寄生虫が放たれた謎の迷宮ー。
少女たちは、脱出を目指し、奔走するー…。
・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーー………」
ガクガクと足を震わせながら
ツインテールの受験生・梨乃は、
迷宮の中を歩いていたー。
”部屋で勉強してたはずなのにー”
梨乃はそんな風に思いながら、
周囲を見渡し、迷宮の先へと進むー。
いやー
こっちが”先”なのかは分からないー。
もしかしたら出口から遠ざかっている可能性もあるー。
けれどー。
立ち止まっているわけにはいかないー
「ーーー!」
4方向に道が分かれている場所に到着して、
顔を少しだけ出す梨乃ー。
その先にはー
尚美の姿が見えたー。
「ーーふふふふ…出てきなさぁ~い♡
すぐに仲間にしてあげるからぁ」
尚美がゆらゆらと身体を揺らしながら歩いているー。
普通の人間は、あんな歩き方はしないー。
明らかに、”正気”を失っているー。
「ーふふふふふふふ…怖くなんてないよぉ…?
思ったより、気持ちいいんだから…♡
ふふふ…ふぅぅぁぁぁ♡♡」
甘い吐息のようなものを吐きながら、尚美は振り返るー。
「ーーーー!」
梨乃とその目が合うー。
尚美はニヤァ、と笑いながら、寄生虫を耳から飛び出させてー
「み~つけたぁ♡」と、呟くー。
その言葉を聞き終える前に、梨乃は既に走っていたー。
別の分かれ道の方向に向かってダッシュして、
さらに次の分かれ道も進むー
「いやだ…いやだ…たすけて!」
ツインテールを揺らしながら、人生で一番走ったかもしれない梨乃は、
背後を振り返るー。
そこにー
尚美の姿は既になかったー。
”ーー間一髪だったようだな。お見事ー”
男の声が響き渡るー。
梨乃のいる周辺にだけ、放送を入れているようだー。
”諸君らが簡単に捕まってしまってはつまらないー。
これは大事なゲームだー。
じっくり、私を楽しませてくれよー”
男はそう呟くと”健闘を祈るよ”とだけ呟いて
そのまま喋らなくなったー。
梨乃は震えながらも、拳を握りしめるー。
「ーわたし…早くお母さんを楽させてあげないとー」
梨乃の家庭は母子家庭だったー。
そんな母親を将来、助けるため、梨乃はいっぱい勉強して良い高校にー、と
高校受験のための勉強を必死に頑張る日々を送っていたー。
けれど、まさかこんなことになるなんてー
「ーわたし……負けないー」
足をガクガク震わせながらも、恐怖に、そしてこの迷宮に打ち勝つため、
梨乃はそのまま走り始めたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーあ~めんどくさ」
ボリボリと脇のあたりを掻きむしりながら
ニート女子・和枝が、ドシドシと迷宮の中を歩いているー。
高校卒業後に、大学をすぐにやめてしまい、ニートと化した和枝。
昔から面倒くさがり屋で何事にも無気力だった和枝は、
大学に入学後、すぐ”面倒臭い”という理由で勝手に退学してしまい、
そのまま実家で引きこもり生活を続けているー。
”可愛いだけ”
小さいころはよくクラスメイトからそんな風に揶揄われていた和枝ー。
しかし今、和枝は引きこもり生活で太り続けて、
容姿を気遣うこともなくなって、”可愛さ”も失っていたー。
「ーーは~コーラ飲みたい」
そう呟きながら和枝が、分かれ道を進むー。
「この迷路もそろそろ飽きたんだけど」
独り言をつぶやく癖がある和枝は、そのままゴールを目指すー。
「ーこっから出たら★1でレビューしてやろっかな」
頭がかゆくなってボリボリとかきむしりながら、
次の分かれ道を進むとー
「ーーーあれ?」
和枝が表情を歪めるー。
”EXIT”
そう書かれた表示と、迷宮の”出口”のような場所が見えたー
「マジ!?ラッキー!」
和枝が叫ぶー。
和枝は”悪運”だけは強かったー
昔からそうだー。
そして、和枝は思っているー
「最後には、わたしみたいなやつが、長生きするんだから」
とー。
周囲から蔑まれようと、自分のような
どうしようもない人生を送っている人間が
こういう時に土壇場の悪運を発揮するー
今も、そうー
”お見事ー”
声が響き渡ったー
”君が一人目のゴールだ”
男の言葉に、和枝は「マジ?簡単すぎたんだけど!ウケる!」と
嬉しそうに笑うー。
”クククー
こんな迷宮に閉じ込められても、そんな反応とはー
大した女だな”
男が言うと、和枝は「でしょ~?」と、得意げに笑いながら
迷宮の外に出たー
迷宮の先は、研究施設のような雰囲気の施設になっていたー。
「ーーおめでとう。」
白衣を着た男が姿を現すー
その声からー
この男こそが、迷宮にいる少女たちに声を発していた男であることが分かるー。
「それにしても強運だったなー
選ぶ道全てがゴールへの最短距離だったー」
男の言葉に、和枝は「え?!マジ!わたし、最強じゃん!」と
巨体を揺らしながら笑みを浮かべたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーー!」
ショートヘアーの栄子と眼鏡をかけた女子大生・和花は
表情を歪めたー。
「ーあの虫ー」
ミミズのような姿の寄生虫が、前方の道から
やってきたのだー。
「ーこっちに行きましょう!」
和花が横の道を指さすー。
「ーー…でも、こっちにゴールがあるかも」
栄子が言うー。
”寄生虫を避けて進む”だけでは
ゴールにたどり着けないかもしれない、とー。
確かにそれはそうだが、
とは言え、寄生されたら終わりだー。
尚美のようになってしまうー。
そんな風に思いながら和花が「でもやっぱりー」と、
叫んだその時だったー。
「ーーみ~つけた♡」
和花の背後から、尚美が姿を現し、和花を羽交い絞めにしたー。
「ーーひっ!?」
和花が悲鳴を上げるー
「ーー…!」
ショートヘアーの栄子も、表情を歪めるー
「ーーわたしと一緒に、気持ちよくなろっ♡」
尚美がそう言うと、有無を言わさず、和花にキスをしたー
和花が震えながら、喉が何かを飲み込んでいくー
床に手をついて何度も何度も咳き込む和花ー。
「ーーふふふふ…ほら、気持ちイイでしょ?
身体をこの子たちにゆだねるのはー」
尚美が、自分の足に寄生虫を這わせながら笑みを浮かべているー
「ーーーーうっ…うっぅう」
苦しそうに床に手をついたままの和花ー。
「ーーごめん」
栄子は、それだけ呟くと、隙をついて、そのまま迷宮の奥の方へと
進んでいくー
和花を囮にしたわけではないし、
見捨てたわけでもないー
いやー
結果的に”見捨てた”のかもしれないー。
けれどー
「ーあたしまで寄生されちゃったらー…
みんな、助からないからー」
栄子は、そんな風に考えていたー
今、和花を助けようとしても、恐らくは助けることはできないー
それどころか、栄子まで寄生されてしまうのがオチだー。
誰か一人でも脱出して、警察に助けを呼ぶことができればー
寄生されてしまった尚美や、和花も助けることができるかもしれないー。
「ーーーふふふふ…そろそろかな?」
栄子が立ち去って行ったのを無視しながら、尚美は
和花のほうを見つめるー
和花はゆっくりと立ち上がると、
「ーわたしも…生まれ変わっちゃった♡」と笑みを浮かべるー
そして、眼鏡を放り投げると、
「ーーお姉さまー」と、笑みを浮かべながら尚美のほうを見つめたー
寄生虫たちの間では
”先に寄生した側”が、上になるというルールがあったー。
和花の方が”身体の年齢”は上だが
年下の尚美を”お姉さま”と呼び、目を輝かせているー
「ーふふ…わたしの可愛い妹ー」
尚美はそう呟くと、和花のほうをうっとりとした目で見つめてからー
和花にキスをしたー
尚美と和花がキスをしている光景を、
物陰から見ていたツインテールの受験生・梨乃は
「ーこっちもだめ」と、引き返して、別の道へと進むのだったー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・
”諸君らに良い知らせと、悪い知らせがあるー。
どちらから聞きたいかねー?”
男の声が迷宮に響き渡るー。
「ーーー」
それぞれ別の場所を進む梨乃と、栄子は答えないー。
”まぁ、良い方から伝えようかー。
諸君ら5人の中で既に一人はゴールに到着したー。
少なくとも、一人は無事に迷宮を抜けたということだ。
どうだ?良いニュースだろう?”
男の言葉に、
梨乃も、栄子も、それぞれの居場所で”誰かゴールしたんだろう?”と
思いつつも、わずかに安堵するー。
”もう一つ、悪いニュースの方はー”
男は少し笑うような口調で続けたー。
”時間の経過と共に、その迷宮に”寄生虫”を追加投入しているー。
迷っている時間が長くなればなるほどー
諸君らは無事にそこから出られる可能性が低くなるー。
言っておくがこれはドッキリでも何でもないぞー?
”死のゲーム”だー。
ゴールできなければ、諸君らの身体は、
そこにいる可愛い虫たちのものだー。分かるかね?”
その言葉に、梨乃も栄子も恐怖を感じながら
それぞれ出口を目指すー。
”既に誰かがゴールしていてー
尚美って子と、和花って女子大生が寄生されてるからー…”
栄子はそう考えながら、警戒しつつ、迷宮の出口を目指して
走り続けるー。
運動神経には自信があるー。
そう簡単に疲れたりはしないー。
”残ってるのは、あたしだけー…
あるいは、もう一人ー”
栄子はそう考えるー
”2人が犠牲になっていて、一人はゴールに到着”
そうなると、残っているのは、
多くて残り2人ー。
そのうち一人は自分だから、あと一人は
ツインテールの受験生の梨乃か、ニートの和枝、そのどちらかだー。
「ーーでもー」
栄子は拳を握りしめるー。
他の誰かが残っているにせよー、
とにかく今は、ここから自分が脱出することが最優先ー。
「ーーーーー!!!」
その時だったー。
栄子の走っていた道の床がパカッと開くー。
「ーー!?!?!?!?」
栄子は咄嗟に手を伸ばすー。
「ーーー…!!」
表情を歪める栄子ー。
栄子の下はー
よく見えないー
だがー
”落ちたら無事で済まない”ことだけは分かるー
この下には針山があって、くし刺しになる可能性もあるー。
「ーーな、何なの…」
よじ登ろうとする栄子ー。
”おっと、言い忘れていたー。
そこは迷宮ー。
当然、寄生虫だけではなく、たくさんの罠も仕掛けられているー”
男が呟くー
「あんたー…!ゲームはフェアであるべきだって、さっき自分で言ってなかった?」
苦しそうな表情を浮かべながら栄子が、
天井を見上げながら言うと、
”もちろんだともー”
と、男は返事をするー。
”だが、よく考えてごらんー。
ステージの中の仕掛けを全部先に話したら、それはネタバレだー。
ここにどんな敵がいます、ここにどんな仕掛けがあります、
エンディングはこういう内容ですー
そんなことまで、全て説明するかい?
しないだろう?”
男の言葉に栄子は反論できず、悔しそうな表情を浮かべるー。
そこにー
ニヤニヤしながら和花がやってきたー。
寄生された直後に眼鏡を捨てた和花は
別人のようだったー
「ーーみ~つけた♡」
和花が笑うと、栄子は「た、、助けて!」と叫ぶー。
和花が寄生されているのは分かっているー
それでも、助けてくれると、わずかな希望を抱いてー
和花はクスッと笑うー。
「ーーい・や・だ」
掴まっている栄子の手を踏みにじる和花ー
和花は笑いながら
「落ちろ!落ちろ!落ちろ!落ちろ!」と叫ぶー
途中から、口を開いて寄生虫がそこから顔を出すと、
和花はぷるぷる震えながら、口から「お ちろ」と、
ぎこちない声を出しているー
やがてー
栄子は、奈落の底へと転落したー
”ーゲームオーバー 残念だったね”
男の声が響き渡るー
落下した栄子は、死を覚悟したー。
③へ続く
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謎の迷宮を支配する男の目的と
少女たちが連れて来られた理由とは…?
次回が最終回デス~!
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