”憑依”
ちょっとした軽い気持ちだったー。
だが、そのたった1時間の憑依が、
大きな傷跡を残してしまうー。
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「ーーふふふふ♡ ふふふふふふっ♡
なんだこれ… すっげぇ… ふふっ… えへへへへ♡」
ニヤニヤしながら涎を垂らす女子高生ー。
制服姿のまま、自分の胸を両手で揉みながら
笑みを浮かべているー
部屋の姿見の前で胸を揉み続ける彼女はー
別に胸を揉むのが趣味なわけではないー。
一人、興奮した様子で、
ニヤニヤしながら、時々口元の涎を拭きとり、
また、胸を揉み続ける少女ー。
彼女は今、”憑依”されていたー。
幼馴染の男子にー。
憑依されて、”自分の意思とは関係なく”
胸を両手で揉んで、喜んでいるー。
身体は激しく興奮して、
火照っているもののー
それも、彼女の意思ではないー。
彼女に憑依した幼馴染が勝手に興奮してー
乗っ取られている身体も、その意思に従って
本人の意思とは関係なく興奮しているー。
そんな、状態だー。
「ーーーはぁぁぁ…すげぇ…
こんなものがついてるなんて…
…すげぇ……
なんて言っていいか分からないけど、すげぇ…」
語学力を失いながら、ようやく胸を揉むのをやめた少女ー。
帰宅したと同時に、放り投げたと思われる鞄からは、
穏やかに微笑む少女の写真が貼り付けられている
生徒手帳が飛び出しているー。
”中森 愛花(なかもり あいか)”
けれどー
今の愛花は、愛花であって愛花ではないー
身体は愛花のものであることには間違いないー
しかし、その身体を動かしているのは、愛花ではないー。
愛花の幼馴染ー、
小野原 伸吾(おのはら しんご)ー。
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その日の朝ー。
伸吾は”ある決意”を胸に、学校にやってきていたー。
それはー
”幼馴染でもあり、彼女でもある愛花に憑依”することー。
「ー結局、どうするんだ?アレー」
親友の城田 拓斗(しろた たくと)が声を掛けてくるー。
「ーーー…迷ったけどー、使うことにしたよー。
やっぱ、女子の身体、一度ぐらいは経験してみたいし」
伸吾が笑いながら言うと、
「ーーーへへへ、そうこなくちゃ」と、拓斗が笑うー。
伸吾と拓斗は小さい頃からの親友で、
高校生になった今でもお互いに仲が良いー。
そんな拓斗には”わしはマッドサイエンティストじゃ”と自ら
名乗っているヤバい感じの祖父がいて、
小学生時代はよく、拓斗の家に、伸吾や、他の友達も一緒に
集まったものだったー。
自称マッドサイエンティストの祖父は、
”面白い発明”を、色々していて、
例えば”50メートル先にワープできる装置”だとか、
”1階から2階に転送できる転送装置”だとか、
現代の技術を超えるような発明もしていたし、
その一方で、”子供騙しのような小さな発明”もたくさん存在していたー
けれど、小学生の頃は、それが本当に楽しかったー。
中学生になって”結局、拓斗のおじいさんの発明は手品みたいなもの
だったんだろうな”などと思い始めー、
最近ではその存在も忘れていたのだが、先日、拓斗が
急に”じいちゃんが、やべぇもん作ったぜ”と、
声を掛けてきたのだー
その時に思わず「お前のじいさん、まだ生きてたの!?」と、
声を上げてしまった伸吾ー。
”勝手に殺すなよ”と、笑われたが、
伸吾がそう思ってしまうのも、無理がないぐらいに、
拓斗のおじいさんは高齢だったし、
中学に入ってから、ここ3年以上全く拓斗の口から話題が
出なかったこともあり、
本人にも聞きにくく、てっきり既に亡くなっていると
判断していたのだー。
だが、拓斗は昨日、信じられないことを口にしたー
「ーー他人に憑依できる薬ー」
そう言うと、拓斗は、白い液体の入った小瓶を2つ、取り出したー
「ーー……」
伸吾はしばらく目をパチパチとさせていたが、
やがて、思わず笑いだしてしまったー。
「ーーはははははっ!さすがにそりゃ無理だろ!」
急に笑い出した伸吾を見て拓斗も笑いだすー。
「はははははは!ま、そう思うよな。
でも、見てろよー」
そう言うと、拓斗は白い液体の入った小瓶を突然飲んでー
そしてー
いきなり、伸吾にキスをしたー
「ーー!?!?!?!?!?」
男にキスをされたことに、驚いてしまう伸吾ー。
伸吾の意識は、そこで途切れたー。
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・・・・・・・・・・
「ーーー!?!?!?」
伸吾が意識を取り戻すー。
慌てて周囲をキョロキョロと見渡す伸吾ー。
そこは、意識が飛ぶ前と同じ、
今は使われていない教室の一角だったー。
「ーへへ どうだったー?
今ー」
拓斗の言葉に、伸吾は「え…?今、俺ー?」と
困惑の表情を浮かべるー。
「ーーー……今、俺はお前に10分間、憑依してたんだぜ?」
拓斗が笑いながら時計を見せるー。
「ーーー!!!」
伸吾が時計を見ると、確かに時間が10分間進んでいるー。
「ーーーーー…マ…マジかー…?」
伸吾からしてみれば”一瞬にして”時間が飛んだー。
「ーーーーう、嘘だろ…?」
唖然とする伸吾ー。
「ー百聞は一見になんとかかんとか…とか言うだろ?
実際に”憑依された経験”しないと、なかなか信用できないだろー…?
ってか、俺もじいちゃんにやられたんだけどな」
拓斗が笑うー。
拓斗も、マッドサイエンティストを自称する祖父から
憑依薬、と言われた際に、最初は思わず笑ってしまったのだが
今の伸吾と同じように”実演”されたことによって
信じることになったー。
「ーーー……ほら、これ見て見ろよー証拠」
拓斗がスマホを手に、伸吾にそれを見せるー。
それはー
”伸吾が憑依されている10分間”の映像ー。
拓斗の姿はなく、
伸吾はニヤニヤしながら「俺は拓斗だぜ!」と叫んでいるー
さらにはー
「ーあ~~!愛花とヤリまくりてぇ~!」
と、叫ぶ伸吾の姿もー。
「おい!何を言わせるんだ俺に!」
伸吾が思わず突っ込みを入れると、拓斗は
「普段絶対に言わないことも言わせることができちゃうって証明さー」
と、笑ったー。
「ーーーーマジで憑依なんてできるのかー」
伸吾は、机の上に置かれた白い液体入りの容器を見つめながら
「ーでも、憑依したら相手にバレるよな?」と、
伸吾が言うー。
拓斗は「いやーそうでもないぜ」と、笑うー。
「ー今、憑依されていた間の10分間ー
お前は、どう感じた?」
拓斗の言葉に、伸吾は
「いやー…なんつーか、寝落ちして急に時間が飛んだような感じ?」
と、答えるー。
「へへ。だろ?自分が憑依されている間に何をしてたかなんて
分からないし、俺に言われるまで、何が起きたかも
お前は分かってなかったー。」
「確かに、そうだなー…」
伸吾はそう答えるとー
「それとー」と、拓斗は続けるー。
「ー俺がお前に憑依するために、キスしたの、覚えてるか?」
とー。
「ーーーーは?」
伸吾が表情を歪めるー
「ーいやいや、勘違いすんなよ?
別にお前とキスしたくてしたんじゃねーぞ?
憑依するときさ、相手にキスしないといけないから、
仕方なくお前にー」
拓斗の言葉に、
伸吾は「うぇっ!」と言いながらも、
「ーーで、でも、そんな記憶ないぞー?」と、疑問の言葉を口にするー
”憑依するためにキスをした”というならば
意識が途切れる直前に、キスをされた記憶がなければ
おかしいはずなのだー。
拓斗は、そんな伸吾の疑問を見透かしたかのように笑うー。
「ーーへへへ…憑依される直前の記憶は飛ぶようになってるんだー。
キスされた瞬間を覚えてたら”こいつに何かされた”って
滅茶苦茶バレやすいだろ?」
そう説明する拓斗に、伸吾は「なるほどー」と頷くー
「ー俺も、じいちゃんにキスされたみたいなんだけどさ」
拓斗が苦笑いしながら頭をかくと、
「で、本題なんだがー」と、伸吾のほうを見て、
白い液体の入った容器を差し出したー。
「ーーお前にも、これを1個やろうと思ってさー」
拓斗の言葉に、伸吾は「えぇっ!?」と驚くー。
伸吾のあまりの驚きように、拓斗は笑いながら
「ははは…そんなに驚くことじゃないだろ?」と、言い放つー。
「昔からじいちゃんの発明、よく楽しんでたじゃないかー。
まぁ、そりゃつまんないやつもたくさんあったけどさー」
拓斗の言葉に、伸吾は「まぁ…確かにそうだけど」と、頷くー。
”憑依薬”という突拍子もない発明品だったからこそ
驚いてしまったが、
確かに小さいころには、ワープだとか転送だとか、
そういった発明も体験させてくれたー。
今回も、その一環なのだろうー。
「ーーー愛花ちゃんに、憑依して、好きなことしちゃうこと
だってできるんだぜ?」
拓斗の言葉に、伸吾は「バッ、馬鹿なこと言うなよ!」と
顔を真っ赤にしつつも、それを想像してしまうー。
「ーははは…大丈夫だって!今、お前が身をもって
”体験”しただろ?
憑依をー。
憑依されている間の記憶なんてないし、
憑依された瞬間の記憶もないー。
だから、キスしても大丈夫なんだってー。 な?」
その言葉に、伸吾は「で、でもー…」と困惑の表情を浮かべるー。
「ーー愛花ちゃんの両親がいない日に、愛花ちゃんが帰宅する
直前にキスをしてー、
で、お楽しみしたあとに、愛花ちゃんが目覚める前に
離れれば、誰にも気づかれないし、愛花ちゃんを怖がらせることもないー。
だろ?」
拓斗がニヤニヤしながら言うー。
「ーーま…まぁー」
伸吾が戸惑っていると、
拓斗は”憑依薬の持続時間は最大で1時間であること”や、
”憑依されていた人間が目を覚ますまでは2~3分ほどの時間があること”
などを説明するー。
「ーせっかくなんだしさー」
拓斗に憑依薬を渡された伸吾ー。
確かに、愛花の両親は、週に2度ほど、帰りが遅い曜日が
あるのは知っているー。
その曜日の、下校直後に憑依すれば、愛花の身体で
色々試したり、楽しんだりすることはできるだろうー。
伸吾は戸惑いながらー
「ーわ‥わかったー。しばらく考えてみるよ」と、
憑依薬を受け取るー
「まぁ、無理しなくていいぜ?
別のやつに憑依してもいいし、いらなきゃ返してくれればいいしー。
あ、憑依薬の賞味期限が半月ぐらいらしいから、
考えるのは、そのぐらいにしておいてくれよー」
拓斗の言葉に、伸吾は頷いたー。
そしてー
今日、5日間ほど迷った末に、
伸吾はようやく決断したのだったー。
愛花に、憑依することをー。
「ーーーふぁぁぁぁ…手が…手が綺麗すぎるー…
なんで、こうも…こうも違うんだー?」
現在ー
伸吾は、愛花に憑依して、愛花の身体を堪能していたー。
もちろんー
愛花の身体を傷つけるつもりはないー。
外に出て変なことをするつもりはないしー
この身体で犯罪を犯したり、物理的に傷つけるつもりもないー
ただ、色々な好奇心や、
ちょっとしたゾクゾクを味わおうと、そう思っているだけ…。
「ーーえへへ…」
愛花の綺麗な手を、愛花の舌で舐めてニヤニヤするー。
ニヤニヤするのも、当然愛花の身体だー。
「ーー俺…俺… 俺…」
愛花に”俺”という一人称を使わせてみるー。
自分の身体で”俺”と言っても、何も感じないのに、
愛花の身体で言うと興奮するー。
「”俺”って言うだけで興奮できるとか、何かずるいなぁ」
そんなことを口走りながら、愛花は経過時間を確認すると、
「まだまだ楽しめそうだな」と、静かに笑みを浮かべたー。
②へ続く
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コメント
今日は普通に憑依を堪能する部分でした~!☆
”傷跡”の部分は明日以降ですネ~!
お読みくださりありがとうございました~
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