<MC>邪悪なる眼②~最後の洗脳~(完)

”相手を見つめながら何かを考えるだけで”
その相手を操ることができてしまう男ー。

彼は、なるべく人と接さないように、日々を過ごしていたー。

しかしー…

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ファンなんですー!」

嬉しそうに言い放つ香央梨ー

「ーえ…あ、、お、、俺のー…?
 あ、ありがとうございますー」
翔はそう言いながら、香央梨のほうを見つめるー。

”何も思わないように”しながらー
翔は”でも、よく分かりましたねー…?”と、だけ
返事をすると、
「すみません…!あそこに落ちてた絵が見えちゃってー」と、
香央梨は照れくさそうに笑ったー。

「ーいつも、プルートさんのツイッター見てたので、
 あれ見て、あ、プルートさんの絵だなぁ~!って
 すぐに分かったんです!」
香央梨の言葉に、翔は今一度「ありがとうございますー」と、
頭を下げるー。

「ーまさか、好きな絵師さんがお隣だなんてー」
香央梨はとても嬉しそうだー。

翔も、当然”自分の絵のファン”を名乗る人が
隣に引っ越してきたー、ということは嬉しいー。

しかしながらー、
”だからこそ”香央梨には、今すぐにでも
立ち去ってほしかったー

「ーー…あ、すみません。今も仕事中なものでー」
翔が苦笑いしながら言うと、
”綺麗な人だなー”と、つい心の中で思ってしまうー。

「ーーーあ…」
香央梨はそう呟くと、
「ーわたしのコスプレ姿、見たいですか?」と、
笑みを浮かべるー

「ーーえ…!?」
翔は表情を歪めたー。

”綺麗な人だなー”と思った時に、一瞬、
そんなことを”思ってしまった”ような気がするー

「あ、いえいえいえいえいえいえいえ、そんなことありませんよ
 だいたい、引っ越してきた人にいきなりそんなこと
 思ったりしませんよー」

と、翔が言うと、香央梨は「ふふふ」と、笑みを浮かべてー
「あ、すみません!お仕事中でしたねー。お邪魔しました!」と、
そのまま頭を下げて立ち去って行ったー。

玄関の扉を閉めた翔は「ふ~~~…」と、深いため息をつきながら
その場に力なく座り込んだー

”今ー…俺ーーー”
翔は頭を抱えるー。

今ー
あの人を洗脳してしまったのではないかー
そんな、不安に苛まれるー。

”初対面でいきなりコスプレ姿を見たいですか?”なんて言ってくるはずがないー。
またー、またやってしまったー。

「くそっー…俺は、人を不幸にしてばかりー」
そう呟きながら自分の作業机の方に戻り、
妹の”幸美”を洗脳して、そのまま命を奪ってしまった時の
ことを思い出すー。

「ーーくそっ!こんな力ー…こんな力ー…なんでだよー」
心が乱れて、絵を描くことも上手く行かず、
翔は今一度深いため息をついて、椅子に寄りかかったー。

”相手を洗脳できてしまったのかどうか”も、
ハッキリと翔には分からないー

妹・幸美の死や、今のような香央梨のように、
”明らかにおかしな行動”をとれば分かるー。

だが、些細なことの場合ー…
例えば、中学時代のゴールキーパーに”ミスれ”とつい思ってしまった
時のような”洗脳”の場合、
翔自身は自覚していない”被害者”もたくさんいるかもしれないー。

少し前も、どうしても急にパソコン用のパーツが必要になって
やむを得ずお店に足を運んだ際に
購入したパーツを店員が特別に、と少し値引きしてくれたのだが、
あれも”無意識のうちに”心の中で”値引きしてくれたらいいなぁ”などと
思ってしまっていた可能性も否定はできないー

「くそっ!くそっ!くそっ!」
翔は怒りの形相でそう呟くと、一人、頭を抱えるのだったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・

数日後ー

♪~
インターホンが鳴るー。

ちょうど、お届けモノが届く予定になっていた翔は
「あ、玄関前でお願いします」とだけ告げると、
”ご苦労様です”と、インターホン越しに感謝の言葉を伝えたー。

宅配はできる限り”置き配”にしてもらっているー。
インターホン越しなら、相手の姿を全く見ないようにしていても
相手からすれば、”こっちがどこを見ているか”なんて分かりようがないし、
違和感を抱かれることもないー。

置き配であれば、相手を不本意に洗脳してしまうようなことも、
起こりようがないのだー。

荷物を受け取ろうと、玄関の方に向かおうとした直後ー
再びインターホンが鳴ったー

「ーーん?」
表情を曇らせながら翔は玄関から引き返して
再び「はい」応答するー

”…あ、あのー…コスプレして来ましたー”
そんな、恥ずかしそうな声が聞こえてくるー。

「ーーーーえ!?!?」
画面を見ないようにしていた翔ー。
しかし、香央梨のそんな言葉に驚いて翔は
画面を見てしまうー。

するとそこにはー
巫女服姿の香央梨の姿があったー。

「ーちょっ!?えっ!?」
驚いて変な声を出してしまう翔ー。

「ーーな、なんでそんなー」

隣人の香央梨は、女子大生で、
先日、初めての一人暮らしを始めたばかり、と
初日の挨拶の際に、説明されているー。

そんな人が、引っ越しわずか数日で、
見ず知らずの隣人の男にコスプレ姿を
披露するわけがないー。

いくら翔が、絵師・”プルート”だとしても、
明らかにおかしいー

翔は慌てて画面に映る香央梨を見つめて
香央梨に”元の服に着替えろ コスプレをするな”と
念じようとするー。

しかしー
アパートの階段を子供が騒ぎながら上がっている音が聞こえたー。

「ーーーー!!!」

このままじゃー
”巫女服姿の香央梨”を見られてしまうー。

香央梨に迷惑がかかってしまうー。

「ーーと、とりあえず中にー」
翔はそう呟いて、慌てて玄関に走っていくと、
香央梨をすぐに部屋の中に招き入れたー。

部屋の中で、香央梨に元の服に着替えるよう再度洗脳して、
何とか誰にもこんな姿を見られないように、元の部屋に
戻さなくてはー。

「ーー注文してから届くまで時間がかかっちゃってー
 コスプレ見せるの遅くなっちゃって、ごめんなさいー」
短めのスカートの巫女服で寒そうにしている香央梨ー

「ーーご、ごめんなさいーって…
 お、俺の方こそごめんなさいー」
翔が慌てて言うと、
香央梨は「ふふっ…見てもらいたいんです♡」と嬉しそうに微笑んだー

翔は香央梨から目をそらしながら、
香央梨を元に戻す方法をあれこれ思案するー。

とにかくまずは”普通の服に着替えるようにー”

だがー

「ーーわたし…いつもあなたの絵が、大好きで大好きでー」
香央梨が突然、翔に近付いてきて、身体を密着させてきたー。

翔は、無意識のうちに”巫女服の香央梨”を見てエッチなことを
考えてしまっていたのか、香央梨が身体をくっつけてくるー

「ーーダ…だ、、だ、、だめだ!」
翔が慌てて叫ぶー

しかし、香央梨は「もう、我慢できないー」と、言いながら
翔にキスをしてきたー。

甘い声を出しながら、香央梨が性欲に飢えた表情を浮かべているー。

香央梨にキスをされたことで、
翔は再びおかしなことを考えてしまうー

”くそっ!早く、早く、なんとかしないとー”

恐らくー
この子が”翔の絵のファン”であると言うのは本当だー。
あの時点ではまだ、香央梨に視線をほとんど合わせていなかったしー
”ファンになれ”などと念じていないし、
無意識にそんなことを考えてもいないー

だからこそー、
余計にー

「や…やめてくれ!」
翔はなんとか香央梨を引きはがして、
”自分が変態”だと言われないように、かつ、香央梨がこんなことをしないように、
なんとか”命令”を送ろうとしたー

しかしー

「か、香央梨!何してるんだ!?」
玄関の方から別の男の声が聞こえたー

「専一(せんいち)~、ふふふふ、わたし、
 もう我慢できないの♡」

香央梨は、翔の部屋に突然入ってきた、専一という男に対して
そう言い放つと、翔のほうを見て、「ーーもう…♡ はやくぅ♡」と笑みを浮かべるー

専一は鬼のような形相で「お、お前は誰だー!俺の彼女と何してるんだ!」と叫ぶー。

偶然ー
専一は香央梨の家に遊びにやってきていてー
その最中に、香央梨が巫女服で翔の家に入っていくのを
見てしまったのだー。

「ーーもう!専一、邪魔しないでよ!」
香央梨の言葉に、専一は”浮気”されていると思って表情を歪めるー

「ーち、違うんだ!聞いて下さい!」
慌てた様子で翔が叫ぶー

だが、巫女服の香央梨が目に入ってついエッチなことを
考えてしまうー。

「ーーふふふ…♡ご主人様ぁ…」
香央梨がさらに洗脳の影響を受けてしまったのか、翔のズボンの
上からそれを触り、嬉しそうな笑みを浮かべているー。

「ーーーご、ごしゅじんさまー!?」
専一が驚くー。
普段、この香央梨という子はおそらく、この彼氏と
仲良く過ごしているのだろうー

「ーーお、、お前!香央梨に何をした!?」
叫ぶ専一。
気の良さそうな若者を前に、翔は「す、すぐに元に戻しますから!」と
叫ぶも、香央梨に押し倒されてしまう。

「ーーはぁ…♡ はぁ♡ はぁ♡」
香央梨の飢えきったような表情に、
翔も、彼氏の専一も驚いてしまうー。

なんとかして”元に戻れ”と念じようとする翔ー。

だがー
香央梨を見て”元に戻れ”と念じようとしたその瞬間ー
専一が翔の方に駆け寄って翔の胸倉を掴んだー

視界から香央梨が消えてー
”香央梨を元に戻す”ことができないまま
専一のほうを見つめるー

「お、落ち着いて下さい!すぐに彼女さんを元にー」
翔はそう思いながらも、
”香央梨を元に戻そうとしているのに、邪魔されているこの状況”に
心の中では無意識のうちに苛立ちを覚えてしまっていたー。

”あぁ、もう、邪魔しないでくれよ!消えてくれよ!”
と、心のどこかで思ってしまったー。

その直後ー

「ーーー悪い…すまなかったー」
専一が突然、翔から離れるー。

「ーーえ」
翔は、専一を無意識のうちに洗脳してしまったことに気付かず、
唖然とするー

専一はそのまま「邪魔して悪かったなー。俺は消えるよ」と
笑みを浮かべながら言うと、そのまま部屋の外に立ち去っていくー

「ーーえ…!?ちょっと!ちょっと待って!」
翔が叫ぶー

自分が絵を描くのに使っていたタブレットに躓きながら
慌てて専一の後を追おうとする翔ー。

だが、背後から巫女服の香央梨が翔の腕を掴むー

「ーいっぱいエッチなことしたいよぉ…♡」
香央梨はそう言いながら翔にキスをしてくるー。

なんとか平常心を保って
香央梨に対して”元に戻れ”と、念じようとする翔ー。

しかしー
外から車が衝突するような音と悲鳴が聞こえたー

「ーー俺は…俺はーーー」

”俺は、幸美を死なせてしまった時と、何も変わってなかったー”
翔は、目から涙をこぼしながら、
巫女服姿の香央梨にされるがまま、放心状態で横たわっていたー

香央梨が狂ったように笑っているー。
恐らくー、純粋に翔の絵のファンで、
真面目に生きていたであろうこの子まで壊してしまったー

香央梨にエッチなことをされている最中に、
何かを考えてしまったのかー
香央梨は「もっと…エッチしたい…!えへへへへへ」と叫びながら
ふらふらと翔の部屋の外に出て行ってしまったー

もう、何もかも、終わりだー

翔はしばらくすると自虐的な笑みを浮かべながら立ち上がったー。

今まで一度も試したことがなかったことがあるー。

それを試してみようー。

そう、思ったー。

翔は洗面台の方に向かうと、
鏡で”自分の姿”を見つめながら疲れ切った表情でほほ笑んだー。

”ーー誰にも気づかれないように、一人静かに人生を終えろ”

そう、念じたー。

もう、これ以上誰も巻き込みたくないー。
だから、これが最後の洗脳ー。

「ーーーーーはい」
翔は一人笑みを浮かべると、そのまま家の外に向かって歩き出したー。

おわり

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

”自分が望まないのに人を洗脳できてしまう”お話でした~!

ネタ自体は前から考えていたのですが、
入れ替わりでも同じような(目を合わせると入れ替わってしまう)を
書いたことがあるので、長い間保留にしていたネタですネ~!

今日もお読みくださりありがとうございました~!

MC<邪悪なる眼>
憑依空間NEO

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