<TSF>未来が分かる女③~運命の日~(完)

祖父の遺した石により、1週間先までの未来が
簡潔に分かるようになった亜咲美は、
色々な危機を回避してきたー。

しかしー
”破滅の未来”は、刻一刻と近づいていたー。

※作品の性質上「ジャンル」(憑依なのか入れ替わりなのかその他なのか)を
 事前に明かせないタイプの作品デス
 一体何が起きるのかを含め、お楽しみください~!

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”   ”
”鈴の家に遊びに行く” ”死”

亜咲美は、祖父の蔵で見つけた不思議な石を
握りしめながら、この先の未来を見つめるー。

”具体的にどうしてソレが起きるのか”
までは分からないー。

だが、その日起きる”特筆すべき事項”が、
頭の中に文章となって、イメージで浮かび上がるー。

本来であればー
”今日”と”7日先まで”ー
全部で8つの文章が浮かび上がるのだが、
今の亜咲美には、それがないー。

今日と明日ー
それしか、表示されないのだー。

そしてー

”鈴の家に遊びに行く” ”死”

7日先に表示された時から、”消えない”運命ー。

どんな行動をしても、”死”の運命が消えないー。
これまでの経験上、亜咲美が未来を知り、
行動を変えることで、未来は変わるー。

例えば今、鈴に”明日遊びに行くのやめる”と連絡すれば
明日の未来のうち”鈴の家に遊びに行く”は消えるー。

「ーーー…」

病気、事故、事件、自然災害ー
色々な可能性を考えたー。

そのための対処も色々と行ったー
睡眠時間を早めたし、脳や心臓の検査も行ったー。
事故に巻き込まれないよう、明日は時間はかかるが
自転車で大学に向かうようにし、
”いつも使う電車とバスは使わないように”したー。

大学が終わったあとには、鈴の家に宿泊する約束をし
”自分の過ごす場所”も変えたー。

それなのに”死”が消えないー。

本来ー
亜咲美が取るはずだった明日の行動は”かなり”変えているー。

「ーこんなに色々変えたのにー
 どうして”死”が消えないのー?」
亜咲美は目を開きながら呟くー。

何か突発的なことが起こるのだろうかー。

”未来を知らなければ、こう過ごしたであろう行動”から
既に、かなり予定を変えているー

それでも”死”は変わらないー。

「ーーーー」

どうしても助からない病気かー
それとも自然災害でも起きるのかー
亜咲美がどこに行こうとも、亜咲美を追ってきて命を奪うぐらい、
誰かが亜咲美を怨んでいるのかー。

「ーーー」
突然倒れることも計算して、一人暮らしの亜咲美は、鈴の家に泊まることにしたー。
そうすれば、もし亜咲美の身に何かあっても、鈴が助けてくれる可能性は高いー。

だが、鈴の家に泊まる約束をしても、未来は変わらなかったー。

「ーーなんで…?」
亜咲美は一瞬、”鈴”を疑うー。
鈴が亜咲美を殺すー。
そんな可能性はないだろうかー。

そうだとすれば、”鈴の家に宿泊する約束”をしても、
”死”が消えないのは納得できるー。

亜咲美が、当初の予定通り、自分の家で過ごした場合も
鈴が亜咲美に殺意を抱いているなら、亜咲美は殺されるー
そういうことかもしれないー

けどー

「ーない!」
亜咲美は叫ぶー。

鈴とは長い付き合いだー。
鈴がそんなことするわけがないー。

「ーーーー…とにかく明日ー…明日、注意すればいいのー」
亜咲美はそう呟きながら、
彼氏の栄太郎に電話を掛けるー。

なんとなく、心細くなったー。

”こんな時間に、どうしたの?”
栄太郎が不安そうに呟くー

「あ、ううんー。ちょっと声が聴きたくなっただけー」
雑談をする二人ー。

栄太郎との会話はいつも通りー。
栄太郎に恨まれている感じも、やはり、ないー。

「ーーー……ねぇ…もしも、もしもわたしが明日、死ぬとしたらー」
雑談の最後に、不安な気持ちで押しつぶされそうになった亜咲美が
そう呟くと、栄太郎は
”急に何を言いだすんだよー”と、笑うー。

「うん…そうだよね、ごめん、ごめんねー」
笑いながら亜咲美がそう言うと、少し話をした後に、電話を切るー。

LINEでサークルのリーダー格の竜祐ともやり取りをするー。

話題は、来週のサークルの集まりの話題ー

”来週”ー
亜咲美は表情を曇らせるー。

”死”の予定さえ回避すればー
きっと”7日先”までまた未来が分かるようになるー。

「ーわたしは、負けないー」

必ず、明日の運命を回避して、
”サークルの集まりに参加する”という未来を
表示させてみせるー。

そんな風に思いながら、亜咲美は静かにスマホを握りしめたー。

当日ー

”鈴の家に遊びに行く” ”死”

ついに、この日が来てしまったー。

「この順番で表示されてるってことはー
 鈴の家に行くまでは大丈夫ってことねー」

1日に複数、出来事が表示されている場合、
”先に表示されているほう”が、実際に起きる順番も”先”であることを
既に亜咲美は理解しているー。

「ーー…」
鈴の家に行くべきか、それともキャンセルして自分の家で過ごすかー。
亜咲美は迷うー。

だが、鈴の家に行く約束をする前から”死”は表示されていたー。
少なくともー…
それは、変わらないー…。

「ーー…」
”彼氏の栄太郎の家”に今から変更したらどうだろうかー。

それでも”死”なら、鈴も、栄太郎も関係ない可能性が高いー。
どんなに場所を移動しても”死”なのであれば、
残る可能性は”亜咲美の急病”か”自然災害”ぐらいしか考えられないー。

”どこにいようと絶対に殺す”と思われるほどー
恨まれてはいないー。

と、思いたいー。

「ーーーー…」
亜咲美は、電車とバスを使って通学するーに、再び変更したー。

少なくとも、大学が終わるまで”死”は訪れないー。
だから、自転車で時間をかけて移動するより、
この方がいいと考えたのだー。

病死の可能性もあるー。

だからーなるべく体力を使わないほうがいいー。

昼休みー
亜咲美は彼氏の栄太郎と一緒に昼食を食べていたー。

「ーーー今日、わたしの家に来るんだったよね?」
鈴が、確認にやってくるー。

「ーうん」
亜咲美が言うー。

ギリギリまで迷っていたが、やはり鈴の家にいたほうが
安全な気はするー。

少しでも、”死”を回避するためにー。

「ーーーじゃあ、また後でね!」
鈴が立ち去っていくと、栄太郎が「そっかー今日は鈴ちゃんの家にー」と笑うー。

”栄太郎には今、知られた”
だが、栄太郎が、”亜咲美が鈴の家に行くことを知らない”時点から
”死”は表示されていたー。

だからー、栄太郎は関係ないはずだー。

「ーーーあ、そうだー」
亜咲美はあることを思いつくー。

「え~っと、今日も昨日と同じぐらいの時間に連絡していいー?」
亜咲美がそう言うと、栄太郎は「え?いいけど?」と首を傾げるー。

昨日と同じぐらいの時間ー
つまり、22時頃ー。

亜咲美はすぐに、石の力で未来を見るー

”鈴の家に遊びに行く” ”死”

ーーー!!

亜咲美は表情を歪めたー。

”栄太郎と電話をする約束”をしたのに、
それが表示されないー。

つまりは、”死”が先ー。
22時前に、亜咲美は、死ぬー?

”待ってー。電話ぐらいじゃ表示されないだけかも”
亜咲美はそう思いながら、
「ーーあ、え、栄太郎さー」と、言葉を続けるー。

「ーー22時頃、栄太郎の家に行ってもいいかなー?」

「ーーえ!?急にどしたの?」
栄太郎が戸惑うー。

だが、亜咲美は”栄太郎の家に以前置きっぱなしにしたものを回収したい”と
無理やり理由をつけて、栄太郎の家にモノを取りに行く約束をするー

”このレベルの出来事”なら、いつも通りなら絶対に表示されるー。

”鈴の家に遊びに行く” ”死”

けれどー
それは、表示されなかったー。

亜咲美は理解するー。
”鈴の家に到着後”から”22時前”に死ぬー。

鈴の家に行くのは、20時頃の予定だー。

”2時間…”
だいぶ絞れたー。
あとは、その時間ー注意するしかない。

「ーーあ、ごめんーやっぱ忘れてー」
栄太郎に申し訳ないと思いつつそう呟くと、
亜咲美は”わたしは、絶対負けないー”と、改めて決意したー。

20:30-

亜咲美は、鈴の家にやってきていたー。

鈴と楽しく雑談をーー
したいところだったが、
気が気ではなかったー

「あ、戸締りー、しっかりしといたほうがいいよー」
亜咲美が言うー。
戸惑う鈴ー。

”誰かがわたしを殺しに来るのかもー”
そう思いながら、未来を確認する

”死”

残された予定は、これだけになっていたー。

「ーーーー…なんでー」
亜咲美が表情を歪めると同時にー

「ーーーー!!!!」
部屋がピシっと音を立てたー

地震ーー

「きゃああああああああああああ!!!!」

思わず悲鳴をあげてしまう亜咲美ー

これが”死”の原因ー

そう思ったー

だがーー
地震は、せいぜい震度1か2レベルでー
すぐに止まったー

「だ、大丈夫ー?」
鈴が不安そうに言うと、
亜咲美は目に涙を浮かべながら「ご、ごめんー」と、返事をしてー
すぐに未来を再確認するー

”死”

「ーーなんで」
亜咲美は震えるー

「なんで消えないの!」
亜咲美が叫ぶー

鈴は「ど、、どうしたの…?亜咲美ー?」と、
不安そうに表情を歪めたー。

「ーーわたし…死にたくないー!」
亜咲美はそう叫びながら、突然、鈴の家の外に飛び出すー

「え!?ちょっと!?亜咲美ー!」
鈴の言葉も耳に入らずー、
亜咲美は”病院”に向かって走ったー。

病気ー
あるいは事件ー、自然災害ー

でも、病院に駆け込めば、絶対に助かるー
そう思ったー

不審者に思われてもいいー
死ぬより、いいー。

駅前の大病院に駆け込んでー
受付が見える椅子に座るー。

人がある程度いるため、”用がないのに病院に居ても”
目立たないー

ここなら”地球が消滅”でもしない限りー…
大丈夫ー。

もし倒れても、すぐに治療をー

”死”

それでもーー
消えなかったー

未来は、変わらなかったー

「ーーなんで…どうしてーー」

「なんでーーーー」

涙を流す亜咲美ー
何をしてもー
消えないー

これは、いったいどういうー…

しばらく座り込んでいた亜咲美は、
やがてー
一人、笑い出したー

「ーふふふ…ふふふふふふ…あはははははははは♡」
夜の病院の待合室で突然笑い出した亜咲美に、
周囲の利用者や、病院のスタッフが困惑するー

「ーどうか…しましたか?」
看護師の一人が亜咲美に尋ねると、
亜咲美は「いえ…別にー」と、ニヤニヤしながら
そのまま立ち去ってしまったー

病院から出た亜咲美は、笑みを浮かべるー。

「ーーずっと、ずっと、君が欲しかったー」
亜咲美が自分の手を見つめながら呟くー。

「ーー君には彼氏がいたしー
 ずっと黙ってたけど、もう我慢できないー。
 君はー俺のものだー」

亜咲美はそう呟くと、自分の指をペロリと舐めて、
静かに笑みを浮かべたー

”憑依薬ー?”

彼はー
サークルの中心人物の竜祐は、亜咲美のことが好きだったー。
だが、亜咲美には彼氏がいるため、
ずっとその気持ちを表に出さないようにしていたー。

しかし、
ある日彼は、ネットの裏オークションで
”憑依薬”なるものが売られていることを知ったー。

出品者の愛染(あいぜん)という男から
憑依薬を半信半疑で購入した竜祐は、
亜咲美を乗っ取って、自分が亜咲美になることを決断ー、
竜祐としての”やること”を全て終えたら、亜咲美に憑依することに決めていたー

それが、”今日”だったのだー。

「ーーーあ、うんー大丈夫、ごめんねー」
急に立ち去った亜咲美を心配した鈴と電話でやり取りをするー。

電話を終えると、亜咲美はポケットに謎の石が入っていることに気付き、
「なんだこれ?」と、鼻でそれを笑うと、
石を放り投げて、笑みを浮かべたー。

「ーさてと、彼氏には悪いけど、”わたし”とは別れてもらってー」
亜咲美はそう呟きながら静かに歩き出すー。

「ー亜咲美ちゃんに色々なコスプレさせてみるのも楽しそうだなぁ…
 へへ… …ってか、憑依薬って、一度憑依したら抜け出せないのかな?
 抜け出す方法説明になかったし、抜けようとしても抜けれそうにないけどー…
 
 ま、いっかー」

亜咲美はそう言いながら、夜の街を笑いながら歩き始めるー。

「ーー俺が代わりに、間宮亜咲美として、一生生きてあげるからさー
 安心しなよー」

亜咲美の声でそう囁くと、
亜咲美になった竜祐は不気味な笑みを浮かべたー。

”身体は生きていても、永遠に乗っ取られたまま”

それはー、
亜咲美にとっての”死”ー

7日後に”死”と表示されてから、今日までー
亜咲美が助かる方法は、一つだけだったー。

”亜咲美に憑依する竜祐を、当日までに排除することー”

しかし、そんなことに気付くはずもー
そんなことができるはずも、なかったのだー。

未来を知ってもー
それを、回避できるとは限らないー。

逃れられない運命も、この世界には、あるのだからー。

おわり

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コメント

ジャンル秘密系のお話でした~!☆
今回はシンプルに”憑依”が結末ですネ~!

TSF系、とは書いてあったので
予想通りな方も多かったのではないでしょうか~?

お読みくださりありがとうございました~!

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TSF<未来が分かる女>

コメント

  1. 匿名 より:

    愛染(あいぜん)という男から
    憑依薬を購入した場合憑依薬を買った男が元に戻れなくて困るというダークが定番なのに愛染が登場してるのに憑依者がダークにならなくてつまらなかった。

    • 無名 より:

      コメントありがとうございます~!☆

      このお話の購入した男は、戻れなくてもいいや、な考えだったので
      ダークにはなりませんでしたネ…!

  2. 匿名 より:

    無理ゲーじゃねーか!まあ、不幸だったってことで