<寄生>パラサイトラビリンス③~脱出~(完)

寄生虫が放たれた迷宮からの
脱出を目指す少女たちー。

その先に、待ち受けているものはー…?

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーうっ…うぅぅぅ…」

寄生された和花に突き落とされた栄子は、
苦しそうに顔を上げるー。

そこにはーー

「ーーひっ…ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!?!?!?!?」
栄子は、思わず悲鳴を上げたー。

大量の寄生虫が蠢く空間ー。

そこは、寄生虫たちの”巣”だったー

「ーーあ、ぅ… ぁ、、、」
栄子の耳から、鼻からー、あらゆる場所から
寄生虫が体内に入り込んでいくー。

「ーーえへ…き、、き、、気持ちイイ…♡」
栄子の顔が、やがてだらしない表情に変わると、
栄子は、自分の服を引きちぎって、
”下”からも寄生虫が入って来れるようにすると、
膝をついて、ニヤニヤと笑みを浮かべたー。

「ーーあたし…寄生されてる…えへ♡ えへへへへ♡」
アソコからも寄生虫が入ってくるのを感じながら、
栄子は、気持ちよさそうに笑みを浮かべたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

”迷宮に残っているのは、君ひとりだ”

男の声が響き渡るー。

ツインテールの受験生・梨乃は、
”慎重な性格”が功を奏して、時間はかかっているものの、
着実にゴールへと進んでいたー。

「ーーー…」
迷宮の通ってきた道に、”目印”をつけながら、
慎重に進んでいる梨乃ー。

そのため”同じ道”をぐるぐる回ることもなく、
確実にゴールへと近づいていたのだー。

”一番年下である君が、
 一番堅実だなー。
 見事だよ”

男の言葉に、梨乃は答えないー。
感情的にもならず、冷静に、ただゴールを目指しているー

怯えて、時々涙を流したりしてはいるものの、
梨乃の行動は、理に適っているー。

”ーー素晴らしいー
 間もなくゴールだ。”

男が言うー。

だが、そこにー

「み~つけた♡」
寄生された尚美が姿を現すー。

尚美はよろよろとゾンビのように近づいてくるー。

梨乃は「目…目を覚ましてくださいー」と、不安そうに呟くも、
すぐに”もう話が通じる状態ではない”と判断したのか、
そのまま背後に引き返していくー。

尚美は周囲の寄生虫たちを見つめると
「ーーほら、あんたたち、追いなさい!」と、まるで女王かのように叫ぶー。

この寄生虫たちの習性で
”先に人間を乗っ取った個体”が、上に立つ、というルールがありー、
そのため、今は最初に寄生された尚美が
”女王”のような存在になっているのだー。

尚美の服は既に穴だらけで、寄生虫たちが色々な場所を
蠢いているー。

「ーくくくくー逃げられると思わないことね!
 うふ…ふふふふ…あはははははははっ!」

狂った尚美の笑い声が響き渡るー。

梨乃は、後を追ってくる寄生虫から逃げながらー
なんとか”出口”の方に向かおうとするー

”ここはさっき回った場所ー…だったらー…”
梨乃は”まだ行っていない道”の方に進んでいくー。

「ーー素晴らしいなー」
男は、モニターでその様子を見つめながら、
迷宮数百か所の映像が一斉に表示されている部屋で笑みを浮かべるー。

「ーーー諸君らがー
 ここに連れて来られた理由を、諸君たちはまだ知らないー」
男は笑みを浮かべるー。

尚美、梨乃、栄子、和花、和枝ー
5人が連れて来られたのには”訳”があるー。

「諸君らはー”金”になったんだー」
男はそう呟くと、”そろそろゲームクリアかー”と、笑みを浮かべるー。

パソコンには、
”これまでの平均脱出人数1.5人”と書かれているー

彼は、この”ゲーム”を繰り返しているー

目的は、いくつかあるー。

ひとつはー
”開発中の寄生生命体の強化”
寄生生命体は、高い学習能力を持ち、
迷宮で人間を追い込み、寄生する能力が
今回のようなことをするたびに、飛躍的に向上しているー。
いつの日か、この寄生生物を、彼らの研究機関は、
”生物兵器”として売買するつもりだー。

ふたつめはー
”資金源の確保”
”迷宮ゲーム”で寄生体に乗っ取られた人間たちを使い、
彼らは”裏社会”で店やイベントを開いているー。
そこで働いているのは、尚美たちのように”寄生された”人間たちだー。
寄生された人間たちを使った”ビジネス”で彼らは金を稼いでいるー。

そして、最後にー

「ーー何よりー私が楽しんでいるのだー
 この、ゲームをー。
 極限状態をもがき、あがき、生き延びようとする
 健気な少女たちをー」
男はそう呟くと、モニタールームから外に出たー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ごめんなさい!」
物陰に隠れていたツインテール受験生の梨乃は、
背後から尚美を思いっきり突き飛ばすー。

尚美が「ぐぇぇっ!?」と声を上げて
その場に倒れ込むと、
口から寄生虫を何匹か吐き出しながら
ニヤニヤと笑みを浮かべるー。

梨乃は涙を流しながらそんな尚美を無視して、
必死に迷宮の出口と思われる方向に向かって走ったー

そして、ついにー
”光”が見えたー。

迷宮のゴールと言う名の光がー。

必死に走る梨乃ー

「逃がすと思ってるの!?!?!?
 ひひひひひひひひひひぁぁぁぁ♡」
背後から尚美がー
そして、いつの間にか合流していた女子大生の和花が
ゾンビのように走ってくるー。

梨乃は運動神経は良くないー。
尚美と和花の方が早いー

梨乃は”お願い、間に合ってー”と
祈りながら、迷宮の出口に向かって走り続けるー。

そして、ついにーーー

梨乃の強運が上回ったー。
梨乃が、尚美たちに捕まる前にゴールにたどり着きー、
尚美と和花は舌打ちしながら、迷宮の方に戻っていくー

”ゴール”となっている地点には
特殊な電磁波が放たれていて、それで寄生虫たちが
飛び越えて来ないようにしているのだー。

シャッターが閉まり、研究施設のようなところで、
梨乃は拍手で迎えられたー。

「はぁ…はぁ…はぁ…」
梨乃は安堵感からか、膝をついて、身体を震わせるー。

「ーお見事。ゴールにたどり着いた諸君らに敬意を表するよー」
白衣の男が姿を現すー。

少し離れた場所の休憩スペースのようなところでは、
ニート女の和枝がコーラとポテトチップスを食べながら
すっかりと”満喫”している様子が確認できたー。

「ーーー無事に生還できたのは、君たち二人ー。
 実に見事だったー」

白衣の男はそう言うと、
「自己紹介が遅れて申し訳ない。まぁ、かけたまえ」
と、梨乃に対しても、和枝の座っている
ソファーに座るように促したー。

「ー私はこの研究所の副所長、漆原(うるしばら)だー。」
そう言うと、漆原は、首を振りながら微笑んだー。

「ーー君たちに良い知らせと残念な知らせを
 お伝えしないとならないー」

「ーーそ、それはどういうー」
梨乃が不安そうに言うと、
和枝はコーラを飲んでげっぷをしながら漆原のほうを見つめたー

「君たちは”売られた”のだー。」
漆原副所長はそう呟きながら微笑むー

「ーえ…ど、どういう…ことですか…?」
震えながら梨乃が言うー。

「ー言葉の通りだ。君たちは”家族”から売られたー」

漆原は続けるー。

この研究所では、秘密裏に”人間”を高く買い取っているのだと言うー。
新薬の実験や、寄生体の実験として使う”モルモット”としてー。

当然、非合法だー。
しかし、彼らのバックには”社会を牛耳る存在の一人”がついていて、
このことが明るみに出ることはないのだと言うー。

「君たちの家族はー
 ”莫大な金額”と引き換えに君たちを我々に売ったー…

 そう言えば、理解できるかね?」

「ーー!!」
梨乃も、和枝も表情を歪めるー。

迷宮で目を覚ました5人は、全員”家で”のんびりしている最中に
意識を失い、ここに運ばれてきたー

「諸君らの家族にはあらかじめ”特殊な睡眠薬”を渡しておいたー。
 それで君たちは眠らされて、我々の”回収班”に回収されて
 ここにやってきたー」

梨乃も和枝も表情を曇らせるー。
確かに、梨乃ら5人は”普通に生活していたはず”なのに、
目が覚めたらここにやってきていたー。

それはー
梨乃ら5人のそれぞれの家族が、
梨乃たちに、漆原たちから提供された睡眠薬を何らかの方法で使い、
眠らせたからだー。

「ー諸君らの家族はー、金に困っていたー。」

漆原はそう言うと、梨乃を指さすー。

「君の家はー、母子家庭だと言っていたね?
 君は、お母さんのために、と必死に高校受験を頑張っていたようだがー。
 君のお母さんにとって”君の存在”こそがー…
 足枷になっていたのだとしたらー?
 君の存在こそがー経済的負担になっていたのだとしたらー?」

漆原の言葉に梨乃は「そ…そんな…」と、呟くー。

「ーー事実、君のお母さんは我々に接触してきたー。
 ”娘を買い取ってほしい”とー。

 我々に売れば、表沙汰にならず、”我が子”を金にすることができるー。
 君のお母さんは、君を売り、生活を安定させることを選んだのだ」

梨乃は「そんなの嘘です!」と叫ぶー。

「ーーー嘘ではないー。
 諸君らは、”親”に売られたのだー。
 もちろん、本当はそんなことしたくなかっただろうー。
 だがー
 ”金”が無ければ、人間ーー生きてはいけない

 金が無ければ、モノも絆も、健康も、何もかも捨てることに
 なるのだよ!」

漆原はそこまで言うと、ニートの和枝のほうを見たー。

「君は、自分が家族に売られた理由、分かるだろう?」

”論外”と言わんばかりに和枝を見ると、
和枝はニヤニヤしながら「えへへ 引きこもりだしね!」と、
もはや自虐ネタに走るような勢いで笑みを浮かべたー。

「ーーーーじ…じゃあ…わたしたち…これからー」
梨乃はそう呟くー

もし”お母さん”に売られたというのが本当なのであれば、
自分たちはどうなってしまうのかー。

そう思ったのだー。

「ーー迷宮突破おめでとうー」
漆原は改めてそう言うとー、
直後、漆原の背後に立っていた男が、突然何かを梨乃に向けたー

「ーー!?!?」

ずっとニヤニヤしていたニートの和枝も、さすがに表情を歪めたー。

漆原の背後にいた男がー
梨乃を撃ったのだー。

「ーーえ…?」
床に崩れ落ちて動かなくなった梨乃を見て、和枝は
「ーな、、何してんの!?!?ひ、、酷すぎない!?」と、叫ぶー。

漆原は笑みを浮かべたー

「寄生虫に寄生されれば、永遠にその身体を悪用されることになるー
 そうならないよう、”楽”にしてあげたんだー。
 これが、ゲームクリアのご褒美だー」

そう言うと、漆原は和枝のほうを見たー。

「ーげ、、ゲームはフェアに!ってあんた言ってなかったっけ!?!?」
和枝が必死に叫ぶと、
漆原は笑みを浮かべたー

「あぁ、ゲームはフェアにー。
 でも、迷宮を突破した時点で、ゲームはクリアー
 エンディングを迎えているー。

 ゲーム以外では、私はフェアではないのでね」

漆原はそう言うと、背後に立つ部下に”合図”をしたー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

1週間後ー

「ーーそれでは、入場ですー」

地下施設ー
裏社会の人間が集まるその場所でー、

メイド服を着た尚美ー
ラバースーツの栄子ー
バニーガール姿の和花が姿を現すー

寄生されて、支配されてしまった三人はー
謎の研究機関が運営している”闇劇場”で、その身体を
悪用されていたー。

「ーーえへへへへ♡」
尚美は寄生虫を耳から蠢かせながら、
不気味な笑みを浮かべたー

そしてーーー

「ーーゴールした二人の”解体”は終わったかー?」
漆原が部下に言うと、部下は「はっ」と頭を下げるー。

迷宮でゴールできなかった人間は、
寄生虫に寄生され、”商売道具”となるー

そして、ゴールできた人間はー
”解体”され、その臓器が闇市場に流されるー。

「ーーークククククー」

闇の研究組織の存在が表に出ることは、ないー。
彼らは”闇の中に蠢く”決して表沙汰にはならない組織なのだからー。

おわり

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コメント

ダークな寄生モノでした~!
迷宮を脱出してもこれでは…捕まった時点で
運命は決まっているようなものですネ~…!

お読みくださり、ありがとうございました!!

コメント

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