全く感情を見せることのないクラスメイト・雪菜ー。
そんな彼女と突然入れ替わってしまった秀太は
困惑とドキドキで頭がいっぱいにー
・・・・・・・・・・・・・・・・・
「~~~~~~~…」
雪菜になった秀太は、
電車の中で、一人顔を真っ赤にしていたー。
社会科見学中ー
人身事故で混雑していた駅のホームで班員とはぐれ、
合流を目指していた秀太は、
”氷の女”とも呼ばれている全く感情を見せない女子生徒・雪菜と共に
他のメンバーとの合流を目指していたー
しかし、電車の中で居眠りしてしまった秀太が
目を覚ますと、秀太は雪菜の身体になっていたー。
そんな状況でー
雪菜(秀太)は、再び班のメンバーとの合流を目指し、
電車で移動するもののー
ドキドキが止まらない状態に苦しんでいたー
髪の感触ー
自分の手とは違う、綺麗な手ー。
見下ろすとすぐに見える胸の膨らみー
そしてー
落ち着かなすぎるスカート。
意味もなく足をもじもじとさせてしまい、
イスに座っているだけでも、
ズボンとは違う感触に、雪菜(秀太)は
ドキドキしてしまうー。
「ーーー……はぁ~…心臓、破裂しちゃうよ」
そんな風に思いながら雪菜(秀太)は、
何度も何度も深呼吸を繰り返すー。
「ーーーな、なんで僕が氷谷さんにー」
そう呟くと、
口から出てくるのは雪菜の声ー。
「ーーーーー~~~」
たまらず口を閉ざす雪菜(秀太)ー
なんでこんなことにー。
どうしてー…?
”僕が氷谷さんの身体になってるってことはー
氷谷さんは僕の身体になってるー…ってことだよね…”
そんな風に頭の中で考えるー。
”じゃあ、氷谷さんは、氷谷さんの身体で居眠りしてる僕を
起こさずに目的地で降りたってことー?”
そんなことを考えながら、ますます訳が分からない、と
雪菜(秀太)の混乱は深まっていくー。
”ーいや、待てよ。僕の身体が消えて、僕が氷谷さんに
幽霊みたいに取り憑いたって可能性もー…?”
雪菜(秀太)は、そんなことも考え始めるー。
「まさか僕、寝ている間に急に心臓発作起こして死んだとかないよねー…?」
思わず小声でそう呟いてしまい、雪菜(秀太)は再び
雪菜の口を塞ぐー。
”自分の口から、こんな可愛らしい声が出てくる”ことに慣れないー、
いや、耐えられないー
”僕が死んで、氷谷さんに取り憑いちゃったんだとしたらー”
そんな不安を思いながら、目的地になんとか到着して、
ようやく社会科見学の行動班のメンバーと合流するとー
「ーーみ、みんなごめんー!」
と、言いながらも、平然と振る舞っている秀太(雪菜)のほうを見つめたー。
”普通に、僕に見えるんだけどー…”
困惑する雪菜(秀太)は
他のメンバーに「ちょ、ちょっとごめんね」と言いながら
秀太(雪菜)を引っ張って少し離れた場所に移動するー。
班員の女子生徒、常世田や梶が、
”え?今、氷谷さんなんか申し訳なさそうにしてなかったー?”と、
雪菜(秀太)が感情を見せたことに驚きの言葉を口にするー。
少し離れた場所で
「あ、、あの!氷谷さんだよね?」
と、雪菜(秀太)が言うと、
秀太(雪菜)は途端に無表情になってー
「ーーうん…」と頷くー
「ど、どういうこと!?何で僕と氷谷さんの身体がー!?」
雪菜(秀太)が言うと、
秀太(雪菜)は「お願いー…このまま社会科見学が終わるまで
わたしのフリをしてー」と、淡々と呟いたー。
「ーーえ!?え!?」
雪菜(秀太)は困惑するー。
まぁー
できないことはないー。
明るく周囲と賑やかに話すタイプの女子として振る舞うことは
流石に難しいし、”いつもと違くない?”となってしまうことばかりで
難易度が高すぎるが、
”あまり喋らない”タイプの雪菜として振る舞うのであれば、
意図的に無表情な雰囲気を装っていれば、周囲から疑問に思われる可能性は低いー
つまり、”普段、こんな風に喋ってるんだろうな”だとか、
そういうことをあまり気にしなくていい分、”雪菜のフリ”をするのは楽なのだー。
「ーー川口くんには、迷惑を掛けないからー…
川口くんとして、ちゃんと振る舞うからー」
秀太(雪菜)が、弱弱しい感じで、雪菜(秀太)の手を握るー
”僕の手ってあったかいんだな…”
そう思いながら、雪菜(秀太)は少しだけ迷った挙句ー
「わ、わ、わかった…けどー」と、呟くと、
「ーーそ、その…でも、いいのー?」と、不安そうに雪菜(秀太)が
秀太(雪菜)のほうを見るー
「ー何が…?」
秀太(雪菜)の言葉に、
「ほ、ほら!ぼ、僕が、僕が例えば、氷谷さんの身体で
変なことしちゃったら?とか、そういうこと考えないの?」
と、雪菜(秀太)が顔を赤らめながら呟くー
すると秀太(雪菜)は「ーするの?変なこと?」と、淡々と呟くー
あまりにもあっさりとした反応すぎたため、
逆に困惑して「い、いやー僕は、しないけどー」と戸惑いながら
「で、でもほら、もしもトイレとか行きたくなったらー…
い、嫌でもほら、そのー…」と、
顔を真っ赤にしながら叫ぶー。
「ーーーそれは、いいんじゃないー?
別に変なことじゃなくて、
男子でも女子でも、トイレに行きたくなったら行くでしょ」
と、あっさり答える秀太(雪菜)ー
「ーーい、、いいの!?」
雪菜(秀太)の言葉に、
秀太(雪菜)は「いいけど」と、答えたー。
「ーーだってみんなトイレは行くんだし、意識しないで
普通にすればいいだけでしょ」
と、呟く秀太(雪菜)に
”いや、どうしても意識しちゃうって!”と言おうとしたが、
常世田さんが「早く~!」と、離れた場所から
手を振ってきたために秀太(雪菜)は「今行く~!」と
答えて、そのままみんなの方に向かってしまったー。
結局ー
社会科見学の最中は、
”雪菜”として振る舞うことになってしまったー。
不安に思ってはいたものの、
”思ったよりも楽”で、
ただ無表情なフリをしているだけで、雪菜として振る舞うことは
特に問題なかったー。
周囲からも”いつも通り”と、思われたっぽいー。
心配していたトイレも幸いなことに、行きたくなるようなことはなく、
無事に社会科見学は終了したー。
解散となり、二人で道を歩いていると、
秀太(雪菜)は口を開いたー
「ーあのさー…」
秀太(雪菜)は、信じられないことを口にしたー
「良ければ、明日の朝までー…
このままでいてほしいんだけどー…」
とー。
「ーーはぁっ!?えっ!?!?えっ!?」
雪菜(秀太)は思わず声を上げてしまうー。
「ーーお願いー…」
秀太(雪菜)の言葉に、
「ーーーえ、いや、ぼ、僕、元に戻れるんだよね?」と、
思わず確認してしまうー。
秀太(雪菜)は
”明日の朝には、必ず元に戻れるから”と、告げた上で
学校に行く前に学校の近くにある河川敷に来てほしい、と呟いたー。
「ーーー………」
困惑する雪菜(秀太)ー。
「ーーで、でもー
そしたら、お風呂…お風呂も入らないといけないよねー…?
あと、トイレもー…
そ、それはさすがにー」
「ー別にいいよー。普通に洗ってくれれば」
秀太(雪菜)は淡々と答えるー。
”無表情の僕と会話するのってなんか怖いなー”
と、思いながら
「ーー…あ、、あ、あと、家族…氷谷さんの家族と
普段、どうやって話してるかも分からないしー!
不審に思われたらー…!」
と、続けたー。
「ーーそれは大丈夫。心配ないからー」
秀太(雪菜)はそれだけ言うと、
雪菜(秀太)のほうをじっと見つめながら
雪菜(秀太)からの返事を待ったー。
やがてー
雪菜(秀太)は「ーー明日の朝には絶対に元に戻してくれるー?」と、
言い放つと、秀太(雪菜)は「必ず」と、頷くー。
「ーーーーー」
雪菜(秀太)は困惑したまま、ようやく
「じゃあ、分かったよー。今日だけだよ」と、言うと、
秀太(雪菜)は「ありがとうー」と、言葉を口にしたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
帰宅した雪菜(秀太)ー
両親はまだ不在の模様で、
部屋に入ろうとすると、ふと、家の中が
”二人分”のものしかないことに気付くー
テーブルは小さなテーブルで
二人分しかないし、
洗面台の歯ブラシも2つしかないー。
「ーーーー…」
雪菜(秀太)はドキドキしながらそんな様子を見つめているとー、
「ーーークソガキが…」と、奥から声が聞こえてきたー
「帰ったならとっとと飯の用意をしろ!」
その言葉に、雪菜(秀太)「ひっ…!?」と、思わず声を上げてしまうー。
奥から出てきたのはー
酒を飲んでいる無骨な容姿の男だったー。
「ーーあぁ?何だその顔はー!」
男は、雪菜の父親ー。
雪菜(秀太)は「ど、、どういうー」と、質問をしようとするも、
その直後、父親は酒の入った瓶を放り投げてきたー
「ひぇっ!?」
思わず尻餅をついてしまう雪菜(秀太)ー
いきなりの恐怖に、雪菜の身体にドキドキするー
なんてことをもはや言ってられない状態だったー
「ーーテメェ、ふざけてんじゃねぇぞ。
テメェには”笑う”資格も”泣く”資格もねぇんだよ」
父親が、雪菜(秀太)の胸倉を掴むー。
あまりの恐怖に身体をガクガク震わせながら
雪菜(秀太)が「ど、どういう…い、、意味ー?」と、
”娘っぽく”振る舞うと、
「ーーこの…クソガキがぁ!」と、
雪菜(秀太)を思いきり突き飛ばしたー。
スカートがめくれた状態で座り込む態勢になってしまった
雪菜(秀太)が怯えながら父親のほうを見るとー
「ーテメェに、律子(りつこ)は全てを奪われたんだー」
と、酔っぱらった様子で叫ぶー。
「ー律子はもう笑うことも、悲しむことも、喜ぶことも、楽しむことも
できねぇー
だから、テメェが、笑うことも、悲しむことも、喜ぶことも、楽しむことも
許さねぇ!
テメェは一生ー、罪を償って生きるんだー」
父親が叫ぶー。
意味が分からないー
律子とはー誰なんだー?
雪菜(秀太)はそう思いながら、ふと2つしかない椅子や
2つしかない歯ブラシを思い出すー。
”律子ってー…氷谷さんのお母さんのことー?”
周囲を見回すと、
部屋の隅に、穏やかそうな笑顔を浮かべた女性の写真が飾られたー
”仏壇”が見えたー
「ーーー!!!」
雪菜(秀太)はすぐに理解したー。
”氷谷さんのお母さんは、既になくなっているー”
とー。
そしてー
”テメェに律子が奪われたー”
そう、言い放つ父親のほうを再度見つめるー。
「ーーテメェが生まれてさえ来なければ…律子は…律子はー!」
怒り狂った様子で泣き崩れる父親ー
”もしかしてー…”
雪菜(秀太)は思うー。
氷谷さんが生まれるときに、氷谷さんのお母さんは、死んだー。
そのことで、父親が、氷谷さんにきつくあたりー…
そんなことを考えていると
「いいから、いつものように、素直に飯を作りやがれ!」と
父親が叫ぶー
「ーーわ、わかった…」
雪菜(秀太)がそう呟くと「わかりました、だろうが!」と大声で父親が叫ぶー
「ーわ、、わ、わかりましたー」
雪菜(秀太)は、表情を歪めるー
慌てて適当にご飯を作っている間にも父親は
”律子はもう笑えないんだ”
”お前も笑うことは許さない”
と、呟いているー。
「ーーー…(氷谷さんが、無感情なのってー…)」
ようやく、父親から解放されて、
部屋に戻った雪菜(秀太)ー
だが、部屋には監視カメラのようなものが
取り付けられていて、”見張られている”様子だったー。
(こんなの…虐待だよー)
雪菜(秀太)はそう思うー。
”氷谷さんは、こんな家で、毎日ー?”
ふと、雪菜(秀太)は思うー。
”どうして、誰にも助けを求めないんだー?”
とー。
けれど、その答えは分からなかったー。
雪菜(秀太)は、
”雪菜の身体にドキドキ”するどころではなくなりー、
”早く…早く明日になってほしいー”と、
この家の置かれている状態に、
ドキドキすることしかできなくなってしまったー。
③へ続く
・・・・・・・・・・・・・・・・・
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感情のないクラスメイトの過酷な家庭…!
最後に待ち受ける結末は、また明日のお楽しみデス~!
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