけた」
廃墟では、真田家の娘・美咲が制服のスカートを
見出しながら、麻鈴に追いつき、麻鈴の腕を
乱暴に掴んでいたー

「ー美咲ちゃん!なんでこんなことするの!
 お願い…やめてよ!」
泣きじゃくる麻鈴ー

美咲は「いい…!いい…!興奮しちゃう!」と、
高い声で興奮を露わにしてー
麻鈴を襲おうとしたー

その時だったー

「ーーやめろ!!!」
背後から、間に合った兄・和也が美咲の腕を掴むー

美咲が咄嗟に「ー和也ァ…!」と鬼のように
表情を歪めながら襲い掛かってくるー。

「ー俺たちに嫌がらせをしてたのは、君なのかー!?」
和也はそう言いながら、制服と髪を見出しながら
襲い掛かってくる美咲と戦いを繰り広げるー

美咲は「そう!わたしだよ!ははっ!はははははっ!」と
笑いながら叫ぶー

美咲に憑依している恒吉は、あくまでも”憑依”のことを
明かさないままー

「ーーわたしが~あんたたちの家に紙を貼ったり~
 無言電話を掛けたり~!
 資料請求勝手にしたり~!
 してたの!
 
 あっははははははははっ!」

美咲の言葉に、唖然とする和也と妹の麻鈴ー。

「ーーーそんな…美咲ちゃんー…」
麻鈴が悲しそうに呟くー

隣人の高校生ということで、美咲と仲良しだった麻鈴ー
妹と仲良しの隣人ということで、美咲を可愛がっていた和也ー。
二人にとって、美咲の豹変はショックでしかなかったー。

「ーーーくそっ!…なんで…なんでそんなことしたんだ!」
和也はそう言いながら、美咲の拳を受け止めるー
美咲に足を引っかけて、美咲を転倒させた和也はー
美咲を追い詰めながら、「どうしてだー…!何で俺たちに嫌がらせなんかー!」と叫ぶー。

「ーーーーーーーククー」
ニヤニヤしながら笑う美咲ー。

その時だったー

和也の家の方角から、火が上がっているのが見えたー。
消防車の音が周囲に響き渡り始めるー

「ーーははっ…ははははははっ!」
倒れたまま笑い始める美咲ー。

「ーーーこれは、お前への復讐だー!」
美咲に憑依している恒吉が叫ぶー。

「ーーなに!?」
和也が、美咲の言葉に違和感を感じながらも、
妹の麻鈴が「お兄ちゃん…!」と、不安そうに
家の方角のほうを指差すー。

「ーーくそっ!」
美咲をそのままにして和也は家の方に向かって走り出すー。

「ーーーあ、待って!」
勢いよく走りだした兄に続こうとする麻鈴ー。

麻鈴は、ふと倒れたままの美咲のほうを振り返るとー
「美咲ちゃんー…どうしてー」と、悲しそうに呟いてから、
倒れたままニヤニヤしている美咲のほうを見つめたー…。

・・・・・・・・・・・・

和也は必死に走ったー。

家には両親がいるー。
まさか、家が放火されたんじゃー…

そんな風に思いながら、必死に家の方に向かって走る和也ー。

だがー
燃えていたのはーー
和也たちの家ー、野島家ではなくー
隣人一家・真田家の家だったー。

「ーーー和也!」
父親の茂雄が叫ぶー。

燃える隣人の家を見つめながら母親・知代子も戸惑った様子だー。

そしてー…
後から駆け付けた妹の麻鈴も呆然とする中ー

隣人・真田家の家は、全焼したー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

数日後ー

隣人の家が全焼したものの、真田家の建物と
野島家の建物は、少し距離があったため、
幸い、野島家の家に燃え移らずに済んだー。

だがー
結局、真田家の両親は家の中でそのまま死亡、
隣人一家の長女・美咲は、和也たちと対峙した廃墟地帯で
意識を失っているのを発見され、
救助されたものの、
”何も覚えていない”
”記憶が飛んでる”の一点張りで、
さらには自宅の全焼と両親の死でまともに話せる精神状況じゃなかったー。

隣人・真田家の長女・美咲による嫌がらせの真意はー
和也には分からないままだったー。

そう、和也にはーーー

和也が大学に行くために、いつものように家の外に出るとー
父・茂雄と母・知代子と、妹・麻鈴は不気味な笑みを浮かべたー。

あの時ー

隣人の母・美由紀の身体から抜け出した新聞勧誘の男はー

「ーーー次は”あんたの身体”を貰いますよー」

「ーーひっ!?」

和也の母・知代子に憑依したー

あの時ー

憑依された隣人の父・隆介を取り押さえた
和也の父・茂雄は、隆介に憑依している丹沢部長を
なんとか隣人の身体から追い出そうとしていたー

だがー
突然、隆介にキスをされてー
男同士のキスに驚く茂雄ー。

その直後ー
キスを通じて、隣人の隆介に憑依していた丹沢部長に
茂雄は身体を乗っ取られてしまったー

そしてー
野島家の両親に”乗り移った”二人は、
真田家の二人の身体を、真田家の家まで引きずっていきー、
そのまま”放火”したー。

さらにー…
その火を見て、自分の家の方向に和也が引き返した直後ー
和也の妹・麻鈴は、隣人の女子高生・美咲に憑依していた恒吉に
”乗り移られて”身体を乗っ取られてしまっていたー。

第1段階は
”隣人家族に憑依して、野島家に嫌がらせをする”

第2段階は
”野島家自体に憑依して、家族を滅茶苦茶にする”

第3段階はー
”野島家の人間の身体を開放して、滅茶苦茶になった家族を見せつけて絶望させるー”

「ーーククククー
 さて、こいつらを滅茶苦茶にしてやろうぜ」
父・茂雄に憑依した丹沢部長が笑うー

じきに”隣人の真田家に放火したのが、茂雄と知代子”だと警察も気づくだろうー。

それまでにこの家の人間を滅茶苦茶にして、逮捕される直前に身体を開放して
地獄を見せてやるー

それが”第3段階”だー。

「ーーへへへへ…」
母・知代子に憑依している新聞勧誘の男が笑うー。

「ーーあいつ、妹がエロイ動画をネットにばらまいたら、どういう反応するかなぁ」
妹・麻鈴に憑依している兄・和也の友人、恒吉が笑うー。

野島家の本当の地獄は、今”第2段階”へと突入しようとしていたー

おわり

・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

憑依された隣人が嫌がらせしてくる憑依モノでした~!

お読みくださりありがとうございました~!!

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