<憑依>この世は世紀末①~崩壊した世界~

2XXXー。

人類の文明は崩壊していたー。

その理由は…
かつて人類が予想していないものだったー。

”憑依薬”で文明が崩壊した世紀末世界の物語…。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーへへへへへへ…久々のいい身体だぜぇ…」
可愛らしい少女が、ニヤニヤしながら舌を出して
歩いているー。

その手には銃が握られていて、
周囲にはまるで廃墟のようになった
”ゴーストタウン”のような光景が広がっているー。

「ーーー……」
ナイフを持ちながら身を隠している少年ー。

まだ、中学生か高校生ぐらいの年齢だろうかー。
そんな彼は、少し汚れたワンピース姿の少女の手を握り、
「大丈夫だからー」と何度も何度も呟いているー。

彼女は、幼馴染の文香(ふみか)ー

怯えた表情の文香を見つめながら、
啓介(けいすけ)は、「大丈夫」と、今一度優しく微笑むー。

彼らにはー
両親はいないー。

啓介の母親は憑依され、父親は憑依された母親に殺されたー。
その後、母親も、ボロボロになった状態で発見され、
”売却”されてしまったー。

文香の方の父親は、憑依族に殺されたー、
母親はやはり憑依されて、今でも”風俗クラブ”と呼ばれる場所で
働かされているー。

だがー
”この世界”では、それは珍しいことではないー。

既に”教育”も崩壊しており、
子供たちが学校に通わないのは当たり前だー。

この世界は今、
”強い者が弱い者の身体を奪う”のが当たり前となっている
”弱肉強食”の世界ー。

警察組織も既に崩壊して存在せず、
”治安維持局”なるものが、治安を守ろうとしているものの、
もはやそれもまともに機能していないー。

2XXX年ー
この世界は、完全に”崩壊”していたー。

今から数百年前に開発された”憑依薬”によって、
人類の文明は根底から覆されてしまったー。

遠い昔ー
”総合医療連盟”なる組織は、
医療用に”憑依薬”を開発したー。

当初の目的は、単純だったー。

”医師が、患者の身体に憑依して、患者の状況を正確に把握すること”
”医師が、患者の負担を少しでも和らげることー”

そんな、医療の発展を願ったことによるものだったー。

だが、その連盟の一部が暴走しー、
さらには、憑依薬自体が、外部の犯罪組織により流出ー。

機密だった憑依薬は量産され、
裏社会にあっという間に広がったー。

憑依薬により”誰が犯罪を起こすか分からない世界”になったー。

政治家や警察関係者ー、著名な人間が
次々と憑依され、暴走したり、自殺したりしてー
”社会機能”は、いとも簡単に崩壊したー。

警察は対応しきれず、
政治家にも対応は困難だったー

人類の”秩序”は一瞬にして崩壊ー、
世界の権力者たちは、あっという間に一掃され、
そこに待っていたのは”カオス”とも言える世界だったー。

憑依薬を手にした荒れくれ者たちは、
権力者を世界中から一掃したー。

憑依薬さえあれば、そんなことは簡単だったー。

身体を乗っ取って国ごと支配することもできたし、
自ら命を絶つことだって簡単にできてしまうー。

”国家”というシステムは崩壊しー、
一般市民は、好き放題身体を奪われ、
治安は悪化どころではない悪化を招いたー。

急に、隣を歩いていた友達に殺されたりー
親友に急にエッチされたりー、
真面目だった子が突然街中で全裸になったりー
そんなことも多発したし、

お店からの金品の強奪ー。
憑依を使った銀行強盗ー。

そんなことが、あらゆる場所で起きて、
憑依薬が流出してから世界が壊れるまでに、
そんなに時間はかからなかったー。

憑依薬を流出させてしまった”総合医療連盟”も
当然、抵抗したー。
総合医療連盟の当時の会長が、犯罪組織に向かって
”憑依薬”を取り戻すべく、反撃を起こしたー。

しかしー
”その報復”として、犯罪組織側は
”人類の歴史が変わるときだー”と、
一般市民にまで憑依薬を流出させー、
”憑依”による混沌はさらに広がったー。

この世界における憑依薬を牛耳る存在であった
”総合医療連盟”にも、
それを制御することはできずー、
総合医療連盟もあっという間に崩壊ー

世界は、”真の混沌”に支配されたー。

”憑依薬”は、”管理”されていてこそのものー。
それが、”ルールなし”に”誰でも手に入る世界”になってしまったらー、
人間の文明は簡単に崩壊するのだー。

どの国であろうともー
誰であろうともー

”身体を支配されて、好き放題されてしまう”

ということが、そこら中で起きれば
現行の法律・技術・システムでは対応することなど、
できないのだからー。

その結果がー
”今”だー。

既に、社会のシステムは存在しないー。
生まれたときから、子供は武器を手に取り、
”いつ憑依されるか分からない世界”を生き抜くー。

「ーーーーーーー」
啓介は、”かつて平和だった世界”で言えば
高校1年生の年齢にあたるー。

でも、この世界にはもはや学校も存在しないー。

啓介も、言葉を話すことはできるが、
文字を書くことも、読むこともできないー。

「ーーー啓介ー」
不安そうな文香ー。

「ーーーーー大丈夫…あいつらは行ったー」
啓介が安全を確認すると、文香と共に移動を開始するー。

啓介たちは今、この近くに存在する
”レジスタンス”の居場所を目指していたー。

レジスタンスー
各地に存在する”憑依されていない人間”たちの集団で、
”憑依”から身を守ると共に、憑依された人間たちからも身を守りながら
生活をしている集団だー。

”憑依”は、直接相手と対峙していなくても、いつされてしまうか分からないー。

何故なら”憑依薬”を飲むと、いつでも人間は幽体離脱を
することができるようになるためだー。

そのためー…
今、啓介と文香が走っているこの場所にもー
”二人の身体を狙う霊体”が飛び交っている可能性は
十分にあるのだー。

幽体離脱している”霊体”の姿は
視認することすらできないー。

つまり、近くのレジスタンスのアジトを目指して
走っている啓介と文香はー
”今、この瞬間”もいつ憑依されてもおかしくない、という
状況なのだー。

「ーーわたし…憑依されちゃうのかなー…」
文香の言葉に、啓介は「大丈夫…大丈夫だから」と叫ぶー。

これまでにも、二人は”目の前で憑依された人間”を
何人も見てきているー。

少し前まで、一緒に行動していた少し年上のお姉さんも、
目の前で憑依されてしまったー

文香がとてもよくなついていたその女性が、
目の前で憑依されて、欲望のままに胸を揉む姿は、
とてもショッキングな光景だったー。

それでも、啓介と文香は立ち止まることはできないー。
この世界では”立ち止まれば”それで終わりだー。

誰も助けてはくれないしー、
待っているのは”死”のみー。

生きるためには、走らなくてはならないー
たとえ、走ったその先に”光”がなかったのだとしてもー

「ーーー!」
啓介が表情を歪めるー。

「ーーうへっ…うまそうな餓鬼だなぁ」
ニヤニヤしながらセーラー服姿の女が近づいてくるー。

既に”高校”などというものは、この世界には存在しないー。
セーラー服は単なる”装飾品”に成り下がったー。

「ーーーくそっー」
目の前のセーラー服の少女が、元々どんな人間だったのかもわからないー
憑依されているのか、そうでないのかも分からないー。

けれどー
一つだけ分かることがあるー。

”目の前のこの女は敵”ということだー

「ー逃げろ文香!」
大声で叫ぶ啓介ー。
”レジスタンス”が存在する場所はこのすぐ側ー

全力疾走すれば、間に合うかもしれないー。

「ーーくくく…逃げられると思うなよぉ~」

ニヤニヤしながら近づいてくる女ー。

啓介は、その女を迎え撃つー。

見た目とは、真逆な危険な言動を繰り返す
セーラー服の少女を、必死に抑え込もうとする啓介ー

「ー邪魔をするなら、ぶっ殺してやるー…くひひひひひっ♡」

この世界に、警察などないー。
完全なる弱肉強食の世界ー。

人間は、医療分野の進化を願い完成させた憑依薬で
自ら、文明を壊してしまったのだー。

まるでー
”技術だけが発達した、新しい原始時代”のようなー
そんな時代に、逆戻りしてしまったー。

「ーーひひひひひひひひひひっ」
刃物を啓介に向ける少女ー。
啓介は必死にそれを押さえこもうとするー。

その時だったー

「啓介から…離れて!」
その声と共に、セーラー服の少女が「がっ…!?」と
声を上げて、啓介に覆いかぶさるようにして
倒れ込んできたー。

啓介がその少女をどかすとー、
文香が血のついた岩を手に、はぁ…はぁ、と声をあげていたー。

先に逃げたはずの文香が、啓介を助けるために
引き返してきたのだー

「ーー文香…」

「ーーはぁ…はぁ」
文香は岩を捨てると、「啓介ー…」と不安そうに
啓介にしがみついたー。

この世界ではー
”生きるために”相手の命を奪うしかないー。

敵は、排除しなければならないー。

この世界の人間は”野生の動物や昆虫”と同じー。
生きるためには、外敵を排除しなければ、ならないー。

啓介も、”大昔のこと”を本で読んだことがあるー。
大昔ー平和だった時代は”人の命を奪うこと”は許されなかったのだと言うー。

だが、今は違うー。
敵は殺さなくてはならないー。

そうしないと、自分が殺されてしまうからー。

そして、それを取り締まる警察も、この世界にはもう存在しないー。

啓介と文香は、気を取り直して、
この地区の”レジスタンス”が存在するという、
洞窟への階段に足を踏み入れようとしたー。

入口の重々しい扉にはカメラと機銃のようなものが見えたー

”何者だ?名を名乗れ”
女の声がするー。

啓介と文香は、慌てて名前を名乗るー。

”ほぅ…憑依されてない人間かー。
 そんな状態で、よくこれまで生き延びれたものだなー”

女はそう言うと”待ってろ”とだけ告げて、
入口付近にある、謎の装置から光のようなものが
出て来て、啓介らの身体を”スキャン”したー。

”憑依されていない”ことを確認しているようだー。

”いいだろうー
 中に入れ”

扉が開くー。
中に入る啓介と文香ー。

この世界の各地に存在する”憑依されていない人間たちの集団”
それが、レジスタンスだー。

目的も、規模も、何もかもが異なるが
”憑依されていない人間たちが集まり、暮らしている集団”を
この世界ではまとめてそう呼ぶー。

もちろん、全てのレジスタンスが友好的なわけではなく、
閉鎖的なレジスタンスもたくさん存在するがー、
この地のレジスタンスは啓介らを招き入れてくれたー。

そしてー、
それなりに規模も大きくー
珍しく、電気も通っている様子だったー。

「ーーー来客は久しぶりだなー。
 ようこそー」

目つきの鋭い美人ー
そんな感じの女が、姿を現すー。

「ーーここの代表のリサだー。」
レジスタンスの代表・リサがそう言うと、
啓介と文香は改めて自己紹介をして、頭を下げたー。

ようやく、身の安全を確保できる場所にたどり着くことができたー。
啓介と文香は安堵の溜息をつくー。

「ー今までどうやって生きて来たんだ?」
リサの言葉に、啓介が各地を転々しながら、
奇跡的に生き延びてきたことを告げるー。

「ーーなるほどなー…
 よくもまぁ…ここまで来れたものだー。
 とにかく、運が良かったなー」

リサはそう言うと「まぁ、ここにいれば最低限の生活はできる」と、
呟いた後に「仲間を紹介しようー」と、
このレジスタンスで暮らす人々がいる場所へと歩いていくー。

”地下に作られた秘密基地”のようなを歩く啓介たちー。

”これでやっと、安心して生活することができるー”
啓介たちは、そんな風に思い安堵の溜息をつくのだったー。

だがー
憑依が蔓延したこの世界に、安息の地など、ないー。

生きるためには、常に戦い続けなければならないー。
見えない憑依の恐怖とー。

②へ続く

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コメント

”誰でも憑依薬を手にできる”ようになった故に、
崩壊してしまった世界のお話デス~!

続きはまた明日~!

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