<憑依>止まらない嫌がらせ①~悪意の始まり~

ある日を境に豹変した隣人一家ー。

隣人一家が仕掛けてくる執拗な嫌がらせによって、
ごく普通の平穏な生活は、壊されていくー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーいってきます~!」

ごく普通の家庭・野島家ー
ここでは、両親と2人の子供が暮らしているー。

娘の麻鈴(まりん)が、玄関から家の中に向かってそう
叫ぶと、大学に向かう準備をしていた兄・和也(かずや)が
「ーまた忘れ物してるんじゃないのか?」と、
揶揄うように、麻鈴に言い放つー

「今日は、大丈夫だもん!」
高校生の麻鈴が不貞腐れたように言うと、
和也は「本当かなぁ~?」と、さらに麻鈴を揶揄うー。

「む~…本当だし!」
麻鈴が少しムキになって言い返すと、
和也は「はは、気をつけてなー」と、
麻鈴を笑いながら送り出したー。

父・茂雄(しげお)は、既に朝早くから
仕事に出ており、既に不在ー、
母の知代子(ちよこ)は、台所で何やら
作業をしているー。

「じゃあ母さんー、
 俺もそろそろ行くよー」
そう呟くと、母の知代子は「いってらっしゃい」と
穏やかに息子に対して言い放ったー。

和也が玄関から出て、
隣の家からちょうど出てきた高校生に
「あ、おはよう」と、挨拶をするー。

「おはようございます~!」
真面目そうな雰囲気の眼鏡の少女が
和也に対して挨拶を返すと、
そのまま反対側の方向に歩いていくー。

隣人の真田(さなだ)家ー。
両親と、一人娘が暮らしている家で、
野島家との関係も良好だー。

和也の妹の麻鈴と、隣人の一人娘・美咲(みさき)は、
通っている高校生は違うものの、
ちょうど同年齢であることから仲が良く、
時々休日には一緒に遊び行くようなこともある間柄だー。

和也からすれば、妹の友達、と言えるような存在で、
時々、相談に乗ったりするようなこともあるー。

今日もー
これからもー
野島家と、隣人の真田家は
穏やかな日常を送っていくはずだったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・

野島家の父親・茂雄は表情を歪めていたー

最近、茂雄が勤務する会社ではある問題が起きていたー。

それが、とある社員の”不正行為”だー。

茂雄が部長を務めるライバル部署の部長で、
茂雄は、偶然、その部長の不正を知ってしまったのだー。

告げ口をする趣味はないが、
不正を知っておきながら見過ごせば、それは同罪になる可能性もあるー。

そのため、茂雄は先日、会社側にライバル部署の部長・丹沢(たんざわ)の
不正行為を会社に報告していたー。

その結果ー、
丹沢部長は今まで数多くの不正を働いていたことが判明しー
結果ー、懲戒免職となったのだったー。

荷物を回収しにやってきていた丹沢部長とすれ違う茂雄ー。

「ーー野島ー…俺を蹴落として満足かー?」
うすら笑みを浮かべながら丹沢部長が呟くー。

茂雄にそんなつもりはないー。
ただ、法的にも問題がある不正を偶然見つけてしまったために
そのまま黙っておくわけにはいかなかったー。
それだけのことだー。

「ーーー丹沢…アレを見過ごせるわけないだろ?」
茂雄が困惑しながらそう言うと、
丹沢部長は「せいぜいいい気になってるといいさ」と
捨て台詞を残して、そのまま立ち去って行ったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

大学の昼休みー
野島家の長男・和也は、
親友の恒吉(つねよし)と、雑談しながら
昼食を食べていたー。

「ーーこの前は悪かったな」
恒吉が謝罪の言葉を口にする。

そんな恒吉に対して、和也は「ははは、別に構わないさ」と
言葉を口にしながら、
「俺の方こそ、悪かったなー」と申し訳なさそうに言葉を口にするー。

大学で共に行動することの多い
和也と恒吉ー。
しかし、先月、二人の関係に水を差す出来事が起きたー。

和也の親友・恒吉には彼女がいたのだが、
その彼女が、和也のことが好きになってしまい、
和也に告白したのだったー。

だが、和也は当然、告白してきたその子が、
親友の彼女であることを知っていたために、
それを断ったー。

そして、恒吉に相談したのだー。

恒吉は、酷く驚いていたものの
「相談してくれてありがとう」と頭を下げていたー。

その後、恒吉は、その彼女と話し合い、別れたー。
恒吉の彼女は、その時に「あんたのせいよ!」と、和也を
逆怨みして叫んでいたが、
それ以降はトラブルになっておらず、落ち着いているー。

「ーお前からすりゃ、俺に相談するしかなかったもんな」

「ーーまぁな…」
和也が苦笑いするー。

最初は、恒吉の彼女に、自分は付き合えないことを告げて
恒吉と話し合うように諭した和也だったが、
その後も再度告白してきたために、
恒吉に相談せざるを得なかったのだー。

その彼女は”恒吉とはもう別れる相談もしたから”などと
和也に言っていたが、案の定、恒吉はそんな話を全く知らず、
困惑していたー。

「ーーまぁ、結果的に俺も彼女ナシになっちまったけどなー」
苦笑いしながら言う恒吉に対して、
和也も苦笑いしながら「お前なら、またチャンスもあるさー」と、笑みを浮かべたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・

放課後ー

和也の妹・麻鈴は
頬を膨らませながら下校していたー。

朝、兄の和也に”忘れ物してるんじゃないか?”と
揶揄われた際、「ないもん!」と強気に言い返した麻鈴ー

しかしー
忘れ物をしていたのだー。

「ーーーーー~~~」
”またお兄ちゃんに笑われる”
そんな風に思いながら帰り道を歩く麻鈴ー。

そんな麻鈴の姿を、川辺にいたホームレスの男が
鋭い目つきで見つめるー。

麻鈴は気づいていなかったが
そのホームレスは毎日、麻鈴が下校してくるのを
楽しみにしていたー。

きっかけはー
とても単純だった。

先月の下旬ー
そのホームレスが躓いて川辺付近の歩道で転倒してしまった際に、
たまたま下校中だった麻鈴が「大丈夫ですか?」と声を
掛けてくれたのだったー。

麻鈴からすれば、ただ単に”親切に”しただけー。

だが、人の愛情に飢えていたこのホームレスは
麻鈴のそんな行為を”勘違い”してしまったー。

それ以降、ホームレスは麻鈴が下校してくる
この時間になると、必ずこの場所から、
麻鈴のことを見つめているのだったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーお母さんねぇ、新聞。取ったほうがいいよー」

「またですかー?
 何度来られても、うちは契約するつもりはありませんのでー」

野島家の母・知代子は
最近しつこい悪質な新聞勧誘を断るとー、
そのままインターホンを切ったー。

ちょうど、少ししたタイミングで長男の和也が帰宅すると、
「ーーまたあの新聞屋来たんだけど、そのあたりにいなかった?」と
知代子が困惑しながら呟くー。

「ーーん?いや、いなかったけどー」
和也はそう言いながら「今度、俺がいるときに来たら、俺がガツンというよ」と
微笑むー。

今日もー
野島家の1日は”普通”に終わったー。

だがー
その日の夜ー
隣人の真田家に”ある出来事”が起こったことをー
野島家は知らなかったー。

翌朝ー

「なにこれ…?」
母・知代子が困惑の表情を浮かべるー

「ーど、どうしたんだ?」
父の茂雄が慌てて玄関の外に出てくるとー
野島家の玄関の扉に、謎の紙がたくさん貼りつけられていたー。

紙には何も書かれてはいないー。
”白紙”だー。

だがー
その紙が”嫌がらせ”で貼り付けられていることは
明らかだったー。

こんなに大量の紙が、玄関に”たまたまくっつく”なんてことは
あり得ないのだからー。

「ーーあら?野島さんー
 おはようございますー」

隣人・真田家の母親、美由紀(みゆき)が、
声を掛けてくるー

美由紀は大人しそうな雰囲気の母親で、
野島家の母・知代子とは親しい間柄だー。

「ーーーあら??どうしたんですか?それー」
美由紀が少しニヤニヤしながら、
野島家の玄関を指さすー。

「ーーーあ…真田さんー。」
知代子が戸惑いながら言うと、
「ー嫌がらせだと思います」と、
知代子の夫である茂雄は、隠さずに言葉を口にしたー。

「ーー嫌がらせー」
隣人の美由紀はそう呟くと、
そのまま玄関の近くにやってきて、
野島家の玄関に貼られた紙を見つめるー。

「ーーー白紙をこんなに貼る人がいるなんて…
 野島さん、誰かに恨まれてるんじゃないですかぁ」
クスクスと笑いながら言う美由紀に、
知代子は違和感を抱いたー。

いつもは穏やかな感じの隣人・美由紀ー。
だが、今日はどうも、いつもと雰囲気が違う気がするー。

「ーー真田さん…?」
知代子が戸惑いながら口にすると、
隣人の美由紀は「あらごめんなさいー」と、ニヤニヤしながら
「何事もないといいですねぇ~」と、まるで面白がるかのように、
その場を立ち去って行ったー。

「ーーーー」
茂雄も、立ち去っていく隣人・美由紀の姿を見つめながら
違和感を抱いたのか、不審そうな表情を浮かべていたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーえ?何だよそれー」
長男の和也が、大学に行く準備をしながら
”玄関に貼られていた紙”を片付けている母・知代子の姿を
見かけて戸惑いの言葉を掛けるー。

「ーーさっき、外に貼られててー」
剥がした白紙の紙を、家の中に回収した母・知代子は
戸惑いながら、紙をゴミ袋の中に捨てているー。

「ーーなんか不気味…」
妹の麻鈴も戸惑いの表情を浮かべているー。

「ーまぁ、少し様子を見よう。
 無いとは思うが、続くようなことがあれば、
 こっちもちょっと注意しないとな」
父の茂雄の言葉に、家族はそれぞれ頷いたー。

「ーーあ、わたし今日、生徒会でやることがあって、
 少し早いんだった!」
妹の麻鈴の言葉に、兄の和也が「えっ!?麻鈴って生徒会だったの!?」と叫ぶー。

「ー何よ!?わたしが生徒会じゃだめなの?」
麻鈴が頬を膨らませながら言うと、
「ーーははは…いや、別にー
 でも、麻鈴みたいなうっかりさんが生徒会なんてー」と
ニヤニヤしながら言うー。

「ーーー…うっかりさんじゃないもん!」
麻鈴はそう叫ぶと、そのまま出かける準備をするー。

「ーふん~!」
わざと兄の和也の前でそう言って見せると、
そのまま玄関の方に向かっていきー、
玄関前の段差で躓いて、そのまま転んでしまう麻鈴ー。

「ーほらな~!やっぱりうっかりさんじゃないか~!
 っていうか、大丈夫か?麻鈴ー」

そんなことを言いながらー
転倒した麻鈴の方に近付いていくと、
麻鈴は「お兄ちゃんのせいだからね!」と、
目に涙を浮かべながら兄の和也のほうを見つめたー。

「ははは、ごめんごめんー。」

この時の野島家はまだー
これから起きる”執拗な嫌がらせ”には気づいていなかったー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

隣人の真田家ー。

娘の美咲が高校に出かけると、
美由紀と夫の隆介(りゅうすけ)が、二人抱き合って
何やらエッチなことを始めていたー

ニヤニヤとしている二人ー
元々、そういうことが多い夫婦なのかー

それともー

そしてー

野島家では、
子供二人と、夫が出かけて、知代子が一人になってから
しばらくしたお昼ー

”無言電話”が、大量にかかってきていたー。

「ーな、何なんですかー!?」
知代子が電話の向こうに向かって叫ぶー。

だがー
相手は何の返事もせず、そのまま電話を切ってしまうー。

「ーーー…何…何なの…?」
知代子は気味悪そうに電話の受話器を置くー。

野島家に対する”止まらない嫌がらせ”は
今、始まったばかりだったー。

”な、何なんですかー!?”

スマホの向こうからそんな声が聞こえてくるー

「ーーククククー」
スマホの電源を切った
隣人一家・真田家の娘・美咲は
静かに笑みを浮かべるとー
また、野島家に電話をかけなおすー。

「ーー美咲~!何やってるの~?」

昼休みの真っ最中ー
美咲の姿を見かけた友人が美咲に声を掛けると、
美咲は静かに舌打ちをしてー

「ー邪魔すんじゃねぇよ」
と、呟いてからー
友達のほうを振り返って「あ、ごめ~ん!」と笑みを浮かべたー

②へ続く

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

憑依が絡む隣人一家の嫌がらせー!?
続きはまた明日デス~!

今日もありがとうございました~!

コメント