<入れ替わり>感情のないあの子と僕①~氷の女~

全く感情を見せない”氷のような”クラスメイトー。

彼女の笑顔すら、彼は見たことがなかったー。

そんな彼女と、ある日入れ替わってしまってー…?

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

とある高校ー

氷谷 雪菜(ひたに ゆきな)ー

”氷の女”と呼ぶクラスメイトもいるぐらいに、
”無表情”な女子生徒だー。

とても可愛らしい雰囲気の顔立ちだが、
クラスメイトの誰一人、雪菜の笑顔を見たものはいないー。
そして、怒っているところを見た人間もいないー。

成績も授業態度も優秀ー、
決して臆病な性格ではなく、必要とあらばクラスメイトにも話しかけることはあるー。

だがー
”感情”というものが存在しないー。

顔立ちや体形も含めて”守ってあげたくなるような”
雰囲気があるものの、当の本人は
”誰も寄せ付けないような”そんなオーラを発していたー

「ーーお前の行動班、氷谷さんがいるじゃないか」
男子生徒の高浜 輝樹(たかはま てるき)が苦笑いしながら言うー。

「ーーあ、うんー。そうだね」
大人しいタイプの男子生徒、川口 秀太(かわぐち しゅうた)が
そう返事をすると、
「ーせっかくの社会科見学なのに、”氷の女”と一緒なんて、
 お前も運がないな~!」
輝樹の言葉に、秀太は「別に僕は、誰でも大丈夫だよ」と笑うー。

「ーーそうか~?社会科見学ったら、女子と親睦を深めるチャンスだろうが」
輝樹がそう言うと、「なんかおじさん臭いなぁ」と、秀太はツッコミを入れたー。

「ーー常世田(とこよだ)さんは不気味なだけだし、
 梶(かじ)さんは、男みたいなもんだしー」
輝樹の言葉に、秀太はため息をつきながら苦笑いをすると、
「僕は別に、高浜くんみたいに、女子がどうこう~~!とかないし!」と、呟くー

「はははは~隠すなよ~!男はみんなエロの炎を燃やしてる生き物だろ?」

「ー僕は違うの!勝手に炎を燃やすなよー」
笑いながら秀太が言うと、輝樹は「ははは」と笑うー。

「そもそも、社会科見学って遊びに行くわけじゃないんだしー」
秀太はそう言いながら、輝樹と同じ行動班の女子たち三人を見るー。

ツインテールの子に、
おしゃれなお嬢様的な子ー、
おしゃべりなクラスの人気者ー。

色々なジャンルの子が揃っていて、いかにも友人の輝樹が
喜びそうなグループだったー。

「ーー先生みたいなこと言うなぁ~秀太は」
輝樹はそれだけ呟くと、
「ま、でも、秀太がいいなら、それでいいか」と、笑いながら
「じゃ、俺、トイレ行くわ」と、休み時間にトイレを済ませようと
輝樹が立ち去っていくー。

輝樹が立ち去っていくと、秀太は、
窓際の座席にいる”雪菜”を見つめたー。

”まぁ、僕は誰でもいいんだけどー…”
と、思いながら雪菜のほうを見つめるー

”でも、確かに氷谷さんって一切笑わないよなぁ…”
心の中でそう思いながらもー
”僕にはあまり関係ないことだけどー”と、
その時はそれ以上考えずに、次の授業の準備を始めたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・

社会科見学当日ー。

途中の移動に使う電車が大混雑していたこともあり、
秀太は、他のメンバーたちとはぐれてしまうー。

「ーーーあ!電車行っちゃったよ~!」
秀太は、同じ行動班のメンバーが乗っていると思われる電車が
行ってしまったのを見て、
「は~~…何でこの駅、こんなに混んでるんだー」と、ため息をつくー。

通勤ラッシュの時間でもなければ
帰宅ラッシュの時間でもないー。
普段、この駅を利用することはないが、
どうしてこんなに混んでいるのだろうー、と、秀太は
一人考えながら時計を見るー。

「まぁ…次の駅であとから合流すればいいか」
秀太がそんな風に呟きながら、
次の電車の到着時間が表示された電光掲示板を見つめるー。

「ーあ~~…」
秀太は”どうしてこんなに混んでいるのか”を理解したー

どうやら、秀太たちが来る少し前まで、
人身事故で電車が止まっていたようで、
それで、電車が混んでいたのだー。

「ーーーー…川口くんー」
背後から声がして、秀太は「うわっ!?」と思わずびっくりして
振り返るー。

そこにはー
”氷の女”と呼ばれているクラスメイト、氷谷 雪菜の姿があったー。

「ーーひ、氷谷さんー…あれー…?
 さっきの電車に乗って行ったはずじゃー?」

秀太がそう呟くと、雪菜は「ーー間に合わなくて乗り遅れちゃったからー」と、
呟いたー。

相変わらず、笑顔も何一つない、無表情な様子でー。

「ーーそ、そっかー。次の電車、20分後に来るみたいだからー
 ここで待ってようかー」

「ーうんー」

秀太が駅のホームの椅子に座っていると、
雪菜も無言で秀太の隣の座席に座ったー

”え!?と、隣ー?”

飲食店で、座席がいっぱい開いているのにも関わらず、
隣に知らないおじさんが座ってきたような、そんな感覚に
陥りながらも、雪菜は全く気にする様子もなく、
駅から見える景色を無表情で見つめているー。

別に、秀太のことが好きー、とかそういうことではないー
ただ単に”何も気にしていない”のだー。

秀太だけが”女子が隣に座ってきた”ということを
無駄に意識してしまい、
”立とうかなぁ…”と一瞬考えたものの、
今、立ってしまったら、僕が氷谷さんを避けてるみたいじゃないか、と
思ってしまい、そのまま立つこともできず、そわそわするー。

「ーーあ、あのー」
秀太が口を開くと、雪菜は「ーーどうしたの?」と、
無表情のまま秀太のほうを見つめるー。

「ーーあ、いや、あのー。別に無理して僕の近くにいなくてもいいよ?」と、
言葉を掛けるー。

「ーーどういう意味?」
雪菜が、感情のない声で呟くー。

「ーーーえ、、あ、、、え…な、なんでもないー」
秀太がそれだけ言うと、雪菜はそのまま秀太から目を逸らして
駅のホームのほうを見つめるー。

「ーーーー」
「ーーーー」

”気まずすぎるー”
秀太はそう思ったー

なんだこの沈黙ー?
ここは、地獄かー?

秀太は、こんな時にこそ、友人の輝樹のような
存在が必要だと心から思ったー。

だが、輝樹はここにはいないー。
輝樹は今頃、女子たちと一緒に行動しながら
ニヤニヤが止まらないー
そんな状況だろうかー。

「ーーー!」
秀太はふと、雪菜の手が小刻みに震えていることに気付くー。

”寒いのかな…?”
そんな風に思った秀太は、立ち上がり、
近くの自動販売機を見つめるー。

「ーーーーー」
高校生の社会科見学ー、ということもあってだろうかー、
ある程度お金の持ち込みなどは、自由になっていて、
秀太も多少のお小遣いを持ってきているー。

「ーーー……」
秀太はなんとなく、暖かいコーンスープを2つほど購入すると、
そのまま雪菜の方に戻っていき、
それを一つ差し出したー

「寒いみたいだからー」
と、秀太が雪菜にコーンスープを差し出すと、
「ーーーえ」
と、雪菜は秀太のほうを見つめてー
それから「ありがとうー」と、無表情のまま
それを受け取ったー。

「ーーーー」
秀太は、立ったままコーンスープを飲み始めるー。

”立つ口実が欲しかった”というだけの意味もあるー。
秀太が立ったままコーンスープを飲んでいても、
流石に雪菜もそれに合わせて立つようなこともなく、
コーンスープの缶を寒そうに握りしめているー。

「ーーあ、あのさー」
秀太がもう一度雪菜を呼ぶー。

「ーそれ…苦手だったらごめんね?」
つい、コーンスープなんか買ってしまったが、
雪菜のような子がこういうのを飲むのか、
秀太には分からなかったー

「ーーあ、うんー。大丈夫ー。
 苦手じゃないからー」
雪菜はそれだけ言うと、電車が到着するまでの時間ー
最後まで、コーンスープを口にすることはなかったー。

ようやく、電車がやってくるー。

「ー氷谷さんー
 来たよ」

秀太はそう言って、電車に乗り込んで、
多少は混んでいたものの、座席へと座るー。

「ーーー!」
秀太は表情を歪めるー。
雪菜は再び平然と無表情で隣に座ってきたのだー。

何でも自分で一人で出来て、
氷の女などとも言われてしまう雪菜は、
思ったよりも小柄で、ふと触れてしまったその手は、
思ったよりも冷たかった。

「ーーーー…」
秀太は落ち着かない様子で、電車が目的地に着くまで待つー。

「ーーー………」

”僕には刺激が強すぎるー”
秀太は目を閉じて、隣に雪菜がいる状態を、
なんとか平常心で乗り切ろうとするー。

ここでおかしな展開になってしまったら
友人の輝樹に笑われてしまうー。

いや、むしろー
そんなことを考えているのは、きっと自分だけなのだろうー。
雪菜の側はおそらく何も考えていないし、”自然な気持ち”で、
隣に来て居るだけだと思うー。

「ーーーーー」

そんなことを考えているうちに、
ハッとして目を覚ます秀太ー。

「ーーー…(あ、やべー)」
秀太は、目を閉じて雪菜が隣にいる状況を
やり過ごそうとしていたがー、
どうやらそのまま寝てしまったようだったー。

慌てて隣を見る秀太ー

そこに、雪菜の姿はなかったー。

「ーー!?!?!?!?」
秀太はバッと振り返って駅の名前を見るとー

「ーー乗り過ごした!!!!!!!!」
と、思わず叫んでしまったーー。

だがー
その直後ー

「ー!?!?!??!?!」
驚いて自分の口のあたりに手を当てるー。

それもそのはずー。
自分の口から出た言葉はー
”自分の声”ではなく、
”聞いたこともないような女子の声”だったからだー

「ーえっ!?」
電車の窓に反射している女子生徒の姿を見て、
思わず秀太は振り返ったー。

電車の窓に反射して映っていれば、
さっきまで一緒に行動していた雪菜だったからだー。

雪菜の姿が映っていれば
当然”自分の背後に雪菜がいる”と判断するー

だが、振り返っても、そこに雪菜の姿はなかったー

「氷谷さんー?」
窓に雪菜の姿が反射しているのに、背後に雪菜はいないー。
そして、自分の口からは女子の声ー。

いやー
そもそも、窓に自分の姿が反射していないー

「ーーーえ…」
秀太は混乱しながら下に視線を見つめると、
思わず叫んでしまったー。

「ーーえ!?!?!?な、なんで僕がスカート履いてるの!?!?!?」
とー。

急に電車内の女子生徒がそう叫んだことでー
周囲の乗客は驚いた様子で雪菜になってしまった秀太のほうを見つめたー

”聞き覚えのない女子の声”と感じたのは
雪菜がいつも、冷たい感情のないような口調で喋るため、
感情のこもった声は、まるで別人のように思えたからだったー

「ーーえ…ど、どういうことー…?」
雪菜(秀太)は混乱して、椅子に座ったまま
キョロキョロとすることしかできなかったー

・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーごめんごめんー」

社会科見学で元々訪れる予定だった駅ではー
秀太になった雪菜が到着していたー。

「ーーお~!無事に合流できてよかった」
班のメンバーの一人がそう言うと、
「あれ?氷谷のやつはどうした?」
と、表情を曇らせるー

「ーーわたーー、いや、僕は見てないよー」
秀太(雪菜)はそう呟くと、少し緊張した様子で、
他のメンバーたちを見つめるー。

「ーまぁ、氷谷さんなら、いつものようしれっと
 出てくるでしょ」
男まさりの女子生徒・梶がそう呟くと、
他の班員も「そうだな!」と笑いながら呟いたー

「ーーーー」
秀太(雪菜)は他の生徒と一緒に歩き出しながら
少しだけ緊張した様子で、深々と深呼吸をしたー。

②へ続く

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

感情のない女子と入れ替わってしまった彼の運命は…!?
続きはまた明日デス~!

今日もお読みくださりありがとうございました~!☆

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