好きな後輩の身体になって
カラオケを堪能し続ける亮也ー。
そんな彼の運命は…?
・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーー♪~~~」
希海(亮也)は、希海の身体で
飽きることなく、歌い続けていたー。
「ーーぁ~…ぁ、、あ~」
希海(亮也)は喉の調整をしながら
”さすがにちょっと歌いすぎたかな…?”と
希海の声で呟くー。
ついつい、熱唱を続けてしまったー
普段大人しい希海が、こんな声を出せるなんて
思わなかったしー
やっぱり”この声”はたまらないー
「こんな癒しの声が自分の口から出るなんて…
あぁ~~いいなぁ~…」
希海(亮也)は、そうは言いつつも、
希海の喉が痛くなっていることに気付き、
「普段、希海ちゃんこんなに声出さないもんなー…」
と、呟くー。
亮也は、友人である昭から”憑依薬”と説明されているため、
今、自分は希海の身体に”憑依”している状態だと
勘違いをしているー
実際に昭が亮也に渡したのは、憑依薬ではなく、
”入れ替わり薬”であり、
亮也は、希海と入れ替わっている状態だー。
昭が、あの手この手で、事前に希海に入れ替わり薬入りの
飲み物を飲ませることに成功し、
その上で、亮也に入れ替わり薬を飲ませたことで、
”同じ薬を飲んだ組み合わせ同士が入れ替わり”
亮也と希海は今、入れ替わっているー。
「ーーん~…希海ちゃん、目を覚ましたとき、
やっぱ喉に違和感感じるかなぁ…」
申し訳なさを感じながらも、
「最後に一曲…」と、ニヤニヤしながら呟くと、
亮也が好きなアイドルグループの歌を希海の身体で
熱唱し始めるー。
途中で「希海ちゃんの声、サイコー!」と嬉しそうに叫ぶと、
最後までノリノリで歌を歌い終えたー
「は~~~~…」
カラオケの個室で、燃え尽きたように座る希海(亮也)ー
「髪も乱れちゃったし、汗もかいちゃったしー…
本当に大丈夫かなー?」
希海(亮也)は呟くー。
昭によれば、憑依後は”本人が疑問を感じない程度に記憶は調整される”
と説明を受けているー。
「ーーまぁ…希海ちゃんの身体でお風呂に入ったりするわけにも
行かないしな」
希海(亮也)はそう呟くと、
「ーーそろそろー」と、立ち上がるー。
希海になる前に、亮也は事前に昭と共に
このカラオケにやってきて、
別の個室で二人きりの状態だったー。
昭が”抜け殻になったお前の身体を見張っててやるから”と、
そう言っていたためだー。
そこに向かって、元に戻る方法を聞き出そうと、
カラオケの個室から外に出ようとする希海(亮也)ー
しかし、その時だったー
個室の扉を開けるとー
すぐ横に、亮也(希海)と昭が立っていたのだー
「ーーーえ」
希海(亮也)は唖然とするー。
「ーーーな、なんで俺がもう一人ー?え、どういうことー?」
自分が希海に憑依している状態だと思い込んでいる
希海(亮也)は困惑の表情を浮かべながら、
亮也(希海)と一緒に立っている昭のほうを見つめながら言うー。
希海(亮也)からすれば
”抜け殻のはずの自分”が、勝手に動いていて、
そして、困惑の表情を浮かべているのだから、驚くのも無理はない。
「ーー…まぁ、中で話そうぜ」
昭はニヤニヤしながら、希海(亮也)を再び、
カラオケの個室の中に戻し、
希海(亮也)と亮也(希海)を座らせて、笑みを浮かべたー。
「ーーー先輩ー…」
亮也(希海)が言葉を口にするー。
その言葉に、希海(亮也)は、
”自分の身体”を動かしているのが、希海であると理解するー
「ーーえ…え、、のぞ、、いや、香坂さんー!?」
希海(亮也)が、悲鳴に似た叫び声を上げると、
亮也(希海)は「ーーーはいーー」と、呟いたー。
「ーーまったくよ~!俺はやめた方がいいって散々言ったのにー…
強引に香坂さんと身体を入れ替えて、こんなことするなんてー」
昭が笑うー。
「ーーーな、、何だってーお前、だって、憑ーーー」
希海(亮也)が言うと、
「言い訳は無用だぜ!」と、昭は叫んだー。
「ーーまさか!お前、俺をはめーー」
希海(亮也)が叫ぼうとすると、
亮也(希海)は「ーー…先輩……」と、複雑そうな表情で
希海(亮也)のほうを見つめたー。
「本当に、先輩なんですかー?」
とー。
”自分の身体が勝手に動いているー”
それは、希海からしても同じことで、
希海は困惑していたー
「ーーあ、、え、、あ、、」
希海(亮也)は昭と、亮也(希海)のほうをちらちらと見てからー、
”言い逃れはできない”と判断して、
突然、その場で土下座をしたー
「ご、ごめんーーー!
俺、香坂さんの”声”にいつも癒されててー
それで、それで、香坂さんが歌ったらどうなるのかなって、
そんなこと考えちゃってー
でも、一緒にカラオケに行こうなんて誘えないし、
もうすぐ図書委員も俺、引退だしー、
そんな風に思ってて、つい、こんなことをー」
希海(亮也)が土下座をしながら叫ぶー
昭は”あ~あ、これで嫌われちゃったな”と、ニヤニヤしながら
横でその様子を見つめているー
「ーー声ー?」
亮也(希海)がそう呟くと、
希海(亮也)は、「ーーあ、いやー…こ、声もそうだし、
香坂さんにいつも癒されていたっていうかー…その…とにかく、ごめんなさい」と
頭を下げるー。
「ーーー亮也、お前は最低なことをしちまったな。
まぁ、ほら、俺が”入れ替わり薬”もう1セット用意しておいたからさ、
これを香坂さんと亮也が二人ともそれぞれ飲めば、
元の身体に戻れるさ」
昭がそう言い放つと、希海(亮也)は、昭のほうを睨みつけたー。
「ーーお前…はめたな!」
とー。
昭は、「でもお前だって、香坂さんに憑依できるって言われて乗り気だった
じゃねぇか」と、笑みを浮かべるー。
「ーーそ、それはー」
希海(亮也)は戸惑うー。
”憑依”と聞かされていて、
希海本人は”不安に感じないよう、記憶もうまく調整される”と
聞かされていたからこそ、亮也は希海の身体を使ってカラオケを歌う決意をしたー
歌い終わったら、すぐに希海の身体を返すつもりだったのは本当だったし、
とにかく、ただ、希海の歌声を聞いてみたかっただけー。
希海が怖がる心配がないー、と聞いたからこそー
そんな風に思っていると、昭は
「ーどんな理由であれ、後輩を乗っ取って好きにしようとしたことに
変わりはないんだぜ」と、小声で希海(亮也)に向かって呟くー
「ー”俺まで同類に見られちまう”って言われたときー
ちょっとムカついたから仕返しだー。」
昭は小声でそう言うと、希海(亮也)は悔しそうに昭のほうを見つめてから、
戸惑っている亮也(希海)のほうを見て、
希海(亮也)は「本当に、ごめんー」と、再び頭を下げるー。
そして、昭がどう説明したのかは知らないが、
理由から、希海になるまでのことを全て、希海に対する想い、
希海の身体になってからしたことを包み隠さず話し、
歌った曲名まで全てを打ち明けたー。
「え、、エッチなこととかはしてないー…
歌声で…は、鼻血だけはでちゃったけど、ちゃんと止血したからー」
謝罪の言葉を連呼しながら、
話す必要のなさそうなことまで、全て話した希海(亮也)ー
「ーーま、早く入れ替わり薬を入れたジュース飲めよ。
それで、香坂さんに身体を返すことがー」
「ーー出てってくださいー」
亮也(希海)が呟くー。
「ーーーー…」
希海(亮也)は、「本当にごめん」と呟きながら、
入れ替わり薬の入った飲み物を飲もうとするー。
「ーーへへ 嫌われちゃったなぁ。
まぁほら、身体を返して、早くここから立ち去れよ」
昭がそう呟くとー
「ーー出て行ってください!」と、亮也(希海)が、
昭のほうを見て叫んだー
「ーーへ?」
昭がうすら笑いを浮かべたまま、変な声を出すー。
「ーわたし、あなたみたいな人、嫌いですー
もう、出てってください」
亮也(希海)にそう言われて、昭は表情を歪めるー
「ーー…お、おいおいー香坂さんの身体を勝手に奪って
好き放題してたのは亮也だぜー。
なんで俺にそんなー」
昭がそう言いかけると、
亮也(希海)は、
「確かに、先輩は勝手にわたしの身体を奪いました
そのことは、怒ってますー。
でも、先輩は包み隠さず、全部、話してくれたー。
あなたみたいに、友達をはめたり、
嘘の話をしたりするような人より、
先輩のほうがずっと、誠実でー、いい人ですよ!」
と、昭に言い放ったー
「ーーー…香坂さんー」
希海(亮也)は土下座の姿勢のまま、亮也(希海)のほうを見つめたー。
「ーあとは、先輩とわたしだけで話し合います。
あなたはもう出てってください!」
亮也(希海)の言葉に、昭は顔を真っ赤にしてぷるぷる震えながら
「ーーあぁ~~~~…三次元の女ってやっぱわけわかんねぇ」と、イライラした
様子で吐き捨てると、
「ーー三次元なんて消えてしまえ!」と叫びながら、個室の外に立ち去って行ってしまったー。
「ーーーーー…本当にーー」
希海(亮也)は、そう呟くと、本当に、巻き込んで、ごめんなさいー、と
もう一度頭を深々と下げたー
そして、入れ替わり薬の入った飲み物を飲もうとするー。
だがー
「ーー先輩…!」
と、亮也(希海)が、希海(亮也)が入れ替わり薬を飲む手を止めたー。
「ーーえ…」
希海(亮也)が戸惑っていると、
「ーーわたしにも、その…仕返しさせてくださいー」
亮也(希海)の言葉に、
希海(亮也)は「仕返し…?」と首を傾げるー。
「ーーー先輩だけ、わたしの身体で好き放題するなんて
なんか許せないというか、ずるいですしー
わたしにも少し先輩の身体で歌わせてくださいー」
亮也(希海)の言葉に、
希海(亮也)は「ーえ…い、いいけどー」と、戸惑いながら
「ーー俺の身体で、香坂さんの口調だと、違和感すごいなぁー…」と、
少し恥ずかしそうに呟いたー
「ーそれは、わたしもです わたしが…その、なんか
イキイキとした表情で、先輩の喋り方してると…
すごく変な感じですー」
亮也(希海)はそれだけ言うと、
希海(亮也)は「ーー香坂さんが満足したら、元に戻ろうー」と、
申し訳なさそうにしながら呟いたー。
その後ー
希海は亮也の身体で数曲歌を歌ったあと、二人は
昭が残した入れ替わり薬を飲んで、元の身体に戻ったのだったー。
・・・・・・・・・・・・・・・
それからー、
数週間後ー
亮也は図書委員最後の仕事を終えたー。
「ーお疲れ様でしたー」
希海が言うー。
「ーーあ、うん。ありがとうー」
元に戻って以降ー、
特に何事もなかったかのように、元の日常に戻っていたー。
希海に嫌われると思ったが、そんな様子はなくー
逆に”ちょっとだけ”入れ替わりをきっかけに今までより仲良くなれるかもー、
と期待もしてしまったが、そんなこともなかったー。
図書委員会の仕事も完全に終えて、
あとは卒業のみー、となっていたある日ー、
亮也は”ある決意”をしたー。
あんなことをしてしまったんだー。
もう、どうせ嫌われても元々だー。
亮也は、希海を呼び出すー。
そしてー、
希海の前で、亮也は土下座をしながらー
「ーー今度は、ちゃんと香坂さんとカラオケに行きたいー
もしよければー」
と、叫んだー。
恐らく断られるだろうー。
あの日以降、希海の態度は何も変わらなかったが、
恐らく、内心では嫌われているー
そんな風に思いながらのカラオケへの誘いー。
「ーーーー………」
希海はにこっとほほ笑んだー。
亮也は一瞬、
”なんだこの物語のような展開はー”と、
心の中で思ったー。
”入れ替わり”をきっかけに、後輩の香坂さんともっと仲良しにー”
「ーー…」
だがー、希海は言葉を続けたー。
「ーーーごめんなさいー
ーわたし、”彼氏”がいるんですー」
とー。
変な期待をしてしまっていた亮也はー
頭の中が真っ白になったー。
大人しい希海にも、彼氏がいたのだー
希海と同じくとても大人しそうな幼馴染の男子がー。
二人とも恥ずかしがり屋で、学校ではそういうそぶりを
ほとんど見せないため、知らなかったー。
失恋気味になった亮也は、
翌日、昭に声を掛けるー。
「ーやっぱ、二次元って最高だなー」
亮也の突然の言葉に、昭は「は!?」と、声を上げるとー
「ーお前、急にーどうしたー…?」
と、二次元最強と普段から叫んでいる昭も、
困惑した様子を見せるのだったー
おわり
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”あの子の声で歌う”をテーマにした
入れ替わりモノでした~!☆
お読みくださり、ありがとうございました!!
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