<寄生>宇宙旅行に迫る影①~異変~

2XXX年ー。

人類は一般人による宇宙旅行を実現させていたー。

しかし、そんなある日ー…

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーわあああああああ…!」

目を輝かせながら、宇宙ステーション内の
”展望室”から地球を見つめる彼女ー。

「ーーははは…写真では見たことあったけど、
 やっぱ生で見るってのはすごいなー」

宇宙ステーションの展望室からは
”宇宙から見た地球”を一望することができるー。

”宇宙から見た地球”ー。
写真や映像で見たことのある人間は
確かに大勢いるだろうー。

しかし、こうして”生”で見たことのある人間は少ない。

だが、この世界では
20年ほど前に”一般人による宇宙旅行”が現実のものになっていたー。

当然、人数は限られているものの、
3泊4日の”宇宙旅行”が、毎週行われており、
毎週2、30名ほどが宇宙旅行を楽しんでいるー。

抽選制ではあるものの、特別な金持ちや、偉い人でなくても、
宇宙旅行を一般の人間も楽しむことができるー。

主要各国は既に宇宙にステーションを1、2個は持っていて
日本もこの、宇宙ステーション”零”を保有ー
宇宙旅行の名所の一つとして、人気を博しているー。

そんな、時代になっていたー。

「ーー卒業旅行が宇宙とか、最高だよね」
大学生の里井 萌花(さとい もえか)の言葉に、
彼氏の寺原 洋平(てらはら ようへい)は「そうだな」と
優しそうに微笑んだー。

地球と月のちょうど半分ぐらいの位置に存在する
この宇宙ステーションは
”宇宙旅行用”に設計された、
いわば”宇宙に浮かぶホテル”で、こうして毎週のように
宇宙旅行を楽しむ人たちで溢れていたー。

「ーーえ~?ほんとですか?」
萌花が驚きながら言うー。

宇宙ステーション内にある”宇宙バー”では、
月を眺めながら、飲んだり、食べたりを
楽しむことができるー

「あぁ、ずっと宇宙にいるとさー、
 そんな光景も見ることができるんだー」

宇宙ステーション内のバーで働くマスターは
ずっと宇宙に滞在しており、
色々な光景をステーション内から
見ているのだと言うー。

気さくな性格のマスターに、萌花と洋平、
他のお客さんも色々なことを質問しているー。

毎週ー
金曜日の午前中に地球からロケットが出発し、
金曜日・土曜日・日曜日・月曜日で3泊4日の旅行を楽しむー。
それが、一般人向けの宇宙旅行プランだー

毎回、20~30名ほどが旅行に旅立つー。
また、その時に飛び立つロケットは
「宇宙ステーション」への物資輸送も兼ねており、
毎週金曜日には旅行客と、宇宙ステーションに必要な物資が
運び込まれるー。
ステーション内に必要な酸素の供給を行うための装置内への
酸素の補充もこの時に行われているー。

そして、月曜日になると、宇宙ステーションから
旅行客と、宇宙ステーション内のごみや不要になった品を回収し、
そのまま地球へと帰還するー。

この時代のロケットは、最新鋭の技術が使われており、
3時間もあれば地球とこの宇宙ステーションの間を行き来することが
できるようになっていたー。

そして、宇宙ステーションには、保全のスタッフや
ホテルとしての職員などが常に滞在しているー。

つまり、”宇宙暮らし”の人間も何人か存在している、
と、いうことだー。

「ーえ、じゃあ、もう何年も地球に帰っていないってことですかー?」
萌花がそう言うと、
「ーーまぁ、そうだなぁ…ははは」と、気さくなおじさん風のマスターが答えたー。

「ーーなんか憧れちゃうなぁ…そういう生活ー」
萌花が微笑むー。

萌花は、”お姉さん”的な雰囲気の女子大生で、
優しく、穏やかな雰囲気の持ち主ー。
聞けば、”子供の頃からいつもお姉さんお姉さん言われてたー”みたいなことを
言っていて、昔からそういう性格だったようだー。

大学に入ってすぐ、萌花と出会った洋平は、
2年半の付き合いを経て、こうして卒業旅行として
バイトでずっと貯めてきたお金を使い、
宇宙旅行にやってきたのだったー。

バーでの食事を終えて、宇宙ステーション内の廊下を歩きながら
自分たちの部屋に戻ろうとする萌花と洋平ー。

ステーション内は”地球と同じ重力”が特殊な装置により
再現されており、ステーション内で常に無重力状態、ということはない。

「ーーあ、またあそこ行こうよ!」
萌花が指をさしたその先はー

”無重力スペース”

当然、宇宙に来るとなれば”無重力”を体験したいという人もいるー。

そのため、宇宙ステーション内には、無重力スペースが
用意されており、そこで生活することもできるー。

「ーーーははは…好きだなぁ」
洋平はそう言いながら、萌花と一緒に無重力の区画へと入っていくのだったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・

1日目の夜ー。

宇宙の絶景が見える部屋で、
窓の外を見つめながら
ベッドに横たわっていた洋平ー。

「ーーーーーーー」
”ずっと見てられるなこの景色”と、思いながら、
萌花の寝顔をふと見つめたその時だったー

ゴォン!!!

「ーー!?」
変な音がしたー

「ーーえ…今の何?」
穏やかな寝息を立てていた萌花も起き上がるー。

「ーーわからないー」
洋平は少し戸惑いながら部屋の外の廊下の様子を確認するー。

すると、直後、ステーション内に放送が響き渡ったー。

”支配人の米倉(よねくら)ですー
 たった今、不詳の衝撃を感知しましたー。
 原因究明中ですが、ステーション内は
 50の安全対策が施されております。
 皆様は安心してお過ごしくださいー”

そんな、放送だったー。

「何…不詳な衝撃ってー」
不安そうに呟く萌花ー。

「ーまだ原因不明ってことだろー…?」
洋平の言葉に、萌花は「大丈夫なの…?」と呟くー。

”宇宙”
そんな場所で何かが起きれば、逃げ場がないー。

そんな不安が、萌花や洋平ー、
他の利用客たちの間でも広がっていくー。

ゴォン!

ゴォン!

「ーーー!?」
再び謎の音が響き渡るー。

洋平たちがいる部屋の周囲の利用者も
戸惑いを露わに、廊下に出てきていたー。

”え~ただ今の異音ですが、
 ステーション内の動力トラブルであることが判明しましたー。
 ですが、パンフレットに記載もあった通りー、
 ステーションの動力ユニットは予備3つを含む4つが用意されており、
 ひとつが機能を停止しても、安全性に問題はございませんので
 ご安心ください”

宇宙ステーション”零”の支配人である米倉の放送が再び入るー。

音は、動力トラブルだったようだー。
放送で言われていた通り、不測の事態に備えて
宇宙ステーション内では必須なものはそれぞれ”予備が3つ”用意されているため、
こういう事態が起きても、問題がないようになっているー

「ーーなんだー
 どういうことだーーー」

洋平がそう呟きながら部屋に戻ったその時だったー。

部屋の酸素吸入のために空いている天井の噴き出し口のような場所からー
大量のミミズのような昆虫が降り注ぎー
そして、その近くで萌花が膝をついて苦しそうにもがいていたー。

「あ、、、ぅ、、、ぅ、、、、あぁ…っ」
もがく萌花ー。

「ーど、、どうした!?そ、その虫はー!?」
洋平が叫ぶと同時に、廊下の方からも悲鳴が聞こえてきたー。

「ーー!?!?!?」
洋平は部屋の入口のほうを見つめながらも、
萌花のほうに視線を戻すー

だがー
苦しんでいたはずの萌花は、笑みを浮かべながら
普通に立ち上がっていたー

「ーこれが、人間かー」
萌花はニヤニヤしながらそう呟くと、自分の胸を両手で揉むー

「ーなんだ…これはー?…」
そう呟くと、胸を揉んだままうめき声をあげて、身体を震わせたー。

「も、、萌花ー?」
唖然とする洋平に対してー
萌花は「なるほどー…これはおっぱいと言うのだなー」と、
笑みを浮かべたー

「な…何を言ってー…?」
洋平が戸惑っていると、萌花の耳からー
”寄生虫”のようなものが飛び出したー。

「ーーうへへへへへへへへぇへへへへぇぇぇ」

萌花が、快感に溺れているようなー
”人間とは思えない”奇妙な笑い方をしながら、
耳から飛び出した寄生虫のようなものを
嬉しそうに撫でているー

「ーーも、、萌花…!?」
戸惑いの声を上げる洋平ー。

「ーーえへへへへへへへへへぇ 人間の身体ぁぁぁぁぁァァ」
萌花がニヤニヤと涎を垂らしながら自分の身体を
抱きしめて心地よさそうにしているのを見て、
洋平は”普通じゃない”と、そう思ったー

「ーーも、萌花から離れろ!」
そう思いながら萌花に近付こうとする洋平ー。

だがー
部屋の天井から、萌花に”寄生”したのと同じ、
ミミズのような姿の寄生虫がぼとぼとと落ちてくるー

「ーひっ!?」
そのうちの一匹が、洋平の腕に付着したー。

「ーーく、くそっ!」
洋平は腕についた寄生虫を咄嗟に振り落とすー。

「ーー俺から離れろ!この野郎!」
そう叫ぶと、床に叩きつけられたミミズのような姿の
寄生虫を思いきり踏みつぶしたー。

寄生虫が体液を散らすー。

「ーーう…う…うぁああああああああああああああっ!」

その直後、
萌花が鬼のような形相で叫ぶー

「仲間を…仲間を…よくもぉ」
萌花の髪が不気味に逆立ちー、
悪魔のような形相で、洋平のほうを見つめているー

その表情には怒りの色が浮かびあがっているのが、
よく分かるー。

「ーーーあ、、あ、、ぁあああああああああああああああっっ」

「萌花ー!」

”報復”なのだろうかー
萌花が寄生虫に何かをされているのか、突然悲鳴を上げ始めるー。

「あ、、ぁっ…ぁ…あっ…ぁ…ぁ…ぅ…ぁぁあああああっ」
寄生虫が何匹も萌花に侵入して、
苦しそうな声を上げる萌花ー。

だがー
直後、寄生虫がさらに天井から出現してー
萌花の姿を視認することも難しくなってしまうー。

「ーーく、、くそっ!
 も、、萌花!」

萌花本人に聞こえているか分からないー
けれども、洋平は叫ぶー

「た、助けを呼んでくるから!待っててくれ!」
とー。

洋平はそう叫ぶと部屋の外に駆けだしたー。

そして、すぐ近くの隣の部屋をノックするー。

だが、部屋の中からはー
”人間の…からだぁ…”
と、いう女の声が聞こえてきたー

「ーー…お、おい…マジかよー…」

洋平は諦めて宇宙ステーション内の客室のある区間から、
警備員や支配人がいる区画へと向かい始めるー

だがー

「ーこ、ここにもこいつらがー…?ウソだろー…?」

廊下にもミミズのような寄生虫の姿が見えるー。

地球でこんな虫は見たことがないー。
宇宙にだけ存在する地球外生命体だろうかー。

「ーーーくそっ!」
廊下のガラス張りの窓から見える地球ー。

だが、今はそんな光景を美しいとは思えないー。
早く萌花を助けないとー。

そう思いながら、警備員たちが生活している区画を目指すー。

宇宙ステーション・零には、
旅行客のトラブルや犯罪行為、そして万が一地球外生命体と
遭遇した時のために”警備員”が、配属されているー。

そこに助けを求めに行くのがベストだと
洋平は考えたのだー。

警備員たちがいる区画にたどり着いた洋平ー

”関係者以外立ち入り禁止”
そう書かれた扉の前でインターホンを鳴らす洋平ー。

しかしー
応答はないー。

「ーーーくそっ!」
洋平はそう叫ぶと、
”緊急事態だから”と、警備員たちのいる区画の中へと
入り込んだー。

その直後、奥から銃声が聞こえたー

「ーーー」

宇宙ステーションがー

”非日常を楽しめる夢の空間”からー
”逃げ場のない絶望の空間”に変わったー。

洋平は、奥から響いた銃声が止むのを確認すると
意を決して奥へと進むのだったー

②へ続く

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コメント

2月最初のお話は寄生モノデス~!

”逃げ場のない宇宙空間”をテーマにした作品を思いついた際に、
憑依や皮も候補に挙がっていたのですが、
色々考えた結果、今回は寄生になりました~!

続きはまた明日デス!

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