手違いにより、生き返るまでの間、
見知らぬ女子高生として過ごすことになってしまった
男子大学生。
そんな中、彼は自分の身体が火葬されそうになっている…、
と、いう新たな危機に直面することに…!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ど…ど…ど…どうするんだよ!」
里香が必死になって、部屋にいる小悪魔風な風貌の女死神を揺さぶる
「や~め~て~!酔う!酔う!ギブ!」
女死神がそう叫ぶと、里香は、はぁはぁ言いながら
女死神のほうを睨んだー
「い、1週間、この知らない子の身体で過ごすのもアレなのに
自分の身体が火葬されたら洒落にならないんだけど!」
里香が言うと、女死神は「ま~ま~落ち着いて!」と言いながら
「ー火葬しないように、頼めばいいでしょ。
そのJKのスマホ、使えるわけだし」
と、女死神は言うー。
「ーーー…ったくー…」
”火葬しないように頼めばいい”と言われてもー、と思いつつ
妹の瑛美(えいみ)に対して、メッセージを送ってみる里香ー。
里香に憑依している悠太は、
頭を抱えながら、ようやく文章を考えるとー、
”信じられないと思うけど、自分は俺は生きてる
じきに目が覚めるから、なんとかして火葬は待ってほしい”
という意味のメッセージを送り付けたー。
「ーーはぁ~…知らない番号からのメッセージなんて、
あいつ読むかなぁ…」
里香がそう言いながら、胡坐をかいていると
「胡坐をかくJK!」と、女死神が揶揄ってくるー。
「ーーー…!ち、ちゃんと座ればいいんだろ!」
顔を赤らめながら里香はそう呟くー。
ベッドの上で姿勢を整えるとー、
妹の瑛美から返信が届いたー。
”ごめんなさいー…
あの、そういうの、やめてもらえますか?
誰だか知りませんけど、身内の死で、わたし、今、
そういう冗談で笑えるような状態じゃないので”
そう、書かれていたー
「ーあ~~~~あ」
女死神が返信をのぞき込みながら言うー。
「ーーあ~~~あ、じゃねー!やっぱりダメじゃねぇか」
里香の身体で乱暴な言葉を口走ると、
「ーあ~~もう!」と髪の毛をぐしゃぐしゃにしながら、
妹の瑛美に電話を掛けたー。
瑛美は、知らない番号からの電話でも、電話に出てくれた。
「ーーもしもし?瑛美?」
里香は”あ~…くそっ!こんなかわいい声じゃ、俺だって信じてもらえないよ”と、
思いながらも
「信じられないと思うけど」と、前置きしたうえで、
瑛美に対して”今、自分が置かれている状況”を必死に
説明したー。
しかしー
”あの…すみません。お兄ちゃん、そもそも男なんですけどー?”
と、瑛美は不機嫌そうに返事をするー。
死神の手違いで死んで、生き返る時にも手違いをされてー…
そんな事情まで説明したが、その部分は全部スルーされて、
”お兄ちゃんはそんな声じゃない”と言われてしまったのだー。
「だ、だ、だから!俺なんだってば」
里香は可愛らしいスマホを手にしながら必死で叫ぶー
「ーあ~あ…可愛い女子高生にそんな言葉遣いー」
横で聞いていた女死神が揶揄おうとするー。
「ーーーお前は黙ってろーー!!」
里香が大声で言うと、女死神は「は~いはい」と言いながら
口を閉ざすー。
里香の身体で必死に妹・瑛美の説得を続けるー。
”くそっ…こうなったら…”
「ー俺の血液型はO型で、誕生日は11月27日、
身長171センチ、体重はー」
個人情報を全て口にする里香ー。
しかしー
”ーーー…お…お兄ちゃんの…ストーカー…?”
と、妹の瑛美が電話の向こうで怯えた声を出したー。
「ちがーう!」
里香は、思わずそう叫ぶー。
”でも待てよ…?確かに俺が逆の立場だったらどうだー?”
里香に憑依した悠太は冷静に考えるー。
妹が死んで、妹を名乗る知らない男から電話がかかってきてー、
妹の個人情報をペラペラしゃべり出したらー?
”ストーカー”と判断するのは当然かもしれないー
「ー考えろ…考えろ…考えるんだ俺ー。
自分が反対の立場だったとしたらー」
”自分が反対の立場だったとしたら、”何”を言われれば
信じるつもりになるのかー。
それを必死に頭の中で考えながら、ようやく里香は言葉を口にしたー
「ーーえ…瑛美、中3の時、おねしょしたよな…?」
絶対に外部の人間では調べようがない、妹の黒歴史を暴露するー
”ーーーーは…!?え…!?え……ちょ、ちょっと…え?”
妹の瑛美の戸惑う声が聞こえたー。
「ーそれと、10歳の時にー」
妹・瑛美の黒歴史を次々と暴露していく里香ー
流石に、ここまで調べるのは不可能なはずー。
そう思ったのか、瑛美は
”ほ…本当に…お兄ちゃんなの…?”とスマホの向こうで
声を上げたー。
「ーそう…そうなんだよー…
今は…その…女子高生の身体になっちゃってるけどー…
1週間すれば、生き返ることができるんだー。
でも、その前に火葬されちゃったら
俺は元の身体に戻ることができなくなってしまうー…
だから…なんとか、火葬を送らせてくれないか?」
里香が言うと、瑛美は少し戸惑った声を出しながらー
ようやく”わかったー…”と、返事をしてくれたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーふ~~~~1週間も戻れないなんてなぁ~…」
夜ー
制服姿のままの里香が、部屋でため息をつくー。
先ほど、里香の家族と一緒に晩御飯を食べたが、
里香として振る舞うのはとても大変だったし、
トイレは、まるで違う感覚でかなり難しかったー。
悠太からすれば”毎回座る”というのも
信じがたいー。
「ーーなぁ…この里香って子は、俺が抜けた後どうなるんだ?」
里香に憑依している悠太が不安そうに言うー。
「ーーえ?それなら大丈夫だよ!
アンタに憑依されてた間の記憶はアタシが
”ふつうに過ごしてた風”に調節するからー
あ、そうそう、あんたもね。
元の身体に戻って無事を確認したら
あんたの記憶からも、アタシとか死後の世界に関する
記憶は消させてもらうからー」
女死神の言葉に、里香は「そっかー」と、呟くー。
「ーーで、いつやるの?」
女死神の言葉に、里香は「何を?」と聞き返すー
「ーエッチなこと」
女死神が言うと、里香は「はぁ!?!?バ…バカ!」と顔を
真っ赤にしながら狼狽えるー。
「こ、この身体、俺のじゃないんだぞ?
そんなこと、できるわけないだろ!」
里香が必死になって言うと、
「なんだぁ~意外と真面目なんだねぇ」と、女死神は笑ったー
「ーでもさ、1週間すれば元に戻れるんだし、
その女の子も、憑依されている間の記憶はないんだし、
好きなことしちゃえばいいじゃんー」
女死神が笑うー
「ーーダ…ダメだダメだダメだ!」
里香はあぐらをかきながら、目を閉じて腕組みしながら首を振るー。
「ーーえ~~~?
可愛い子の身体でしちゃえばいいのに~
お・な・ーー
「ーーうるさーい!」
里香は、女死神の言葉を途中で止めると、
「とにかく!俺は!この子を傷つけたくないんだよ!
面識も何もない子だけど、いきなり見ず知らずの
男子大学生に憑依されるとか、災難すぎるだろー」
と、言葉を口にしたー
「ふぅ~ん、いいこじゃん!」
女死神はそう言うと、
「ところでー」と、里香を指さすー
「なんで夜になっても、高校の制服着てるの?
着替えたらいいじゃん」
そう、言いながらー。
その言葉に、里香は反応すると
苦笑いしながら
「女の子の着替え、見るわけにはいかないしー」
と、呟いたー。
「ーーーあ~~~~~」
女死神はそれだけ呟くと、
数秒間、沈黙したー。
部屋の中の時計の針の音だけが聞こえる中、
しばらくするとようやく女死神の方が口を開いたー
「ーあのさ、でも、明日もその子、学校あるじゃんー?
だから、着替えとかお風呂は、エッチとかどうこうじゃなくて
ちゃんとしてあげないとー」
「ーーーーーーーーー」
里香はしばらく戸惑った後に「わ、わかったよー」と、
”着替えと”お風呂”は済ませることにしたー。
「ーーーーー」
お風呂に向かい、ドキドキしながら
慣れない手つきで髪や身体を洗っていくー。
ほとんどの時間、里香は目をつぶってお風呂を済ませるー
「か…髪が長いと…面倒臭いぞ」
「ーーお…俺は好きで胸触ってるんじゃないからな…!」
「くそっ…変な感じだな…」
一人で色々と呟きながら、ようやくお風呂を終えると、
「ーーこれが一番楽だなー」と、
学校のジャージを身に着けて、ひと息つくー。
「ーーーそんな服、普段でも着れるのに~
勿体ない~!」
笑う女死神ー
「ーいいんだよ!この方が楽だし、俺自身、
余計なこと考えずに済むし!」
女子っぽい服を着ていると、どうしても
自分が今、女子高生に憑依している、ということを
意識してしまう。
そうなってしまわないためにも、
気持ちを落ち着ける意味でも、
こういう格好の方が楽だー。
「くそっ!1週間もこの状態で過ごさないといけないなんて!」
里香はそう呟きながら
「とにかく今日は疲れたから、もう寝るぞ!」と、
ベッドに横たわるー
「ーーーーーー」
「ーーーーーー」
横になっても髪の感触が気になるー。
時々胸に手が触れたりすると、とても気になるー。
”なかなか寝れない”
そんな風に思っているとー
「ーあれれ?せっかくなのにエッチしないの?」
女死神が声を掛けてきたー
「ーーーーーーー」
寝ているフリをする里香ー
「ーーあれれれ~~~?」
「ーーうるせー!」
里香はそう叫ぶと、女死神は「はいはい~」と言いながら
そのまま今夜は姿を消したー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
翌日ー
「制服の着方がイマイチ分からないー」
と、ブツブツ言いながら学校に向かう準備をしているとー
”お兄ちゃん”
と、連絡が入るー。
「ーーどうした?」
里香が電話に出ると、
妹・瑛美が大変なことを口にしたー
「ゴメン!お兄ちゃん!火葬されちゃう!」
とー
「ーーは?」
里香は表情を歪めるー
「ーわ、わたしは、お兄ちゃんが女の子になっちゃった、って
信じてるけど、
でも、お父さんとお母さんに1週間したら生き返るから!って
説明したら
”辛いと思うけど、現実は受け入れないと
お兄ちゃんはもう死んだんだよ”って言われちゃってー」
電話の向こうから聞こえてくるその声に、
里香は「えええええええええっ!?」と、声を上げるー
瑛美も、何とか止めてみる、と言ってくれたが、
里香は青ざめた表情で、女死神のほうを見たー。
「ーー大丈夫大丈夫ー。
いざとなったらその子の身体で生きさせてあげるからー」
「ー大丈夫じゃねぇ!それにこの子が可愛そうだろ!?」
そう叫ぶと、里香は妹・瑛美から聞いた火葬場に向かうー
「ーなんとかー
なんとか、阻止しないとー」
制服姿のまま、火葬場にダッシュしようとする里香を見て、
女死神は「あっ!待って!」と叫ぶー
必死に両親に連絡をつけようとしても、
連絡はつかずー。
仮に火葬場にたどり着いたところで、どうするー?
”この子がおかしなコに思われるようなことを
するわけにもいかないしー”
困惑しながら、どうにかしようと頭をフル回転させる悠太ー。
しかし、その方法は見つからずー
さらにー
”お兄ちゃん、もう火葬されちゃう!”
と、妹の瑛美から連絡がー
「ーおい!どうにかしてくれよ!お前のせいだぞ!」
里香は思わず泣きそうになりながら叫ぶー
女死神もさすがに責任を感じたのかー
「ま、待ってて!」
と、叫んだー
そしてー
姿を消した女死神ー
火葬場には間に合わないー
荒い息をしながら里香が絶望しているとー
電話が入ったー
”ーーーギリギリセーフ!”
とー。
「ーーーへ?」
里香は”自分の声”が電話の向こうから響いているのを聞いて、
首を傾げたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーーーーということでー」
火葬直前に生き返った悠太が笑うー。
「ーーー元に…戻れなくなっちゃった」
笑う悠太ー
「ーーふ…ふざけるなー!」
里香が悠太を揺さぶるー。
火葬直前だった悠太を救うべくー
女死神は最後の手段に出たー
それはー
彼女自身が悠太に憑依することー。
他人の魂を移動する力は、回復中で使えなかったが、
憑依なら、なんとかなったー
その結果ー
火葬直前の悠太に憑依して、悠太は生き返りー、
火葬を免れたのだったー。
だがー
「ーーー…無理やり力使ったから…
この身体から出られなくなっちゃって
あ、でも大丈夫、アタシ、ちゃんとアンタのフリするから!」
その言葉に、
里香は少し考えてからー
「大丈夫じゃねぇ!俺は一生女子高生のままか!?
この子、可愛そうだろ!?!?」
と、叫ぶー。
「ーーーそれはないから大丈夫ー」
悠太になった女死神が笑うー
「ーな、なんだー。何か方法はあるのかー?」
里香が言うと、悠太になった女死神は笑ったー
「ほら、あと数年すればその子、女子大生になるからー
一生女子高生じゃないよ♪」
その言葉にー
里香は「そういう問題じゃねぇ!」と、大声で叫んだー
おわり
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
火葬されてしまう危機…!を描いた憑依モノでした~!☆
巻き添えを喰らって憑依された里香ちゃんが一番の被害者…!
一番得をしたのは、本来命を落とす運命だったはずの
おじいさんですネ~笑
お読みくださりありがとうございました~!
コメント
死神の手違いで殺されて、別人になるってタイプの話、なんかの短編の漫画とかで何回か見たことありますね。
確かに関係ないのにとばっちりで一生憑依されることになったっぽい里香ちゃんは一番の被害者ですよね。
あと、生き返る前に身体を火葬されそうになるくだりは幽遊白書を思い出しますね。もしかして参考にでもしました?
そういえば幽遊白書といえば、アニメ版オリジナルの描写なんですけど、主人公の幽助(幽霊状態)が大人しそうな女子高生に憑依して、不良達をボコボコにする場面があるんですけど、
あれは憑依とかTS好きにはたまらない展開でした。
コメントありがとうございます~!☆
生き返る前に火葬~!は、特に特定の作品が浮かんだりは
してなかったですネ~笑
憑依して不良をボコボコに…!
そんな描写もあるのですネ~!
機会があれば見てみます~!