<寄生>パラサイトラビリンス①~迷宮~

謎の迷宮に連れて来られた少女たちー。

そこに、”人間を支配する寄生虫”が放たれたー

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”おはよう諸君ー”

「ーーー…え…?」
女子高生の久野 尚美(ひさの なおみ)は、
聞き覚えのない声で目を覚ましたー。

「ーーー!?」
四方八方が”壁”に囲まれており、
前方に二つの道、後方に3つの道が見えるー。

「ーーえ…ここどこー?」
尚美は表情を歪めるー。

まるで”迷宮”のようなこの場所ー
尚美は、”自分の状況”を必死に頭の中で考えたー。

尚美はー
朝、普通に起きてー
学校に行ってー、
そして学校を終えて下校し、
家に帰ったあとにジュースを飲んでー
スマホをいじりながら友達と連絡を取っていたらー
少し眠くなってきて、昼寝をしたー

そのはずだったー。

だがーー
どうしてこんな場所にー

「ーーう…」
声が聞こえて、尚美は慌てて振り返るー。

尚美の背後には、4人の同じぐらいの年齢の女子が
横たわっていたー。

”諸君”
そんな男の言葉を思い出すー。

ここにいるのは、尚美一人ではない、
ということを示しているー。

「ーーあれ…あたし…?」
ショートヘアーの気の強そうな女子が周囲をキョロキョロと見回すー。

「ーーな、、何ここー?」
涙ぐんだツインテールの少女が周囲を見渡すー。

「ーーう…」
眼鏡をかけた女子が寝ぼけた様子で周囲を見つめるー。

「ーーは?何ここ…やばァ!」
嬉しそうに笑う巨体の女子ー。

”ようこそ諸君ー。悪夢の世界へー”
迷宮のような場所に声が響き渡るー。

「ーーど、どういうことー?」
尚美が聞くと、
”日常は突如として壊れ、地獄は突如として人間の目の前に姿を現すー。
 ここが、その”地獄”だー”
と、男の声が答えるー。

言っている意味が分からないー

「な、何言ってるのー!?」
ショートヘアーの気の強そうな女子が叫ぶー。

”ここは地獄の迷宮ー
 今から諸君らには、この迷宮からの脱出を目指してもらう。
 君たちがいるのはスタート地点だー。
 そして、この迷宮には1か所”出口”があるー。
 そこを見つけることが出来れば”ゲームクリア”だー”

男の言葉に、
尚美は「ここは何なの!?あなたは誰ー!?」と、叫ぶー。

”それを私が話す必要はないし、
 諸君らに知る権利はないー。
 
 諸君らは今、巨大迷路のスタート地点にいて、
 1か所のゴールを目指すしかないー。

 そういう、状況だー”

その言葉に、尚美は、自分たちが今いる広場から続く
”5か所の道”を見つめるー。

「ふざけないで!早くここからあたしたちを出して!
 こんなの…誘拐よ!警察に通報するから!」

ショートヘアーの女子が叫ぶと、
男の声は笑ったー

”威勢がいいなー。
 だが、そんな威勢も地獄では虚しい響きになって消えるだけー。
 諸君が何と言おうと、ここに助けは来ないし、
 諸君は自らの力で”地獄”を抜け出さなくてはならないー”

男の言葉に「何言ってるの…」と、ショートヘアーの少女も
困惑の表情を浮かべたー。

”まぁいいー
 スタートは”5分後”だー。
 それまでに、君たち5人、自己紹介を済ませておきたまえー。
 互いに、初対面だろうー?”

男の言葉に、
ショートヘアーの女は不満そうに舌打ちするー。
眼鏡をかけた少女が「ーー…あ、でも自己紹介はしておいた方が
いいかもしれませんね…」と、呟くー。

「ーーー………そうね」
ショートヘアーの女は不満そうにしながらも頷くー。

「アタシは岡松 栄子(おかまつ えいこ)ー
 第3北高校に通ってて、今は陸上部の副部長ー」
ショートヘアーの女・栄子が言うー。

「ーーあ、私は南百合総合学園の、
 久野尚美ですー」
尚美が頭を下げながら言うと、栄子は「あたしと同い年だね!」と笑うー

眼鏡をかけた少女は
天坂 和花(てんさか のどか)という名前で、
幼く見えたが、大学生とのことー。

ツインテールの少女は、高校受験真っ最中の受験生の
森原 梨乃(もりはら りの)

先ほどからニヤニヤしている巨漢の女は、
高校卒業後に、ニート状態で暮らしている
小野田 和枝(おのだ かずえ)ー

それぞれ自己紹介を終えると、
男の声が再び響き渡ったー

”では、諸君ー。
 出口を目指して走りたまえー”

男はそれだけ呟くー。

5人の少女は、不満そうに男の声が聞こえる迷宮の上側を見つめるー。

”どうしたのかね?
 逃げないのかー?”

男の言葉に、
「状況も分からないまま、こんな場所に放り込んでー…なんのつもりなの!?」
と、ショートヘアーの栄子が叫ぶー。

「ーー…ここに連れて来られた理由ぐらい教えてください!」
眼鏡をかけた女子大生・和花も叫ぶー。

尚美は戸惑いながら天井を見上げるー
残りの4人も形は違えど”寝ている間”にここに連れて来られたのだと言うー。

「ーー理由なんて、どうでもいいじゃん!面白そうだし!」
巨体のニート女子・和枝が笑いながら言うと、
栄子は「あんたは黙ってて!」と、和枝に向かって叫ぶー

「はいはいー」
和枝が不貞腐れた様子で呟くと、
”諸君らが、それを知る必要はない”
と、男の声が迷宮に響き渡ったー。

「ーー教えてくれないなら、あたしたちはここから動かないー」
栄子が、勝手にそう宣言するとー

”それは自由だがー
 諸君らは、逃げることになると思うがね?”
と、少し低い声で呟いたー。

「ーーえ…」

その直後だったー。
迷宮の広間から繋がる”5つの道”の一つからー
突然、ミミズのような、不気味な虫が姿を現したのだー

「む、虫ー…?」
尚美が戸惑いながら、そのミミズのような虫を見つめるー。

「ーー危ないよ!毒持ってるかもー」
栄子が叫ぶと、尚美は静かに頷きながら
警戒した様子で、そのミミズのような虫を見つめるー。

その時だったー

いきなり、ぴょん!と飛び跳ねたミミズがー
尚美の口にめがけて飛んできて、そのまま口から
尚美の中に入り込んでしまったー

「ー!?!?!??!!?」
突然の出来事に喉を抑えながら咳き込む尚美ー。

「ーーえっ!?ちょっと!?」

尚美が苦しそうに咳き込んで、
床に手をつくー。

「ーーな……うっ…う、、苦しいー」
尚美がもがきだすー。

”何なのここー
 わたしはーー
 家で少し休んでいただけのはずなのに”

尚美は、そんなことを考えながら
なんとか呼吸をしようと必死に、もがくー

”これーーー ゆ、、夢なのかなーー”
あまりの恐怖に、そんなことを考える尚美ー。

”ーーー夢なら早く目が覚”ー

尚美の意識は、そこで途切れたー。

「ーーー……尚美ちゃんー?」
眼鏡をかけた女子大生・和花が不安そうに声を掛けるとー
尚美はゆっくりと立ち上がってー
そして、笑みを浮かべたー。

「ーーぐふふふふふふふ…♡」
尚美は、ニヤァ、と表情を歪めながら、
突然、両手で自分の胸を触り出すー。

「ー!?!?!?」
ツインテールの梨乃が怯えた表情で尚美を見つめるー

尚美の耳から、ミミズのような虫が飛び出して
尚美は笑みを浮かべるー。

「ーわたし、寄生虫に寄生されてー
 乗っ取られちゃった♡」
とー。

「ーー…え…う、、嘘…?」
ショートヘアーの栄子がそう呟くと、
尚美はニヤァ、と笑みを浮かべながらー、
残る4人を見つめるー

”これで理解できたかなー?”
男の声が再び響き渡るー。

”その迷宮に”新種の寄生虫”を先ほど放ったー。
 そいつらは、人間に寄生し、寄生した人間を完全に支配するー。
 そこの、女子高生のようになー”

「ーーーふふふふふ…♡」
尚美は嬉しそうに自分の手を見つめるー。

”寄生されたら、諸君らは”身も心も寄生虫に支配される”
 そうだなー
 分かりやすく言えば、”身体”は生きているけど、
 諸君らは”死ぬー”
 そういう、状況だー。

 どうかねー?
 それでも、そこに留まりたいというのであれば
 私は別に構わないー。”

その言葉と同時にー
ショートヘアーの栄子、眼鏡の女子大生の和花は走り出したー。
ツインテールの少女・梨乃の手を引っ張る栄子ー。

「ーーうわぁ!やばぁ!」
ニートな女子・和枝は、”乗っ取られた尚美”を見て笑っているー

だが、残りの三人に、そんな和枝に構っている余裕などなかったー。

迷宮の一つの道から、寄生虫が大量に出現するー。
それが、尚美に巻き付いていくー。

尚美はうっとりした表情で、
「ー今から、わたしが女王ー」と、笑みを浮かべるー。

寄生虫たちの中でどんなルールがあるのかは分からないがー
”人間の身体を手に入れた寄生虫”が女王になったのだろうー。

尚美は「誰も逃がさないからー」と、不気味な笑みを浮かべながら、
自分の耳から飛び出した寄生虫が、口の前にやってくると、
寄生虫をペロリと舐めて笑みを浮かべたー。

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「ーーはぁ…はぁ…はぁ…はぁ…」
栄子は荒い息をしながら、なんとか寄生虫の大群や
乗っ取られてしまった尚美から逃亡して、
眼鏡をかけた女子大生の和花と共に、逃げ切ることに
成功していたー。

「ーー何とか逃げ切れたみたいですね…」
和花が呟くー。

「ーでも、あの子とははぐれちゃったけど」
栄子が、ツインテールの受験生・梨乃と途中で
はぐれてしまったことを心配そうに呟くー。

「ーでも、ここはいったいー…?」
栄子が和花のほうを見ると、
「わたしにも分かりませんー」と困惑した様子を浮かべるー。

和花は一人暮らしの女子大生で、帰宅後に
ウトウトしていたところ、気づいたらここにいたのだと言うー。

「あたしは家に帰っておやつ食べてた気がするけど、
 気づいたらここにー」
ショートヘアーの栄子がそう呟くー。

”どうして、急にこんな場所に連れて来られたのか”
それが、分からないー。

「ーーーそれに、さっきの虫ー…」
栄子は、知り合ったばかりの尚美が乗っ取られた様子を
思い出すー。

「ーー…人間を操る虫…そんなものが存在するなんてー
 思えませんけどー…」
和花はそう呟きながらも、栄子と共に尚美の様子を思い出しながら、
”あの尚美という子が、男のグルでもない限りはー…”
と、寄生虫の存在を認めざるを得ない、と心の中で考えるー。

迷宮の主と思われる男ー
もし、尚美がその男とグルなのであれば、
あれは”演出”で、尚美は寄生虫に乗っ取られた”キャラ”を
演じている可能性もあるー

でも、そんな気はしなかったし、
少なくとも、あのミミズのような虫の大群は本物だったー。

「あいつ、出口あるって言ってたよね」
栄子の言葉に「そうですね…」と、和花が呟くー。

和花の方が大学生で年上だったものの、
和花自身、初対面の相手にほぼ敬語な性格だったため、
高校生の栄子に対しても敬語で話していたー。

「ーーとにかく、その出口を目指した方がいいんじゃない?」
栄子の言葉に、和花は頷くー。

”そうだー
 出口を目指せー。
 見せてくれー
 諸君らが必死にあがく、その姿をー”

男の声が響き渡るー。

栄子が迷宮の壁際に設置されていたカメラを睨みつけるー。

”おっと、そんな怖い顔をー。
 美しい顔が台無しだー。

 安心したまえー
 私がカメラで見た映像を、あの虫どもやー
 虫に乗っ取られた女に伝えることはしないー。

 それでは”フェア”とは言えないからなー

 ”ゲームはフェアであるべきだ”
 だから、君たちにもちゃんとルールを説明したし、
 私がこうしてカメラで見ている君たちの居場所を
 虫どもに伝えることはしない。
 
 安心して、出口を目指したまえー”

男の言葉に、
栄子は怒りの形相で叫んだー

「ここから出て、あんたをぶん殴ってやるから!」
とー。

”どうぞーご自由にー。
 できるものならなー”

男の音声がそこで途切れたー。

「ーーいこう!」
栄子が言うと、和花は眼鏡をかけなおしながら頷きー、
そのまま二人は、いくつか存在する分かれ道の一つを選んで
走り始めたー

”出口”を目指してー。

②へ続く

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コメント

寄生X迷路のお話デス~!
主人公っぽい雰囲気で登場した子が最初の犠牲者に…笑

明日の②もぜひお楽しみくださいネ~!

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